概要
企業・団体などに雇われている労働者が、労働の報酬として雇い主から受け取る金銭のこと。給与とも呼ばれる。
労働の対価として最もポピュラーかつ重要なものであり、多くの労働者の生きる糧でもある。
日本では労働基準法第24条において通貨払いの原則が定められていることから、必ず日本円で支給する必要がある。そのため、米ドルといった外貨やペリカのような金券、小切手で支払うのは違法である。
ただし、労使協定を結ぶことで給与の一部を現物支給でまかなうことは可能である。(現物給与制度)
給料形態について
正社員の求人票に書かれている給与について大まかに説明する。
企業によって異なるが以下の3つで給与が構成されていることが一般的である。
基本給
諸手当を除いた基本となる賃金のこと。
ここで定められた金額は景気や業績などに関わらず必ず支給される。
いわゆるベースであり会社にとって最低限必要となる人件費。
ちなみに、基本給は業績が悪化したからといって雇用主側が勝手に下げる事が出来ない。そのため、特に経営が不安定になりやすい中小企業を中心に基本給を抑えようとする傾向が強く、フルタイム勤務にもかかわらず月10万円未満など最低賃金を割り込んでいることも。(諸手当込みで最低賃金を超えていれば違法ではない)。
労働組合のある企業では毎年春ごろに春闘と呼ばれる交渉が行われ、基本給のアップを勝ち取ろうとしている。
その他、ノルマ(売上目標)を達成できないからと未達成分を買取とみなし減給するのは労働基準法違反の違法(犯罪)である。
諸手当
基本給に上乗せされて支払われる賃金のこと。
役職や業績・危険作業・資格に応じて支給される手当や、交通費や残業代がこれにあたる。
なお、これら諸手当はボーナスの支給基準の計算に含まれないため要注意。
固定残業代
一定時間分の残業代を固定で支払う制度。みなし残業代とも呼ばれる。
毎月20時間程度残業することが分かっているため、あらかじめ20時間分の残業代を給与に加えておくといったイメージ。
こちらもボーナスの支給基準の計算には入らない。
実際の残業時間が規定に満たない場合も減額なしで支払われる。
また、規定時間を超過した場合は別途残業代が支払われる。支払われない場合サービス残業にあたるため違法(労働基準法違反の犯罪)。
ちなみに、ベンチャー企業といった需細企業では基本給を上げる代わりに、ある程度雇用主側の都合で金額を変えられるこちらを昇給するという荒技を使っていることも。
以上が求人票に書いてある給与の項目の見方である。
ただし、求人票に提示されている金額がそのまま貰えるわけではない。
会社から支給される給料の総額(=額面給与)から、税金や保険料、年金などが天引きされる。
そのため、実際に支給されるのはそれらが天引きされた後の金額となる。いわゆる手取りはこの金額のこと。
控除および手取りの額は額面給与の額や会社によって異なるが、一般的な会社の月給ならば「手取り=額面給与の75%~80%程度」と考えておけばだいたいあってる。
なお、控除の詳細は「給与明細書」に記載されるが、
- 「その他」といったようにぼかされていたり、「積立金」など身に覚えのない名目がある。
- 不自然に控除の名目が少ない(税金や年金などにあたる項目がない)。
- 給与明細書そのものを発行してくれない。
以上にあてはまる場合はブラック企業である可能性があるため要注意。
そもそも2点目のケースでは、本来会社が果たすべき納税や年金納付といった社会的な義務を怠っている危険性がある。
これ以外でも、給料が給料日になっても支給されず、遅れて支給される場合や、懲戒処分を受けたわけでもないのにいきなり給料が減額されていた場合もブラック企業である可能性が高い。
そうでなくとも倒産など良くない事態の前触れであることが多い。
もちろん給料や残業代が全く支給されない(不支給)のは論外である。
労働者を理由も無くタダ働きさせる行為はれっきとした犯罪です。
対策
いずれにせよ、ちゃんと支払わない企業・組織に恩義や罪悪感を感じてはいけない。
違和感や理不尽があれば言い分を鵜呑みにしてはいけない。必ず調べよう。
違法な労働契約、例として損害賠償や罰金で減給などは署名捺印があっても無効となる。
適当な耳触りの良い理由をつけて、給料全額を支払わない「やりがい搾取」なども問題となっている。
有給休暇
任意で取得できる給料が支払われる休日。労働者の権利、取得理由は自由。
取得させない、取得に条件をつけたり十分な理由を提出させるのは違法(犯罪)。ただしやむを得ない理由で「休むのはいいけど時期をずらしてね!」というのは合法である(時季変更権。注意として、単に「繁忙期だから!」では認められない)。
なお、年に10日以上の有給取得者がいる場合は、企業側はその内5日間を労働者に対して取得させなければならない(つまり年に5日は絶対に休まないといけない)。
また、有給の取得時効は2年とされている(就労規則で別に定めている場合を除く)。
ちなみに退職時に全消化しても全く問題ない。(退職後にはずらせないため)また正社員だけの権利ではなく、パート、アルバイトでも取得対象になる。
取得の条件は次の通り。
- 雇入れの日から六ヶ月間継続して勤務する事。
- 全労働日の八割以上を出勤する事。
この二つを満たせば労働日数に応じた有給が付くのである。
取得日数早見表
所定労働日数/勤続年数 | 半年 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
5日 | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
4日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
2日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
1日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
年収の壁
この壁を越えると税金や保険に加入しなければならないというもの。一般的に手取りが減るのが嫌だったり、扶養から外れるのがマズいというのでこの壁を越えないように働き控えをする人がそこそこいる。
具体的には次の通り。
- 100万円の壁
税金の壁。
このラインを超えると住民税の支払い義務が発生する。ただ、ここは住んでいる自治体によって浮動し、厳密に言えば93万円~100万円の壁と言える。
昨今色々と言われる壁の中でこれに関しては特に音沙汰がない気がする。
税金の壁。
このラインを超えると所得税の支払い義務が発生する。具体的には所得税の基礎控除48万円+給与所得控除55万円を超える為(つまりお金を稼いでいないという建前がなくなる為)。
2024年にはこの壁を見直そうという動きが活発化しているが……。
- 106万円の壁
社会保険の壁。
このラインを超えると社会保険の加入義務が生ずるわけだが、実際にはこれに加えて「週の所定労働時間が20時間以上」+「勤務期間が二ヶ月超」+「従業員数51人以上」+「学生ではない」という条件を全て満たすと加入義務が生ずる。
ちなみに社会保険料は労働者と雇用者側の折半なので、会社側から「このライン超えないでね」と言われることもあるかも。
103万円の壁見直しのドサクサに紛れて「この壁を無くそう!」という声が厚労省から発せられたが、これは先程あげた条件を撤廃し、週の所定労働時間だけで社会保険の加入義務が生じるというものなので、将来の保証と引き換えに手取り減となる。ただこれらはまだ具体的な方針が定まっていない噂の段階である為、今後の動向に注視しないといけない壁でもある。
- 130万円の壁
社会保険の壁。
ここまで稼ぐと条件なしに問答無用で社会保険に加入の上、国民健康保険や国民年金を支払わなければならない。第3号被保険者と呼ばれる人たちはこの壁を意識するらしい。
- 150万円の壁
税金の壁。
具体的には配偶者特別控除と呼ばれる物で、このラインを超えると徐々に控除額が減っていき、結果として夫(妻)の税金が比例して高くなる。
- 201万円の壁
税金の壁。
先程の配偶者特別控除だが、このラインを超えると、控除額がゼロとなる。結果として夫(妻)の税金が高くなる。
これ以外にも配偶者手当に関する壁といのも存在する(これは企業ごとに異なるので割愛)。
昨今の給料問題
近年の日本の大企業では、内部留保を厚くしたり会社役員への報酬や株主への配当を重視したりする傾向が強まり、企業の利益にかかわらず、労働者の給料は減少傾向にある。
これは労働者側への利益の還元を軽視する(=労働者を大事にしない)行為と言え、「労働者側がいくら働いても給料が上がらない(もしくは下がる一方)」という状態を生み出し労働意欲を削ぐ大きな要因となるため問題視されている。
時代遅れ
年功序列で若いというだけで給料が低い、仮に実績を上げても大した昇給や昇進がないといった不満や、前例主義、時代遅れの経営陣に従わされるなどを原因とした退職などもある。
単純に安い給料で使い潰そうとしているのが求人や企業レビューから透けて見える場合もあるため、就職活動の際はご一考されたし。
アンバランスなもの
かといって高すぎる給料も警戒されるし、2020年代には破格の報酬を餌とした闇バイトなど無知や疑わない人間の個人情報を人質にして捨て駒扱いという事例も多い。
税金から給料が支払われる公務員などは税金泥棒と叫ばれるが、薄給激務で真面目にやってる人から国会議事堂で寝てるオッサンまで様々である。(ちなみに後者は毎年総額数千万円以上貰える)
換算値
アルバイトなどは時給で示される場合も多いが、給与形態を問わず時給・日給・月収・年収換算で計算し複数社を比較してみるのも参考になる。以下は例。(長期休暇・ボーナスを除く)
- 時給850円×8時間=日給6800円×20日=月収13.6万円=年収163万円(14円/分)
- 時給1000円×8時間=日給8000円×20日=月収16.0万円=年収192万円(16円/分)
- 時給1200円×8時間=日給9600円×20日=月収19.2万円=年収230万円(20円/分)
- 時給1562円×8時間=日給1.25万円×20日=月収25.0万円=年収300万円(26円/分)
- 時給2000円×8時間=日給1.60万円×20日=月収32.0万円=年収384万円(33円/分)
- 時給2600円×8時間=日給2.08万円×20日=月収41.6万円=年収500万円(43円/分)
- 時給5206円×8時間=日給4.165万円×20日=月収83.3万円=年収1000万円(86円/分)
- 時給6000円×8時間=日給4.800万円×20日=月収96.0万円=年収1152万円(100円/分)
…もちろんここから税金等や生活費、家賃・光熱費等が引かれるが。