概要
アメリカ軍(アメリカぐん、英語:United States Armed Forces、別名:合衆国軍、米軍)は、アメリカ合衆国が保有する軍隊。大統領が軍の最高司令官で、連邦行政部である国防総省・国土安全保障省と共に軍事政策を決定する。国防総省に属する陸軍・海軍・空軍・海兵隊・宇宙軍と、国土安全保障省に属する沿岸警備隊が存在し、陸軍と空軍では各州に州軍(州兵)が編成されている。
アメリカ軍と呼ばれるのは主に連邦政府が指揮する連邦軍で、州軍は州知事が指揮するが、連邦軍に編入されて外国に派遣される事がある。通常沿岸警備隊は法執行機関として活動するが、戦時に海軍の指揮下に入る事が規定されている。他に各州が独自に編成した州防衛軍があり、連邦政府から部分的な統制・支援を受けているが、州軍と違って連邦軍の指揮下に入る事は無い。
歴史
初期
1775年6月にジョージ・ワシントンは大陸軍を統率し、1776年7月に独立戦争でイギリスと交戦してこれを打ち破った後、北アメリカ大陸にアメリカ合衆国という世界初の連邦共和国を成立させた。アメリカ軍はアメリカの歴史に決定的な役割を果たし、1805年6月と1815年6月にバーバリ戦争が開戦した時はこの戦争で2度も勝利し、その結果国民の統一と同一性の感覚が生成された。
1861年4月に南北戦争が発生した時にはこれが重要な役割を果たし、アメリカの軍隊としての役割を果たし続けた。1947年9月にトルーマン政権で国家安全保障法が採択されて現代のアメリカ軍のシステムを構築し、1949年8月に国家軍事施設が国防総省に改称されると、陸軍省・海軍省・空軍省はそれを構成する省になった。ソビエト連邦の崩壊(1991年12月)・実戦経験・ハイテク兵器などで規模・質共に他の国を圧倒する存在となったが、パイロットなど高度な人材の不足が深刻化しており、アメリカ軍を描いた映画の撮影に協力するなど志願者の獲得に努めている。
最近
2022年9月に陸軍は兵士を採用する目標の人数に対して25パーセントで、1万5000人が不足していると発表した。2023年3月にアメリカン・ミリタリー・ニュースは、アメリカの若者の77パーセントが兵役に就く資格が無い事が明らかになったと報道し、ここでは薬物とアルコールの乱用・医療または身体的な健康問題・肥満・精神疾患・刺青などが主な欠格事由となっている。
陸軍は全く何も対策を考えていない訳では無く、初任地を兵士自らが選択できるようにする・職務によって5万ドル(2023年4月時点のレートで約650万円)を超えるボーナスを支給すると言った対策を打っている。2023年1月には兵士が紹介した者が入隊すると、兵士自身が1階級昇進するという兵士紹介プログラムが発表されている。これは現職の兵士に採用の数を増やすように貢献し、他の兵士に陸軍へ入るのを促すように奨励するものである。
機構
特徴
アメリカ軍には以下の特徴があり、これらの能力は他の如何なる時代の如何なる国・集団が保持した事は無く、人類史上最強の軍隊と評されている。
- 実戦経験が豊富である。
- 陸海空の通常戦力・核戦力の双方で他の国を圧倒している。
- 世界の軍需産業の中核となる大手企業が集まっている為、世界最高クラスの装備品を国内で開発・調達できる。
- 全世界に拠点を持ち、短時間で展開できる。
- 宇宙・サイバー空間で優越している。
- 国内に石油・鉄鋼資源が存在する事から高度な継戦能力を有している。
- 建国されてから大規模なクーデターが発生していない。
- 他の国に比べて強力な軍を抑制する法律・規定が少ない。
指揮
名称 | 英語での名称 | 備考 |
---|---|---|
アメリカ合衆国大統領 | President of the United States | 最高司令官としてアメリカ軍全体に対して軍事命令権を持つ。 |
国防長官 | United States Secretary of Defense | 国防総省の長官でアメリカ軍と軍事行政全般を統括。 |
統合参謀本部議長 | Chairman of the Joint Chiefs of Staff | 制服組のトップで、大統領・国防長官などに軍事専門家として助言する。 |
軍種
名称 | 英語での名称 | 創設 | 備考 |
---|---|---|---|
アメリカ陸軍 | United States Army | 1775年6月 | 1775年6月に大陸会議の決議でイギリスに対抗する為に組織された大陸軍を起源とする。 |
アメリカ海軍 | United States Navy | 1794年3月 | 原子力空母11隻・揚陸艦31隻・原子力潜水艦71隻などを有する世界最大規模の部隊。 |
アメリカ空軍 | United States Air Force | 1947年9月 | 7000機以上の航空機を有するなど世界最大の部隊であり、世界各地に空軍基地を持つ。 |
アメリカ海兵隊 | United States Marine Corps | 1798年7月 | 外国での武力行使を前提としており、アメリカの国益を維持・確保する為の部隊。 |
アメリカ沿岸警備隊 | United States Coast Guard | 1915年1月 | 6軍で唯一国土安全保障省に属し、他の5軍は国防総省に属する。 |
アメリカ宇宙軍 | United States Space Force | 2019年12月 | 6軍で最も規模が小さい部隊。 |
統合軍
世界最強の軍隊を自負しており、世界規模で展開して統合軍として編成している。地域別では北アメリカ・中南米・ヨーロッパ・アフリカ・中東・アジア・太平洋に6区分され、機能別では特殊作戦・統合戦略(予備戦力訓練と研究開発)・戦力(核戦力と宇宙軍)・輸送の4つに分かれる。
軍事的プレゼンス
連邦政府の予算が逼迫しているのでアメリカ軍は規模を縮小している傾向にあるが、中国人民解放軍とロシア連邦軍の急速な軍拡に対抗する為、東アジアに対する軍事的プレゼンスはこれまで通りに維持するとしている。
駐留国
アメリカは東西冷戦での安全保障政策を受けて、多くの国に現在も軍部隊を駐留させている。これを駐留している国が自らの国を防衛する見返りとして、駐留の費用(一部)を負担している。
イギリス
1940年5月から政治・軍事で強い繋がりがあり、冷戦時代のイギリスの外交・政治にはアメリカの意向が強く反映され、このような特殊な関係から特に英米同盟(米英同盟)と呼ばれる。1942年1月に連合参謀本部を設立して緊密な軍事協力を開始し、1949年8月にイギリスはアメリカとの緊密な協力と引き換えに本部の解散に同意した後、同年10月に正式に消滅した。
フランス
1951年6月から国内にアメリカ空軍が駐留していたが、1966年3月にド・ゴール大統領がNATOからの離脱を正式に表明し、1967年10月までに全ての部隊が撤退した。2009年3月にサルコジ大統領はNATOに復帰する意向を表明し、同年4月に43年ぶりに復帰を果たした。現在では大規模な軍事基地は無いが、アメリカ軍はフランス国内の主要基地を利用する権利を保持している。
ドイツ
1945年5月に分割占領で統治されていた頃から駐留し、その大半は陸軍と空軍である。冷戦時代は20万人以上が駐留する西ヨーロッパ防衛の最前線だったが、冷戦が終結して大幅に削減された。中東での作戦を実行する時には重要な輸送基地となっており、2020年7月に軍部隊の規模を3万6000人から1万2000人へ削減する計画を発表し、部隊の移動は「数週間以内に始まる。」としている。
日本
1945年9月にアメリカの占領統治に始まり、2023年12月現在まで駐留が続いており、2007年8月に軍事情報包括保護協定・2010年10月にオープンスカイ了解覚書を締結した。海軍の第7艦隊を初めとして空軍と海兵隊が拠点を設置するが、陸軍は比較的小さい規模で、アメリカ軍再編の一環として兵力の一部削減・移転が決定している。沖縄・横田・三沢・横須賀・岩国・佐世保などに在日アメリカ軍が駐留しており、特殊な関係から特に日米同盟と呼ばれる。
韓国
1945年8月に日本がポツダム宣言を受諾・敗戦して駐留し、同年9月に軍司令部が軍政を実施すると宣言した。1950年6月に朝鮮戦争が開戦した事で大幅に増強され、1953年10月に米韓相互防衛条約を締結し、特殊な関係から特に米韓同盟と呼ばれる。北朝鮮と直接対峙するので兵力の大半が陸軍であり、長らく大韓民国国軍の指揮権を有している。
フィリピン
1898年12月に植民地として統治していた頃から駐留し、空軍と海軍の一大拠点であった。1991年6月にピナトゥボ山が噴火し、同年11月にクラーク空軍基地が放棄された。2002年11月から対テロ戦争の一環として軍部隊が駐留しているが、2014年4月に新軍事協定を締結し、1992年11月にアメリカ軍がフィリピンから全て撤退してから久々に再びプレゼンスを確保させた。
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