概要
強力なエネルギーを長期間にわたり発生させ続ける原子力を推進力として利用すれば、圧倒的な出力と航続距離が実現可能となる。
そのような利点を重視して、熱核エンジンを使用したSFガジェットは多い。
ガンダムの世界ではほとんど核融合エンジンを採用しているほか、マクロスの世界においても、熱核タービン、宇宙での推進剤の燃費を改良した熱核バーストタービンエンジンなど、多くの作品に登場する。
ただ現実に於いては核エネルギーの利用はそう簡単なことではなく、現在実用されているのは一部の艦船(大半が軍艦)の機関としてのみである。
種類
- 蒸気タービン
加圧水型原子炉の熱により発生した蒸気でタービンを回し、これをスクリュー等に接続して推進力を得る。
原子炉の出力を短時間で加減することは難しいため、減速機による調整が必要となる。冷却水の配管も複雑になるため肥大化は避けがたい。
しかしながら放射性物質が完全に外部と遮断されるため安全性が高く、原理は単純なので原子力の高出力を活かしやすい。
軍事用途として原子力空母および原子力潜水艦などに採用、民間船舶の原子力砕氷船にも採用されるなど、熱核エンジンとしては現在最も普及している方式。
- 原子力ターボ・エレクトリック
上記タービンによりいったん発電し、その電力でモーター等を回す。
簡単に言えば原子力発電所をそのまま載せる。
エネルギーを電力として得るため応用が効き易く、電気的に回転数を調整できるので複雑な減速機も必要ない。発電機の配置にある程度自由が利くメリットもある。
しかしながらモーター関連の機材の都合で設備容積が大きくなる点、最終出力がモーターの性能次第となる点はデメリットになり得る。
減速機の騒音を嫌う潜水艦で一部採用例がある。
- 熱核ジェット
核反応の熱で大気を膨張させ、推進力とする。
黎明期に研究されたが、放射線防護のための重量増が航空機としては許容しがたい水準だったことと、放射能汚染を大気中に垂れ流しながら飛ぶ問題により早々に廃れた。
- 熱核ロケット
核反応の熱で推進剤を膨張させ、推進力とする。
無人のロケットを宇宙で使う分には放射線の問題はないので目下研究中。
アメリカ合衆国の『NERVA(Nuclear Engine for Rocket Vehicle Application)』、旧ソ連(現在のロシア連邦共和国)の『RD-0410』など実際に試作も行われている。
目下最大の課題は原子炉の小型軽量化である。