概要
1960年から1969年まで。元号で言うと、昭和35年から昭和44年まで(昭和30年代後半と昭和40年代前半)。
1960年代の日本
日本はいわゆる高度経済成長期まっただ中であり、経済発展が何より重視・優先された時代である。東海道新幹線開通、東京オリンピックの開催など、第二次世界大戦前の構想が多く実現し、ほんの19年前に破壊しつくされた国とは思えないほどの復興・経済発展を遂げた。
「三種の神器」と称された冷蔵庫・洗濯機・テレビに代表される「一家に一台」の電気製品の普及による生活の電化、自動車の普及(モータリゼーション)をはじめとして日本人の生活は大きな変貌を遂げ、戦前から続く古き良き日本の名残は失われて行った。
60年代も末期になると公害の深刻化(これは工業化の他に当時はまだゴミ投棄に関する意識が低かったことなども理由の一つである)や交通事故の多発など、経済発展の負の部分も顕在化し、やみくもな近代化への懐疑が芽生えはじめる。
交通
1963年の名神高速道路の栗東-尼崎間を皮切りに高速道路の整備が始まり、それまで悪路が普通だった国道・県道などの主要道路も一気に舗装・拡幅が進められた。その進展と共に、従来の貨物列車に加えてトラック輸送も物流を担うようになった。旅客輸送では東京近郊のベッドタウンの開発に伴い国鉄の通勤路線は殺人的な混雑に見舞われ、国鉄は1970年代にかけ自己資金で「通勤五方面作戦」を進めたが、その膨大な投資が経営を圧迫し、後の国鉄分割民営化への布石となる。また、蒸気機関車の電車化もしくは気動車化を進める「動力近代化計画」が実行に移され、SLは姿を消していった。大都市では路面電車廃線が相次いだ。
文化
1960年代後半には、戦後ベビーブームとともに生まれた世代(日本では団塊の世代、つまり島耕作と同世代)の若者文化が一気に花開いた。この世代は小学校の一クラスが60人いたこともあったほど人口が多かった。幼少時から激しい競争に晒されてきただけにたくましく、学生運動ではその若い熱気を大いに発散させた。ただし実際に学生運動に関わった学生は同世代の中でも少数派。当時の大学進学率はまだ低く、当時の学生の中でも政治運動からは距離を置くノンポリの方が多かった。
団塊の世代は別名「ビートルズ世代」ともいわれるが、この世代で洋楽に親しんでいた層はまだ少なく、マス層に支持されたのはグループサウンズや歌謡曲、和製フォークであった。“若者文化の聖地”と呼ばれた新宿には、アングラ演劇やジャズ喫茶、ディスコの前身といえるゴーゴー喫茶などが集まっていた。
服飾
洋服も大量生産、大量消費の時代に突入し、それまでの家庭での自作やオーダーメイドから既製服化が進んだ。当時のファッションはまだ個別化、細分化が進んでおらず、ミニスカートのような流行は若者から中年層までを席巻した。
先端的な若者のファッションとしては、1950年代のアメリカ合衆国由来のアイビールックを崩したようなスタイルの「みゆき族」から始まり、英国由来のモッズ、米国のサイケデリック・ムーヴメントの影響を受けた「サイケ族」、ヒッピーの影響を受けた「フーテン族」などが銀座や新宿に現れ、世間を騒がせた。
一方で、この時代までは中高年女性の(普段着としての)和装がまだ一般的である、大学生が学生服を着用し学帽をかぶる、といった戦前からの伝統もまだ残存しており、当時の漫画などではしばしば和装の女性や学生服姿の大学生が登場する。
1990年代中盤から2000年代初頭にかけて、この時代のファッションなどが再度クローズアップされた。このリバイバルファッションその他はフリクリなどに描かれている。
1960年代の国際情勢
アメリカ合衆国とソビエト連邦の冷戦は1962年のキューバ危機で頂点に達した。米ソ関係は、核戦争による人類滅亡の危機を招来したキューバ危機の反省から、1963年の部分的核実験停止条約の調印を期に、緊張緩和に向かった(デタント)。当時のソ連は穀物の不作でカナダから小麦を輸入しなければならなくなり、西側との良好な関係を維持する必要に迫られ、一方のアメリカもベトナム戦争の泥沼化で膨張を続ける軍事予算に歯止めをかける必要があり、軍縮の必要に迫られたという事情があった。が、この流れはニキータ・フルシチョフの失脚によって断ち切られることとなる。
1960年代は米ソの宇宙開発競争が最高潮に達した時代でもあった。特に1958年のスプートニク打ち上げ、そして1961年のユーリー・ガガーリンの有人宇宙飛行成功でソ連に先を越された米国の宇宙開発への注力ぶりはすさまじく、ジョン・F・ケネディ大統領はソ連に先んじて月面に人を送り込むべくアポロ計画を言明、1969年のアポロ11号の月面着陸でそれは現実のものとなった。
1960年代にはあらゆる分野で宇宙がブームとなるスペース・エイジが到来した。ロケットの模型作りが流行し、テレビ番組やファッション、デザイン、広告などでもロケットや宇宙を扱った番組や銀色のメタリックな商品やデザインが席巻した。スタートレックもこのスペース・エイジの産物と言える。
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