概要
権利の主体は、自然人(個人)または法人(法律上人と同等の権利を持つとみなされる団体)であるが、権利の性質上、自然人のみに認められる権利もある。
また、権利の中には無条件に万人に認められるとされるものもある。人権がそれであり、人間として生まれた者は全て人権を持っているとされる。
法律上の権利
私権と公権とに分かれる。
権利と義務
権利と対になる概念として、義務がある。これは、ある人に権利があるということは、他の人にはそれを守る義務があるということだからである。これを、「権利行使には義務を伴う」という言葉で説明されることがある。
しかしこれは「権利は義務の対価である」という意味ではない。
よくこれを履き違えて「権利ばかり主張して義務を果たそうとしない」と他者を批判する者がいるが、「働かない奴がわがまま言うな」という意味合いで権利と義務を持ち出すのは誤用である。もしそれが言葉通りにまかり通ってしまったら、最悪「生きる価値がない者は生きてちゃいけない」という極論に至ってしまう。このような意味で「権利の主張」と対になる言葉があるとしたら、それは「義務を果たす」ではなく「奉仕の精神」であろう。
「人は他人の財産権を尊重しなければならない義務がある」、「国家は個人の基本的人権を守らなければならない義務がある」といった具合に、「誰かの権利の行使は他の誰かの義務を伴う」というのが「権利行使には義務を伴う」という言葉の真の意味である。したがって、無職で勤労と納税の義務を果たしていない人でも、福祉を受ける権利や参政権を失うことはない。
死者と胎児の権利
胎児や死者の権利についてはさまざまな議論があるが、日本の法制度ではいずれも権利の主体とはならないとされている。たとえば死者の権利は基本的には保護されず、死者に対する名誉毀損はそれが虚偽の事実をもってなした場合でなければ成立しない(刑法第230条)。個人情報保護法では、個人情報の定義を「生存する個人の情報」としており、プライバシーの対象にもあたらない。
死者や胎児の権利が例外的に認められる事例としては次のようなものがある。
著作者および実演者の人格的利益は死亡後も保護対象になる(著作権法60条、同法101条の3)。また、胎児は相続の場合については出生したものとみなして権利を認めている(民法第886条)。