概要
中性子の粒子線のことである。電荷を持っていないが、スピン角運動量はあるので、結晶解析とくに磁気構造の解析に有効である。また、周りの物質の熱運動と同程度のエネルギー状態の中性子線(熱中性子)はウラン235など核燃料に使われる物質との反応断面積(反応の起こりやすさのこと)が大きく、核分裂反応を効率よく行うことができる。ただ電荷を持っていないために遮蔽が難しく、止めるためには原子核に衝突させなければならないので中性子の運動エネルギーを効率的に吸収できる軽い原子核に衝突させる必要があるため、中性子と質量が近い水素(重水素は不可)を多量に含む物質である水やコンクリートでなどで遮蔽しなければならない。
硼素やカドミウムなど中性子の衝突により反応して吸収してしまうものもあるが、これらは反応を起こす中性子線のエネルギー幅は限られており、また壁として適した材料ではないのでこれらで遮蔽することは不可である。
用途
- 結晶解析
- 核種変換
- 癌治療(中性子捕捉療法)
中性子捕捉療法について
癌患者に中性子が衝突しやすい硼素化合物を患者に投与すると癌細胞は硼素を取り込む性質があるため、硼素を取り込み中性子と反応しやすい状態になる。そこで熱中性子を照射すると癌細胞のみに選択的に中性子が衝突するため、硼素が中性子の衝突で核種変換しそれに伴い癌細胞が破壊される。この様にして癌を治療する臨床段階の先進医療がある。ただ治療に原子炉が必要なため、一般病院にも設置できる様、重工業関連の大企業や大学などが加速器による核破砕反応を利用した中性子発生装置を開発中である。
中性子線の発生方法
現在の技術では核分裂か核破砕反応のどちらかとなる。核融合でも中性子線は生ずるが、まだ現実的ではない。
主な手段として
- 原子炉
- 自発核分裂(一般的にカリホルニウム252が使用される)
- 加速器による核破砕反応
が用いられる。