概略
東京都小笠原村に属する無人島。よく間違われるが南鳥島は日本最南端の島ではない。
東京から1,740km、硫黄島から720km地点のフィリピン海プレートのほぼ中央、九州・パラオ海嶺上に位置するサンゴ礁の島。気候区分は熱帯。
南北約1.7km、東西約4.5km、周囲約11kmほどのコメ粒形をしている。
干潮時には環礁の大部分が海上に姿を現すが、満潮時は東小島と北小島という2つの岩礁を除いて海面下に沈む。
過去100年間の地盤沈下量が1cmと非常に小さく、海面変動の推移を調べることに役だっている。
地盤沈下量は少ないが。1999年から2002年にかけてGPSを使用して調査した所、年間に真北から西へ70度回った方向に5cmの速さで西北西に移動している。
行政区分
東京都小笠原村に属するのは先述の通り。郵便番号および番地も設定されているが、人が居ないために郵便は届かない。電話の市外局番もあるがそもそも無人の陸地なので加入者は存在しない。
本籍地を沖ノ鳥島にすることは可能。ただし沖ノ鳥島に設定した戸籍を扱う小笠原村役場は村外との運送手段は船便しか無い(通常はおがさわら丸が約週1便、繁忙期でも約週2便、おがさわら丸ドック入り期間は代船や貨物船・共勝丸で約10日間に1便)。このため父島か母島に住む村民なら話は別として、村外との書類のやり取りには他市区町村では考えられない多大な実用上の不便を強いられることになる。
論争
沖ノ鳥島「岩」なのか「島」なのかは領土問題にも関わる話なので議論が行われている。
主に「島の定義を満たさない海上陸地」なのか「島」なのか、「排他的経済水域(EEZ)が適用されるのかどうなのか」に関するものとなる。なお、領土や島だと認可されてもEEZが適用されない場合もある。
以下は沖ノ鳥島に関する一見解である。前述のように領土問題が絡む話では各国の思惑も働くため、各自が考えた上で判断するのが妥当である。なお、2022年現在では沖ノ鳥島が日本国の領土であり、その周囲に日本の領海・領空を持つ事に関して目立った異論は無い(中華人民共和国や韓国からまれに疑義を呈される程度)。
判断材料
- 日本政府の見解は1994年に発効した海洋法に関する国際連合条約の第121条第1項(島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう)に基づき、沖ノ鳥島は島であると定義している。
- 現状の海面上にある岩石部を「島」と定義すると、コンクリートによる護岸や埋め立てによってそれを完全に隠すと「島」としての主張が成り立たなくなる。
- イギリスは、沖ノ鳥島よりもはるかに巨大なロッコール島を「岩」としてEEZの権利を放棄しており、この点から欧米の知識人の一部は日本政府の意見に疑問を呈している。
- 「国際機関が沖ノ鳥島を「島」と認可した」という話は、大陸棚限界委員会が発表した「沖ノ鳥島の周辺を含むor 沖ノ鳥島を起点とした大陸棚の延長を一部認める」という勧告に過ぎず、島と認定した訳ではない。そもそも、大陸棚限界委員会は「大陸棚限界会は技術的・科学的な観点から大陸棚の延長の是非を判断するのが任務であり、島の法的地位を判断する権限はない」としている。
- 中華人民共和国は海洋調査船を沖ノ鳥島の排他的経済水域内に派遣しているが、中国側は沖ノ鳥島は「島」ではなく「岩」であり、日本の排他的経済水域は設定できないと主張している。ただし、中国は南シナ海の南沙諸島のジョンソン南礁の領有権を主張しており、その周囲に排他的経済水域を設定している。ジョンソン南礁は沖ノ鳥島と同様、満潮時に水面上に出ている部分は小面積であるため、中国の主張はダブルスタンダードだと指摘された。
保全
沖ノ鳥島の問題は、海面上昇と海蝕によって島が岩に過ぎないと認定されEEZが失われるリスクにある。岩ではないと認定されるには人間が居住するか経済的生活を維持できることを示せばいい。
そこで、日本政府や東京大学などによってサンゴ礁の保全育成事業が進んでいる。サンゴ礁が成長して常に海上により広い陸地が確保できるようになれば、現状が打開できるからである。
しかし、逆にこれ(人為的な改造による自然消失の防止)が国際法上における「島」の定義に抵触しているのではないかとして批判材料に使われることもある。
関連タグ
波照間島:有人島として日本最南端。