概要
『鬼武者』シリーズの登場人物で、『1』『3』それぞれで主人公を務める。
史実における明智光秀の重臣の一人・明智秀満を題材にしたキャラクターで、作中でもたびたび自己紹介にて「明智左馬介秀満」と名乗っている。
(ただし、現存する史料では「左馬助」の表記が主で、「左馬介」表記は本作オリジナル。)
一人称は「俺」(『新』以降は「私」)。
後に織田家重臣となる明智光秀の甥で、赤具足を纏った凄腕の若武者。普段より帯刀している「打刀明智拵」をはじめ、鬼の篭手に「龍玉」をはめ込むことで出現する雷斬刀(太刀)、炎龍剣(大剣)、疾風刀(双刃刀)といった鬼一族の武器も難なく使いこなす剣の達人である一方、OPでは長槍を自在に振るい敵兵を一網打尽にし、城内で入手する弓矢や火縄銃も使いこなしたりと、剣に留まらずあらゆる武器の扱いに精通している。多勢に無勢の戦況下でも問題なく相手方を圧倒し、素の力でも下等幻魔程度なら渡り合えるほどの高い実力を持つ。その実力は他方の武士たちも認めるほどで、『1』では木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)からたびたび「織田家に来ないか」としつこく誘われていた。
上述の勧誘に「自由気ままに生きるのが俺の生き方」と拒絶したように、力を行使し他者を束縛したり、下々の被害を度外視し各地で戦争を繰り広げる大名たちを酷く嫌い、何者にも与せず国内外を旅する風来坊的生き方を選んだ(雪姫が送った手紙の内容から、過去に斎藤家の内紛「長良川の戦い」で道三方の兵として参陣したらしく、そこでの経験が一因しているとも推察される)。政略結婚の道具としての生涯が運命づけられた雪姫や、彼女が拾った戦火で家族を失った農民の子・夢丸には同情的でもあり、幻魔の襲撃により雪姫と離れ離れになる未曾有の事態に心身共に疲弊していた夢丸に、自らが海外で見てきた「世界」の一部を語り、自由と希望の存在を示している。また『無頼伝』では、『1』で二度に渡り戦った造魔マーセラスの正体が、応仁の乱の時代に総厳らと共に幻魔と戦った当時の鬼武者で、仲間の死への動揺から篭手が暴走し、敵味方の区別なく斬りかかる真の鬼になってしまった過去を知り、今尚造魔として戦いに駆り出されるその境遇を悲しみ、せめて同じく鬼の篭手を授けられた自らの手で終わらせようと決意していた。
多くの旅で見聞が広いためか、異形の幻魔を前にしても一切物怖じしないほど勇猛果敢である一方、(これもバイオシリーズからの継承要素と呼ぶべきか)敵対者、特に因縁深いギルデンスタンに対しては皮肉や罵倒を絡めた言葉をぶつけたりと口が悪く、人間を含む幻魔以外の生物を実験体ととらえ見くびっているギルデンスタンも、その物言いに乗せられ苛立ちや怒りを顕にすることも。
作中での活躍
鬼武者(一作目)
あるとき幼馴染・従兄妹の関係にある雪姫(斎藤道三の娘)から、斎藤家の居城・稲葉山城にて夜な夜な面妖な影が出没し、家中の者が行方知れずとなる奇妙な出来事が頻発しているという助けを求める手紙を受け取り、旅仲間のくノ一・かえでと共に彼女の下へ急行するが、一足遅く姫は何者かによって攫われていた。
直ぐ様、本丸へ向かう左馬介は、怪物たちに囲まれる雪姫を発見し一時は救出するが、直後に現れた高等幻魔・オズリックに為す術なく倒されて再び雪姫を奪われてしまう。気を失っている最中、幻魔に滅ぼされた鬼の一族たちが鬼火となって現れ、幻魔を打ち倒せなんだ自身らの無念を左馬介に託そうと「鬼の篭手」を授けられる。合意もなく篭手を右腕に植え付けられた左馬介だが、雪姫を救うためなら化け物の力も受け入れると覚悟し、再び彼女の攫われたであろう稲葉山城の本丸へと踏み込んでいく。
本丸は異形の幻魔たちの圧倒的力により既に攻め落とされ、生存していた斎藤家家中や合流したかえで、また夢丸を誘拐しようとしていた織田家家臣・木下藤吉郎や、ギルデンスタンら人語を話す高等幻魔たちとの会話を通し、桶狭間の戦いで流れ矢に撃たれ戦死した織田信長が生き返り、幻魔を従えて稲葉山城を攻め落としたこと、そして雪姫を生贄に暗黒儀式を執り行い、新たな幻魔王に君臨しようとしている計画を知り、雪姫、また人の世を守るため、改めて幻魔との戦いに身を投じる覚悟を固める。
最終局面にて、儀式の生贄とするべく誘拐された雪姫・夢丸を救出するべく自らも幻魔界へ乗り込み、儀式の祭壇にて遭遇した現幻魔王フォーティンブラスと激戦を繰り広げた。勝利後、雪姫らを解放するも、間もなく祭壇が倒壊をはじめ、更にはフォーティンブラスが最後の死力で立ち上がり、左馬介を締め上げる。二人に先に逃げるよう促すも、フォーティンブラスの力に肉体が耐えきれず、左馬介はいよいよ意識を失いかける。しかし、直後に籠手が眩い光を放つと共に、左馬介は真の「鬼武者」に変貌、圧倒的な力でフォーティンブラスを今度こそ打倒する。しかし、人間の姿に戻り意識を取り戻した左馬介は、今度は儀式のため祭壇に現れた信長と対峙する事になる。この後日譚として、その後、雪姫や夢丸、そしてかえでは、左馬介との再会叶わず、雪姫たちは戦のない国外へ、かえでは最後まで左馬介を探すも、後に明智軍として参戦した山崎の戦いで命を落とした事が綴られた。
鬼武者 無頼伝
信長遭遇後、なんとか幻魔界を脱出し、以後も信長の天下を幻魔の世界に変える野望を止めるべく各地で暗躍を続けていた。なお、信長は『2』にて鬼一族の末裔・柳生十兵衛宗厳によって倒されるも、その最期に語った通り復活を遂げており、十兵衛やその仲間たちもまた、再度信長を討たんとそれぞれ行動を開始していた。
その過程で左馬介はかえでや夢丸(何故か前田慶次になっている)とそれぞれ再会を果たす。加えて、信長の同行調査中に接触した風魔小太郎を介し十兵衛と邂逅し、信長を討つという同じ目標の下共闘する事に。なお、本作は多人数対戦ゲームとして鬼武者や人間たち、幻魔たちでエンディングが異なり、前者は当然ながらラスボスとして信長が君臨。打ち倒すもやはり間もなく復活してしまう。
鬼武者3
冒頭のOPムービーにて、高等幻魔にして「幻魔界最強の闘士」を自負するガルカント率いる大軍勢を一人で撃退した後、おじの光秀率いる明智軍に合流し、共に信長の滞在する本能寺を襲撃、先んじて本殿に踏み入り、信長を守ろうと立ちはだかる森蘭丸を撃破するも、直後に「時のねじれ」に蘭丸共々飲み込まれ、現代のフランス・パリにタイムスリップする。現地では、これより先に時のねじれを発見・研究し、自らも現代に飛んで人類粛清計画を推し進めていたギルデンスタンによってパリ市民への急襲が当に実行されたタイミングで、その対処に動いていた軍人ジャック・ブランと接触。言語の壁により意思疎通も叶わぬまま、今度はジャックが負傷した同僚と共に時のねじれに飲み込まれ、本能寺の変前日の日本へと誘われてしまう。その後、ジャックは鬼一族の魂と遭遇し、新たな鬼武者として鬼の籠手と、サポート役として烏天狗の[[阿児])を与えられ、間もなくこの時間軸における左馬介と出会う事になる。
こうした経緯から本作には「本能寺の変当時に現代パリにタイムスリップした左馬介(PC)」と、ジャックの介入により生じた「本能寺の変前日にジャックと知り合う左馬介(NPC)」…という形で二人の左馬介が物語に登場する事になった。同一人物である二人の差別化の為か、前者は髷を結わない中分ロング風の髪型に具足の胴巻を排除したやや現代的なデザインに寄せられている(対して後者は前作準拠のデザインとなっている)。
PCの左馬介はその後、この混乱の首謀者であるギルデンスタンと、彼の編み出した新たな造魔たち(「リオン」や「エレファン」といった元の時代の日本にいなかった大型獣、また戦闘ヘリや戦車といった近代武装機器をも取り込みより強力になっている他、先程触れた蘭丸も造魔として復活)との戦いに身を投じることになる。異国の地、ましてや凡そ400年の開きのある遠い未来の世界に当初こそ困惑の色を見せたが、割と直ぐに順応している。
また時間移動と言語の壁を取り払う能力を持つ阿児の介入により、フランス陸軍中尉にしてジャックの婚約者でもあるミシェル・オベール、ジャックの亡き妻との忘れ形見であるアンリと交流し、その家庭事情からくる両者の抱える蟠りを払拭する事にも一役買った。
因縁の相手ギルデンスタンとの戦いに決着を付けて間もなく、ジャックの活動する時間軸へと繋がるねじれの門を発見した左馬介は、ミシェルやアンリ、そして僅かな時間ながら邂逅を果たしたジャックに別れを告げ、本来あるべき時代へと帰還する。奇しくも、このときは左馬介が最初にねじれに飲み込まれたタイミングと同じ本能寺の変真っ只中であり、ジャックが未来へ引き戻される直前、この時間軸の左馬介は信長にあと一歩及ばず敗れ、半死半生の危篤に陥っていた。舞い戻った左馬介が、倒れ伏したもう一人の自分に駆け寄ると、これも鬼の力か何かしら時間修正の影響かは不明だが、融合し一人の左馬介となり復活し、宿敵信長との最終決戦に挑んだ。
死闘の末信長を打ち倒した左馬介は、これまでも肉体を失いながら幾度となく復活を繰り返してきた信長の魂を鬼の籠手に封じ、とうとう幻魔王・織田信長を基軸とする幻魔の反乱を終結させる。その後は、籠手と共に信長の魂を封印する術を探す為、再度流浪の旅に出立し、歴史の表舞台から姿を消した(その傍らには阿児もいたが、条件達成の上でクリアすると、人間の姿を手に入れた阿児から想いを告げられる)。
なお、当初シリーズは3部作構想だった為か、金城演じる左馬介は本作が最後となり、パチスロ版鬼武者3以降はオリジナルモデルに置き換えられている。
新鬼武者
すべての戦いを終えた左馬介は鬼の力を封印し「南光坊天海」となっている。
『3』にて信長を封印した左馬介だったが、実はその後、『1』にて木下藤吉郎として対峙した事のある羽柴秀吉(豊臣秀吉)が、信長亡き後の新たな幻魔王として台頭しようと目論み、再び幻魔による動乱が巻き起こっていた。左馬介こと天海も、新世代の鬼武者・蒼鬼こと結城秀康に協力し、再度幻魔たちとの戦いに参入する事になった。
因みに本作では錫杖や槍などの長柄武器を用いて戦っている。
余談
因みに、『1』『3』いずれのクリア後特典の隠し衣装としてパンダの着ぐるみが存在する。
(妙に顔付きが邪悪な)頭部分はボタン操作でパカパカと着脱が可能な他、何故かカンガルーのように腹部にポケットが付いており、子パンダが上半身を出して緊張感なく周囲を見渡しながら前足をパタパタさせている。かわいい。
また『3』では、本能寺討ち入り前に光秀の部下からいつもの赤具足を渡され着替える演出が挟まれるのだが、着ぐるみに置き換えていると、受け取る際に左馬介が眉をひそめてイヤそうな顔をする。
本作発売当初は、キャラクターモデルとCVを俳優の金城武が担当したことで、当時の新世代ハードであるPS2の表現力と合わせ、ゲーム誌に留まらず一般誌やTVニュースでも話題となった。一方、当時金城は当然ながら俳優業をメインにし、アフレコも本作とディズニー映画『ターザン(1999)』の日本語吹替など数えるほどしか経験がなかったため、その演技も棒読み気味でお世辞にも上手いと呼べるものではなかった。しかし、続く『3』では要領を得たのかアフレコが上達しており、特にOPムービーでの遠藤憲一演じるガルガントとの対戦シーンでは、両者ともに迫力ある演技を披露している。またリマスター版では出演者が一新されるも、金城は左馬介を続投し1作目の台詞の新録に及ぶ。2004年発売の『3』からおよそ15年が過ぎた久々のアフレコであったものの、それぞれの場面での感情に合わせ声に抑揚が追加され、戦闘では『3』時代を彷彿とさせる逞しい声での熱演を見せた。