上級国民
じょうきゅうこくみん
特権階級などと大体同じ意味を持つ言葉だ。
政治家や役人(高級官僚クラス)などの権力者、富裕層(高額納税者)、大物芸能人、それらを経験した高齢者やその親族など、不祥事が表沙汰にならないか、なりにくいと考えられている人々をまとめて呼称した言葉。
日本では戦後の日本国憲法施行以後、天皇・皇族といった特権階級を除き、特別な身分を有する国民は存在せず、貴族などの設定は憲法によって禁止されている。
以前は華族などがあり、現在でも外交官・在日米軍関係者など一部の外国人には法で特権が認められている。
身分制のない国家でも閨閥関係などで事実上の特権は受け継がれ、貴族の様な階層を形成していることがある。
現代日本におけるそうした格差社会、あるいは一部を加筆特権的な雰囲気・空気を皮肉る意味でこの言葉は使用される。
上述の高級官僚に対しては辞職後は定義上地位を失っているはずだが、その後もなお司法や各政党などから強い権力を有しているかのような対応をされる事が多い。
この現象は独裁的な権力者が「天皇」と皮肉られていた1980年代以前の時期から既に疑問視する声があったようで「院政」と呼ばれていた。
このため「元」高級官僚であっても決して本人やその親族が上級国民の地位を剥奪されるとは限らない。
既に一般に広まった類似語(公的に制度化されていないものを身分階級のように称する語)としては独身貴族などがあげられる。
この言葉はネット黎明期からあったとか、ネット普及前からあったという説があり出典はいまいち不明だが、古くは大正時代の書籍に「特権階級」の意味合いを持つ造語として登場している。
広く認識されたのは2015年の東京オリンピックエンブレム騒動(佐野研二郎氏のデザインに対する盗作疑惑・ならびに氏の他のデザイン物における無断流用(トレス)発覚騒動)がきっかけ。
この件で佐野氏のエンブレム採用中止を決めた記者会見において、五輪委員会の審査会の話を紹介する形で「一般国民」という語が度々紹介された。
要約すると(エンブレムについて)「デザイン界としてはオリジナルデザインだと認識しているが、一般国民には理解しにくいものがあった」という趣旨のものであった。
この場合の「一般国民」とは「デザイン界の専門家ではない人物」のことで、上述の特権階級とされる人々も含まれているのだが、どうにもこの内容は「上から目線」であると認識され、そのことが「一般国民」の対比として「上級国民」と皮肉を込めて言われるようになってしまった。
この時点では「上級国民」とは(上から目線の)「専門家」を指す言葉だったと言える。
しかし、如何とも汎用性に乏しく、対して言葉自体の分かりやすさからすぐさま意味が転用されるようになる。
その後は概ね上述したような金持ち・政治家・権力者(またはそれらを経験した高齢者)など漠然とした範囲に対する批判と皮肉を込めたネットスラングとして一定の使用を得ている。
(しかし「上級国民」と我々が呼んでる時点で問題の人間を優遇させてしまっているのかもしれない)
古くは2005年に内博貴(当時18歳)が未成年飲酒をしてNEWSを脱退した問題で、フジテレビアナウンサー菊間千乃が飲酒を強要させたにもかかわらず、何の処罰も受けなかった事から批判を受けた事案があった。
相手があのジャニーズだったのだから、尚更この高待遇は物議を醸した。
2013年1月に、元フジテレビアナウンサー・千野志麻が沼津市の駐車場で、場内を歩いていた38歳の男性看護師を運転していた自動車ではねて死亡させるという事故を起こしたが、自動車運転過失致死の疑いで警察に逮捕されず書類送検、その後100万円の罰金刑にとどまった。
これは千野の夫の叔父が政財界の大物だったため、権力を利用して逮捕・収監を免れたことができたという見方があり「上級国民」の典型だとされている。
ただし、この事故の後、千野は当時フリーアナウンサーとして出演していた番組を全て降板、現在も出演番組はなく事実上の引退となっている。
2019年4月に発生した東池袋自動車暴走死傷事故の際、警視庁が被告人の高齢男性(当時87歳、元経済産業省官僚)が胸を骨折して入院しており、逮捕の要件である『逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合』を満たさなかったことや、被告人が身柄拘束・取り調べに耐えられないと判断したことなどを理由に現行犯逮捕しなかったことや、メディア各社が警察の取り調べを受けていないことを理由に事故発生直後の報道で「容疑者」の肩書をつけず、敬称呼びしたことなどで、「上級国民への忖度が働いた」「高齢者だから減刑される」という言説が飛び出し、被告人への過剰なバッシングに発展した。
なお、刑事裁判で被告人は自動車運転過失致死傷で在宅起訴され、被害者遺族側が量刑の上限である禁錮7年を求刑した一方、被告人側は
「乗っていた車に欠陥があった」
と、あくまで無罪を主張するもこれは認められなかったが、前述のバッシングが「苛烈な社会的制裁を加えられ、社会生活上の不利益を被った」と見なされ求刑より軽い禁錮5年の判決が言い渡され、その後控訴せず服役。
この際、被告人は積年の功労者として国から叙勲していた瑞宝重光章を褫奪(剥奪)された。
なお、服役初日の被告人は支援者を介して
「 証拠や判決文を読み、事故の原因はブレーキとアクセルの踏み違いによるものと理解した」
というコメントを出した。
その後、被告人は収監中の2024年4月に遺族に「申し訳ない」と謝罪の意思を伝え翌月に面会を行い、
「世の中の高齢者の方に免許を返納するように伝えて欲しい」
と語ったが、同年11月に老衰のため獄中死した。
2021年8月に女優の綾瀬はるかがCOVID-19に感染して入院するが、8月時点で東京都は毎日数千人が感染して医療が逼迫していて入院も困難な状況だったのもあり彼女が入院していた件について「上級国民だから優先的に入院できた」と批判の声が相次ぎ、再び「上級国民」というワードが知れ渡ってしまった。
2022年7月に安倍晋三銃撃事件が発生した直後、自民党が警察庁に1億円をかけて銃器や爆発物の規制に関するガイドラインを変更した事や、犯人がネットの情報を参考に凶器を製造した事を受けてSNS業者に有害情報の削除要請を行う方針を発表したことを指して
「国民に対する保障にろくに金をかけてこなかった癖に、自分らが傷付けられる可能性のあるものだけは仕事が早い」
「やはり自分らが上級国民だという自覚があったか」
などと揶揄する意見も見られた。
しかし、
「政治家が狙われた事件が起きた以上、与野党関係無く警備態勢を強化するのは当然」
「『国民の補償に金をかけてこなかった』とは言うが1億円という額は国の予算で一番大きい割合を占める社会保障費に比べれば雀の涙同然であり、単なる警察当局への言いがかり」
との反論も存在した。
ちなみに「実際に容疑者の立場や地位によって逮捕されなかったり、減刑されるのか」という点については「それの当事者でないとわからない」としか言いようがない。
そこら辺の事情は実際に審理に参加した者でもない限りわかるはずもないが、その被告に下された判決が他の人間からして不十分と受け取られた場合「身分によって減刑が適用されたんだ」「高齢者だから減刑された」という印象を抱かれがちなのもこの言葉が引用される一つの要因になっているものと思われる。
資産および人間関係の都合から身元引受人を準備する、被害者に対する弁償を行うなど、裁判上の減刑に向けた適切な対応がやりやすく、結果的に裁判で有利になりやすいというのはありえるが、これは上級国民であることと直接の関係はない。
例え上級国民であれ、身元引受人がおらず、弁償を渋るようなことをすれば非上級国民と同様に処罰されうるし、非上級国民でも何らかの原因でそうした条件が整えば有利になり得るものだ。
そして当事者である警察や裁判官が「上級国民だから見逃した」とか「上級国民だから無罪・減刑しました」とか言うはずもないので、陰謀論の域を出ることはない。いわゆるレッテル貼りからなる群集心理もあるのではないかとも言われている。→外部リンク
ブルジョア:ブルジョアジーの略。近世に発達した資産階級。日本ではプロレタリアートの対比として、しばし労働活動家などから資産家に限らない人間に対しこの言葉と大差ない意味で批判的に使われる。
いじめ加害者、モンスターティーチャー:身近な上級国民。こちらは学校の隠蔽体質による治外法権やいじめというおまじないで様々な犯罪行為が超法規的に無罪にできるケースが多い。
天竜人:漫画『ONE PIECE』に登場する貴族の別称。転じて、台湾では政商や支配階級、あるいは台北に居住し、かつ苦労知らずな人間を揶揄するスラングとして使われる。
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「どうせアナタみたいな男は女性の性欲のはけ口になるしか価値無いんだからさ」 仕事を失い路地裏生活を始めて数ヶ月、ある時路地裏で蹲っていると一人の女性に保護された。温かいお風呂と食事を用意され何とか落ち着くことが出来た聞き手に、彼女から荷物持ちとして雇われないかと提案される…… 利用規約に関してはプロフに載せてあります。確認をお願いします ご感想、コメント、アドバイス等、お待ちしております。 Twitterもやっております。フォローよろしくお願いします @Uni18128761,764文字pixiv小説作品