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概要

核兵器(かくへいき、英語:Nuclear Weapon)とは、核分裂の連鎖反応・核融合反応で放出される膨大なエネルギーを利用し、爆風・熱放射・放射線効果の作用を破壊に用いる兵器の総称。原子爆弾・水素爆弾・中性子爆弾などの核爆弾とそれを運搬する運搬兵器で構成される。技術の根幹が原子力発電と同様であり、原子力発電による生成物が核兵器の燃料となり得る。

分類

運搬手段・形態別

航空機からの投下を前提に製造されたもの。

ミサイルの先端に核弾頭を仕込んだもの。

砲弾の炸薬として核弾頭を仕込んだもの。

魚雷の炸薬として核弾頭を仕込んだもの。

爆雷の炸薬として核弾頭を仕込んだもの。

地雷の炸薬として核弾頭を仕込んだもの。

  • 核爆破資材

工兵が使用する爆薬の炸薬が核弾頭に置き換わったもので、人の手で持ち運ぶ核爆弾。

用途別

  • 戦略核兵器

都市・軍事基地などの戦略的目標に対して使用される核兵器。多くの人が核兵器と聞いて思い浮かべるのはこれだろう。概して威力が大きく、ミサイル・爆撃機への搭載など遠距離への攻撃が基本である。広島と長崎への原爆投下は戦略核攻撃と見なす事ができる。

  • 戦術核兵器

戦場において「相当強い通常兵器」といった感じで使用されるもので、射程は短く、比較的威力は弱め。冷戦期において、北大西洋条約機構ワルシャワ条約機構の対立が決定的になったとき、兵力で劣る北大西洋条約機構側が人海戦術で押し込んでくるであろうワルシャワ条約機構軍を足止めするために考案したのが始まりである。

使い方は敵軍が攻めて来た時、まず核地雷を仕掛けて爆弾の如く炸裂させて敵軍を足止める。それでも止まらないようなら核砲弾を大量に放って足止め、それでも止まらないようなら最後はデイビー・クロケットのような超短距離核弾頭を大量に放って足止めするというような感じである。更に核爆破資材を敵中へ隠密裏に仕掛けて炸裂させ、敵軍を混乱に陥れるような運用も想定された。海においても核爆発の威力の大きさから、核魚雷・核爆雷・艦砲用の核砲弾が製造された。

ちなみに勘違いされやすいが、戦略核と戦術核の違いは威力では無い。アメリカとソ連の間の核軍縮条約においては、「射程500キロメートル以上を戦略核で、それ未満のものを戦術核」としていた。つまり威力では無く使用する目的と運用の方法によって分類しており、威力が大きな核弾頭をそのまま地中へ埋めて核地雷にしてしまうような使い方も見受けられる為、『威力が大きいものが戦略核兵器』という括りにはならないのである。

核兵器ではない放射能兵器

  • 汚い爆弾(ダーティーボム)

通常爆弾の爆発で放射性物質を拡散させ、放射線によって被害を与える。放射性物質どころか放射能汚染物質さえ手に入れば簡単に製作できるので、テロリストによる利用が懸念されている。

核保有国

現在の核保有国は以下の通りである。

NPT核保有国

以下の5カ国は国際連合安全保障理事会常任理事国である。

NPT枠外の核保有国

その他

1度核兵器を保有して手放した国は南アフリカ共和国だけで、1991年7月にNPTに加盟した。NATOの加盟国であるベルギー・オランダ・ドイツ・イタリア・トルコは、アメリカと核兵器を共有するニュークリア・シェアリングを実施している。ウクライナはソ連が崩壊した後は世界第3位の核保有国であったが、1994年12月にブダペスト覚書を締結して国内にあった核兵器を放棄した。

アメリカ映画に登場する宇宙人には全く通用しない描写がお約束である(例:『インデペンデンス・デイ』、『マーズ・アタック』など)。また不謹慎という意識はなくアーノルド・シュワルツェネッガーが主演を務めた映画の『トゥルーライズ』に至っては、キスシーンの背景が核爆発である。

日本における意識

日本でも被爆直後から核兵器の恐ろしさが知られていた訳では無く、これは占領下では広島・長崎の原爆被害の実態を公にする事はGHQに禁止されていたからである。原爆被害の惨状の写真が初めて公刊されたのは『アサヒグラフ』1952年8月6日号(朝日新聞社刊)であり、これによって初めて原爆被害の実相が知られるようになり、多くの日本人に核の恐怖を植え付けた。

1954年3月にビキニ環礁で行われた水爆実験の「ブラボー実験」で、第五福竜丸とほかの日本漁船が水爆の死の灰を浴び、乗員全員が放射線障害を発症し、無線長だった久保山愛吉が死亡した。アメリカは日本に核実験の被害を報道しないよう圧力をかけ、日本政府もこれに従って資料を公開せず隠蔽しようとしたが、日本の新聞は従わなかったので核実験の被害が世界で初めて広く知られるようになった。日本にとって広島・長崎に次ぐ3番目の核被害となったこの事件は日本を恐怖のどん底に叩き込み、映画の「ゴジラ」が制作される契機にもなっている。

このブラボー実験という水爆実験で放射性降下物を浴びた漁船は数百隻に上ると見られ、これに始まる一連のビキニ環礁での核実験の被曝者は2万人を越えると考えられているが、アメリカ政府はまともな調査を実施せずに被害を隠蔽した為、その被害の全容は未だに明らかでは無い。

禁止への動き

1970年3月に発効した核拡散防止条約は、核軍縮を目指すと同時にこの当時から核保有国であった5か国(アメリカ・旧ソ連・イギリス・フランス・中国)以外の国が核兵器を保有する事を禁止するものであった。しかしこの条約は1989年12月に冷戦が終結するまで核軍拡を止める力とはならず、それどころか条約に加盟していないインド・パキスタン・脱退した北朝鮮の核開発を許した。

2017年7月に核兵器の全廃と根絶を目的として核兵器禁止条約が採択され、81の国と地域で署名されている。しかし批准した国が条約の発効に必要な50か国に達したのは2020年10月になってからで、翌年1月にようやく発効する事となった。加盟国は毎年少しずつ増加しているものの、批准したのは非同盟のいわゆる第3世界と呼ばれる国々が中心で、当然ながら核保有国は参加していない上に、その恩恵を受けている同盟国も参加していない。

日本の場合

日本政府は表向きは唯一の被爆国として核兵器に反対する立場を取っている。しかしアメリカとの同盟関係を外交の基軸とし、核保有国である中国・ロシア・北朝鮮と対峙するべくアメリカの核抑止力(核の傘)に依存しているという矛盾を抱えており、核兵器禁止条約の批准を拒否している。この辺の事情については非核三原則の記事で詳しく解説している。

アメリカでの意識

日本は世界唯一の被爆国で、アメリカは世界で唯一核兵器を実戦で使用した国である。そのアメリカの中では「過去に戦争で核を使った事」に対する考えはどうかと言うと、少なくとも一般市民レベルでは仕方が無かった事であるという見方が少なくない。実際に2015年1月にアメリカで世論調査を実施した時、アメリカ人の56パーセントが「正当だった。」とする一方で、日本人は79パーセントが「正当で無かった。」としており、原爆を巡る両国の考え方の違いが浮き彫りになった。

これは人種差別でも何でも無く、当時は日本よりも先にドイツなどが降伏している訳だが、戦局で言えば日本よりもずっと手前の段階で降伏している。それに対して日本だけが本土の首都で非戦闘員に対する無差別な絨毯爆撃を受けてもなお戦争を停止せず、自らの命を犠牲にする特攻を実行してまで徹底抗戦していたのである。

当時のアメリカ人にとって日本は「日本人は戦争に勝つ事は考えていない。刺し違えてもアメリカ人を皆殺しにする為だけに戦っている。」というようなある種の恐怖すら覚える対象であり、「原爆を使わなければ、どちらかが死に絶えるまで泥沼の戦争が続いていただろう。」と強く想像させるに足る状況だった。このような背景がある為、ある種の「戦争を早く終結させる事に成功した兵器」という見方があり、核兵器を使った事が悪とは必ずしも捉えていない。

非核地帯条約

中南米・アフリカ・中央アジア・オセアニア・南極は核兵器を様々な条約によって禁止した非核兵器地帯となっている。ここでは以下を具体的に記述する。

  • 東南アジア非核兵器地帯条約(バンコク条約)

1997年3月に発効した東南アジアの非核化を規定した非核地帯条約で、ASEAN諸国10か国を対象に核兵器の保有・開発を禁止している。フィリピンの批准が遅れていたが、2001年6月に批准して全ての当事国の批准が完了した。

  • 南太平洋非核兵器地帯条約(ラロトンガ条約)

1986年12月に発効した南太平洋の非核化を規定した非核地帯条約で、域内のミクロネシア連邦・マーシャル諸島・パラオはこの条約に署名していない。

  • 中央アジア非核兵器地帯条約(セメイ条約)

2009年3月に発効した中央アジアの非核化を規定した非核地帯条約で、NIS諸国に属する中央アジア5か国が加盟している。

  • アフリカ非核兵器地帯条約(ペリンダバ条約)

2009年7月に発効したアフリカの非核化を規定した非核地帯条約で、2011年7月に独立した南スーダンはこの条約に参加していない。

  • ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)

1968年4月に発効した中南米地域の非核化を規定した非核地帯条約で、人が住む地域で締結された非核地帯条約の中ではこの条約が最初である。メキシコの外交官のアルフォンソ・ガルシア・ロブレスはこの条約の成立に尽力した事が評価され、1982年10月にノーベル平和賞を受賞した。

  • モンゴル非核地帯

1992年9月にモンゴルは1国による非核地帯の地位を宣言し、同月に国内に駐留していたソビエト連邦軍が全面撤退した。1998年12月に1国による非核地帯として国際的に承認され、2000年2月に国内法である非核法を成立させた。これはモンゴル国内での核兵器の製造・保有・配備・通過を禁止するもので、これでモンゴルの国際的な非核保有国の地位は完全となる。2012年9月にアメリカ・中国・イギリス・フランス・ロシアの核保有国と、その地位を尊重する共同宣言に署名した。

  • 海底核兵器禁止条約
  • 南極条約

1961年6月に発効された南極地域の平和利用・領有権の凍結などを規定した多国間条約。

  • 宇宙条約

核兵器と創作

その「たった1発でその場にあったあらゆるものを破壊して無に帰す。」・「世界を汚染して大きな後遺症を残す。」といった恐ろしさは芸術世界にも衝撃を与え、冷戦時代から現代に至るまであらゆるジャンルで核兵器を題材とした作品が作り出されている。

荒廃した世界を作り出すにはうってつけで、ポストアポカリプス作品の世界観を形成する契機として核戦争を採用している作品が多い。当時は核と放射能が未知の物質として扱われていた事から、前述した『ゴジラ』のように生物が突然変異する原因としてよく用いられた。日本では『はだしのゲン』のように史実における原子爆弾の被害を描いたものが多く、児童書が出版されている。

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