概要
貴族とは本来、生まれついて保証された社会的地位と高貴な血筋に基づき、それらを持たぬ者達を庇護する義務を持っている。これをノブレス・オブリージュと言う。
腐敗貴族は端的に言えばノブレス・オブリージュを唾棄する貴族の事を指す。
主な特徴
- 自らの血筋や地位にあぐらをかいており、それらを自らの力と勘違いしている。
- それに付随して基本的に地位と血筋しか取り柄がない無能である場合も多い。
- 自らを選ばれた人間と信じて疑わない。
- 労働者階級と言った貴族階級ではない人間を人間扱いしていない。酷い場合「所有物扱い」して戯れに殺す事すら厭わない。
- 自分より下位の人間には傲岸不遜だが、自分より上位の人間に対しては何処までも卑屈。
- 忠臣のふりをしているが、王族や皇室などの主家に対して忠誠心は皆無。それに伴って愛国心などカケラも無い。
- 保身の為ならば親類縁者を売る事すら一切躊躇わない。
主な末路
- 反乱者や正義の味方など、地位も血筋も一切通用しない相手に成敗される。
- 主家の人間に断罪されて没落する。
- 通りすがりの狂人や超越者に「邪魔」「鬱陶しい」という理由でゴミ処理めいて惨殺される。
- 敵に回してはならない相手を敵に回し、徹底的に追い詰められた末に社会的に破滅する。
- 自分が利用していた相手に復讐される。
- 自らのバックにいる存在にトカゲの尻尾切りめいて切り捨てられる。
- 自国が敵国に占領された際、敵国の重要人物に「生かしておいても百害あって一利なし」として粛清される。
- 内通者だった場合、「用済み」と称して消される。
主な該当者
創作
貴族の項目にも載っているが、創作において悪役として非常に都合が良いので、貴族階級の人間が腐敗貴族として主人公陣営に立ちはだかるのはほぼお約束になっている。
ONE PIECEに登場する勢力。世界貴族とも呼ばれる。作中世界では一般庶民から蛇蝎の如く忌み嫌われていると同時に非常に恐れられている。大半が上記の腐敗貴族の条件をコンプリートしており、ごく一部の良心的な者達を除き堕落し切って人間的に腐り果てているか、或いは目に見えた腐敗や堕落こそ無いものの天竜人以外を「虫」や「ゴミ」と看做しその命を軽く扱う非常に冷酷な思想と価値観の持ち主である。
銀河英雄伝説の銀河帝国に属する貴族集団。天竜人と同じく人間的に腐り果てた連中ばかりであり、その上地位と血筋だけはいい無能ばかりと条件をほぼ満たしている。
時代劇に登場する悪徳公家。武家が主役の時代劇では専ら敵役として登場する。とはいえ、現実では有能だったり武辺者の公家もなかなか多かった。
悪役というだけあって、腐敗貴族の条件をほぼコンプリートしている。また、親類縁者が悪役令嬢以上に腐り果てている場合も多い。
この男やこの男などの少数派を除いて、反対勢力に暗殺者を差し向けたり、部下を使い捨てにしたり、一般庶民をオモチャにしたり、挙げ句の果てに法治国家日本の法を捻じ曲げたりと、「人間のクズ」を超えた「邪悪の権化」のオンパレード。因みにこの自称国士は擁護不可能のド悪党ではあるものの、意外にも貴族としてはかなり真っ当。
現実
「事実は小説よりも奇なり」とはよく言うが、現実世界にも腐敗貴族と呼んで差し支えない貴族が結構いる。
朝鮮半島最後の王朝「李氏朝鮮」の貴族階級。国教である儒教の倫理に耽溺した結果、「頭でっかちで下位の者にとことん横暴な無能ニート」としか表現できない存在となった。それ故に、李氏朝鮮の没落と破滅の直接的な原因と言える。但しごく僅かに良識的かつ有能な人物もいた。
- 王政フランス末期のフランス貴族
無能・横暴・選民思想論者など、腐敗貴族のテンプレ役満というべき連中。領民から税を徹底的に搾り尽くした挙句に贅沢三昧しており、フランス革命によって粛清されていなければ、間違いなくフランスは地図上から消えていたか弱小国になっていただろう。但し、革命主導組織の一角であるジロンド派に与した者もいたりと良識派もそこそこ居た模様。
さらに言えば、革命派のプロパガンダによって不当に毀損された王侯貴族も多いとされた他、当時のフランスの政情不安も七年戦争の敗戦、アメリカ独立戦争支援による財政逼迫、冷害など、貴族の責任の割合はそれ程大きいとはいえない。
革命により学のない飢えた民衆に無責任に権利を与えた弊害と、後に続く史上初のテロリストと呼ばれるロベスピエールによる恐怖政治時代による知識と文化の損失を思えば、どちらが腐敗していたのかはわかったものではない。
武家である為、厳密に言えば貴族ではないが、関白に叙された平清盛の親類縁者がまさにそれ。「平家に非ずんば人間に非ず」という言葉がそれを端的に表している。なお、こういった悪評は源氏が中心となって流したものが多い。