シーウルフ級原子力潜水艦
しーうるふくらすにゅーくりあぱわーどさぶまりん
シーウルフ級原子力潜水艦(Seawolf-class Nuclear-powered Submarine)は、アメリカ海軍の原子力潜水艦の艦級。分類は攻撃型原潜(SSN)。
冷戦末期、仮想敵たるソ連海軍の潜水艦群を凌駕する非常に高性能な潜水艦として計画・建造されたが、冷戦終結とソ連崩壊による軍縮により少数の建造に留まった。
1970年代ごろから、アメリカ海軍ではソ連海軍の潜水艦戦力の質的・量的拡大が問題視されるようになっていた。例としてはアクラ型原子力潜水艦の登場とSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の性能向上が挙げられる。
前者はアメリカ海軍の主力SSNであるロサンゼルス級とほぼ同等の静粛性を実現し、それまでのソ連海軍潜水艦よりも静粛性に優れた画期的な艦であった。アメリカ海軍は低速航行中のアクラ級をSOSUS(音響監視システム)で探知できなかったり、更には東海岸沿岸を哨戒中のアクラ級をロサンゼルス級が追尾に失敗するという事態さえ起きたのである。
後者の場合は特に射程距離の向上が問題だった。それまでのソ連海軍のSLBMは、例えば「R-27」SLBMの場合は射程2200~4000kmと射程が短く、アメリカやNATOに対し有効に使用するためにはそれらが海上優勢を握る海域まで接近する必要があったが、デルタ型原子力潜水艦と共に登場した「R-29」SLBMは6000km以上という長射程を持ち、友軍勢力圏に近い比較的安全な海域からも攻撃を行うことが可能となったのである。
これらに対抗して、ソ連聖域_ソ連海軍艦艇が安全に活動できるよう堅固に防備された海域への攻勢も可能な高性能潜水艦が必要であると考えたアメリカ海軍は、ロサンゼルス級の後継として、本級を計画した。
簡単に要約すると、『潜る米国面』。冷戦時の潤沢な予算を惜しみなく投入し誕生した、あめりかかいぐんのかんがえたさいきょうのせんすいかんである。資料によるが、1隻でアーレイ・バーク級が2隻建造できるお値段を誇る。
船体にはHY-100高張力鋼を採用し、ロサンゼルス級で失われた潜航深度を取り戻した。ソ連の戦略原潜へ対抗するため、北極海での運用能力も付与されている。原子炉にはS6Wを採用したが、出力は52,000shpに達し、速力は35ノット(一説には39ノット)を発揮するといわれる。また、弾薬庫の容量についても、太い船体を採用することで解決しており、50発の容量を持つ。武装面も強化され、トマホーク、ハープーン、魚雷、機雷などを運用でき、対地攻撃能力すらも持っている。推進器にポンプジェットを採用し、吸音タイルを船体に貼ることで、静粛性は非常に高くなっており、20~25ノットでも、停泊中のロス級よりまだ静かであるとさえ言われる。ソナーについては、艦首のものにとどまらず、サイド・アレイも搭載しており、探知能力にも優れている。
このように非常に高性能な艦だが、前述のコストが響いてしまい、建造は当初29隻の予定が準同型艦も含めて3隻までにとどまった。冷戦が終わった途端に、過剰性能ということで議会に目をつけられた結果である。
艦名に規則性はなく、従って命名規則は存在しなかったと思われる。
- SSN-21「シーウルフ」:1番艦。オオカミウオ科の海水魚の一つ「アトランティック・ウルフフィッシュ」の通称に由来。
- SSN-22「コネティカット」:2番艦。コネティカット州に由来。
- SSN-23「ジミー・カーター」:3番艦。第39代アメリカ大統領のジミー・カーターに由来。なおカーターは歴代大統領で唯一潜水艦への乗務経験がある。
なおSSN-23については準同型艦で、船体を延長して、特殊部隊の搭乗区画や、支援設備を搭載できるよう設計されている。
「シーウルフ」の艦名を持つアメリカ海軍の潜水艦は本艦が4代目になるが、この艦名を持つ艦は共通して功績を上げつつもどこか不幸ともいえる生涯を送っている。
初代は第一次世界大戦前に竣工したH級潜水艦のネームシップであったが、1920年に座礁沈没するという最期を迎えた。
2代目は第二次世界大戦前に竣工したサーゴ級潜水艦であり、トン数別戦果14位、隻数別戦果7位の記録を持つ功労艦であった。しかしレイテ沖海戦直前に友軍の護衛駆逐艦による誤射によって全乗組員もろとも沈められるという無残な最期を迎えてしまった。
3代目は「ノーチラス」に続くアメリカ海軍2隻目の原子力潜水艦であった。「ノーチラス」との比較の為、ナトリウムを冷却材に使用した溶融金属冷却型を機関としていたが、小型・軽量・静粛化と引き換えに技術的に無理があったため故障が頻発しそれに伴う必要経費が多くかかったため、溶融金属冷却型は本艦のみとなった。