概要
労働者の権利擁護のために自主的に組織される団体。略称は労組。
英語( trade unionまたはlabour union )からユニオンとも言うが、日本では特に「ユニオン」と言う場合、後述する合同労組を指すことも多い。
19世紀にカトリック教会が公認したことから影響力を増し、20世紀には政治にも大きな影響力を与えた。
結成にはいかなる届出も認証も許可も必要ではない。2人以上の労働者が組合結成に合意することにより労働組合を結成できる。顧問弁護士なり先行組合の役員なりをアドバイザー(オルガナイザー)に迎えるのが一般的である。
活動
活動は基本的に「組合員の雇用を維持し待遇を改善すること」が目的である。この目的のため経営者との交渉を行ったり、ストライキやデモなどを起こすなどの行動を行うことがある。また、レクリエーションのためのイベント開催や、生活の安定のため組合員同士が出資しあって共済(保険)を運営することもある。労使協調色の強い組合は各種セミナーなどを実施し会社の人材育成に協力したり、経営への提言を行うことも多い。
政治活動に対するスタンスについては様々である。基本的には社会主義やカトリック勢力の支援を行うことが多いが、保守系の政党などを支持する組合もある。労働運動をよく知らない人からは「労働者の雇用改善そっちのけで政治活動にうつつを抜かしている」などと攻撃されることがあるが、これは外部からは日々の活動が見えにくく、政治活動が目に付くためと思われる。基本的には政治活動だけ行う組合はありえない。また、労働組合が支持する政治家に献金を行うことがあり、組合員からは不満が出ることがある。
企業の労務管理を補完する役割を担う、いわゆる御用組合も多いと言われる。
団体の長については一般的には委員長または書記長が用いられるが、プロ野球選手会などでは選手会長という名称を用いている。
形式
労働者と組合の関係においては以下の形式がある。
- 職能組合
労働組合の最も古典的な形態で、同一職種の熟練労働者によって組織される。
- 産業別組合
職能組合が発展し、職種のいかんを問わず、同一産業に属する労働者をすべて組織対象にするようになったもの。欧米では最も一般的な組織形態である。
- 企業別組合
事業所もしくは企業を単位として、職種に関わらず、そこに属する労働者を一括して組織する。日本では職能組合から発展し、最も一般的な組織形態となった。
- 一般組合
職種・産業のいかんを問わず、すべての労働者を組織対象とする組合。
- 合同組合
所属する職場や雇用形態に関係なく、産業別、業種別、職業別、地域別等に組織する組合。組合の無い中小零細企業の労働者や、非正規雇用者が主に加入する。企業別組合が一般的である日本における独自の呼称で、地域別に組織する合同組合を地域ユニオンと言う。
労働者と雇用者の関係においては以下の形式がある。
- オープンショップ制
特に労働組合の組合員を雇用する必要はないもの。最も一般的な労働組合の形式である。
- エイジェンシーショップ制
労働者は組合員である必要はないが、組合の一部費用負担を行う必要があるもの
- ユニオンショップ制
会社に雇用された場合、一定期間内に一定の労働組合に加入しなければならないもの。雇い入れ時には組合員資格を問わないという点で、後述のクローズドショップとは異なる。アメリカ合衆国においてはユニオンショップおよびクローズドショップ制は法律で禁止される。
- クローズドショップ制
組合員から労働者を採用する必要があるもの。日本においては、これを違法とする法律および判例はないものの、過去も現在もこれを採用する職場の例はない。
日本の労働組合の特徴
- 職能別組合から企業単位組合に発展した団体が多数を占める
- 近年は従来型の企業労組の組織率低下により、個人単位で加盟する合同労働組合が存在感を増している。しかしこれは、個別紛争の解決には役立っても労働基準引き上げという組合本来の役割という点では大きな限界をもっている。
- ほとんどの組織がオープンショップ制をとる。
- クローズドショップ制をとる組織がない。また、ユニオンショップ制の職場でもその多くは組合を脱退しても退職の必要がない「尻抜けユニオン」である。
- 基本的に管理職ではない正社員のみが加入できる
- 非正規労働者、管理職、フリーランスを対象とした組合もある。フリーランス対象の組合は職能団体としての側面も持つ。