華族
かぞく
明治・大正・昭和時代戦前まで日本に存在した貴族制度、及び同制度による貴族のこと。
主に江戸時代までの公家・武家(将軍家・大名家等)・琉球国の王族が移行したほか、明治維新などで功績を挙げた者やその子孫(「新華族」と別称された)が充てられた。皇族と朝鮮王室(分家を含む)は華族に含まれず、さらに高い身分として扱われる。
爵位は、公家は朝廷での家格を基準にした(つまり、功績で高くなる事もある)が、武家は一部の例外(徳川将軍家・御三家・御三卿)を除いて家格は無視され、廃藩当時の領地の実収入(≠石高)を基準にした(そのため、仙台伊達家や会津松平家の爵位はあまり高くない)。加えて、明治維新時及びその後の功績が加味されて通常の水準より高い爵位を叙される例もあった(長州藩主家の毛利家は侯爵クラス、公家の岩倉家は伯爵クラスであったが維新以降の功績によりいずれも公爵となっている)。
また、爵位は名門のバロメーターとは必ずしも限らず、武家は古代や中世以来の名門でも男爵や士族は普通にいるし(江戸時代に百姓や町人になっていると、平民すらいる)、近代の政治家として大成した者は元の出自に関わらず高位の爵位を与えられ、社家はいくら歴史があろうと、出雲大社の千家家ですら男爵である。
華族社会にとって閨閥(婚姻関係による社会ネットワークの構成)は切っても切れぬ存在であった。基本的に華族は華族同士でしか結婚しないが、許可さえあれば華族以外とも結婚することができた。
江戸時代の公家や大名には、近い家格の公家や大名から来た正室から生まれた当主はあまり多くはなく、大半が(より低い家格、武士や庶民の出身も多い)側室から生まれているのだが、医療水準の向上や生活環境の改善もあり、華族は正室から生まれた当主が多くなっている。
養子も許可さえあれば取れて、場合によってはまったく血縁関係がない家からも養子を入れられた。この点は、同じ皇族同士からでも養子を入れられなかった皇族とは異なる。
公爵以下の5種の爵位が与えられ、貴族院議員への任命等の特権を有した。
ただし、ヨーロッパの貴族とは違い、軍の士官への優先登用がなく、士官の大半は士族や平民であった。また、衆議院の被選挙権もなかった。
爵位を持つのは家の当主のみで(イギリスと同じ)、華族(や士族)の家から分家すると分家の一員は平民になった。一部の分家は特別に爵位を賜り、子爵か男爵を授けられた。
ヨーロッパの貴族とは違い、爵位には地名等を冠せず(尾張徳川家を例にすると、「名古屋侯爵」とかではない)、また、複数の爵位を同時に所持する事もできない。
なお、宮家出身の皇族のうち身位が「王」(天皇の五世孫より下)でありかつ後継者の地位に無い傍流の皇族は、独立に伴い家名を賜って華族(その宮家で最初に華族になった者が侯爵、あとは伯爵)となるのが慣例であった。これらの宮家出身華族が近年の皇位継承問題に対し皇籍復帰の対象として議論されることもある。臣籍降下した元皇族の華族は、皇室の男系の血筋を引かない養子を取ることもできた。
1947年、日本国憲法施行に伴い制度廃止。ただし、現在も旧華族家は連絡組織(旧華族会館が改称された霞会館とその運営団体)を有するほか、縁の土地(旧大名家の領地等)ではしばしば名家として遇される。場合によっては旧邸宅や城郭を美術館などに開放し、そこの名誉館長に納まっていることもある。
また、漫画やライトノベル等の作中においては「良家のお嬢様・御曹司」を表すアイコンとして旧華族(風)の名字が用いられることもある。
侯爵家以下は各一部。
侯爵家
琉球王家 - 尚
公家 - 久我 四条 醍醐 嵯峨 広幡 中山 花山院 菊亭 中御門
武家 - 徳川(紀州・尾張) 松平(越前) 伊達(宇和島) 浅野 池田(岡山藩主・鳥取藩主) 佐竹 鍋島 蜂須賀 細川 前田 山内 黒田
伯爵家
元皇族 - 清棲 伏見 東伏見 鹿島 葛城 上野 二荒 宇治 龍田
公家 - 三条西 中院 飛鳥井 姉小路 勧修寺 烏丸 冷泉(上冷泉) 日野 壬生 正親町
武家 - 徳川(御三卿・清水・田安・一橋) 松平(松江・高松・前橋) 有馬 井伊 上杉 小笠原 伊達(仙台) 酒井 立花 津軽 藤堂 南部 松浦 柳沢 亀井 真田 島津(佐土原)
子爵家
公家 - 綾小路 入江 梅小路 梅渓 交野 勘解由小路 唐橋 北小路 東園 六条 六角
武家 - 足利 板倉 大河内 岡部 織田 加藤 吉川 京極 九鬼 鳥居 本多 水野 内藤 松平(会津)
勲功他 - 高橋 榎本 加藤 渋沢 福岡(土佐藩家老) 浜尾 由利
神官 - 白川(伯王家)
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