概要
「子は親を選べない」、つまり生まれる境遇、親の人格や家庭環境、資産、遺伝子に至るまで、全ては運任せで、自ら選択することはできないということを、カプセル玩具などの抽選販売形態のひとつ「ガチャ(ガチャガチャ、ガシャ)」や、それに由来するソーシャルゲームにおける抽選機能に喩えたネットスラング。「親ガチャに当たった/外れた(成功/失敗した)」と表現される。
「人生ってしょせん運だよな」という主張や概念をたった四文字で露悪的に表現できるという点でも、(便利に使ってはいけないが)便利な言葉である。
かつては「親フラ」のような「自室で趣味などいろいろな作業をしているとき、親がドアをガチャっと開けてしまった(場合によっては入ってきてしまった)」を略して「親ガチャ」と使われることが多かったが、現在では上述の通り「親(どちらかといえば保護者本人より、生まれや育ちというニュアンス)の抽選」という使われ方が中心となっている。
逆の立場は「子ガチャ(出産ガチャ)」。ただし子ガチャについては「引かないで済ます」ことも可能だが、親ガチャについては誕生したからには必ず引かなければならない(既に引いてしまっている)。また親ガチャはどうしようもないのに対して、子ガチャについてはパートナーの選択、ひいては現代遺伝子工学によって理論上はある程度制御できる(後者は倫理上許可されていないので当面の間不可能だが、国によっては研究が進められてしまっている)。
現在一般的な使われ方の「親ガチャ」については、2013〜2015年ごろからTwitter上などで散見されるようになり、2017年ごろには広く使われるようになったことが観測されている。→参照:ニコニコ大百科の同記事
2021年9月に『現代ビジネス』で公開された「格差拡大、貧困増大…それでも「若者の生活満足度」が高いこれだけの理由」という記事を発端に、SNSで論争が拡大している。
起源
もともとは、いわゆる「虐待サバイバー」「毒親育ち」「宗教二世」など、健全な親子関係や家庭環境に恵まれなかった人物が、自身の状況を「親ガチャに外れた」と表現した概念であるとされる。
言葉が広まった現在では、被虐待者でなくとも、家庭の経済的な事情や、(学校などでの)周囲との家庭環境の違和、遺伝性の疾患の有無、さらには出身地域による文化的・経済的格差などを含め「生まれた時点で人生がかなり決まっている問題」に対し、どちらかと言えば「諦め」「嘆き」の意味として用いられている。
この「親ガチャ」の広まりにより、「〜ガチャ」という表現が、生まれ持った事情の由来に合わせて派生的に用いられることもある。例えば「家柄ガチャ」「容姿ガチャ」「才能ガチャ」のような言い方も確認されている。
社会学では、親子間で文化資本を受け継ぐとされる。つまり、エリートと呼ばれる人々の親は教養豊かだったり金持ちであることが多く、その逆も然りなのである。
親ガチャという表現を使う人の多くは、虐待や貧困、複雑な家庭環境など、「自分はたまたま親ガチャが上手くいかなかっただけだから仕方がない」と、辛い思いに折り合いをつけざるを得ない状況であるといえる。
「親も子を選べない」「親は子を一番に思うのが当たり前」「親孝行して当然」というような世間一般の視点や考え方が、必ずしも当てはまらない家庭で生まれ育った人は決して少なくない。
2010年代には転生ものブームが起きたが、運命は生まれ変わることでしか変えられないという発想は「親ガチャ」の概念と呼応している。
俳優高知東生は、自身も複雑な家庭環境に育ち、苦しんだ経験があることから、「『親ガチャ』っていう言葉ができたことで、共感や救いが生まれたと思うんだよな」「俺も皆が当たり前に手に入るものが、手に入らなかった。だからせめて「親ガチャ」くらい許してくれという気持ちがある。」などとTwitter上で意見を述べている。
なお、一部テレビ番組などでの取り上げられ方から、一概に金銭的な問題(裕福な家庭に生まれる→親ガチャに当たった、貧乏な家庭に生まれる→親ガチャに外れた)と断定して論ずるようなタレント・コメンテーター・またその発言を報じるメディアが増えた。しかし、親ガチャとは単に金銭だけが基準ではなく、複合的な「親」「生まれ」に絡んだ表現である。
「親ガチャ」への批判
儒教倫理等に基づく保守派、自己責任論を好む新自由主義者、優生学の復活を警戒するリベラル派、「自分は親ガチャに当たった」と考えマウンティングしたいだけの人など、あらゆる立場から批判を受けている。それだけこの概念は大きな衝撃を与えたともいえる。
全ての人が必ずしもそうではないが、「親ガチャ」という言葉を肯定的に使う人、例えば「今の自分がうまくいっていないのは親ガチャに外れた(親が悪い)せい」とする責任転嫁である、という指摘もある。
中には裕福な家庭で育ち、本人の意思を尊重し、活動に理解がある家族がいるような「恵まれている」環境で生まれ育った人、つまり、相対的に見れば「親ガチャが当たった」立場の人でも、家族との些細な関係のこじれや容姿・生まれ持った能力などを不満に思い、もっと不幸なガチャの人から怒られることもある。
もちろん、何をどの程度苦痛に感じるかは人にもよるため、本人が「生まれや親のせいで辛い」と感じればガチャに外れたとも言えるだろうが、「当たり」「外れ」に分かれる以上、自身の立場や境遇について他者と比較した上で表現するのも必要だといえる。もっとも、比較したところでそれが成功につながるわけでもないので、その点は考慮すべきでもある。
また、こうした宿命論は社会改良への諦めを起こし、投票率の低下につながっているという意見もある。
しかし、この言葉を嫌いつつも「あくまで嫌えるのは自分が恵まれてるから」と自認する人も少なくなく、嫌いではあっても現実問題として否定しないという人も存在する。当たり前の話だがいくら金などに恵まれたとしてもそれが幸せを保障するとは限らないし努力したところで報われるとも限らないので、その点は考慮すべきではある。
さらには、跡取り問題などで争いが起きていた戦国時代から、良い悪いは別としても「親ガチャ」自体は今に始まった問題ではなく、何百年物前から始まっていたことでもある。
少なくとも、人間は機械から出てくるカプセルに入った「モノ」ではない「自由意思を持ち、考えて行動する存在」であり、その人の行く道を選べるのはその人だけであり、どんなに親しい人でも他社の道を決めるようなことをしてはいけないという事だけは最低限の前提として誰もが心に留めておくべきだろう。
転じて
主に人間関係の運について言われることが多く、親ガチャの他にも派生形として
- 相方ガチャ
主にお笑いコンビの相方に関して
親ガチャというスラングが発生する以前からネタとして使われていたもので、このコンビが最も顕著だと言われる
- 出生地ガチャ
自分が生まれた場所に関して
たとえ東京や大阪のような大都市であっても「区」単位で差別もあるため、その後の環境まで見ないと勝利したか爆死したかまではわからない
さらに親の能力や人間関係によってはあらぬ場所に飛ばされる転勤というロシアンルーレットもある
- 血液型ガチャ
生まれた際の血液型に関して
B型に生まれただけで人生ハードモードになる…と言われがちだが、実際はO型も結構被害を受けている模様
- 教師ガチャ
担任となった学校教師の性質に関して
ブラック校則も含む場合は学校ガチャとも
- 上司ガチャ
配属先の上司の人間性に関して
- 近隣ガチャ
引っ越した集合住宅の周辺住民に関して
- 絵師ガチャ
主になろうやカクヨム等に掲載されているWeb小説が書籍化する際の、担当絵師の技量に関して。
- 漫画家ガチャ
前述の絵師ガチャの漫画家版だが、作画だけでなくコミカライズ版における原作にはないオリジナル要素の内容によって評価が大きく分かれる。コミカライズ版の作画担当(漫画家)が変わる場合にはもう一度引くことになる。
- 原作ガチャ
絵師ガチャの逆
- 声優ガチャ
漫画作品等がアニメ化やドラマCD化した時の登場人物の担当声優に関して
など様々な人間関係のガチャが言われている。
ところで・・・
ガチャガチャと言えば普通はベンダーの中からカプセルが出てくるものだが、つまり親から生まれてくるのは子供であって親をベンダーとするなら子はカプセル。
あれ?なんかおかしくね?
関連タグ
上級国民:(主に悪い意味での)親ガチャ大勝利。
連れ子:彼女/彼氏チケットに付いてくるおまけ。
反出生主義:ガチャ規制派。
生老病死:忘れられがちがだが、「生」は苦しみの一つ。
回避性パーソナリティ障害:親ガチャなどで大爆死した結果、ガチャそのものを引こうとしなくなる現象。
すばらしい新世界:生まれた時点でステータスに制限が掛けられているクソゲー。
チャイルドエラー:チュートリアルのガチャだけ引かれたまま放置されたアカウント。
運も実力のうち:日本の諺
デスティニー・プラン(機動戦士ガンダムSEEDDESTINY):制度上はどんな家庭に産まれても遺伝的な素質を持てば充分な環境が用意される。しかし後天的な素質は完全に無視されるうえ、遺伝的な素質は両親からの由来である。また富裕層は金銭に物を言わせて遺伝的に有利なコーディネイターを生み出してゆく可能性がある以上、結局は本質的な解決にはなり得ないと言える。もっとも強制と遺伝的な素質の絶対視が無ければ決して問題のある制度ではないだろう。
異世界もの:異世界の国王や神が異世界召喚という名目で勇者を呼び出したり、自分の統治する世界(国)の住人の中から勇者を任命したりする際に、それが主人公でなかった場合は勇者ガチャの結果はハズレであるのがお約束の展開となっている。
戦車道大作戦!:ガールズ&パンツァーのゲームだが、生徒ガチャに定期的に親世代である西住しほと島田千代が出てくるため「生徒ガチャじゃなくて親ガチャだろ」と言われる。