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概要編集

複数の国家地域が同一地の領有権を同時に主張することによって起こる問題


領土問題が発生するようになった原因は、実は近代国家国際法の出現とが強く関連している。古代中世には、皇帝共和国は存在したが、それらの領地の境はかなり曖昧であり、複数の王に両属する領主も、実質どの王にも属さずかといって共和国と呼べるほどの政府も持たない集落も珍しくなかった。そしてそれら曖昧に散在する領地の争奪を巡り、日常的に戦争が繰り返されていた。だが近代以降、国家が統治できる範囲は国際法によって領土として定められ、その国境線の外部への侵略は不戦条約によって禁止されるようになった。これによって絶え間ない戦争がある程度抑制されるようになった。その一方で、それまで国籍も曖昧に共存していた辺境の人々の居住地が突然国境線で分断されたり、国境線をどう引くかを巡って関係国が互いに根拠を持ち出して激論する事も多くなってきた。何しろ国家は国境線の外側では発言権の多くを奪われるのであるから、どの国も必死である。当然何らかの口実をもって武力による不法占拠を仕掛け、実質的な国境線を変更しようとする場合もある。


特に旧植民地であった国同士では、旧宗主国の都合と隣国の宗主国との利害交渉一つで勝手気ままに国境線が動かされた。そしていざお互い独立となった時、旧宗主国が当事者同士に任せて逃げてしまえば、あとはお互いの主張が強烈にぶつかり合うことになる。いったんは国境線を引いたとしても、民族の観点で見れば、かつては自由に移動できていた民族が国境線で両国に分断され、日常的な交流を阻害されることも少なくない。こうして植民地解放の根拠として用いられた民族自決の原則が、今度は国境線を動かし領土問題、そして時に武力紛争、戦争を起こす根拠にもなってくるのである。


主な領土問題編集

土地の名称は日本国で一般的な名称、別称の順に、国名は実効支配、領有権を主張する国順あるいは五十音順に表記。



領土問題の副作用?「無主地」編集

また、こうした国境線の問題次第では、「どこの国も領有を主張しない」無主地なる土地が発生することがある。


代表的な事例で言えば、エジプトスーダン国境にある「ハラーイブ・トライアングル」と「ビル・タウィール」。後者は無主地とされる。

当初緯線に沿ってまっすぐひかれた国境によって、ハラーイブがエジプト、ビル・タウィールがスーダン領とされた。ところが、宗主国イギリスによって、お互いの国の遊牧民がそこを本拠地にしているという理由から、ハラーイブはスーダンに、ビル・タウィールはエジプトに属する新しい国境線が引かれた。

独立後、互いの国は石油資源の豊かなハラーイブを欲しがった。エジプトは最初の、スーダンは改正後の国境が正しいと主張するわけだが、どちらの場合もハラーイブを自領としたらビル・タウィールは相手国領となる。しかし、ビル・タウィールはハラーイブより遥かに資源に乏しい土地で、ハラーイブを手に入れられるならお互い必要では無かった。

以上の理由から、現在に至るまでビル・タウィールはどちらの国も放棄を明言するという結果になった。(逆にハラーイブは現在も係争中。ただしエジプトが実効支配している)。加えて周囲が両国領土に囲まれた内陸地であるから、第三国も誰も手を出せず、無主地となったわけである。しばしば南極を除く世界最大の無主地とされることがある。


もっとも、「手が出せない」のはそこ以外に領土を持つ一般的国家であるから。しばしばミクロネーション建国を目指す者たちがこのどこの国にも必要とされていない土地を求めてやってくる。2014年にはアメリカ人が娘の「プリンセスになりたい」という要望をかなえるために「北スーダン王国」を建国した…という。

同様の事例は他の無主地にもみられる。ドナウ川の帰属問題に端を発したセルビアクロアチアの領土問題でも無主地が発生した。この無主地に対し、完全な古典的自由主義を掲げた「リベルランド」という「国家」を作った者がいる。


何れの場合も、過去のいい加減ともとれる宗主国の国境ラインとその変更という、無視していいかどうか分からないものが原因となって現れる存在である。一方の当事国が、軍事侵攻などで我儘勝手に侵略したような土地の場合、好き放題に国境線を引くことが多いためこのような土地が発生しないことが殆どである。

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