概要
ある言説が疑似科学的言説であるとは、その言説が「科学」として提示されながらも、「科学ではない」ものを指す。
科学と疑似科学の境界線を定める事は難しいが、現在疑似科学として批判されているものの多くは、統計学的にいい加減だったり前提としている事実や論理に重大な錯誤があったりするにもかかわらず、科学的な実証性を装っているものを指す。いったん実験的に否定された仮説が後から扇動のために新説を装って広められたと思われるものもある。
メイン画像の地球平面説のように「科学」を装いながら、あまりにも科学的体裁からかけ離れているものは疑似科学というよりオカルトに入れられることもある。
なお、「単に間違っていただけの科学的な仮説」は本項で取り上げているような意味での「擬似科学」に含まれない。疑似科学とそうでないもの(例:単に間違っていただけの仮説)の大まかな見分け方は、Wikipedia日本語版の「疑似科学」→「指標」を参照。
極端な話、疑似科学批判の論説であっても、反証可能性が欠如している(ロジックの構造そのものが、どんな証拠や反論でも、その主張を論破出来ないようになっている)のであれば、その批判の方も疑似科学である可能性が高い。
社会的影響
単なるネタとして遊ぶ分には面白いものも多いが、悪徳商法、資格商法などに利用されるものも多く注意が必要となる。
疑似科学の業者が政治家や行政などに接近するケースも多くあり、政治家や行政・財界・マスメディア等の有力者が信奉者となってしまうと社会に広く科学的な誤りがもたらされたり、悪徳業者のもとに多額の税金が流れるといった実害を及ぼすこともある。現代日本でも「ゲーム脳」「ホメオパシー」「親学」「誕生学」「EM菌」など政界や教育界の一部に浸透している疑似科学もあり、妥当性に欠ける学説に基づく見解が政策に反映される危険があるため専門家の批判を呼んでいる。特に「親学」に至っては一時埼玉県で公式に採用され、国会議員の間でも元首相の鳩山由紀夫・森喜朗・安倍晋三に支持されるなど広く浸透した。
感染症パンデミックの際にも、擬似科学が反ワクチンや反マスク言説として広まり、世間に混乱をもたらした(ワクチンのリスクの指摘やマスクのデメリットを指摘する言説の全部が疑似科学というわけではないのだが、いい加減な根拠や荒唐無稽な陰謀論をもとにマスクやワクチンを全否定する扇動的な極論が少なくなかった)。
基本的な科学的知識や論理的な思考力(科学的リテラシー)があれば、少なくとも粗雑な擬似科学に騙されることはなくなるはずである。とはいえ、実験結果などが巧みに偽装された論文などは、専門家の査読ですら完全に見抜けるとは限らない。科学は万能ではない。あらゆる対象に対して、常に白黒に分けて考えがちな人は、複雑な現実を明確に説明してくれる疑似科学や偽情報に足をすくわれやすい。手持ちの情報で判断が難しい事柄に対しては「現段階では分からない」「Aの可能性が高いが、Bの可能性も否定できない」と保留することも大事である。
マスメディアのコメンテーターなどは、起こったばかりの事件など事実がよく分かっていないことにも明快なコメントを出すことが求められるため、いい加減な根拠で分かったような解説をする人が重宝されがちである。このため、専門外の学者による適当な解説やコメントが疑似科学を広めるのに一役買わされてしまったりする。
境界科学
いったん理論が否定され、疑似科学であるとみなされたものであっても、のちに正しさが証明された事例もなくはない。
例えば「大陸移動説」である。思いつきレベルの提唱は古くからあったが、多くの根拠をあげて理論付けたのがドイツの気象学者ヴェーゲナーである。ヴェーゲナーの理論は当初大いに注目されたが、大陸が移動するメカニズムをうまく説明できなかったため、次第に正統派の地質学者から省みられなくなり、手塚治虫が漫画『ジャングル大帝』(1950年〜1954年)で取り上げたころは学会から否定された「過去の異端の説」という扱いであった。しかし、1960年代に至ってプレートテクトニクス理論が発展したため大陸(正確にはプレート)が移動する根拠が明らかになり、主流派科学に組み入れられた。このように、理論的欠陥を含むため疑似科学扱いされているものは境界科学と呼ばれる場合がある。ただし、あなたの信じているそれがそうである、という確証はない。
有名な疑似科学
- インテリジェント・デザイン(「知性ある何か」により生命や宇宙の精妙なシステムが設計されたとする理論。旧約聖書の創造論を教育現場に持ち込むための方便として、科学風の外見をまとわせたものである)
- ルイセンコ学説 (ただしそのうちの一部理論、例えば接木による雑種作成については後に「接木キメラ」として見直された)
- 地球空洞説
- ホメオパシー
- バッチフラワー(ホメオパシーの派生、詳細はホメオパシーの項目を参照)
- EM菌
- 水からの伝言
- マイナスイオン
自然科学以外
- 血液型、人相、筆跡などによる性格診断(ただし、人相学や筆跡鑑定は一部で事件捜査などに生かされている)
- 親学(親学推進協会の一派。ただし親学という語そのものは児童虐待や少年犯罪を予防する観点から、「親の学び」を追求する意味であちこちの自治体が親学推進協会の登場以前から個別に使いだしており、そちらはまともな内容の物もある)
- 江戸しぐさ
- 精神分析、地政学など(そう見る向きもある)
関連イラスト
関連タグ
外部リンク
ジャパンスケプティクス:懐疑論者の組合。
山形大学理学部物質生命化学科 天羽研究室のページ:水商売ウォッチング(httpsではないのでブラウザに信頼できないページだと言われるが閲覧に支障はない)水を含む物質の物性を研究している研究者である天羽優子氏のサイト。水関連の疑似科学に詳しい。
明治大学コミュニケーション研究所:疑似科学とされるものの科学性評定サイト