安倍晋三銃撃事件
あべしんぞうじゅうげきじけん
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現在進行形の事件であるため膨大化する可能性が極めて高い記事です。箇条書きをせず、また、追記をする際には事件と深い関わりがあるのかを検討した上で編集をして下さい。
被疑者実名表記は禁止します。
旧統一教会に関する記述は、犯行に関係あるもののみとしてください。また当該団体と安倍氏の関係を記載したい場合は、その団体の記事若しくは、美しい国へお願い致します。
今後、この事件名の正式名称が決定され、本記事と異なる名称となる可能性がありますが、現時点では本記事名とします。記事移設の際はコメント欄で意見を募ってから行って下さい。
また、ショッキングな映像が記録されている暗殺事件でもあり、マスメディアやインターネットでも多数の映像が報道・配信されています。本記事を閲覧したことが原因で、事件の記憶が想起される可能性もあります。精神衛生上、辛いと感じたら本記事を閉じて、事件に関する情報を絶ち、精神状態の安定に専念してください。
2022年7月8日午前11時半ごろに奈良県奈良市の近畿日本鉄道大和西大寺駅前の路上で発生した銃撃・殺人事件。
2日後の参院選投開票を控え街頭で自民党公認候補の佐藤啓の応援演説を行なっていた安倍晋三元内閣総理大臣が、背後の歩道にいた群衆の中から車道へ飛び出して来た男に自作銃で撃たれ負傷した。救急隊到着時点で既に心肺停止の状態であったという。
現場では銃声の様な音が2度聞こえ、2回目の発砲で弾丸が上半身の2ヶ所に命中し安倍氏は血を流して倒れた。また、当時現場を映した動画では1回目の発砲直後、振り向きざまに2回目の発砲が行われ安倍氏が倒れ込む様子が撮られている。
犯人はその場で確保され、殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された。
安倍氏は現場に駆け付けた看護師と近隣の内科医の応急措置を受け、救急車で搬送されたあとドクターヘリで橿原市にある奈良県立医科大学附属病院に移送。20人がかりで止血処置と輸血を行ったものの、血液が凝固能力を失っており4時間に及ぶ処置にもかかわらず容態は回復しなかった。
昭恵夫人や側近が同日夕方病院に到着し安倍氏に呼掛けたものの、拍動の再開や意識の回復がみられず医大側より夫人に回復の見込みがないことが告げられ17:03に死亡が確認された。享年67歳。
現地との連絡役を務めた奈良県出身・高市早苗議員が、後に昭恵夫人到着まではと奈良医大に救命措置の継続を依頼していたことを明かしている。この依頼をしたことに高市議員も苦悩していたというが、昭恵夫人から安倍氏が最後に夫人の手を握り返したと聞いたという参照。
安倍氏の死因は左上腕部から侵入した弾丸が鎖骨動脈を損傷させたことによる失血死。
奈良医大は関西の救急医療施設の中でも福島英賢教授を筆頭として技術力の高さで知られており、医療従事者間でも「奈良医大で駄目なら仕方がなかった」という意見が多い。
その後、佐藤は参議院議員に当選した。
この事件を受けて、日本国政府は7月11日の閣議で、安倍氏を従一位に叙すると共に、日本国での最高勲章である大勲位菊花大綬章及び大勲位菊花章頸飾を授与すると決定した。うち大勲位菊花章頸飾を受勲する日本の政治家は戦後で吉田茂・佐藤栄作・中曽根康弘に次いで歴代4人目である。
さらには1967年の吉田茂以来の国葬が決定された。
この事件は二・二六事件における高橋是清大蔵大臣と斎藤実内大臣の暗殺以来86年振り、戦後の日本国憲法施行下では初となる首相経験者が殺害された事案である。また、日本国内の東京都以外で首相経験者が暗殺されたのは初めてである(伊藤博文は国外で暗殺)。 政治家への銃撃事件が起きたのは、記憶にやや新しい2007年(平成19年)の長崎市で発生した伊藤一長長崎市長射殺事件以来の日本全国を震撼させた事件であり、選挙期間且つ選挙活動中に起きた銃撃事件という点も同様である。 なお、当時の首相は安倍氏であった。
犯人の素性
逮捕されたのは奈良市に住む無職の男(当時41歳)。
1999年に奈良県内有数の進学校を卒業したが後述する家庭事情によって大学進学を断念。2002年秋から2005年ごろまで3年間海上自衛隊で勤務していた経験のある元自衛官であった(ただし、正規の自衛官とは異なる「任期制自衛官」であり、一般の職種で例えるなら派遣社員やアルバイトに近い期限付きの自衛官であった。もっとも、任期制自衛官でも勤務や訓練の内容は一般的にイメージされる「自衛官」とほぼ同一である)。
自衛隊を退職した後は測量士補や宅地建物取引士などの資格を取得していたが人間関係で嫌気がさすと次の仕事が決まっていないのに退職する、ということを繰り返しアルバイトや派遣社員を転々として定職には就かず、事件発生の約1ヶ月前に派遣先の大阪府内の会社を退職していた。
容疑者が派遣社員として働いていた工場の社長は、勤務態度は真面目で「誰彼かまわず噛みつくタイプ」ではなかったが職場の先輩や社外のトラックドライバーと口論するなどのトラブルも起こしていたと語っており、
凶器
凶器となった銃は当初散弾銃や拳銃と報じられたが、この銃は産経新聞記事における警察OB曰く水平2連式の2連発式と思われる自作銃で、発射時には通常の銃声とは違う轟音と大量の硝煙を発していた。
構造は銃身となる鉄パイプ内に発射薬と弾丸を詰め、モバイルバッテリーの電力で火薬を発火するもので現代の銃よりも「電気着火式の火縄銃」に近い。
創作物では浦沢直樹の漫画「MASTERキートン」にて主人公が鉄パイプと火薬、ネジやボルト等を組み合わせて作った簡易式火縄銃が登場したが、犯行に使われた銃の原理や設計思想はこれとほぼ同じである。
解りやすくいえば、打上花火の要領で一方向の対象に向けて弾丸となる物体を火薬で射出するといった単純なもの。
その性質は自作式ソードオフショットガンで散弾を1度に2連射出来るタイプのものと見て間違いない。つまり、前述した火縄銃をさらに連射出来るように改造したものと見て間違いない。
設計思想そのものは素人にも理解出来る程単純そのものの作りであるが犯人が後に語った通り「暴発して爆発しない様に実際に撃てる様に実用段階」にするまでは非常に手間と試行錯誤を要する事から素人には到底製作は不可能なものである。
つまり専門の技術が無ければ爆発して製作者が死ぬ危険性が極めて高いと考えられる。
弾丸が散弾であったことは間違いなく、約20m離れた選挙カー看板を弾丸が貫通した痕跡が発見された他、約90m離れた立体駐車場の2階の壁面に弾丸がめり込んでおり、安倍氏以外の被害者がいなかったことは不幸中の幸いといえる。
犯人は凶器となった自作銃について、「直径10ミリほどの球形の弾丸を、1回の撃発で6発同時に発射できるものだった」と供述した。
この銃は散弾銃のように複数の弾丸を同時に撃ち出す構造にもかかわらず、安倍氏以外の死傷者が出なかった事が当初疑問視されていたが、後の検証では襲撃時の安倍氏がお立ち台に上がって演説していたことと、容疑者が安倍氏の上半身に狙いを定め、銃口を周囲の聴衆より上に向けていたためとされた。
爆発物所持の可能性があったことから、爆発物処理班が同行した自宅の家宅捜索の結果、数丁の自作銃と爆発物の様なものと試し撃ちをしたと思われる穴が空いた木の板も発見されている。犯人は「当初は圧力鍋を利用した爆弾を使うつもりであったが安倍氏以外を巻き込む可能性があったことと、威力が不十分だったので自作銃を使用した」と供述している。
犯行動機
逮捕直後の取調べでは「結果的に安倍氏が死んでも仕方ないという思いで銃を撃った」と供述するなど明確な殺意をもって犯行に及んだこと(目撃者曰く「撃った後も冷静であった」とのこと)、安倍氏に対する不信感・不満を抱いていた事などを語っているが、政治信条などに関する恨みではなく、母親が信仰している宗教団体(世界基督教統一神霊協会、いわゆる旧統一教会)へ総額1億円にも及ぶ高額の献金を行ったことで破産し家庭崩壊を経験したことで「(教団を)絶対成敗しないといけない」と考えたことと、安倍氏を狙った理由については事件前2021年9月に安倍氏が旧統一教会傘下のNGOが開催した集会にビデオメッセージを寄せていたのを確認したことで、安倍氏が旧統一教会と明確に関係していると判断したことと、容疑者が安倍氏は日本に旧統一教会を招いた岸信介元首相の孫に当たるため、(子孫である以上は)安倍氏も同罪と考えたためとしている。
※なお、このNGOの集会にはドナルド・トランプ元米国大統領とマイク・ペンス元米国副大統領の両名もビデオメッセージを寄せ巨額の報酬(トランプ氏が250万米ドル、ペンス氏が50万米ドル)を受け取っているが、この団体は「安倍氏には報酬は支払っていない」と主張している。
容疑者のものと見られる、2019年10月に開設されたTwitter (現・X)アカウント(凍結済)には旧統一教会への恨みが投稿されていた一方、教団と政治家との繋がりについては
とした上で
「安倍政権にいいたいことはあるが恨みのある団体と同一視するのは非礼」
「(安倍政権を批判する他者のツイートへの反論で)安倍政権の功を認識出来ないのは致命的な歪み。永久泡沫野党宣言みたいなもの」
として安倍政権や自民党を一定評価する意見を述べており、安倍氏への加害を仄めかすような投稿は確認されていなかった。
また、教団に批判的な人物に宛てた手紙の中でも
「教団創始者一族を皆殺しにしてやりたいがそれは不可能」
「創始者の1人が死んでも、後継者達が喜ぶか教団が結束力を高めるか、どちらにしても自分の目的には沿わない」
「苦々しくは思っていたが安倍氏は本来の敵ではなく、現実世界で最も影響力がある(教団の)シンパの1人に過ぎない」
との旨を書いている。
襲撃・殺害に及んだ事実から悪感情を持っていたことは間違いないものの、この発言を見る限りは、テロリズムというより個人的怨恨(怨恨の対象は安倍氏本人ではなかったが、様々な事情が有って攻撃の矛先を安倍氏に向けるしかなかった)という表現の方が近いと思われる。
つまり、あくまでも容疑者の供述を信じるならばであるが、容疑者にとっての安倍氏は喩えるなら「この中の誰か1人の殺害に成功すればゲームクリア」リストに名前は載っていたが、別に「(怨みや憎しみを含む)一番強い思い入れが有る標的」ではなく単に「居場所その他の動向・情報が掴み易く、攻撃が最も簡単な標的」に過ぎなかった、ということとなる。もし、容疑者の供述が真実なら、この事件は「テロリズム(政治家を標的に選んだ点では)」「通り魔(ある条件を満たす人物なら誰でも良かった)」「怨恨(ただし、安倍氏本人ではなく関わりのあった宗教団体への)」の3つの側面が有る事になる。
逆に、この供述が嘘なら「安倍氏を殺害した理由は本人に対する直接の怨み・憎しみなどといった強い負の感情でもイデオロギー的な理由でもなく、本当に打倒したい相手のシンパの中で殺害の成功率や殺害が成功した場合に『真の敵』が受けるダメージの大きさからして『最もコスパのいい殺害対象』だと考えたので利用したに過ぎない」という、一国の元首相を殺害しておきながら殺害した相手を「殺す意味の有る巨悪」とさえ見做していないと嘯く、安倍氏に対する一種の「尊厳破壊」「死体蹴り」ともいえる。
また、「旧統一教会の関連施設で最近、銃の試し撃ちをした」という趣旨の供述をしているが、試し撃ちに関する通報などはこれまでに寄せられていないため、警察当局は事実確認を進めるとともに、詳しいいきさつを調べている。
逮捕直後の取調べでは「韓鶴子総裁(事件当時の旧統一教会トップ)を撃ちたかったが、コロナで日本に来ないので旧統一教会と深い関わりのある安倍氏を狙った」という趣旨の供述もあった。
この事から教団関係者を狙ったのでは「宗教団体内部の抗争」や「家庭内でのトラブルが原因の事件」と見なされ矮小化されると考えた事と、コロナの影響で本来狙っていた相手が来日しなくなったことに業を煮やした容疑者が「教団のメンバーではないが、政治家として首相退任後も強い影響力を持っていた安倍氏を攻撃することで世間の注目を集め教団に批判的な世論を醸成する」という狙いがあったのではないかといわれている。
実際にその通りになっておりマスコミ各社は当初、容疑者の家庭環境が犯行の要因と報じていたが事件を巡る報道はやがて政治家と宗教団体の関係に焦点を当てる内容に変化していった。
容疑者と旧統一教会の接点
容疑者の兄も過去に旧統一教会の施設を包丁で襲撃しており、その後に自殺している。また、容疑者自身も生活苦と妹に保険金を残すことを理由に自衛隊在職に自殺未遂を起こしている。
なお、容疑者の家庭を担当していた教団職員が彼の自殺未遂を知った事がきっかけで返金の協議が行われ5000万円が教団から返還されたが、この5000万円は容疑者の家族によると再び母親が献金してしまったという。
事件前の2019年10月、愛知県で開催された教団のイベントに韓鶴子が参加している事を知った容疑者は火炎瓶を所持して会場へ向かったが、現役の信者ではなかった為入場を拒否され襲撃に失敗した。
また、事件発生直後には容疑者が旧統一教会の分派の一つである世界平和統一聖殿(サンクチュアリ教会)の信者だとする噂が広がったが、教会側はこれを否定している。
犯行についての見解
容疑者は犯行の動機について「事件を起こして自らを苦しめた旧統一教会の存在を世の中に知らしめる事が目的だった」という趣旨の発言をし、本事件を暴力による世の中の変革を狙った政治テロとする見方には否定的な反応を示したという。
また、NHKが収監中の容疑者に手紙を送る形で取材を行っており、容疑者が氷河期世代に該当している事などを踏まえて複数の質問を投げ掛けると容疑者は
「犯行の動機に、旧統一教会以外の要因があるとの見方を残念に思っている」
という趣旨のコメントを寄せ、改めて「旧統一教会への恨み」が動機であると強調した。
しかしその後、2024年6月に容疑者の弁護団が記者団に明らかにした内容によると、容疑者が自身の犯行について
「現在のような状況を引き起こすとは思っていなかった」
「(宗教)2世の人たちにとって良かったのか悪かったのか」
と述べたという。
弁護団は発言の真意については確認出来ていないとしているが、本事件を機に旧統一教会に対する解散命令の請求や裁判が行われ、政治家と宗教の関係が注目される様になったことや、容疑者が「宗教2世」の境遇が広く知られるようになると思っていなかった可能性がある。
事件までの安倍氏と容疑者の足取り
奈良市での演説は当初予定されておらず、安倍氏奈良入りが奈良県に通達されたのは事件前日の夕方であった。
当初、事件当日の安倍氏は長野県長野市にて応援演説を予定していたが、その候補者が過去に起こした女性問題を複数の週刊誌で報じられたため、奈良・京都の関西方面へと差し替えられた。
同じ頃、事件現場を管轄する奈良西警察署では2022年1月に署内で保管していた拳銃用の実弾が行方不明になった際、署員の男性巡査長が実弾を盗んだと断定して執拗な取調べを行なった(後に数え間違いで定数より少なく配分されていたのが原因で当該署員は潔白と判明)事でうつ病を発症し県警が提訴されるという不祥事があり、翌日の公表・発表に向けた対応に追われていたことから警護計画が杜撰になってしまった可能性も後に指摘された。この様に本来の演説日程にはない偶発的な状況下かつ、現地を管轄する警察署が不祥事に追われている中で事件が発生したとの報道もあり、遊説日程の急な変更に関与・対応出来る立場にない犯人が偶発的に起こした殺人の可能性も存在する。
犯人は安倍氏の遊説スケジュールをネットで確認し、2022年6月28日に安倍氏が奈良を訪れた際に大和西大寺駅南口と近鉄生駒駅前で応援演説を行っているのを把握していたが、「この時はやるつもりはなかった」という趣旨の供述をしている。
攻撃を実行に移した理由については前述した借金の存在を背景に「金がなくなり、7月中には死ぬことになると思ったのでその前に安倍氏を襲うと決めた」と供述した。
犯人は事件前日早朝、奈良市内に所在する旧統一教会の施設に向けて手製銃の試し撃ちを行ってから弾丸が発射可能な状態の手製銃を所持して新幹線で岡山市に移動。旧統一教会を追求していたジャーナリスト宛の手紙を市内のコンビニで投函してから安倍氏のいる応援演説会場に立ち寄っていたが襲撃を断念している。
犯人は岡山で事件を起こさなかった理由について、当初は手荷物検査が行われており会場に入れなかったと供述していたが、後に会場内に入ったが聴衆が多く、安倍氏に近付けなかった、と供述を改めている。
また、同日に行われた兵庫県での遊説にも足を運んでいたが、こちらは街宣車上に乗っていたため諦めたことが供述されている。
このことから犯人は強い計画性を持って安倍氏の殺害方法を考案しつつ、その手段で確実に殺害できるかどうかを逐次判断しながら常に襲撃の機会を窺っていたといえる。
また、犯人は奈良で攻撃に失敗した場合には「その先の演説会場まで追い掛け実行するつもりであった」とも話したという。
なお、事件翌日に埼玉で開催予定であった旧統一教会関係のかなり規模が大きいイベントについて、犯人はX(旧・Twitter)のダイレクト・メッセージ機能で旧統一教会関係者と政界の癒着についての記事を書いていたフリージャーナリストの双方に問合わせをした一方で、先述のように事件前日に旧統一教会を含む新興宗教関係の著書があるジャーナリスト宛に犯行理由などを説明する手紙を送っており、「元々は旧統一教会関係のイベントを狙うことも選択肢に入れていたが、安倍氏の予定変更などを理由に急遽奈良市での応援演説をターゲットに定めた」可能性もある。
犯人の起訴
先述の通り被疑者は殺人未遂で現行犯逮捕されたが、安倍氏が亡くなったことで容疑が殺人罪に切替えられ、事件から2日後に身柄が奈良地方検察庁に送検された。
その後、約半年間の鑑定留置を経て翌年1月13日に殺人罪及び銃刀法違反で起訴された後、翌月13日に自作銃を複数作成した武器等製造法違反、許可を得ず火薬を製造した火薬類取締法違反、銃撃で選挙を妨害したとする公職選挙法違反、事件前日に旧統一教会の関連施設に向けて手製銃を試し撃ちしたとする建造物損壊により追送検されたが、後に公職選挙法違反については嫌疑不十分のため不起訴となっている。
なお、元弁護士であった被疑者の伯父は「元首相とはいえ殺害されたのは1人だけであった以上、死刑は求刑されず(死刑が求刑されるのは殺害されたのが複数人の場合が通常)、せいぜい無期懲役の求刑となる可能性が高い」ことを指摘している(あくまで仮定であるが、逆に安倍氏ではなく旧統一教会関係者や教団に関するイベントを狙った場合や、安倍氏本人の殺害には失敗したが周囲にいた複数人の護衛や聴衆等を巻き添えとして死なせた場合こそ死刑が求刑される可能性が高いと思われる)。
裁判までの動き
当初の予定では2023年6月12日に奈良地裁で被告人も同席する第1回公判前整理手続きが行われる予定だったが、後述の不審物騒ぎ(事件の影響の節を参照)により延期された。
この事について被告人は「次回以降、出席するかどうかは考えたい」と語っていた。
その後、2023年10月13日にようやく第1回公判前整理手続きが実施された。
なお、同じ日には奇しくも文部省が被告人が凶行に及んだきっかけである旧統一教会に対して解散命令を請求し、東京地裁に受理されている。
被告人はこの日行われた審議には出席しておらず、弁護士によると理由について被告本人が「解散命令の請求日と手続きの期日が近く、(自分が出席することで)関連付けて報道され、騒ぎになるのを避けたかったから」と話していたという。
2024年1月23日には2回目の公判前整理手続きが行われ、この時は初めて被告人本人が出席した。
2024年9月、被告人の弁護団は成育歴や人格形成の過程を分析して事件への影響を調べ、量刑判断の材料とする情状鑑定を行う様に奈良地裁に請求したが却下されたことを明らかにした。
日本の刑事事件(特に世間的な注目を集めているもの)では容疑者逮捕 - 裁判開始までの期間が長い傾向にあるが、本事件は特に逮捕 - 裁判開始までの期間が異例ともいえる長期に及んでおり、未だに初公判の目処は立っていない。
国内外の要人の反応
事件を受けて、政府関係者や所属政党である自民党のみならず、立憲民主党・国民党・日本維新の会、日本共産党を始めとした野党関係者など日本国内外の各界要人から安倍氏個人の死に対する追悼、政治家を狙った銃撃事件への激しい非難声明がされた。11日夕までに259の国・地域・機関から弔意が送られており、生前安倍氏と友好関係にあった人物・国家のみならず、政治的に激しく対立をした人物や組織、国家からも多数弔意が確認された。また、宮内庁は記者会見で両陛下はご遺族の皆様の悲しみを案じておられるのではないかと拝察すると述べられた。その上で宮内庁長官はメディアの質問に答え、皇族方の警備は万全な上で行い国民との触れ合いを行うと発表した。
宗教界の反応
この事件を受けて創価学会や幸福の科学を始め多くの宗教団体がテロは許されない行為であると非難し、またメディアの取材に答え、創価と幸福は統一教会を非難、天理教やパーフェクトリバティー教団は無回答、他宗教団体は様々なコメントする中、ワールドメイトは容疑者を非難する一方、信教の自由が脅かされる懸念や宗教2世救済も必要であると主張するなど中立の立場である。
報道に対する反応
先述した通りこの事件の容疑者は元海上自衛官という経歴があり、自作銃を用いた犯行であったことから発生直後はやたらと元自衛官という点を強調し、容疑者と自衛隊を結び付ける報道を行うメディアも見られた。このことについて、海上自衛隊OBが週刊誌誌面で苦言を呈した。
その他の反応
本事件で安倍氏を始めとした政治家の多くがカルトと呼ばれるものも含む多種多様な宗教団体と繋がりを持っていたことが表面化され、その中でも有力支持基盤の一つである旧統一教会は生前の安倍氏がたびたび槍玉に上げていた朝鮮半島を基盤(韓国及び北朝鮮がルーツで多大な影響力を持つが韓国では邪教扱いされている)としていたことから、目的のためなら手段を選ばない姿勢を「卑しい」「節操が無い」と批判する者、宗教団体と繋がりを持った結果被害者である宗教2世によって殺害されたことに対して「天罰」「因果応報」「自業自得」と皮肉を述べる者、この事件を機に宗教団体と政治家の癒着が明らかになった事について「でかした!」「(事件は)世直しとして機能した」「暗殺が成功して良かった」と主張し犯行を正当化する者や、容疑者を「義士」「烈士」「独裁者を葬り去った男」と表現して英雄視する者も一定数見られた。
しかしながら、理由がどうであれ現職国会議員の首相経験者(歴代最長)且つ与党最大派閥長でもある人物が、選挙期間のしかも応援演説中に殺害されたというのは日本・世界史上を見ても類を見ない程の民主主義に対する挑戦であるという見方が強く、安倍氏に批判的な人物でさえ、この件に関しては「あってはならないこと」と批判している。
安倍氏は長期政権の総裁として多くの政策決定に関わった一方、在職中に起きたいくつかの疑惑・不祥事で渦中の人物として取り上げられたこともあって元々非常に評価が分かれる政治家であり、SNSでは生前から賛否を問わず過激な投稿をするユーザーが多かった。今回の銃撃事件においてもその例に漏れず、死後でも生前の政策への賛否、個人への評価を巡る衝突が絶えず、収拾が付かない事態となっている。
デマにも警鐘が鳴らされており、まだ不可解な部分も多いせいか先述のように誘導や黒幕説、こじつけも多く無関係者に火の粉が飛びかねない。大手ニュースサイトでも有名人がいってもいないことをあたかもいった様に配信している場合もあり、いわれがない批判や誹謗中傷を浴びらされる事件も既にある。
誤った情報や誹謗中傷を拡散しない様に!!
ほとぼりが冷めるまで今回の事件について精神衛生上、苦痛を感じたらこういった情報から離れるのも手である。
事件から約2ヶ月後の9月27日に戦後の首相経験者としては吉田茂以来となる国葬儀が執り行われたが、これも激しい賛否両論が沸き起こった。政治的主張に乏しいPixivは、X(旧Twitter)などのその他SNSと比べると平和であったが、国葬開催が迫る同月16日未明には国葬に賛成する右翼系ユーザーによって、国葬に反対する勢力への抗議と称して百科事典における魔法科高校の劣等生関連記事への、意味不明な削除荒らしが行われる(ソース)などの状況となっていた。
防ぐことは出来なかったのか?という疑問・検証を記載する。
事件発生時の警備体制
事件現場は過去に立憲民主党の泉健太代表や日本共産党の市田忠義副委員長が街頭演説を計画していたが、いずれも警察から警備上・安全上の問題を指摘され計画変更に追い込まれた敷地でもある。そのため泉代表は現場から少し離れた場所で演説を行い、市田副委員長は警察の許可を得てガードレールをずらし街宣車を乗りいれ、車の上から演説するという対策を取った。
しかし、事件発生直前の2022年6月25日には茂木敏充自民党幹事長がこの場所で応援演説を行っており、安易で形式的な前例を踏襲した会場設定が問題視された。
2022年の参院選で、安倍氏は20都道府県で47回の応援演説に立ったが、そのほとんどは街宣車上・屋内会場、後方に壁や車両がある場所のいずれかで行われた。例外は、山口県長門市の漁港と、事件があった大和西大寺駅北口の2ヶ所のみ。長門市の漁港での応援演説では背面が海で人の往来はなかったが、安倍氏の後ろに立って周囲を警戒する警護員が配置されていたことから全47回の演説のうち、屋外の市街地で選挙カーを使わず、かつ背後の警備が手薄だったのは大和西大寺だけで、『たった1回』の警備態勢の明らかな不備を犯人に狙われた。ある意味で、安倍氏からすれば物騒かつ迷惑極まりない「追っかけ」をやっていた人物が住んでいたのと同じ市内に本人がやって来た時が、たまたま、自民党側の急な予定変更と、警察内部の無関係な不祥事などのせいで、警備態勢に隙があったり、暗殺に向いた場所・状況だったなどの何重もの悪い偶然と、容疑者が「チャンスが来るまで行動を起こさずに慎重かつ執念深く待ち続ける」ことに、成功していたことが重なった結果であり、「幸運の女神は準備している者にしか微笑まない」という警句の最悪の実例ともいえる。
警護要員の対応
上記の通り3mという至近距離にまで犯人が迫ったが、1・2発目の発砲の間に2秒程の間が空いているにもかかわわらず2発目の発砲を許してしまったという事から、警護員にも油断があったのではといわれている。2秒というと短いと感じるかもしれないが警護対象を押し倒して射線から逃がすには十分で、後述の警護のプロも指摘している。
安倍氏は現職の総理大臣や閣僚ではなかったために帯同するSPは1名のみで、他にも奈良県警の私服警察官達が一定数警護に当たっていた。
オバマ元大統領やバイデン大統領などを護衛したことがある米国警備会社のCEOは
「容疑者が近付いてきて銃を構えるまで十分時間があったはずなのに誰も動いておらず、第2撃や共犯者を想定していない」
と、警備態勢の不備を指摘した。
奈良県警本部長は「警察官人生最大の痛恨の極み」と警察の失態を認め、辞任した。また、警察庁長官と国家公安委員長も本事件を理由に引責辞任した。
警察幹部は
「例えば火曜サスペンス劇場の様に『安倍!!』などと叫びながら刃物を持って襲い掛かって来る、真正面から名乗りや叫びを上げながら標的に突っ込んで来る、という古典的なステレオタイプの犯人の想定がメインであり、今回の様に手製の銃を用意して無言で銃撃してくるようなケースは全く想定していなかった」
と話した。過去のケースではSPの設立以前ではあるが、1960年に社会党委員長・浅沼稲次郎が演説中に突然ステージ上へ乱入してきた右翼青年に刺殺される事件が起きた。また、安倍氏の祖父である故・岸信介元首相なども刃物で刺され重傷を負っている。
しかし、21世紀に入ってからは2007年に長崎市長が暴力団員に射殺される事件が起きたほか、手製の武器に関しては2014年に3Dプリンターで拳銃を製造した大学職員の男が逮捕される事件が発生しており想定が甘かったといわれている。この事件に限らず、本当に殺す気があるなら犯行予告は行わず実行時も無言で、実行後に犯行声明を出すことが大半であり、海外の事例でも同様である。
※ただし、本事件に関しては、容疑者が1発目を発射する際に「韓鶴子(かんつるこ)!!」と叫んでいた、という情報も有る。
また、戦後日本において政治家を狙ったテロ・暴力犯罪の多くはローンオフェンダー(組織の後ろ盾がない単独犯)によるものであり、公安は、対右翼・対左翼・対外国・対カルト宗教全てで対「組織」に特化してしまっており、特に右翼については従来の右翼団体は監視しているがいわゆるネット右翼や「ネット右翼とさえいえないライトな保守層」が起したテロ・犯罪は後手後手に回ることが多く、要人を狙ったテロ・暴力犯罪を企てる個人を事前に摘発するのは極めて困難とされている。
過去に公表された日本のSP訓練映像では、襲撃と同時にSP達がカバンに偽装出来る折り畳みの防弾板を展開しながら警護対象者に覆い被さって守っており、銃による襲撃対応としてはこれが理想であったと思われるが、前述のように今回の襲撃に使われた凶器は手製銃で発砲時に銃とは思えないほどの凄まじい轟音と白煙を発しており、銃撃と判断して動き出すまでに一瞬の間が出来てしまった可能性も否定出来ない。
また、政治家は元々挨拶回りなどで有権者との距離を縮める機会が多い上、選挙活動中は有権者に警備を威圧と受け取られ敬遠されることを気にして警護員を遠ざけがちで、警備担当者にとっては選挙活動中の警備が特に難しいと言われている。
今回の現場でもカバン型防弾板を持った警護員が配置されており、一部映像では2名が1発目の発砲直後に動き出し盾となって安倍氏守ろうとしたが、この事情から数m距離を置いていたため間に合わなかった様子が記録されている。
厚生労働大臣や東京都知事を歴任し、自身もSPに警護された経験を有する舛添要一は、
「SPは身を挺して、自己犠牲も厭わないことが前提で、有事には覆い被さって守ることもある。今回は近くに誰もおらず1発目の時点で盾となる者がいなかった」
と、SPの対応の不備を指摘した。
札幌ヤジ訴訟との関連
また、ネット上では2019年7月の参議院選挙の際、首相在任中の安倍氏が札幌市で街頭演説中に「安倍辞めろ」とヤジを飛ばし、安倍氏に近付こうとしたが北海道警に排除されたのを表現の自由の侵害として男女2名が道警を訴えた訴訟における札幌地裁での第1審判決が影響したともいわれ、地裁や原告への批判が上がった。なお、この判決は道警の対応を違法と判断するもので原告2名が勝訴しており、事件前の2022年3月に出たこともあって安倍氏に近付こうとする人間をうかつに排除出来ない環境だったともいわれている。
ただし、この札幌の件での警察の対応も「ヤジをあげていたり批判的なプラカードかかげていた者1人につき5人以上の警官が対応する(その分、警護対象者を守る人員が減る)」「警護対象者とはかなり広い道路を挟んだ反対側に居た相手にまで対応する」「相手がヤジをやめたのに長時間警官が付きまとい、相手が移動するのにともなって警官も移動(つまり対応していた警官、それも複数名がどんどん警護対象者から離れて行く)」「警官が排除しようとした相手に対し、うっかり当該演説が終わった後に同じ市内で同じ警護対象者による街頭演説がある事を示唆する発言をしてしまう」など安倍氏が暗殺された後からすると、警察側こそ平和ボケだった、警護対象者の安全よりも警護対象者へのヤジや批判的なプラカードの排除を優先したと批判されても仕方ないものであった。
札幌のヤジ排除の際とは、通りの広さや聴衆の人数・密度などの条件が大きく異なる上にあくまで仮定の問題であるが、もし奈良での事件の際に無関係な第三者がヤジを飛ばすなどした上で、警護の警官が札幌での野次排除に近い対応をしていたならば、犯人にとっては、成功率が上がりこそすれ下がる事はない様な行動をわざわざ警護の警官がやってくれた様な事態となっていたものと思われる。
また、単独犯だから良かった様なものの、もし複数犯で札幌のヤジ排除動画なども参考にして計画を練っていたらならば「わざとヤジをあげて警官を陽動する囮役と黙って対象を攻撃する実行犯」の役割分担が行なわれていた可能性も有る(札幌の事件での北海道警と同じ対応を奈良県警がとった場合、1人がヤジで陽動すれば複数人の警官を安倍氏から引き離すことができる)。
そもそも、札幌ヤジ排除事件での第1審判決は
「ヤジなどの排除は違法であるが、警護対象者の方へ不自然に近づこうとした者を制止する事自体は問題ない」という内容であり警察側が判決内容を良く理解していなかったか、誤解していたような場合を除いては犯行成功率を上げるような影響は考えにくい。
警察による必要に迫られた発砲すら強く忌避する社会文化に配慮した結果なども指摘されているが、当日の警備は犯人が前日に一度暗殺を諦めた原因である手荷物検査※すら行われていない状況であり(手荷物検査は不当な排除に当たらないと見なされていたということでもある)、各方面の専門家から見ても、首相経験者としての警備としてはあまりにも手薄だったという指摘が一般的となっている。
※前述の通り容疑者は前日に岡山市で応援演説中の安倍氏を狙っていたが攻撃を断念した理由について、当初は「手荷物検査が行われていて会場に入れなかった」と供述していたが後に「会場内に入ったが、人が多くて安倍氏を狙えなかった」と供述を改めている。
余談だが、この事件の影響かは不明だが事件翌年の2023年6月に札幌高裁が出した2審判決では、女性の原告については1審判決と同様に表現の自由などの侵害を認め賠償金55万円の支払いを命じた一方、男性の原告に関しては周囲の聴衆から暴行を受けたり、男性が安倍氏らに危害を加えたりする恐れが迫っていたため排除は適法だったと判断され賠償請求を棄却されている。
この事について、原告らの弁護士の一人は
「判決が覆った根底に、安倍氏の事件が影響した可能性があるのは否定できないと思う」
とコメントした。
その後、2024年8月に最高裁で行われた審議にて札幌高裁の第2審判決が確定した。
また、2023年3月17日公開のドキュメンタリー映画「妖怪の孫」では安倍氏が地元・山口県下関市内の漁港で市長選の応援演説を行った様子が紹介されていたが、この演説での警備は安倍氏の背後には部外者も自由に立ち入りできる駐車場が広がっていたにもかかわらず、警備要員が配置されていないという事件発生時のものとは比べ物にならない隙だらけのものだった事が映し出されており、万が一ここで狙われていたら容疑者の逃走を許していた恐れもある。
なお、この作品が公開された約1ヶ月後には同じく漁港で応援演説を行おうとしていた岸田文雄首相を狙った爆弾テロが発生している。
あくまでサンプル数は2つでしか無いが、2020年代以降の日本における自民党所属の首相・元首相に対する選挙演説時のテロ行為は、上記の札幌地裁判決への批判とは裏腹に聴衆の中にアンチ自民党政権の人達が無視出来ないほど多い場合ではなく、むしろ、政党や当該首相・元首相の支持者の聴衆を装ったり支持者の聴衆に紛れ込んだ犯人により引き起こされる事態や、ずっとSNS上などで自民党支持者を装ってきた者や、本事件の容疑者のように自民党支持者だったり、「消去法で自民党しかない」と思っていた者が何かの理由で自民党にさえ失望してしまった事で、自民党所属の閣僚・党幹部・元閣僚等へのテロ行為を企てた場合こそ憂慮すべき状況とも言える(つまり、判りやすいアンチ自民党な人間が犯行に及ぶ場合より対応が難しくなる)。
本事件は先述した様に犯行の動機が個人的な怨恨の要素が強く、政治テロとして扱うのは事実の歪曲であり不適切であるという意見がある一方で、容疑者が選挙活動中の政治家を攻撃したことや、本事件を機にそれまでは知名度が低かった旧統一教会と政治家との繋がりが表面化され、関係を指摘された閣僚の辞任や旧統一教会に対する解散命令の請求に繋がるなどその後の政治に与えた影響の大きさから本事件はテロリズムである、とする主張もある。
いずれにせよ犯行の動機が政治信条によるものではなかった上に死傷者が安倍氏1人だけだったのは偶然であり、犯行の様体は精度の低い手製の武器を使用し、周囲への巻き添えも厭わず選挙活動中の現職国会議員を攻撃するという歴史的に見ても非常に危険かつ重大なものであることを認識すべきであろう。
選挙活動への影響
事件を受けて、選挙活動中の与野党の政治家の多くが当日に予定されていた選挙活動を取止めたが、一部の政治家は暴力に屈しないという趣旨で予定通り街頭演説を行った。
また、岸田首相は閣僚を始め選挙活動をしている候補者達の警備が十分に行われるよう通達を出し、自身の街頭演説でも厳重な警備で臨んだ。
安倍氏の死によって、自民党は参議院選挙で多くの「同情票」を得たとする主張もあるが世論調査を追いかけていたインフルエンサーを始め、自民党の圧勝はほぼ確定であり事件の影響はさほどないとする意見も多い。
犯人への同情と減刑運動
悲惨な生い立ちへの注目や同情が集まったが、強く感情移入する余り共感や好意を示す者も現れており犯人には食品や現金、衣類や手紙などの差し入れが贈られている。
また、足立正生監督が犯人を題材にした映画「REVOLUTION+1」を製作し安倍氏の国葬の日に上映を開始したが題材が題材なだけに賛否両論を巻き起こし、抗議の声が殺到した為上映を取りやめる劇場もあった。
SNSでは容疑者を「ハイスペックな塩顔のイケメン」と評して恋愛感情を寄せる「○○(容疑者の苗字)ガールズ」と呼ばれる女性ユーザーも現れたほか、容疑者の誕生日に合わせて「#○○○○(容疑者本名)誕生日」というハッシュタグと共に容疑者の誕生日を祝う投稿をする者も見られた。
その他、前述の容疑者への同情などを理由に刑罰の軽減を求める運動が行われており、事件発生から僅か1週間後には減刑を求める署名を募るウェブサイトが開設された。
これに関して、事件翌年の6月には最初の公判前整理手続きが奈良地裁で行われる予定であったが不審な段ボール箱が届いたことで警察が出動する騒ぎとなり、中身を調べると約1万3000人分の減刑嘆願書を印刷したものが発見されるという出来事があった。
送り主は後に
「妨害する意図はなかった」
と陳謝したが、この騒動の影響で公判前整理手続きの開始は4ヶ月後の2023年10月に延期された。
慰霊碑の設置
安倍氏が銃撃された地のアスファルトを採取して寄贈することと、事件現場となった大和西大寺駅前に慰霊碑を建立することを自民党所属の奈良市議が要請したが、市民から「事件を思い出したくない」という意見が寄せられた事や事件当時の現場周辺で再開発工事が行われていた事などを理由に奈良市側に拒否されている。その後、現場付近の歩道脇には花壇が設けられ、安倍氏の慰霊碑は事件現場から少し離れた奈良市内の霊園内に建立された。
模倣犯の出現
その後、この事件から約9ヶ月後の2023年4月15日には岸田文雄首相が和歌山県和歌山市雑賀崎漁港を選挙遊説で訪れた際、聴衆に紛れた男から手製の爆弾を投げられ、岸田首相本人は無事であったが周囲にいた聴衆や警察官が爆発に巻き込まれ負傷する事件が発生した。
岸田首相を襲撃した容疑者は黙秘を続けている事から思想的背景や動機は一切不明であるが、火薬を使用した手製の武器によって選挙活動中の政治家を攻撃するという本事件と非常に酷似した犯行だった事から、安倍氏の暗殺に影響を受けた模倣犯の可能性が指摘された。
2024年4月には千葉県在住の20代の男がインターネット上の情報を参考に鉄パイプなどを利用して殺傷能力を有する自作銃を密造し、自宅で所持したとして逮捕される事件が発生した。
逮捕された男は動機について当初、
「世の中に失望し、こんな国にした者達を攻撃することを想像していた」
と供述していたが後に新聞社からの取材に対し、
「本事件の容疑者が旧統一教会への恨みを明かし悪質寄付などへの対策が進んだことに触発され、自分も出来るんじゃないかと思った」
と語った。
また、男は当時話題になっていた自民党の裏金問題などで社会に不満を抱いており、
「(同じような事件を起こせば)不満を持つ国民の1人としての意思表示で、理解を得られると思った」
などと主張した。
2024年12月1日、この事件が発生した直後に自民党の佐藤正久元外務副大臣の事務所宛に
「あなたは落ちこぼれの自衛隊野郎ですが、わが教祖〇〇〇〇(容疑者の本名)大先生に銃の作り方や撃ち方を教えた。おかげで安倍晋三を倒すことができました。(原文ママ)」「今度はあなたの番です。首を洗って待っていなさい。」
と書かれた脅迫文を送りつけたとして、北海道の高校に勤務する60代の男性教師が警視庁に逮捕される事件が起きた。なお、動機については
「日本国憲法を軽視する佐藤議員の言動や態度に腹が立った」
と供述した。
こうした模倣犯とみられる事件が連続した影響か、警察庁は要人警護の徹底を通達。宮内庁は皇宮警察と連携し天皇陛下を始めとした皇族方への警備態勢を強化した。しかし、要人を狙った犯罪行為とその容疑者を支持する輩が出ておりリスクは増す一方である。
政治と金の問題の影響か、天皇陛下が政治家達を皇居に呼出し、名指しは避けるも異例のお言葉を述べる事態となった。SNS上では能登半島地震で被災地入りした後の出来事で炎上し、首相官邸を始め関係機関に苦情メールが殺到する事態となった。
上記の件でジャーナリストからはみんなの宗教2世問題に於いて加害者の犯行には非難する一方でカルト教団で苦しんでる被害者を救済しなければ同じような悲劇が起きる可能性が有り得ると警告している。
犯人の犯行不可能説
被疑者の銃で安倍氏を殺傷するのは物理的に不可能と主張する識者もいる。中川八洋ゼミ講義 鉄パイプ“爆発音”発生器は、実弾を撃てない。実弾を撃ってない“囮”犯人は無罪!──犯人は、安倍晋三“口封じ”に、プーチンが派遣したスナイパー5名を含むGRUスペツナズ暗殺部隊?
真犯人スナイパー説
安倍氏の搬送を担当した救急隊が右首の銃創と左胸の皮下出血を確認しており、後に奈良県警が実施した検死では左肩に銃創1か所、右前頸部に楕円形の銃創2か所が確認された。
また、奈良医大は会見にて安倍氏の右前頸部に銃創2か所が確認され、死因は首から心臓へ向かって弾丸が貫入し血管や心室を傷つけた事による失血死で左上腕部の銃創は射出口の一つとみられると発表していた。
しかし、安倍氏に致命傷を与えたとみられる弾丸2発の内1発は体内から発見されておらず、先述の病院側と警察発表の食い違いもあって「逮捕された容疑者は囮でスナイパーがいた」という誤情報が生まれる事となった。
また、作家の柴田哲孝がこの説を題材にした小説「暗殺」を発表した。
安倍晋三 暗殺 テロリズム 新興宗教 カルト 世界基督教統一神霊協会 宗教二世 無敵の人
足立正生:元日本赤軍メンバーの映画監督。本事件の犯人を主人公(ただし、作中での名称は実名ではなく変名)とした映画「REVOLUTION+1」を制作・監督し安倍氏の国葬に合わせて公開した。
エイブラハム・リンカーン:アメリカ合衆国第16代大統領。安倍氏と同様に犯人に後ろから隠し持った携帯用拳銃デリンジャーで銃撃され死亡した。米国初の暗殺された大統領となる。また、エイブラハムがAbe(エイブ)と略されることがあり、発音は違えどスペルは安倍のローマ字表記(Abe)と同じことから、「Shinzo Abe Lincoln シンゾー・アベ(エイブ)・リンカーン」など、SNSの一部で話題にされた。 また、安倍氏の遺体を運ぶ霊柩車は最初はリンカーンであったが、渋谷の自宅に到着する際にはベンツEクラスとなり、通夜会場に運ぶ際にはセンチュリーとなっている。
ジョン・F・ケネディ:米国第35代大統領。在職中の1963年11月22日、テキサス州ダラスにて安倍氏と同様に公衆の面前で銃撃されて死亡した政府要人。リンカーン社製オープンカー(事件後も13年間使用された)でパレード中に2発撃たれ、そのうち1発は首に直撃している、映像が残っている、犯人が海上兵出身など今回の事件と類似点が多い。
吹き飛んだ大統領の頭蓋骨を夫人が拾って医師に渡す姿は話題になった。
この事件の犯人は冤罪の可能性も指摘されているが、拘置所でとある実業家に銃殺された。
この事件の影響で、大統領専用車にオープンカーが採用されることは無くなり、防弾仕様のセダンが用いられている。
また、暗殺事件に関して「真犯人は別にいた」「別の場所から銃弾を撃った者が居た」という都市伝説が生じた点も共通している。
キング牧師:米国の宗教家、アフリカ系政治指導者。銃撃を受けて死亡した。
マルコムX:米国のアフリカ系活動家。キング牧師の姿勢を批判していた。ニューヨーク・ハーレムで安倍氏同様、演説中に銃殺された。
ドナルド・トランプ:生前の安倍氏と親交が深かった米国の政治家。この事件から約2年後の2024年7月13日、米国大統領選挙での演説中に狙撃され右耳を負傷した。
ロベルト・フィツォ:スロバキアの政治家。首相在任中の2024年5月15日に本事件での安倍氏同様、遊説中に群衆の中に紛れ込んだ犯人によって至近距離から銃撃され重傷を負ったが一命を取り留めた。
伊藤博文・浜口雄幸・犬養毅・高橋是清・原敬・斎藤実:襲撃され死亡した首相経験者。原のみが刺殺でそれ以外は射殺されているが、伊藤・濱口・原は駅で襲われた点(厳密には駅構内で伊藤と濱口がプラットホーム、原が改札口)が共通している。
特に伊藤は安倍氏と比べると山口出身、元内閣総理大臣、駅で銃撃されたことなど類似点が多いが、伊藤は中国のハルビン駅で朝鮮人の安重根により暗殺された。安はその後処刑されており、現代の日本ではテロリストとして認知されている一方韓国では朝鮮の独立に貢献した偉人と扱われており韓国海軍の潜水艦の艦名にも採用されている。そのため上記のリンカーンやケネディと違い、殺された側ではなく殺した側が海軍兵器の名前となっている。
その他の首相は全員東京23区で襲撃されている。
浜口は首相在任中に東京駅で銃撃されたが、即死には至らず一時的には回復。しかし襲撃時の傷が原因で銃撃から9ヶ月後に死亡したため、暗殺された1人に数えられる。
岸信介:首相経験者で安倍氏と実弟の岸信夫元防衛大臣の祖父に当たる人物。首相辞任を表明した直後の1960年7月、暴漢に刃物で左足を刺され重傷を負った。
岸田文雄:この事件が発生した当時の内閣総理大臣。前述の通りこの事件翌年の4月、自身も選挙遊説中に手製の武器による襲撃に遭ったが、こちらは警護員や漁業関係者らの素早い対応で難を逃れている。
浅沼稲次郎:日本社会党中央執行委員会委員長。1960年10月に開催された自民・社会・民社党3党首立会での演説中にステージに乱入した右翼青年によって刺殺された。殺害に使われた凶器は違う上に首相経験者か否かの違いもあるが演説中に襲撃され、死亡した政治家であるという意味では似通った部分がある。
本島等、伊藤一長:当時現職の長崎市長。本島は在職中の1990年に右翼団体の男から狙撃され全治1ヶ月の重傷を負う。伊藤は2007年の長崎市長選の期間中、その日の遊説予定を終えて事務所へ戻る途中に暴力団員に背後から至近距離で拳銃を撃たれ背中に2発被弾。心肺停止に陥り病院に搬送されたが翌日未明に死亡した。後者の犯人には無期懲役判決が下されていたが、2020年に獄死。
五・一五事件 二・二六事件:共に上記の犬養毅(五・一五事件)、高橋是清・斎藤実(二・二六事件)が殺害された日から命名されており、この二つに準えてこの事件を「七・八事件(ななはちじけん)」若しくは「七・〇八事件(ななまるはちじけん)」と呼ぶ向きもある。 他の呼称として「奈良事変」、「(大和)西大寺の変」などがある。
また、本事件は五・一五事件と比較すると(厳密には自衛隊は軍隊ではない上、犯人は既に退職していたが)犯人が海軍関係者であったことや、減刑嘆願運動が行われていることなどの類似点がある。
ザ!世界仰天ニュース:2024年8月13日放送回で、当時公判開始前であった本事件の容疑者を特集し、容疑者の生い立ちや凶器となった自作銃の製造を再現ドラマで紹介した。視聴者からは「攻めている」「風化させてはならない事件であるから忖度せず放送すべき」と称賛の声が上がった一方、裁判開始前の事件の容疑者をバラエティ番組の題材として消費したことを疑問視する意見も飛び出した他、出演者の1人が番組内で発したコメントが旧統一教会への擁護と解釈されるなど物議を醸した。