解説
定期的かつ継続的に金銭を支払って、受け取る人を支援する制度である。
日本の公的年金制度は国民全員が払う義務を負う「国民年金」と、サラリーマンや公務員など雇われている人たちが入る「厚生年金」の2階建て構造であり、それぞれに高齢者・障害者・遺族の年金が含まれている。
国民年金は2010年代頃からなぜか税金と同じ扱いをされるようになり、「金が無くて払えない」という申し込みを正式にしないまま未納すると給料や財産の差し押さえを食らってしまう。勤め人の場合は通常は給料から天引きされて雇用先がまとめて支払うが、稀に「実は払ってませんでしたーっ(・ω<)☆」という悪徳企業もあるので注意されたい。もし心配なら年金事務所に確認するのが手っ取り早い。
逆に従業員のことをきちんと考えてくれている企業では、3階建て部分に相当する『企業型DC』(確定拠出年金)が用意されている場合もある。
フリーランスや自営業の人は、勤め人として厚生年金を支払った期間が他の人より少ない分受取額は少なくなるため、自分で蓄えを厚めに用意しなければならない。
年金には自分で積み立てて自分で受け取れる『積立方式』と、自分が払ったものが直接受け手に渡されている『賦課方式』がある。
日本の年金制度は後者であるが、これは高齢者がまだ少なかった昭和に設計されていたため、少子高齢化が深刻になった今は労働世代の負担は年々重くなり、受益者世代の受け取り額も少なくなっている。
国民年金と厚生年金はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって、国内外の株式と債券を購入することによる資産運用(投資)が行われており、2023年現在では246兆円もの資金を運用している。これは世界の年金基金としては世界最大額で、年間リターンは2001年の開始から年率4%以上を実現している。しかし今のところは「運用額が増えている」以外の意味はなく、別にその恩恵を直接国民が享受できているわけではない。
結局のところ現行の年金制度を維持するための根本的な解決は難しく、『NISA』(少額非課税投資制度)や『iDeCo』(個人型DC)といった非課税投資制度を用意することにより、お手製の積立方式年金制度(3階)を作って老後に各個人で備えてもらうしかないのが現状である。
保険会社の個人年金商品のセールスには、明らかにリスク/コストとリターンが見合っていないものも多く、不安を煽られてうっかり契約してしまわないように注意する必要がある。
老後のための備えであると国が認める金融商品・年金制度は、お金を積み立てた分だけ所得控除が受けられるが、これを「節税になる」とセールストークに組み込まれるパターンが多いので心得ておこう。
余談であるが、医学部において年金制度の研究をしている社会医学系の講座に行こうとして受付に「ねんきんの研究をしている教室」と言ったところ、誤って基礎医学系の粘菌の研究をしている講座を案内された、という笑い話がある。