曖昧さ回避
- 図形としての放射線。ある一点から放射状に広がる線のこと。直線で描けば集中線となる。
- 路線としての放射線。ある一地域から放射状に延びる路線のこと。環状線との対比として用いられる。
- 物理用語としての放射線。本記事で解説。
pixivではほとんどの場合3.の意味で用いられるが、稀に1.の意味での用法も見られる。
概要
放射線を出す能力を「放射能」とよび、放射能を持つ物質を「放射性物質」という。
放射線の種類
粒子線
名称 | 粒子の実体 |
---|---|
アルファ線 | ヘリウム4の原子核 紙を通過できない |
ベータ線 | ベータ崩壊に伴う電子又は陽電子 |
電子線 | 人為的に加速した電子 |
中性子線 | 中性子 |
陽子線 | 水素1の原子核 |
宇宙線 | 超新星爆発などで生成された物質の原子核 |
重荷電粒子線 | 単体の物質の原子核(陽子線含む) |
電磁波
遮蔽率
蓄積しやすい
α線 | 紙1枚で遮蔽できる |
β線 | 厚さ数mmのアルミニウム板で防ぐことができる |
γ線 | コンクリートであれば50cm、鉛であっても10cmの厚みが必要 |
中性子線 | 水やコンクリートの厚い壁に含まれる水素原子によってはじめて遮断できる |
蓄積しにくい
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9Aから抜粋
単位
Gy(グレイ)を用いる。1kgあたり1Jのエネルギー吸収があったとき1Gyとなる。SI単位系が採用される前はrad(ラド)が用いられていた。換算すると次のようになる。
つまりこうである
1[Gy] = 1[J/Kg] = 100[rad]
人体に対する吸収についてはSv(シーベルト)を用いる。Gyとの変換は放射線の種類ごとの定数をかけて算出する。SI単位系採用前はrem(レム)を用いていた。換算と定数については次のようになる。
ただし、一度に大量の被曝をした場合はSvではなくGyを用いる。
1[Sv] = 100[rem]
n×(定数)[Sv] = n[Gy]
種類 | 定数 |
---|---|
X線、ガンマ線 | 1 |
ベータ線、ミュー粒子(ミュー中間子) | 1 |
中性子 | 5~20 |
陽子 | 5 |
アルファ線 | 20 |
核分裂片 | 20 |
重原子核 | 20 |
被曝の強さを示す場合、単位時間で割り算をするため単位はSv/h(シーベルト毎時)の様に時間当たりの吸収線量となる。
放射線の利用
工業用途ではエンジンルーム用プラスチックの製造やタイヤに硫黄を使わない架橋加工、変速機(AT)の溶接が難しい部品の溶接、内張り加工の簡易化、製品の欠陥検査などに用いられる。
医療では、医療用器具の殺菌や輸血用血液のGVHD(移植片対宿主病)予防のための白血球破壊、癌の放射線治療にもちいられる。
ほかにも、食品の殺菌、芽止め、細菌テロ対策などに使われている。
余談
- レントゲン撮影の被曝量を計算すると半月~1ヵ月半の自然被爆の累積量と同じ位になる。
- 弱い放射線の測定は非常に難しく測定対象と検知器を鉛の箱に入れ、さらに中性子線を遮る為に鉛の箱の内側をカドミウムで蔽わないと自然界の放射線が雑音となってしまう。
- 昔、夜光塗料に放射性物質が使われていたころ、時計職人や釣り道具屋の人が筆を整える際に筆を舐めて整えていたため、夜光塗料内の放射性物質が長期にわたって蓄積され、放射線障碍を被ったという事故があった。
- 放射能の高い物質は半減期が短く、放射能の低い物質は半減期が長い。物によっては半減期が億単位の年となっているものもあり、1秒に満たないものもある。
元素 | 半減期 | 備考 |
---|---|---|
ビスマス209 | 1700~2100京年 | 最も長い半減期を持つ放射性物質 |
ウラン238 | 44億6800万年 | 核分裂しないウラン |
炭素14 | 5730年 | 生物の死亡年代測定に用いる |
コペルニシウム283 | 4秒 | 人工の元素 |
オガネソン294 | 0.00089秒 | 人工の元素、元素名は一時的な仮名 |
あとがき
放射線は人間の生活に利益も害も与えるものである。正しい知識をもって適切に使えば大変な恩恵を受けられる。しかし、その一方で間違えた利用や知識を伴わない行動は大変な害となる。
目に見えない大きなエネルギーであるからこそ、正しい知識を持っていただきたい。