概要
核分裂反応によるもの
核分裂をする物質(例:ウラン235、プルトニウム239)に何らかのきっかけを与えて核分裂を起こさせる。すると核分裂した物質は、分裂前よりも軽い2つの物質に分裂すると同時にエネルギー(最終的に殆ど熱エネルギーに変化する)と複数の中性子を放つ。この中性子はそれぞれ核物質の別の原子に捕獲され再び核分裂が起こる。核分裂の度に中性子が複数放出されることにより反応はネズミ算式に進んでいく。そのため、きわめて短い間に核反応が連続して起こる。そのときのエネルギーが通常爆薬とは比較にならない超高温となり、強烈な爆風を生じさせる。
核融合反応によるもの
軽い物質同士を衝突させると原子核同士が融合し、エネルギーが放出される。しかし、核分裂とは異なりネズミ算式に進まないので、核融合させる物質を頻繁に衝突させるために、超高温・超高圧・超高密度に圧縮する。すると一気に核融合が起こり、莫大な量のエネルギーが放出される。これもまた最終的に熱エネルギーとなるため、これもまた通常爆薬とは比較にならないほどの超高温の爆発となり、強烈な爆風を生じさせる。
副生成物
核分裂反応によるもの
核分裂で生成された物質は、まだ不安定な物質であることが殆どであるため、高い放射能を持った物質が灰として舞う。これを「死の灰」という。(現在は「放射性降下物」という)また、燃え残りそのものも放射能を持っている。
核融合反応によるもの
実際の核融合を使った爆弾では点火に核分裂による爆発の補助を必要とするので上記の核分裂反応と同じ副生成物が生ずるが、ここでは核融合反応のみに絞って説明する。
核融合時に強烈なα線、β線、γ線、中性子線が放出される。その後、燃え残りの放射能を持った核物質が残る。人間の科学では、必要とされる条件の厳しさから水素の放射性同位体(三重水素)を使う必要があるので、水素の放射性同位体が残ることになる。ただ、死の灰とは異なり同位体であっても水素自体は非常に軽い物質なので、比較的速やかに拡散してしまうと思われる。
爆発による現象、被害
低高度
放射線により空気分子が励起され超高温の火球が生ずる。そのため強烈な爆風と熱線、放射線が生じ、人工物や生体への各種被害が生ずる。核爆発そのものによる被曝のほかに死の灰による被曝も生ずる。
また、高高度核爆発に対して範囲は限定的だが電磁パルスによる電子機器への被害も生ずる。
高高度(※)
空気が希薄なため火球は活発に生成されず、放射線によるコンプトン散乱や空気分子からはじき出された電子によって生ずる強烈な電磁パルスによりインフラへの致命的な被害が生じ、副次的な障害として放射性粒子により高高度の環境や電離層が破壊され数か月から数年にわたり無線の到達距離が変わったりや人工衛星の機能喪失といった被害が生ずる。
※…現在では部分的核実験禁止条約(PTBT)により高高度核爆発実験そのものが禁止されている
条件を成立させるための方法
核分裂反応の爆発
爆薬で核物質を活発な核分裂の起こる超臨界状態になるまで圧縮する。すると核分裂が短時間に連続して起こり爆発する。この際、圧縮条件や核物質の配分が悪いと核物質の一部は爆発を起こさずに飛び散ってしまう。
核融合反応の爆発
人類が成功している方法では、水素を纏めやすくし、中性子の照射により三重水素が得られる(※)リチウムと重水素を化合させた重水素化リチウムを核物質とし、傍の原子爆弾を爆発させて核融合が起きる条件を満たすための超高温・超高圧・超高密度に圧縮し中性子線を照射する。すると、重水素化リチウムが圧縮されそこで、重水素の核融合反応が一気に起こり爆発する。
用途
核分裂反応による爆発
- 兵器のみ
核融合反応による爆発
- 兵器のみ(現在)
- レーザー核融合炉(期待される用途(注))
- 隕石などの小天体の地球への衝突阻止(期待される用途)
注:レーザー核融合による核融合炉では原子炉(核分裂炉)の様にたくさんの核燃料をゆっくり反応させるという事ができないため、米粒大に固めた核燃料をひとつずつ投入して超高出力のレーザーを照射して核融合反応を行わせるという手順を1秒あたり数回~十回くらいの間隔で繰り返してエネルギーを得る。