核融合炉
かくゆうごうろ
核融合反応を持続して起こし、莫大なエネルギーを得るための装置。
核融合炉は核分裂炉(一般に言う原子炉)に比べ、反応を起こす事自体が困難であるため、実用化されていない。逆に言えばこの困難さが事故の際に有無を言わさず核反応が停止するという安全性に寄与する。
SFをはじめ、フィクションの世界ではしばしば実用化されたものが登場する。その場合は車両やロボットに搭載可能なほど小型化されたものである場合もある。
熱核融合
軽い原子核を斥力が働く距離よりももっと近づけると融合し重い元素になる。その際に余分なエネルギーが放出される。そのエネルギーを取り出す炉である。しかし、発電可能なものとするには原子を1000km/sを超える速度で衝突させなければならないため、電荷のごく小さい水素やリチウムでなければ実用化は無理といわれている。上記の速度で原子がぶつかり合う条件を、臨界プラズマ条件という。これを重水素と三重水素で行うためには、炉内で下の表のような条件が満たされなければならない。
温度 | 1億ケルビン以上 |
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密度 | 100兆個/立方センチメートル |
閉じ込め持続時間 | 1秒以上 |
この条件自体は2007年に達成されているが、炉として実用可能なものにするには1億度以上の高温プラズマを十分長い時間閉じ込めておく必要があり、これを自己点火条件という。自己点火条件を満たすための技術は未だに確立していない。
ミューオン触媒核融合
負の電荷を持ったミュー粒子を媒介した水素およびその同位体の核融合反応で、熱核融合のように超高温プラズマの生成とその保持のための設備が不要であるが、陽子加速器施設が必要となり、炉として実用にする為にはこの1つのミュー粒子あたりの媒介反応が最低500回起こらなければならないのだが、現在はまだ150回が上限であり、これを克服する手段は全く目処がついていない。
- 中性子線による炉壁の脆化。(簡単に言えば壁が中性子で撃ち抜かれてミクロのサイズから蜂の巣にされてボロボロになっていく)
- 脆化して交換した後の炉壁が低レベル放射性廃棄物である。(中性子による放射化のため)
- 炉壁内部が原子のはじき出しや化学反応で消耗していく。
- 発電に有利な高密度のプラズマ保持が難しい。
- 中性子線の外部への漏洩
レーザー核融合の場合
- 反応時の断続的な衝撃に耐えなければならない。しかもその衝撃は通常爆薬の約100kg分に相当する。
- 燃料ペレット(固体の重水素と三重水素)は1個¢50以下で500℃以上になる炉の中で反応まで1℃の温度上昇も許されない。
- 変換効率10~30%以上で少なくとも1億発レーザー発振できる光源が必要。(現在最有力はイオン加速器によるレーザー発振)
- 放射線の防護とプラズマの閉じ込めのため、巨大な設備と莫大な投資が必要となる。
- 核融合反応で発生する中性子は、核融合炉壁及び建造物を放射化(放射性物質化)する。現在の原子炉と同じ様に、放射線の遮蔽や放射性廃棄物処理が必要である。ただし、発生する放射性廃棄物の量は核分裂炉よりは少なく、特に管理の難しい高レベル放射性廃棄物が発生しないことは大きなメリットである。
核融合炉と核分裂炉を組み合わせ、それぞれの長所を生かした動力炉。
磁気閉じ込め方式核融合炉は、炉心となる超高温プラズマの周囲にブランケットと呼ばれる部分を有し、そこで燃料となる三重水素の増殖と、発電に必要とされる超高温の発生を行わせている。
このブランケット第一層に三重水素、ブランケット第二層にウラン238および高速中性子の増強材料としてプルトニウム239のような核分裂炉用の燃料を混合、炉心より放出される高速中性子でもってエネルギー増倍率(出力エネルギー/入力エネルギー)を上げ、中性子の吸収により新たな燃料となるウラン238およびプルトニウム239を再生産する。