概要
四季がなく、一年を通して暑い気候の地域。赤道の周囲、概ね南北回帰線に挟まれた低緯度の地域である。東南アジアの大部分、アフリカの中部、南アメリカ大陸の北部、中米の南部などがこれに当たる。
ケッペンの気候区分では、
- 最寒月の平均気温が18℃以上
- 年間降水量が乾燥限界以上
を条件としている。これは、ココヤシが育つために必要な温度である。
乾季の有無で「熱帯雨林気候」(年中蒸し暑く雨が多く、乾季が無い)と「サバナ気候」(雨の多い雨季と乾燥する乾季にはっきりと分かれる)に大別される。両者の中間は弱い乾季のある「熱帯モンスーン気候」となる。
日本国内では先島諸島(宮古島、石垣島など)が熱帯雨林気候、小笠原諸島の一部(南鳥島、硫黄島、沖ノ鳥島)と大東諸島が熱帯モンスーン気候である。先島諸島は従来は亜熱帯だったが、地球温暖化の影響で1980年~2010年の平年値で熱帯に変わった観測地点が増えた。ただし、これらの地域は沖ノ鳥島を除いて北回帰線よりも北にあり、特に先島諸島は大陸に近いため大陸の気団の影響を受け、不明瞭な四季がある。
熱帯の特徴
熱帯雨林気候の地域は高木・低木が密生するジャングルとなり、特に植物の種の多様さ(生物多様性)は地球上で最も飛び抜けている。林内は昼でもうっそうとして暗いが、地衣類や着生ランなどの着生植物が多い。
熱帯モンスーン気候や、サバナ気候のうち比較的降水量の多い地域は、雨緑林といわれる乾季に落葉する樹木の森林となる。雨季であっても木の葉が薄く太陽の光が林床まで射し込むので、林内は比較的明るい。
サバナ気候の中でも乾燥する地域はイネ科・カヤツリグサ科の草を主体とする草原の中に、乾燥に強い樹木がまばらに生えるいわゆる「サバンナ」となる。草食動物の食餌が豊富であるため、大型動物(メガファウナ)が多く生息する。
ヤシをはじめとする様々な熱帯性の植物が栽培されるが、特に熱帯雨林気候の地域では畑作農業には困難がある。年中暑く土壌中の有機物が分解されやすい上、肥料を与えても大量の降雨で流されてしまい、土地がとても痩せているからである。年中暑いため病害虫や雑草も非常に多く、防除が追いつかない。
サバナ気候での農業も(熱帯雨林気候よりはましとはいえ)同様に病害虫や肥料の溶脱の問題がある上、乾季は水が不足するという問題がある。
しかし水田であれば、水をためることで有機物分解の速度が抑えられる上、上流から養分が豊富に供給されるので熱帯地域での耕作に適している。タイ中部やマレーシア、フィリピン、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、ガンジス川流域(インド北部〜バングラデシュ)、ジャワ島など稲作の盛んな地域では年に3回お米がとれ(三期作)、熱帯の中でもとりわけ人口が集中した地域となっている。