概要
一般大衆に比べ名誉、知識、技能、富、権力などいわゆる社会諸価値をかなり高い程度に独占している社会階級をいう。上流階級と類似した言葉であるが、こちらは批判や侮蔑の意味合いが込められている場合が多い。
その特性上社会において免税、政治などあらゆる面で優遇権、支配権を持っており一般人が生涯かけてもできないような贅沢な生活をする者も多い。
それらの特徴故に他者からは羨望や妬みの感情を向けられやすく、何らかの理由で特権階級としての地位を失ってしまえば一気に立場が悪くなる可能性もある。
この身分は文明の始まりから存在しており、王族や貴族がこれに当たる。中世になり、特にヨーロッパでは教会の影響力が強まると聖職者が加わるようになった。近世では国王が全てにおいて絶対的な権限を持つようになる(絶対王政)など変動もあった。後の世の階級と比べて、世襲によるもので生まれを重視するのが特徴。
末期になるとこの身分に対する民衆の不満が高まってフランス革命のように武力で打倒される事もあった。以降の近代、特に民主主義革命があった国ではこれらの身分は無くなり、君主制や貴族制度を維持した国でも次第に権力を失って形骸化し、誰もが同じ等しい義務と権利を持つ「国民」が形成されていく事となったが、一方でロシア革命などの共産主義革命では資本家といった市民階級(ブルジョワジー)が特権階級として弾圧を受ける事もあった(もっとも政府中枢に権力が集中しやすい共産主義体制下では、共産貴族と揶揄されるノーメンクラトゥーラや太子党といった裕福な「特権階級」が新たに生まれる事になったが…)。
日本においては古代には大王や皇室、その周囲で政治に関わった豪族が存在し、仏教が広まった奈良時代以降は貴族や僧侶が、江戸時代以降は武士がこれに加わった(これらも原則として、ヨーロッパの王族・貴族同様に世襲制である)。明治維新以降はいわゆる四民平等によってこれらの身分は撤廃されたが、元公家・大名の華族や元武士の士族は戸籍・法律上は平等に扱われたものの税金・政治の面で優遇される場合もあった(士族に関しては国民国家を目指す明治政府による秩禄処分や廃刀令を始めとする規制等により旧来の武士としての特権を喪失し、西南戦争などの騒乱を経て次第に没落していった)。
戦後はこれらの身分も完全に撤廃されたが、現在でも政治家や資産家などといった一部の人々が特権階級や上級国民などと揶揄されることも少なくない。
現代社会の格差を指して「人間の社会は昔から何も変わっていない」と指摘する人もいるが、少なくとも、王族・貴族の子は必ず王族・貴族に育つもの、農民に生まれたからには農民の共同体のために尽くすべきであり都会に出て商売を始めるなど邪道、といった生まれ重視の価値観は昨今ほとんど撤廃されており、この点は明らかな相違点と言える。