概要
| 公用語 | スペイン語 |
|---|---|
| 首都 | ハバナ |
| 国家元首(職) | 大統領 |
| 面積 | 10万9884平方キロメートル |
| 人口 | 1005万5968人（2023年12月） |
| 国歌 | バヤモの歌 |
| 建国 | 1902年5月20日（アメリカの軍政から独立） |
| 通貨 | ペソ |
| 政体 | 一党独裁制 社会主義共和国 |
キューバ共和国（キューバきょうわこく、スペイン語：República de Cuba、通称：キューバ）は、カリブ海の大アンティル諸島に位置する社会主義共和国。1959年1月にキューバ革命を達成し、ラテンアメリカ初の社会主義共和国を成立させてからも堅持している。野球が国民的なスポーツで、選手が国家公務員として扱われており、音楽・映画も世界的に人気が高い。
歴史
初期
かつてこの地は中南米の先住民が生活していたが、1492年10月にイタリアの探検家・航海士であるクリストファー・コロンブスが到達した。1511年8月にスペインが植民地として統治し、奴隷貿易の拠点となってアフリカから黒人たちが連れ込まれた。1898年12月に米西戦争でスペインが敗北してアメリカの軍政下に入り、1902年5月に独立してからは1934年5月まで事実上その保護国であり続けた。1952年3月からはフルヘンシオ・バティスタ政権でアメリカの影響にあったが、1959年1月にキューバ革命が達成されてからはソ連の影響にある社会主義共和国となった。
キューバ革命
1959年1月にフィデル・カストロとチェ・ゲバラたちが立ち上がって革命を成功させ、アメリカ大陸で初となる社会主義共和国を成立させた。元々カストロ自身は共産主義者では無かったが、東西冷戦の最中にソ連と接近した事やゲバラらの感化もあって共産主義に傾倒していった。更にアメリカを訪問した際に会談するはずのアイゼンハワー大統領がこれを拒否してゴルフに行き、代わりに会談したニクソン副大統領から「革命の後に共産主義が影響を拡大した。」・「反革命派を処刑している。」・「自由選挙を実施していない。」といった状況を並べて問い詰められるなどの冷遇を受け、アメリカと敵対関係に突入するのは決定的となった。
冷戦時代・その後
1962年7月にソ連はアナディル作戦を開始して核ミサイルを設置し、同年10月には核戦争が開戦するのではと一触即発の状況に各国は身構えた。ソ連の判断でミサイルが撤去されて事態は終結したが、1961年1月にアメリカとの外交関係が断絶された。1991年12月にソ連が崩壊した後は経済的に困難な状況になり、経済活動の部分的な自由化・経済の立て直し・観光の誘致を実施した。
政治
キューバ共産党による一党独裁制を実施しており、党は憲法第5条の規定で社会と国家を指導するとされており、2019年2月に憲法改正が実施された時も共産党の統治と社会主義共和国を堅持している。その為多党制に基づく議員選挙・大統領選挙は存在せず、実際に1959年2月から2018年4月までは兄のフィデルと弟のラウルが政権を掌握していた。以前は宗教弾圧・同性愛者の抑圧などを実施していたが、近年ではその誤りを認めて改められている。フィデルは個人崇拝を嫌っていたのでその名を冠する像・施設は無いが、ゲバラの方は随所に存在する。
国際関係
アメリカ合衆国
1903年2月にアメリカはキューバ東部にあるグアンタナモ湾の一部を永久的に租借して軍事基地を建設し、今もグアンタナモにアメリカ軍基地が存在する。1959年1月にキューバ革命が達成されてからはアメリカから数多の敵視政策を仕掛けられ、1961年1月に経済協力を申し出たソ連と接近したのを受けて外交関係を断絶した。1962年2月から人道的措置と称する食料・医薬品を例外とした経済封鎖・制裁措置を実施し、1982年3月にテロ支援国家に指定された。2015年4月にオバマとラウルが会談し、同年5月に国務省が正式に解除した後、同年7月19日に外交関係が再開された。
2017年1月にドナルド・トランプが大統領に就任してからは再び対立し、2019年3月にキューバの社会主義政権が接収した資産に関して亡命キューバ人などがアメリカ国内で訴訟を起こす権利を認めた。2021年1月にテロ支援国家に再び指定され、同月にジョー・バイデンが大統領に就任してからはキューバ政策の見直しを進めていた。しかし同年7月にキューバで大規模な反政府デモとそれが弾圧されたのを受け、キューバを失敗国と非難して強硬姿勢を打ち出している。
ロシア連邦
1959年1月にキューバ革命が達成されてからは友好関係にあり、1962年7月にソ連のアナディル作戦によって核ミサイルを配備した。1991年12月にソ連が崩壊してからは経済構造の基盤が甚大な打撃を受け、経済はかつてない規模で衰退したが、ロシアの国力が回復したのと中南米政策の活発化で再び友好関係へ転じた。2022年2月にロシア・ウクライナ戦争が開戦すると、同年11月にキューバのミゲル・ディアス・カネル大統領はロシアを訪問した時にこの戦争を支持・擁護し、ロシアに自身が崇拝される事を嫌っていたカストロの像が建立されるなど交流が活発化している。
中華人民共和国
1960年4月に表面化した中ソ対立ではソ連側に付いた事などもあって敵対関係にあり続け、1975年3月にアンゴラ内戦が開戦すると、キューバはアメリカと中国の影響力を排除するべく軍部隊を派遣した。1979年9月にフィデル・カストロ党第一書記は、中国が中越戦争で同じ社会主義共和国であるベトナムを攻撃し、キューバに敵対的なチリのアウグスト・ピノチェト政権なども支援している事を批判した。1989年11月にキューバのイシドロ・マルミエルカ外相が中国を訪問して外交関係は回復し、国際情勢では相互に支援して緊密に協力しており、中国は常に国家主権を守ってアメリカの経済封鎖に対抗するキューバによる正義の闘いを支持してきた。
カナダ
比較的友好関係にあり、2014年12月にアメリカとの国交正常化交渉を開始した事に先立ち、2013年6月からローマ教皇フランシスコと共に舞台裏での交渉を開始していた。
日本
1945年8月から事実上アメリカの占領統治に服していた日本はアメリカと敵対する国と外交関係を断絶した事例が多いが、キューバについては革命があった後も外交関係を維持した。それでも日本から自動車など機械類の輸出が規制されている為、主にキューバ産の砂糖が日本に輸出され、1970年代には日本が最大の輸出相手国だった時代もある。1959年7月にチェ・ゲバラが広島を訪問した事があり、キューバではアメリカが広島と長崎に原子爆弾を投下した事を教えている。
軍事
1959年1月にキューバ革命が成功に終わり、同年10月にキューバ革命軍が創設されてからは、アメリカからの侵攻を防ぐ為に旧東側諸国の装備で重武装している。2019年2月に憲法改正が実施された事で大統領がキューバ革命軍の最高司令官としての役割を務め、17歳から45歳の男性が2年間に亘って兵役に服する徴兵制度を実施している。
地理
アメリカのフロリダ州から約145キロメートルの沖合に位置しており、国土は1250キロメートルの長さになる広大な群島・キューバ島（本島）・青年の島（旧ピノス島）・1600余りの小島・多島海から構成され、常夏の温暖な熱帯性気候でジャングルも多い。
経済
アメリカから今も経済制裁を受けており、国民の生活水準に関する統計は公表されていない部分が多い。特に夜景光量の衛星写真はブラジル・メキシコなど南アメリカの主要国より明らかに暗く、生活が楽では無い事を示唆している。同様に町並みはレトロであり、自動車は修理を重ねた1950年代のクラシックカーが現役で走行している。ただし最近輸入された中国・韓国・東ヨーロッパの自動車なども多いが、日本車は輸出を制限しているので少ない。
国民
2022年の世界銀行による推計では約1121万人だったが、2023年12月時点での人口は1005万5968人であった。
社会
配給
キューバでは全ての国民が配給手帳を所持しており、毎月ごとに米・砂糖・卵・塩・鶏肉などの食糧が配布され、幼児・高齢者・病人が居る家庭には特別に挽き肉・魚の割り当てもある。配給と言っても無料では無く、政府が生活物資をかなり低い価格で販売する制度であり、配給所は街の随所に存在する。配給だけで1か月分の家族の胃袋を満たせる訳では無いが、配給物資の価格はスーパーマーケットや一般市場で販売されている物より低いので国民の大きな支えとなっている。
医療
世界最高水準の医療技術を有しており、主要な産業の1つとして医師を海外に派遣している。しかし環太平洋パートナーシップ協定（TPP）やアジアインフラ投資銀行（AIIB）には全く参加しておらず、これは両方とも投資家保護条例と言う規定が絡んでいる為、国内の医療制度が破壊されるのを防ぎたいキューバが両方にも参加しなかった要因になった。
渡航
短期の滞在に限って駐日キューバ大使館やキューバ旅行を扱う代理店でツーリストカードを入手すれば、原則として1回につき30日以内の許可（30日間も再び延長できる）が下りるが、以下の点に注意する必要がある。
- キューバでも適用される海外旅行保険に加入する（2010年5月から）
- フライトチェックインする48時間前から事前に専用サイト（D’VIAJEROS）に登録する事が義務になった（2023年1月から）
- アメリカを経由する場合はアメリカの査証が必要だが、アメリカの法律により観光渡航が認められない為、1回でもキューバに入国するとESTA（電子渡航認証システム）が無効になる
- カナダを経由する場合はカナダの電子渡航認証（eTA）を取得する必要がある。
危険情報
日本の外務省からは危険であるという情報は発令されていないが、アメリカが経済制裁を実施している事による物資不足・新型コロナウイルス感染症による社会活動の停滞に伴い、治安が悪化しているので注意して欲しいとの事である。
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