概要
ソビエト連邦軍海軍(ソビエトれんぽうぐんかいぐん、ロシア語:Вое́нно-морско́й флот СССР)は、ソビエト連邦が保有していた海軍。1922年12月の成立から1991年12月の崩壊まで同国の領海を防備していた。
1917年11月に10月革命が始まり、同軍の水兵たちはボリシェヴィキ支持者であったが、独裁化するボリシェヴィキ政権に対して次第に対立するようになった。1921年3月にクロンシュタット軍港の水兵たちが蜂起し、赤軍に鎮圧された(クロンシュタットの反乱)。旧ロシア帝国海軍の艦船はウクライナ人民共和国・ウクライナ国に接収されたものもあったが、最終的には赤色艦隊に再集結された。
1937年12月に赤軍の一部門から独立し、1962年10月に発生したキューバ危機を経て、1970年代頃からソ連は本格的な外洋海軍の建設へ向かう。しかし崩壊で海軍力の増強は途絶え、1992年2月以降は独立国家共同体諸国の海軍に分離しており、その中心はロシア海軍である。
構成
ソ連海軍は次の兵科よって構成された。
- 潜水艦隊(подводные лодки)
- 水上艦隊(надводные корабли)
- 海軍航空隊(морская авиация)
- 沿岸ロケット砲部隊(береговые ракетно-артиллерийские войска)
- 海軍歩兵(морская пехота)
その構成には軍艦・補助艦隊の艦艇・海軍スペツナズ部隊その他も含む。主な兵科としては潜水艦隊および海軍航空隊が挙げられた。それを除くと、ソ連海軍の構成には後方部隊や後方組織も含まれた。ソ連海軍司令部はモスクワに置かれることになっていた。
編成
- 赤旗勲章二度受章バルト艦隊(Дважды Краснознамённый Балтийский флот)
- 赤旗勲章受章北方艦隊(Краснознамённый Северный флот)
- 赤旗勲章受章太平洋艦隊(Краснознамённый Тихоокеанский флот)
- 赤旗勲章受章黒海艦隊(Краснознамённый Черноморский флот)
- 赤旗勲章受章カスピ小艦隊(Краснознамённая Каспийская флотилия)
- 赤旗勲章受章レニングラード海軍基地(Краснознамённая Ленинградская военно-морская база)
ソ連海軍司令部
ソ連海軍総司令官
職務の名称は幾度か変更された。海軍人民委員、共和国海洋・河川戦力司令官、共和国海軍司令官、ソ連海軍人民委員(大臣)、ソ連国防省次官とされたソ連海軍総司令官(司令官)。海軍の参謀本部はこれに従属した。
名前 | 役職(1935年まで階級は存在せず) | 任期 |
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ドゥイベーンコ、パーヴェル・エフィーモヴィチ | 1917-1918年 | |
イヴァノーフ、モヂェースト・ヴァシーリエヴィチ | 1918年 | |
アリトファーチェル、ヴァシーリイ・ミハーイロヴィチ | 1918-1919年 | |
ビェーリェンス、イェヴゲーニイ・アンドレーエヴィチ | 1919-1920年 | |
ニョーミッツ、アレクサーンドル・ヴァシーリエヴィチ | 1920-1921年 | |
パンツェルジャーンスキイ、エドゥアールト・サムイーロヴィチ | 1921-1924年 | |
ゾーフ、ヴャチェスラーフ・イヴァーノヴィチ | 1924-1926年 | |
ムクリェーヴィチ、ロムアーリト・アダーモヴィチ | 1926-1931年 | |
オルローフ、ヴラジーミル・ミトロファーノヴィチ | 一等指揮官 | 1931-1937年 |
ヴィークトロフ、ミハイール・ヴラジーミロヴィチ | 一等指揮官 | 1937-1938年 |
スミルノーフ、ピョートル・アレクサーンドロヴィチ | 一等陸軍コミッサール | 1938年 |
スミルノーフ=スヴェートロフスキイ、ピョートル・イヴァーノヴィチ | 二等指揮官 | 1938年(代理) |
フリノーフスキイ、ミハイール・ペトローヴィチ | 一等軍司令官 | 1938-1939年 |
クズネツォーフ、ニコラーイ・ゲラーシモヴィチ | 二等指揮官、1940年以降は海軍大将、1944年以降は海軍上級大将 | 1939-1947年 |
ユマーシェフ、イヴァーン・スチェパーノヴィチ | 海軍大将 | 1947-1951年 |
クズネツォーフ、ニコラーイ・ゲラーシモヴィチ(2回目) | 1955年以降はソ連海軍元帥 | 1951-1956年 |
ゴルシコーフ、セルゲーイ・ゲオールギエヴィチ | 海軍大将、1962年以降は海軍上級大将、1967年以降はソ連海軍元帥 | 1956-1985年 |
チェルナーヴィン、ヴラジーミル・ニコラーエヴィチ | 海軍大将 | 1985-1992年 |
海軍軍事ソヴィエト議員
職務はいくつかの時期に再度命名された。海軍軍事革命委員会議長、共和国海軍軍事コミッサール、ソ連海軍軍事ソヴィエト議員。
ヴァフラメーエフ、イヴァーン・イヴァーノヴィチ | 1917年10月-1918年12月 | |
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ラスコーリニコフ、フョードル・フョードロヴィチ | 1918年12月-1919年7月 | |
ガーイリス、カールル・アンドレーエヴィチ | 1919年12月-1921年3月 | |
スラドコーフ、イヴァーン・ダヴィドーヴィチ | 1919年9月-1920年8月 | |
ゾーフ、ヴャチェスラーフ・イヴァーノヴィチ | 1921年11月-1924年12月 | |
ドゥプリツキイ、ドミートリイ・セルゲーエヴィチ | 1924年12月-1925年11月 | |
アンスキン、アドーリフ・ヤーコヴレヴィチ | 1925年11月-1927年10月 | |
ドゥプリツキイ、ドミートリイ・セルゲーエヴィチ(2回目) | 1927年12月-1930年11月 | |
オークニェフ、グリゴーリイ・セルゲーエヴィチ | 1930年11月-1934年1月 | |
ロジオーノフ、フョードル・イェフィーモヴィチ | 1934年4月-1935年2月 | |
ペトゥホーフ、イヴァーン・パーヴロヴィチ | 軍団コミッサール | 1935年2月-1936年3月 |
イリイーン、ニコラーイ・イリイチ | 軍団コミッサール | 1936年3月-1937年5月 |
ラウーヒン、ピョートル・イヴァーノヴィチ | 軍団コミッサール | 1937年7月-1938年1月 |
シャーポシニコフ、ミハーイル・ロマーノヴィチ | 軍団コミッサール | 1938年1月-1938年6月 |
ナヂョージン、イヴァーン・パーヴロヴィチ | 旅団コミッサール | 1938年6月-1939年5月 |
ロゴーフ、イヴァーン・ヴァシーリエヴィチ | 軍団コミッサール、1939年以降は二等軍コミッサール、1942年以降は陸上勤務中将 | 1939年5月-1946年8月 |
クラコーフ、ニコラーイ・ミハーイロヴィチ | 海軍中将 | 1946年6月-1949年12月 |
バレフ、ボリース・ミハーイロヴィチ | 海軍少将 | 1949年12月-1950年3月 |
ザハローフ、セミョーン・イェゴローヴィチ | 陸上勤務中将、1951年以降は海軍大将 | 1950年3月-1955年6月 |
コマローフ、アルセーニイ・ヴァシーリエヴィチ | 海軍中将 | 1955年9月-1958年7月 |
グリシャーノフ、ヴァシーリイ・マクシーモヴィチ | 海軍中将、1964年以降は海軍大将 | 1958年7月-1980年1月 |
ソローキン、アレクセーイ・イヴァーノヴィチ | 海軍大将 | 1980年1月-1981年9月 |
メドヴェーヂェフ、パーヴェル・ニコラーエヴィチ | 海軍大将 | 1981年9月-1987年5月 |
パーニン、ヴァシーリイ・イヴァーノヴィチ | 海軍大将 | 1987年5月-1991年4月 |
ソ連海軍参謀総長
いくつかの時期において、海軍参謀総長の職務は、共和国海軍参謀長、共和国全海軍参謀長、労農赤色海軍参謀長、労農赤軍海軍教練統制長、労農赤軍海軍管理第一課長、労農赤軍海軍参謀長、海軍参謀長などと称せられた。
カプニースト伯爵、アレクセーイ・パーヴロヴィチ | 1917年11月まで | ||
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ビェーリェンス、イェヴゲーニイ・アンドレーエヴィチ | 1917年11月-1919年5月 | ||
ヴェチェースロフ、ヴラジーミル・スチェパーノヴィチ | 1919年5月-1919年9月 | ||
ミェリェーンチエフ、アレクサーンドル・ニコラーエヴィチ | 1919年9月-1920年8月 | ||
ドムブローフスキイ、アレクサーンドル・ヴラジーミロヴィチ | 1921年1月-1924年12月 | ||
スチェパーノフ、ゲオールギイ・アンドレーエヴィチ | 1924年12月-1925年1月 | ||
ブリノーフ、セルゲーイ・パーヴロヴィチ | 1924年12月-1926年8月 | ||
トシャコフ、アルカージイ・アレクサーンドロヴィチ | 1926年8月-1927年8月 | ||
ペトローフ、ミハーイル・アレクサーンドロヴィチ | 1927年8月-1930年10月 | ||
ルドリ、イヴァーン・マルトィノーヴィチ | 1930年11月-1932年3月 | ||
パンツェルジャーンスキイ、エドゥアールト・サムイーロヴィチ | 一等指揮官 | 1932年4月-1937年3月 | |
スタセーヴィチ、パーヴェル・グリゴーリエヴィチ | 一等佐官(大佐) | 1937年3月-1937年8月 | |
カラチョーフ、ヴラジーミル・ペトローヴィチ | 一等佐官(大佐) | 1937年8月-1938年2月 | |
ガールリェル、レフ・ミハーイロヴィチ | 二等艦隊指揮官 | 1938-1940年 | |
イサコーフ、イヴァーン・ミハーイロヴィチ | 海軍大将、1944年以降は海軍上級大将 | 1940-1942年 | |
アラフーゾフ、ヴラジーミル・アントーノヴィチ | 海軍少将 | 1942-1943年(代理) | |
スチェパーノフ、ゲオールギイ・アンドレーエヴィチ | 海軍中将 | 1943-1944(代理) | |
アラフーゾフ、ヴラジーミル・アントーノヴィチ(2回目) | 1944年に海軍中将、後に海軍大将 | 1944-1945年 | |
クーチェロフ、スチェパーン・グリゴーリエヴィチ | 海軍大将 | 1945-1946年 | |
イサコーフ、イヴァーン・ミハーイロヴィチ(2回目) | 1946-1947年 | ||
ゴロフコー、アルセーニイ・グリゴーリエヴィチ | 海軍大将 | 1947-1952年 | |
フォーキン、ヴィターリイ・アレクセーエヴィチ | 海軍中将、1953年以降は海軍大将 | 1952-1958年 | |
ゾズーリャ、フョードル・ヴラジーミロヴィチ | 海軍大将 | 1958-1964年 | |
セルゲーエフ、ニコラーイ・ドミートリエヴィチ | 海軍中将、1965年以降は海軍大将、1970年以降は海軍上級大将 | 1964-1977年 | |
イェゴーロフ、ゲオールギイ・ミハーイロヴィチ | 海軍上級大将 | 1977-1981年 | |
チェルナーヴィン、ヴラジーミル・ニコラーエヴィチ | 海軍大将 | 1981-1985年 | |
マカローフ、コンスンタンチーン・ヴァレンチーノヴィチ | 海軍大将、1989年以降は海軍上級大将 | 1985-1992年 |
軍艦旗
海軍の軍艦旗は長方形の2対3の割合の白地の布板に、下の縁に沿って狭い青の縞をあしらったものになっていた。旗の青い縞の上の左の部分には赤い星が描かれ、右の面には赤い鎌と槌が描かれていた。旗は1935年5月27日にソ連中央執行委員会及び人民委員会議の決議第1982/341号「ソ連海軍の旗について」によって採択された。それ以前の旗には、大日本帝国海軍の艦尾旗に似たデザインのものもある。
大祖国戦争
1941年6月22日の午前3時、ルフトヴァッフェは、イズマイール市とセヴァストポリのソ連海軍黒海艦隊の主要基地への空襲を実行した。
1941年6月22日午前3時6分、黒海艦隊司令部指揮官И・Д・エリセーエフ海軍少将は、ソ連の領空に侵入したドイツ航空機に対し砲撃を開始するよう命令を下し、それで歴史に名を残した。これが大祖国戦争においてソ連を攻撃したナチに反撃を命じた最初の命令だった。
セヴァストーポリでは、黒海艦隊を阻止する目的から、基地の航路と湾の北部に磁気機雷が撒かれた。敵の飛行隊を、高射砲部隊とドナウ小艦隊の艦砲射撃が迎撃した。空襲により、リエパーヤ、リガの海軍基地も被害を受けた。磁気機雷はクロンシュタット地域にも航空機から散布された。北方艦隊のポリャールヌィ基地も爆撃された。6月22日、クレムリンではクズネツォーフ提督がセヴァストポリへの攻撃について報告し、上からの指示を待たず、全艦隊に命じた。「即刻、掩蔽計画にのっとり、機雷の敷設を開始すること」。
開戦時から艦隊の主要な敵になったのは敵の海軍ではなく、空軍・地上軍だった。艦隊の戦闘行動の主要なものは、地上軍の防衛・攻撃を沿海から支援することだった(戦争中、85パーセントの船舶用の火砲の兵器・弾薬が沿岸の目標に対して消費され、海軍航空隊の航空機発進の40パーセントが敵地上部隊への攻撃のため行われた)。
第二の重要な任務が、敵の海軍の連絡の妨害、自軍の連絡の防衛、海における敵戦力の殲滅、敵の沿岸にある目標と領土に攻撃を行うことだった。これらの課題に取り組み、赤色海軍は88の軍事作戦を遂行し、そのうち23回は陸軍・前線作戦への参加だった。
第二次世界大戦と大祖国戦争の趨勢は地上戦線にかかっており、それゆえ海軍の課題と行動はしばしば沿海方面の地上軍の利害に従属した。戦時中のソ連海軍は40万人の人員を地上戦線へと送り届けた。
赤色海軍の管轄下にある多くの輸送・補助艦艇も軍艦へと装備換装された。
ソ連海軍の艦艇
名称はソ連海軍/NATOネーム
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ソビエツキー・ソユーズ級戦艦(未成)
1143型航空巡洋艦/キエフ級重航空巡洋艦
1143.5型航空巡洋艦/アドミラル・クズネツォフ(重航空巡洋艦)
クロンシュタット級重巡洋艦(未成)
スターリングラード級重巡洋艦(未成)
58型/キンダ型ミサイル巡洋艦
1134B型大型対潜艦/カーラ型巡洋艦
1144型重原子力ミサイル巡洋艦/キーロフ級ミサイル巡洋艦
1164型/スラヴァ級ミサイル巡洋艦
タシュケント(嚮導駆逐艦)
ヴェールヌイ(駆逐艦)
ソーコル級/リガ型フリゲート
50型警備艦/リガ級フリゲート
159型警備艦/ペチャ級フリゲート
35型警備艦/ミルカ級フリゲート
11661型警備艦/ゲパルト型フリゲート
1135型警備艦/クリヴァク型フリゲート
11540型警備艦/ネウストラシムイ級フリゲート
183R型小型ミサイル艇/コマール級コルベット
1241型大型ロケット艇/タランタル級コルベット
1234号計画型小型ミサイル艦/ナヌチュカ型コルベット
206MR型/マトカ型ミサイル艇
949型/オスカー型原子力潜水艦
941アクーラ設計戦略任務重ミサイル潜水巡洋艦/タイフーン型弾道ミサイル原子力潜水艦