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原子力潜水艦

げんしりょくせんすいかん

原子炉を動力源とする潜水艦のこと。原潜と略称される。
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概要

原子力潜水艦は潜水艦の動力源に原子炉を用いた物を指す。対となるのがディーゼル機関による通常動力潜水艦であり、両者とも外見的には同様だが、中身が大きく異なっている。当然原子力を扱う故に原子力技術を持つ国のみしか保有しておらず、2021年5月現在では以下の6カ国が保有している。


また、インド以外の5カ国は戦略ミサイル原子力潜水艦も保有している。その動力源が原子炉である為、酸素を使わずに莫大なエネルギーを長期に渡って得ることが可能であり、その分通常動力型よりも速いスピードを長時間発揮することが可能となっている。燃料補給は数年から数十年に一度で済む上、ディーゼルエンジンのような複雑な機構を持たないことから点検も通常動力型より少なく済む。また潜る原子力発電所でもあることから潜ったまま電気を潤沢に使用する事が可能なため、海水の電気分解から酸素、濾過機の運転で真水を得ることが可能であり、通常動力潜水艦では成し得ない長期間の連続かつ高速の潜水巡航が可能になっている(しかし艦が平気でも中の人間・食料などはそうはいかないので最長でも約2ヶ月が目安になっているという)。

原子力潜水艦には大きく分けて以下の2タイプが存在する。
  • 水蒸気により蒸気タービンを作動させ、それによりスクリューを回転させるタイプ
  • 水蒸気により駆動したタービンで発電し、その電力を電動機に供給してスクリューを回転させるタイプ

どちらも一長一短があるが、エネルギーロスの少ない前者の方が多く使われている。なお現在のアメリカの原潜はすべて前者、フランスの原子力潜水艦は全て後者の方式である。近年は技術の向上でこの2タイプの差も埋まりつつあり、今後の主流は変わっていく可能性もある。

主な弱点としては騒音が通常動力潜水艦よりも大きく、潜水艦の命とも言える隠密性が大きく削がれてしまうこと、メルトダウンや放射能漏れの危険が存在する事などが挙げられる。ただし騒音についてはアンブッシュ(待ち伏せ)で完全停止している場合という但し書きがつく。これは機関停止すればほぼ無音になれる通常動力潜水艦と違い、原子力潜水艦は艦は停止していても原子炉の冷却水の循環を完全に止めることはできないからである。つまり艦そのものを動かしたり魚雷発射管を開くような行動を取ればどちらでも同じように騒音は発生するため、一旦ドンパチを始めてしまうと通常動力潜水艦の強みは殆ど消え、潜ったまま好きなだけ最高速で走り回れる原潜が有利な場面が多くなる。前述の騒音問題も技術の向上で原子力潜水艦の静粛性は年々高くなっており、通常動力潜との差は徐々に埋まっているとも言われている。

逆に停止時の音以外の秘匿性要素については船体が大きくなりがちである点を除けば、母港から作戦海域に至るまで深々度を最高速(25ノットから40ノットにも及ぶ)で移動できる原子力潜水艦の圧勝で、速度が遅い上に頻繁にシュノーケル深度まで浮上する必要がある通常動力潜水艦とは次元の違う隠密性がある。放射性物質に起因する後者の問題は割と深刻で、長年の運用から当初多発した原子力事故の発生自体は大幅に減っているものの、建造にも廃棄にも莫大な予算を必要とする特性は変わっておらず、持たない国が保有を考える場合の最大のネックとなっている。


月単位で潜りっぱなしで身を潜めていられるため、戦略原子力潜水艦(対象国を核弾頭などの弾道ミサイルで狙う原子力潜水艦)と非常に相性が良く、原子力潜水艦保有国はいずれも核保有国でもある。また外洋ではいつまでも潜ったまま最高速で行動できるという魅力は大きく、停止しての待ち伏せ時における騒音では通常動力潜に比して不利という要素があっても、そもそも通常動力潜水艦とは次元の違う待ち伏せ能力を持つため、原子力潜水艦保有国の多くは前述の戦略原子力潜水艦とは別に敵の戦略原子力潜水艦を狩る存在である攻撃原子力潜水艦も保有する場合が多い。敵の攻撃原子力潜水艦から味方の戦略原子力潜水艦を護衛するのも攻撃原子力潜水艦の重要な役割である。また現在の先進国の対潜能力を持つ水上艦艇に対して直接勝負をしかけるのは分が悪いとされているものの、ずっと潜ったまま追跡できるというのは敵艦隊に対して物心両面で大きな負担を強いるため、アメリカの攻撃原子力潜水艦は中国・ロシアなどの艦隊行動に対して常に追跡して目を光らせていると言われている(もちろん、その逆もまた然りであり、中国・ロシアの潜水艦も西側諸国の艦隊には張り付いていると言われている)。

歴史

1940年代には既にナチス・ドイツや大日本帝国海軍などでも次世代エネルギーとして原子力が注目され、それを搭載した潜水艦についての構想が考えられていたという。
その後、アメリカ海軍内で研究が推し進められ、1954年に世界初の原子力潜水艦「ノーチラス」が完成した。このノーチラス号は世界で初めて北極の下を潜航して横断したことで有名である。その後戦略ミサイル原子力潜水艦も開発され、冷戦時代から現代に至るまで世界中の各海域に潜航して報復用ミサイルが世界中どこへでも発射出来る体制になっているという。

有名な原子力潜水艦

アメリカ合衆国

攻撃型原子力潜水艦。動力源として3万5000馬力の『S6G型原子炉』を1基搭載。最大潜航深度は457メートル。原子力潜水艦の中で運用・配備数・建造艦数ともに最多・最長。 改同型艦を含めると62隻である。現在では順次退役しているが、実質的な後継艦であるバージニア級原子力潜水艦の配備が進む2015年までは主力艦として保持される予定。

  • オハイオ級原子力潜水艦
戦略ミサイル原潜。その巨体は現存する潜水艦のシリーズでは最大クラスであり、搭載可能ミサイル数も世界最多。動力源として6万馬力の『S8G型原子炉』を1基搭載。最大潜航深度は300メートル。

ロサンゼルス級の後継艦として開発された世界最強の攻撃型原潜。動力源として5万2000馬力の『S6W型原子炉』を1基搭載。最大潜航深度は610メートル。実際、世界最強クラスのスペックを得たがアメリカ海軍が泣きつくほどのコストと冷戦の終結によって活躍が薄れてしまったため、最初の1隻とつなぎの2隻、計3隻のみ建造、運用された。

  • バージニア級原子力潜水艦
シーウルフ級の後継艦として開発された攻撃型原潜だが、実質的にはロサンゼルス級の後継艦である(詳細はバージニア級原子力潜水艦の項目にて)。

ロシア連邦ソビエト連邦

  • デルタ級原子力潜水艦

ソ連の戦略ミサイル原潜。魚雷発射管4門およびミサイル発射管16門を備え、動力源として5万9900馬力の『VM-4SG型原子炉(2基一組構成)』を搭載。最大潜航深度は450メートル。なお、デルタ級原子力潜水艦「スヴャトイ・ゲオルギー・ポベドノーセツ」は2021年末までに解体予定。

出航~ラミウス達の旅立ち~


デルタ級の後継艦として開発された世界最大の戦略ミサイル原潜。動力源として4万9600馬力の『OK-650VV型原子炉』を2基搭載、最大出力は9万9200馬力に達する。最大潜航深度は400メートル。ミサイル発射管を20門も備える桁外れの潜水艦だが、維持費の方も桁違いであり、本級で唯一就役中の「ドミトリー・ドンスコイ」(ネームシップ)も2020年度をもって運用終了予定である。

  • ユーリイ・ドルゴルーキイ級原子力潜水艦
ドミトリー・ドンスコイ級の後継艦として開発された戦略ミサイル原潜だが、実質的にはデルタ級の後継艦である。魚雷発射管6門およびミサイル発射管16門を備え、動力源として4万9600馬力の『OK-650V型原子炉』を1基搭載。最大潜航深度は450メートル。

  • ヤーセン級原子力潜水艦
多目的原子力潜水艦。ロシア連邦が保有している。魚雷発射管10門およびミサイル発射管8門を備え、動力源として4万3000馬力の『OK-650KPM型原子炉』を1基搭載。通常潜航深度は520メートル、最大潜航深度は600メートル。

イギリス

  • チャーチル級原子力潜水艦コンカラー
HMS S48 コンカラー


フォークランド紛争において戦闘艦と交戦して魚雷で撃沈するという戦果を上げた。

日本の原子力潜水艦保有

現在日本は原子力潜水艦を保有しておらず、また保有する計画も無い。維持コストがかかりすぎることも一因であるが、原子力潜水艦が海上自衛隊のドクトリンに適合しない(要は現在の日本では原子力潜水艦の使い道が無い)からである。本来原子力潜水艦が得意とするのは(長大な航続距離・深々度潜航・潜航時間を活かした)敵艦攻撃や巡航ミサイル発射といった外洋における攻撃的な任務であり、沿岸哨戒には通常動力型の方が向いていると言われてきたが、海上自衛隊も本心では原子力潜水艦の取得に割と積極的であり、過去に数度保有を検討している。実は能力的に劣る・防衛ドクトリンを合わない事を理由に必要無いとした事は無く、あくまで莫大な予算(原子力潜水艦1隻で通常動力潜水艦5隻から10隻分になるとされる)と日本における核アレルギーがネックとなっており、戦闘能力的には凄く欲しいけど色々な要因で時期尚早としている。特に後者の要因が大きく、海上自衛隊の原子力潜水艦保有のキーは原子力動力船舶の普遍化とされている。

実際、過去のRIMPAC演習において派遣された海上自衛隊潜水艦の足が遅すぎて艦隊行動についていけないなどの問題も発生しており、これを解消するためにスウェーデンからAIP機関を購入してみたり、バッテリーを丸々リチウムイオン電池にするなど涙ぐましい努力を重ねている。そしてそれらは成功とされてはいるものの、現在でも原子力潜水艦との戦闘力の差は如何ともし難いのも事実である。当初は低レベルだった中国の原子力潜水艦も発展していく一方であり、空母機動艦隊まで保有する中国人民解放軍海軍から東シナ海・南シナ海・インド洋にかけてシーレーンを防衛するため、海上自衛隊潜水艦も日本沿岸に潜んでいればよいという時代ではなくなりつつあるため、今後も海上自衛隊の原子力潜水艦取得は検討され、そしてこの先しばらくは予算と核動力に対する拒否感を理由に却下されるであろう。


関連タグ

潜水艦 海軍 冷戦 沈黙の艦隊 レッド・オクトーバーを追え!
MUTO…映画『GODZILLA-ゴジラ-』に登場した怪獣。劇中ロシアのアクラ級原子力潜水艦を襲撃し、放射性物質を捕食していた。

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