原子炉の種類
原子核反応の種類から核分裂炉と核融合炉に分かれるが、核融合炉は実用化されていないため一般に原子炉というと核分裂炉の事を指す。本稿では核分裂炉について説明する。
おおまかな構造
核燃料から順に→被覆菅→冷却材→反射材→圧力容器→各種防護設備となっている。
焼き固めた核燃料を筒に入れてその筒を一まとめにし、それが幾つも圧力容器内に入れてある。
圧力容器には核分裂を制御する制御棒が挿し込んであり、これを抜き差しして余分な中性子を吸収し核分裂反応がゆっくりと行われる様にしている。その周辺設備として制御に必要な測定機器や核反応により生じた熱や放射線(特に他の方法では得られない中性子線)を取り出す設備がある。用途柄、熱をエネルギーとして取り出す必要があることや核反応による熱を冷まさなければならない為、圧力容器内は冷却材で満たされている。また容器内壁の近くには中性子線を反射させる反射材が取り付けられている。
その圧力容器やその周辺機器の外には建屋や防護壁などがあり、いくつもの防護がなされている。
炉によっては圧力容器がモジュール化されて一つの管となっているものがあり、それをいくつも束ねたものもある。この方式は製造・保守費用が高額になるがその反面、完全停止しなくても燃料交換などが出来る。
炉の運転について
基本として起動・停止ともに1日がかりでゆっくりと行い、動作中は一定出力となるように制御装置によって制御棒を抜き差しして制御する。急な出力変更を行うと核分裂の邪魔となる核種が生じたり被覆管が熱割れして穴が開くなどしてしまい事故の原因となってしまう。そのため急な動作は緊急停止のみで、この時はバネや重力で全制御棒を一斉に差し込み核分裂を止める。
用途
- 発電(原子力発電所)
- 大学や研究所の研究用途
- 原子炉そのものの運転実験や、中性子を取り出して照射試験に用いる。出力は小さく、核分裂反応で生成される熱エネルギーは利用されない。
- プルトニウム生成
- 軍事基地などの電力供給
- 大型の艦船の動力(空母、潜水艦など軍用が多い。主な民間船は下表のとおり)
原子炉を積んだ民間船舶
現在も運航しているものは通常動力に積み替えられている。
船名 | 建造国 | 用途 | 運行期間 | 現在 |
---|---|---|---|---|
むつ(現:みらい) | 日本 | 実験船 | 1969~1993年 | 海洋研究船 |
サバンナ | アメリカ | 貨客船 | 1965~1970年 | 博物館に展示 |
オットー・ハーン | 西ドイツ(当時) | 鉱石運搬船 | 1968~1979年 | コンテナ船 |
2代目アルクティカ(LK-60Ya級) | ロシア | 原子力砕氷船 | 2020年10月21日 | 就役中 |
アカデミック・ロモノソフ | ロシア | 水上原子力発電所 | 2020年5月22日 | 商用運転中 |
原子炉撤去後のむつ(現:みらい)はディーゼル・エレクトリック船に、オットー・ハーン号はディーゼル船になっている。
余談
人間が乗る乗り物の動力源としての利用は船舶と潜水艦での利用に限られているが、かつてはアメリカやソ連など一部にで鉄道や航空機への搭載が計画された。
しかしそのいずれも計画のみで中止や初期試験のみで中止など実用に至っていない。理由は、補給要らずとなるメリットより、前記のように厳重な隔離が必要で重量が過大となるうえ事故時などの放射能汚染対策を要するなど構造面や安全面のデメリットが大きいため。
そのため現在では重量面があまり問題にならず安全管理を厳重にできる、大型の船舶でのみでの利用となっている。
関連タグ
ガボン共和国:オクロにあるウラン鉱床で過去に天然の原子炉として反応が起きたことが判明している。