労働,英: Labour
- 奴隷制の一形態として人間が肉体や道具を用いて対象にはたらきかけ、人間という動物にとって有用なもの、無用なもの(産業廃棄物など)をつくりだす行為である。
- また、商品としての労働力は、肉体や頭脳を提供する代わりに、賃金を得る行動であるとも定義され、賃金奴隷制度ともいわれる。賃金を得ない活動はボランティアと呼ばれる。
- 道具・機械・建物・交通・通信(労働手段)を用い、土地・森林・水域・地中資源・原料(労働対象)に対して行なわれる。労働手段と労働対象を合わせて生産手段という。
- 国際労働機関では、望ましい労働の形として「ディーセント・ワーク」(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を目標に挙げている。また、フィラデルフィア宣言において「労働は商品ではない」という原則が掲げられている。
歴史
- 古代において汗をたらして動くものは奴隷だと相場は決まっていた。
- 19世紀前半のイギリスでは、成人労働者の平均的な一日の労働時間は15時間とされ、長時間働かない者は怠惰の罪で投獄された。労働者が余暇の権利を手に入れ、公共の休日を定めた時、上流階級は「貧乏人に休日を与えてどうしようというのかしら? 彼らは働くのが義務なのに」と反感を示したという。
思想
プロテスタンティズム
キリスト教プロテスタントは労働そのものに価値を認める「天職」の概念を見出した。この立場では、節欲して消費を抑えて投資することが推奨される。このようなプロテスタンティズムの倫理こそが史的システムとしての資本主義を可能にしたと考えた者にマックス・ウェーバーがいる。
マルクス経済学
労働価値説に基づくマルクス経済学では、労働そのもの・労働手段・労働対象の各々は労働過程を構成する。この労働過程は、人間と自然との間の物質代謝の一般的な条件(マルクス)であり、自然を変化させて生活手段を作り出すばかりでなく、自分自身の潜在的な力をも発展させる。
- いわば道具を作る動物a tool-making animal(フランクリン)として人間を捉えるこの立場からは、労働手段の使用こそが人間の労働の本質であって、人間を動物から区別するものは労働である(しかし、現実には理論的に動物と人間は区別できない。人間は動物の部分集合なのである。)。
- 労働行為は超歴史的なものとされ、これがいかに社会的制約を受けるかという視点から歴史哲学にも連結する。
- また私的な労働は、その成果である生産物が商品として交換されて社会的労働となることによってはじめて、社会的分業の一部となる。またラテン語のalienato(他人のものにする)に由来する疎外された労働が語られる。
近代経済学
- 近代経済学では、労働は家計(労働供給側)における非効用として捉えられる。
- この立場では、労働は節約されるべき費用であるにすぎない。
- 反対に余暇は効用として捉えられているが、これは主として個人的な私生活における娯楽を想定したもので、古代ギリシアにおける公共生活に携わるための閑暇とは異なるものである。
哲学
バートランド・ラッセルは、労働賛美は「支配階級によるプロパガンダが生み出した洗脳」だとして「長時間労働は過剰生産と過当競争により失業者を生み出す。誰もが4時間だけ働けば失業者は出ない。労働は生活のために必要な手段であり、幸福は余暇から得られる」と言っている。