概要
宗教の信者を親に持つ人のこと。
転じて、宗教に依存してしまった信者のもとに生まれた子供を指す社会問題として扱われる。
場合によっては「カルト二世」とも。
親も人間である以上は信仰の自由を有しており、個人として何らかの宗教を信仰する分には特に問題はない。
宗教は精神の拠り所ともなり得るものであり、信仰が辛い子育ての中で親の精神的な支えとなり、児童虐待の発生を防ぐなど良い影響をもたらすこともありえる。
しかし、親が宗教に過剰に依存してしまうと、親としての地位を悪用して自らの信仰を子供に押しつけようとする傾向にある。
これが宗教二世問題であり、近年では児童虐待の一種、または原因と認知され、いわゆる「親ガチャ失敗」の典型例とされる。
キリスト教やイスラム教のような伝統的な宗教でも生じえるが、これらは社会生活と調和している場合が多く、比較的問題は生じにくい。
一方で新興宗教の場合、むしろ社会と信者を断絶させ教団の中に囲い込もうとするため、子は宗教に依存した親に社会から断絶させられた上に信仰圧力を受け、強いストレスに晒されることになる。
成長するにつれて、教義の矛盾や他人との違いに気づいてくると、それは更に加速する。
具体的にどんな行動をする・させるかというと…
- 子供に無断で宗教に入会させる。
- 幼いころから宗教行事に強制参加させる。
- 学校や地域で子どもに布教をさせ、あるいは自ら布教を行う。
- 学校の一部授業を受けさせなかったり、そもそも学校に通わせないなどの対応を取る。
- 友達づきあいも禁止してしまう。あるいは、禁止しなくとも放課後や休日を全て宗教に使わせて、友達づきあいの時間を与えない。
- 医療の必要な子に医療を受けさせない。宗教の推奨する疑似科学や心霊療法のみ受けさせる。
- 就職にも圧力をかけ、正規の就職をさせない。
- 就職自体を認めても、その収入を全て取り上げ宗教に渡してしまう。
- 教義を免罪符に非常識なルールを教え込む。もしくは自身が行い手本として示す。
- 子供が反抗するとヒステリックになり、暴言や暴力でねじ伏せる。
結果として…
- 布教行為が原因で悪いイメージが付き、地域社会で敬遠される。
- 考え方の違いから社会性や協調性が育たず、友達にも恵まれずに孤立する。
- 授業を受けられないため、学力が低下し、進路選択にも支障を来す。
- 医療拒否は生死にも関わる。
- 収入がなくなる、あるいは収入が宗教に取り上げられるため、貧困に陥る。
- 宗教への反発心が芽生えると、やがて親との確執となり円満な親子関係が築けない。
- 宗教二世でない他人への羨望から劣等感が酷く、卑屈な性格に育つ。
- 親子関係や宗教へのストレスから精神疾患に陥る。
と言った、宗教二世の被害体験は枚挙にいとまがない。
子も親と同じ宗教に依存してしまい、被害者として振舞おうとしないケースを考えると、潜在的な宗教二世は更に多いことも考えられる。
しかし、児童相談所も親の信仰そのものは信教の自由で口を出せないこと、国などの児童保護環境が不十分で保護が子の福祉に繋がらないことなどから、対策に及び腰であるのが実状である。
対策としては親との絶縁が最善であるが、社会に出るまでは衣食住を親に依存せざるを得ないことから、ある程度の年齢までは耐えるしかないという過酷さもある。
また、子供が宗教を脱退したものの次にまたカルト度では代わり映えのしない別宗教団体や擬似科学系団体にハマってしまうこともよくある。
形としては宗教団体の体裁をとっていないが事実上宗教に近い団体でも同じトラブルが発生することがある。
日本では、2022年7月に発生した安倍晋三銃撃事件以降に活発に議論されるようになった。
理由は当該項目参照。
2022年12月になって厚生労働省もガイドラインを作成しているが、広く認知されていないのが難点となっている。
宗教二世であることによる親族との軋轢を公表している公人
- 吉川ひなの(モデル、タレント)実母がエホバの証人の信者であるために体罰を受けたことを著書で公表。しかし擬似科学に傾倒してしまっている。
- スオミアッキ(ライター)実父がイスラム圏出身の外国人であるため、父の信仰に従わなかったとして度々暴力を受けた体験を公表している。
- 大泉実成(ノンフィクション作家)エホバの証人2世であった体験から、輸血拒否による信者家庭の死亡事件を取材して著書とした。
- 大川宏洋(実業家、YOutuber)大川隆法の息子でありかつては幸福の科学に勤務していたが決裂し、父や教団の暴露話を度々行っている。
- 高田かや(漫画家、作家)「カルト村で生まれました」をはじめとした、カルト団体内部で少女期を過ごした体験を表したシリーズを発表。(明言はしていないがヤマギシ会であることがほぼ確定に近い形で描かれている)
- 長井秀和(芸人)創価学会の二世でありかつては活発に活動していたが脱退。しかし今度は反ワクチン運動家になってしまう。
- 杉田かおる:創価学会二世で脱退後親や教団との軋轢を公表するも、日蓮正宗に入信、その後ホメオパシーを進行するようになってしまう。
関連項目
戦場ヶ原ひたぎ:母親が悪徳新興宗教にはまり、娘を教義に従って宗教関係者に性的に襲わせるようにまでなった。性的被害は逃れたが戦場ヶ原家は崩壊し、心に深い傷を残していた。