広義の概要
「虐殺」とは、辞書的には「酷い殺し方」や「むごい殺し方」などの比喩で、どこからが虐殺なのか、どういう意味で虐殺なのかという基準はない。
虐殺という言葉は「大量虐殺」と言うように、大量殺人のニュアンスがあるが、人数は関係ない。殺されたのが1人とか2人だけでも「虐殺」と表現して間違いではないが、凄惨な殺され方を強調したい場合の言い方はむしろ「惨殺」がふさわしい。
語源は「虐(しいた)げ」「殺す」であるが、英語での呼称である「Slaughter」は、動物に対しては安楽死ではない屠殺なども指すため、その点では必ずしも「虐め殺す」と簡単に分類できる言葉ではない。
軍事における虐殺
とはいえ、戦争においては建前でも白黒境界線をつけなければ話にならないので明確な一線が存在する。
この場合は各種の国際法やジュネーブ諸条約に基づく戦闘に該当しない殺人を指す。
つまり、民間人や投降済の敵兵など「無抵抗の非戦闘員」相手の一方的な殺害と考えればだいたいあってる。
特に民族・宗教・国籍など特定の属性に絞って大量殺害する場合はジェノサイドとも呼ばれる。
言い換えればこの一線を越えた場合…もはや勝ち目がなくとも断固投降を拒否し相手を殺傷せんとする意志を捨てていない場合、対象を殺害しても虐殺とはならない。
この辺が厄介で、軍事的には虐殺でなくとも広義の意味では虐殺という場合もあり、議論が未だに止むことはない。
創作における虐殺
というわけで戦争にて大量殺人が起きた際、特に主役サイドが行った際にはしばしば虐殺かどうかで議論になることが少なくない。何らかの作品で「これはもはや虐殺です!(意訳」というセリフを目にしたことのある人も少なくないだろう。しかし、世界観、殺害方法、戦況、相手が人間か、どちらが侵略者か、そして現実において手を下したものが視聴者に嫌われているかどうかなどなど、様々な要素が絡み合い「これこれこうだったら虐殺」とは一概には言えないからである。
上記の軍事でのジェノサイドを元ネタとしつつ、軍隊が絡まずに特定の人種を標的とする差別を引き金・根幹とする虐殺を扱う作品も当然ある。
なにより創作には現実と違い、文字通り一騎当千の力を持つ者が溢れている。故に
「たった一人の強者が、侵略者の兵士数万人を一瞬に一撃で殲滅した」
「強大な力を持った邪悪な敵が、単騎で人類のほぼ全てを殺し尽くした」
などの明確な広義の虐殺かつ、軍事における虐殺では断じてないという現実ではありえない事例がゴロゴロしている。
これを虐殺と判定するかどうかは、最終的には殺す側と殺される側の視聴者からの好感度の影響が大きい…ような気がする。創作だし。