概要
マクシム・ゴーリキー級はソ連海軍が建造した重巡洋艦の艦級である。文献によっては軽巡洋艦だったりただ単に巡洋艦として扱われたりと、様々である。
分類
- 重巡洋艦 - 建造当時のロンドン条約に基づく国際的な認知・分類では重巡洋艦(=主砲口径15.2-20.3cm)だった。
- 軽巡洋艦 - ロンドン条約に参加していないソ連ではロンドン条約とは無関係な基準で分類を行っており、本級を軽巡洋艦に分類していた。
- 巡洋艦 - ロンドン条約を前提とせずに設計された本級をロンドン条約由来の概念である重・軽巡洋艦という枠組みに当てはめるのはナンセンスであるという観点からは本級は単に「巡洋艦」とするべきだとも主張される。
船体規模・構造
基準排水量8170トン、満載排水量9900トンと、大日本帝国海軍の古鷹型と同規模。条約型重巡(基準排水量10000トン)と比べて一回り小さかった。
本級の船体形状は、巡洋艦系統でありがちな短船首楼型船体。領海には真冬に流氷に閉ざされるバルト海があるために砕氷船として使えるように砕氷構造の艦首を採用していた。
艦首甲板上には18cm速射砲を三連装砲塔に収めて背負い式で2基装備をしているが、前記の通り、重巡にしては小さいのは確かである。2番主砲塔の背後には司令塔を組み込んだ操舵艦橋が立つが、前級において開口部が多かったために真冬には冷気が見張り所や艦橋に吹き込んで内部が結氷する欠点を解消すべく、円筒形の塔型艦橋を施した。
主砲の18cm砲は1930年代に開発された長砲身の高初速砲で、口径こそ他国の重巡より小さいものの、砲本体の重量や砲弾の運動エネルギーの面では20cm砲に比肩し、射程や装甲貫通力では20cm砲よりも優れているという、当時最新鋭の強力な火砲だった。一方で、実質20cm砲クラスの主砲を9門も小さい船体に詰め込むために砲塔はかなり無理をしてコンパクトに設計されており、発射速度や精度には問題を抱えていた。排水量の近い古鷹や青葉の主砲が20cm砲6門に留まっていることを考えると、本級の武装が船体規模に不釣り合いなものだったことがわかる。装甲防御力は前級のキーロフ級から改善されていたが、同時代の重巡洋艦の中では貧弱な部類だった。
機関
キーロフ級と同様にヤーロウ式重油専焼缶6基とアンサルド式ギヤード・タービンを組み合わせ、機関出力127,750hp、速力36ノットを発揮した。ソ連がこれまで建造した巡洋艦で、中の上の速さである。機関とボイラーを分散配置するシフト配置を採用していたため、機関部への一発の被弾で全動力を喪失しないようになっていた(2系統の片側が停止することになる)。ボイラー室も分散配置されたため、2つの煙突の間が大きく離れた特徴的な艦形になっている。