概要
政治家となって以降も様々な政党を渡り歩き、最終的に自由民主党(自民党)・安倍派に定着した。
「水脈」と書いて「みお」と読ませる名前は、父親が万葉集からとったものである。
「泊瀬川 流水尾之 湍乎早 井提越浪之 音之清久」という歌があり、これを書き下した「泊瀬川 流るる水脈(みを)の 瀬を早み ゐで越す波の 音の清けく」からきているという。
プロフィール
生年月日 | 1967年4月22日 |
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出生地 | 兵庫県神戸市 |
出身校 | 鳥取大学農学部卒業 |
生年月日 | 1967年4月22日 |
主な経歴 | 積水ハウス社員、西宮市役所職員、衆議院議員 |
好きな言葉 | 過去と人は変えられない。自分と未来は変えられる。 |
趣味 | 読書・旅行・カラオケ |
経歴
1967年(昭和42年)4月22日、兵庫県神戸市垂水区生まれ。
親和中学校・親和女子高等学校を経て、1990年に鳥取大学農学部林学科卒業。同年、積水ハウス木造(のちに積水ハウスに吸収された)に入社。1992年に西宮市役所に入庁。
1993年に結婚し、娘が1人いる。旧姓は、吉岡(よしおか)。
西宮市在職中は、マーガレット・サッチャーに心酔。経済産業省の鈴木英敬の提唱する理念に着目し、仲間と共に「西宮スーパー公務員塾(参照)」を立ち上げた。外部の雑誌に論文を発表したり講演を行うなど精力的に活動。
同年10月、みんなの党兵庫6区支部長に就任。その後、維新政治塾に参加し、2012年12月16日に、第46回衆議院議員総選挙で兵庫6区に日本維新の会より出馬した。自民党の大串正樹に敗れたが、比例近畿ブロックで復活し初当選する。
2014年に日本維新の会解党・分離に伴い、次世代の党の結党に参加し、党の女性局長、国対副委員長に就任する。
当初、次世代の党への参加意向を示していた同僚の三木圭恵が、一転して橋下グループに参加したことで、同党結党に参加する唯一の女性衆議院議員となった(なお、次世代の党所属の女性参議院議員は中山恭子一名)が、2014年12月の衆議院選挙で敗北を喫し落選した。
その後2017年に当時の安倍晋三総裁の引き立てで自民党に転じ、第48回衆議院議員総選挙の比例中国ブロック17位で出馬、当選した。
2024年、新たに総理総裁に就いた石破茂による衆議院解散に伴い自動失職。再出馬を図るも、石破政権との確執や自身のスキャンダル等が重なり断念している。
エピソード
公務員時代の経験から、保育所に労働組合等の左翼勢力が浸透していると感じたという。そもそも育児とは原則として母親が行うものであるという思想であったこともあり、それと逆行していく日本の姿は、杉田の目には旧ソ連が取り組み、失敗した子育てモデルをなぞっているように見えた。
一時は「コミンテルンは息を吹き返しつつある」などと表現していたほどである(参照。ただし「コミンテルン」の部分は後に撤回している)。
2000年代末期には民主党が政権に就き、「子ども手当」を実施するなどますますこの傾向を強めた。それに対抗することが政界入りした一因であった。
なお、当初接近したみんなの党ではなく日本維新の会からの出馬となった理由は、杉田の方が「みんなの党では選挙に勝てない」と判断したためという。
以上のような背景から、政界でも一貫して保守的な主張を行っている。
「男女平等は絶対に実現しえない反道徳の妄想」「男女共同参画基本法を廃止したい」といった一見自己矛盾するような発言も度々しているが、心酔するサッチャーも同様の思想を持っており、フォロワーとしてはむしろ正統派と言える。
他方で、影響を受けた人の一人に日本における代表的な女性左翼政治家であった土井たか子を挙げたこともある。
落選中には従軍慰安婦問題に深く関わった。
2016年、ニューヨークで開催された国連女性の地位向上委員会のサイドベントに参加。目良浩一や細谷清らと公演を行い、「慰安婦は性奴隷ではない」と主張。同時にベトナム戦争時に韓国が起こしたライダイハン問題を指摘することで一種のカウンターとした。
またジュネーブにも赴き、国連の女子差別撤廃委員会に出席。日本に批判的な「クマラスワミ報告」の撤回等を求めるスピーチを行った。
その後、日本政府は慰安婦について強制連行の事実はなく、性奴隷ではなかったとする公式見解を出すに至った。しかし、慰安婦問題日韓合意を行いそれ以上のアピールを自重するようにもなり、この間に自民党の政治家となっていた杉田も従うことを余儀なくされた。
2018年には『新潮45』誌8月号に「「LGBT」支援の度が過ぎる」と題した一文を寄稿。子育て支援や不妊治療に税金を使うのであれば少子化対策という大義名分があるとしつつ、「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです。」と主張した。
子育て支援に一定の理解を示しただけ杉田としては左翼に歩み寄った形ではあったのだが、彼らやLGBT当事者などから顰蹙を買うこととなり、自民党本部前でデモが行われるなど大きな炎上に発展している。
自民党は「今後、十分に注意するよう指導した」としつつ、「人それぞれ政治的立場、色んな人生観もある」(二階俊博幹事長)、「(杉田議員は)まだ若いから」(安倍晋三総裁)等のコメントを残し、具体的な処分は特に行わなかった。
『新潮45』側も同年10月号で「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」と題して杉田を擁護する特集を組んだが、これらが火に油を注ぐ形となって炎上は更に拡大。発行元の新潮社内でも批判が上がる事態となり、同誌は最終的に休刊に至っている(参照)。
前後して、ジャーナリストの山口敬之と伊藤詩織間の訴訟合戦をはじめとする国内の性犯罪問題への関心を強めている。
山口が安倍政権に近く、上記のライダイハン問題でも共闘した仲であった一方、伊藤は政権に批判的で、当時安倍批判に盛んに用いられていた「忖度」という言葉まで発していたことから、杉田はこれをハニートラップと判断。全面的に山口側を擁護する姿勢を取った。
2020年にはこうした件が一因となり性犯罪が厳罰化される運びとなったものの、それに対しても「女性はいくらでも嘘が吐ける」という理由で反対を表明している。再三書いているが彼女自身が女性であり、その言葉自体が嘘である可能性があるとして、自己言及のパラドックスであるとも話題になった。
とは言え、保守層ではそもそも山口の方が冤罪の被害者であるとする論調が根強く、杉田にも一定の支持は付いていた。ただし、伊藤から直接名誉毀損を訴えられた裁判には敗北している。その際、SNS上の他人の投稿に対する「いいね!」が争点になったことでも注目を集めた(参照)。
2020年代は「ウポポイ」の建設などアイヌへの注目が高まった時期でもあったが、杉田はこれにも否定的な態度を取った。既に解決済の問題であり慰安婦問題と同じ構図を感じ取ったこと、振興事業に公金の不正流用疑惑を抱いたことが主な理由であった。
実は杉田は遅くとも2016年からこうした批判を繰り広げていたのだが、注目の高まりに伴ってそれらの主張も「再発見」された形である。ともあれ、一部のアイヌ団体から訴えられるなどした結果、2023年には札幌法務局から人権侵犯認定されている(参照)。
当時、杉田は総務大臣政務官に出世していたが、当該団体の構成員が安倍批判や国葬への反対運動に活動に関与していた過去があることを知ると「こんな団体に謝罪するくらいなら政務官を辞めてやる」と謝罪を拒否。実際に政務官を辞任している。
その後も態度を変えておらず、同年11月には当時ネット上で台頭していた暇空茜の言葉を借用する形で「公金チューチュー」などと表現してむしろ批判を強めている(参照)。暇空の勢いも合わさる形で、杉田も多くの理解や応援を集めていた。
以上のように物議を醸す発言も多く、訴訟沙汰にまで発展することもあったが、党の内外に批判と同程度の支持者を持つため一定の立場と発言力は確保し続けてきた。
上記の政務官辞任にしても、支持率低下のスケープゴートであるとして、彼女を守りきれなかった時の岸田総理の方が炎上する勢いだったほどである。
選挙に関しても、自民党入りしてからは比例代表の名簿上位(※)が割り当てられており、党自体が大敗しない限りまず当選するよう取り計らわれていた。
※:具体的には、2021年で比例中国ブロックで上から3番目、党内全候補者の中では19位。
同選挙では、甘利明幹事長、遠藤利明選対委員長は当初、河村建夫の長男である河村建一を比例中国ブロックから出馬させる考えであったが、自民党山口県連や岸信夫、友田有、安倍晋三らが杉田を推挙。結果、河村は比例北関東ブロックから、杉田は比例中国ブロックからの出馬となったという一幕もあった。
なお、中国地方は安倍氏の地盤である山口県や、岸田氏の地盤である広島県などが並んでおり、彼らがこの枠を使う機会はほとんど無い。
しかし、自民党には比例区主体の選挙活動は2回程度とする慣習があり、この時点で2回出馬済で、他に地盤を持たず、選挙区を取り決めた安倍も失っていた杉田の処遇が問題になりつつあった。
また、いわゆる「統一教会」問題を契機に、同教団との関係が深かった安倍派自体が批判の対象となり始めた。岸田政権も要職から安倍派を外すなど、明確に距離を置くようになっていった。
2023年末には安倍派を中心とした大規模な裏金問題も発覚。最終的に派閥の解体が決まり、杉田の立場は悪化の一途を辿った。杉田自身も計1564万円の不記載があったとして政治資金収支報告書の訂正を申し出ていたが、党役職停止6カ月の処分を言い渡されている。
岸田がこれらの問題の責任を取るとして不出馬を表明した翌年の自民党総裁選では、旧安倍派からの支持が厚かった高市早苗の推薦人に名を連ねるも、敗北。
勝利した石破茂は岸田路線の継承を表明し、引き続き旧安倍派から距離を置くと共に、裏金議員(石破自身は一貫して「不記載議員」と呼んでいた)については重大な者を次の選挙で非公認、軽微な者を小選挙区のみで立候補とさせるとした。
杉田は非公認対象には含まれていなかったが、比例名簿からは外されており、事実上選挙区が無くなったことから辞退する運びとなっている。無所属での出馬等もせず、次回の参議院選挙以降を目標に活動を続けるという(参照)。
なお、「統一教会」との関係については2010年代には過剰反応や事務所への影響という理由で否定するとしていた(参照。その際に幸福の科学にも言及している)が、2020年代には「定義が分からない」と見解を改めている(参照)。
政策・主張
教育・育児
道徳教育に「賛成」
幼稚園から大学までの教育無償化に「反対」
憲法
憲法改正に「賛成」、改正し自衛隊を『国防軍』にすべきと主張
緊急事態条項に「賛成」
歴史
内閣総理大臣の靖国神社参拝に「賛成」
「村山談話」と「河野談話」を見直すべき
『日本軍による慰安婦の強制連行はなかった』と発言。
経済・財政
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉に「賛成」
日本のカジノ解禁に「賛成」
法人税率の引き下げに「賛成」
富裕層への課税強化について「どちらかと言えば賛成」
国防
集団的自衛権の行使容認に「賛成」
普天間基地の辺野古移設に「賛成」
核武装について、「検討を始めるべき」
非核三原則に「反対」
特定秘密保護法を「評価する・必要」
平和安全法制について「評価する」
防衛力強化に「賛成」
他国からの攻撃が予想される場合の先制攻撃に「賛成」
外交
対中国政策について、「より強い態度で臨む」
対北朝鮮政策について、圧力を優先することに「賛成」
ロシアとの北方領土共同経済活動について、「北方領土四島の返還につながるとは思わない。」
アメリカのドナルド・トランプ大統領について「信頼できる」
労働・福祉
年金について、「積み立て方式に変え、世代間格差をなくす」と主張。将来、年金の給付水準が下がるのはやむをえない
高度プロフェッショナル制度に「賛成」
外国人
外国人労働者の受け入れに「反対」
在日特権は存在すると主張
外国人参政権に「反対」
ジェンダー
LGBT法に「反対」
同性結婚に「反対」
男女共同参画社会基本法の「廃止」
夫婦別姓に「反対」
選挙
被選挙権年齢の引き下げに「反対」
エネルギー
原子力発電は「必要」、原子力発電の維持を明確化している
原発の再稼働について、新基準を満たした原発は再稼働すべきに「賛成」
皇室
女性宮家の創設に「反対」
著書
『なでしこ復活』(青林堂、2014年5月24日)
『慰安婦像を世界中に建てる日本人たち』(産経新聞出版、2017年3月31日)
『なぜ私は左翼と戦うのか』(青林堂、2017年4月8日)
『韓国人の皆さん「強制連行された」で本当にいいの?』(育鵬社、2017年10月12日)
共著
倉山満『日本人が誇るべき《日本の近現代史》』(ヒカルランド、2015年12月8日)
倉山満『みんなで学ぼう日本の軍閥』(青林堂、2015年6月25日)
藤岡信勝 編著『国連が世界に広めた「慰安婦=性奴隷」の嘘』(自由社、2016年5月29日)
河添恵子『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所、2016年6月22日)
マイケル・ヨン、高橋史朗、西岡力、徳永信一、山岡鉄秀『「慰安婦」謀略戦に立ち向かえ!』(明成社、2017年5月15日)
倉山満、千葉麗子『悲しいサヨクにご用心』(ビジネス社、2017年9月7日)
山本優美子『女性だからこそ解決できる慰安婦問題』(自由社、2018年1月14日)
小川榮太郎『民主主義の敵』(青林堂、2018年8月6日)
連載
産経新聞「杉田水脈のなでしこレポート」(2014年4月〜、月1回連載)
ジャパニズム「なでしこ復活」(2015年2月〜)
関連タグ
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