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経過編集

2007年アメリカ合衆国を発端とした「サブプライム問題」が表面化した。サブプライムローンは信用力の低い低所得層でも家を買える米国のローンのことで、当時の米国の不動産バブルの原因の一つとなったものでもある。米国では不動産の債権(金を返してもらう権利)を担保にした有価証券が以前から流通していたが、このサブプライム証券も米国の格付け会社たちによって不当に高い格付けをつけられていたため、世界中で大量に売買されていた。

しかし米国はバブルの過熱を抑制するために、2004~2006年に政策金利の利上げを行った。これによりサブプライムローン利用者達の負担は重くなり、破産と延滞が急増した。その結果サブプライム関連商品は一転して価値を下げ始め、売りが先行するようになった。


2007年9月、フランスのBNPパリバが同行傘下にあった巨大なミューチュアル・ファンドの解約を凍結。これはファンドを守るための措置であったが、これによりサブプライム関連の金融商品の信用失墜は決定的なものとなってしまい、為替は大きく動揺した。


中でも被害が甚大だったのは、当時米国でゴールドマン・サックスを凌ぐ超大手投資銀行だったリーマン・ブラザーズであった。リーマン社は複数の企業と経営再建に向け話し合い、2008年9月3日に韓国産業銀行(KDB)がリーマン社のの25%を取得すると宣言したが、同10日撤回。米国の中央銀行の救済の可能性も議論されたが、最終的には行われなかった。これは同社を買収しても、額が把握しきれないほど巨額と思われる債務を処理できると判断した経済主体が存在しなかったことを意味する(最終的に債務は64兆円と判明)。

こうして同15日連邦倒産法11章を申請し、リーマン社は倒産した。


リーマン社はサブプライム商品にレバレッジを駆使した極端なリスク選好の投資行動を行っていたため、リーマン社自身の債務と合わせて大量の不良債権を全世界にバラまいたことになってしまった。これにより世界中の資産家・企業たちが巨額の損失を被り、さらに金融機関への不信感も相俟ってドミノ倒しのような不況の連鎖が始まり、世界中株式を始めとするほとんどの金融資産は大暴落するという、歴史的な世界的経済危機となってしまった。


米国の代表的株価指数のS&P500は7年前のITバブル崩壊以降の上昇幅を全て吐き出すどころか、その時の最低値をさらに下回った。また同国で「ビッグ3」と呼ばれる自動車超大手3社のうちゼネラルモーターズ(GM)とクライスラーの2つが経営破綻の憂き目に遭った。フォードだけは傘下のマツダボルボを売却することで這這の体で破綻を逃れた。

米航空会社でもアメリカン航空倒産の遠因となったほか、デルタ航空ノースウエスト航空ユナイテッド航空コンチネンタル航空 (書類上は後者を存続会社とする逆さ合併)を吸収合併して破綻を逃れた。

欧州でも各国で被害を出し、特にギリシャが大規模な財政赤字に陥ったのがきっかけとなって2010年ユーロ危機を招いた。


日本でも2008年に販売台数世界一を記録したばかりのトヨタがほぼ戦後ぶりとなる赤字に転落、航空業界ではJALが経営破綻するなど深刻な被害に見舞われた。またトヨタ・ホンダF1から、スバルスズキWRCから、三菱自動車ダカールラリーから撤退し、四輪競技の世界選手権から日本のワークスチームが一斉に姿を消すという事態に陥った。テレビ業界も例外ではなく、番組予算削減や出演者のギャラ高騰を理由に改編期以外の2時間特番の頻発させたり、TVチャンピオン新春かくし芸大会東京フレンドパーク水戸黄門、ズームイン!!SUPER、サンデープロジェクトなど長寿番組の打ち切りが相次いだほか、SASUKEも一時番組存続の危機に晒された。また、リーマンショックの直後に民主党主導による事業仕分けの影響による政府広報番組が縮小するきっかけにもなった。さらに、後述の派遣切りや新型インフルエンザに対する政府の杜撰な対応も重なった結果、2009年夏の総選挙ではこの絶望的不況を背景に民主党が勝利し、野党として久々の政権交代を果たした。

立ち直ろうとしていた2011年には東日本大震災が発生して経済回復の出鼻を挫かれてしまい、これが2012年に政権を奪還した自民党安倍晋三首相によるアベノミクスにも繋がっていく。


民間では「派遣切り」が社会問題となり、年越し派遣村など民間ボランティアによる救済イベントが行われた。派遣社員を始めとする非正規雇用労働者の失業に対する政府の対応が批判された。

この年に就活を強いられた世代至っては、楽観視されていた就職市場が突然悪化したことで状況に対応しきれず脱落する者や、まだ違法行為としての社会認知がされていなかった「内定取り消し」に遭い、新卒という生涯一度の切り札を踏み躙られる者も少なくなかった。これがきっかけとなり、収入や生涯保障が安定し、内定取り消しがほとんどない公務員をめざす若者が急増した。


自社の規律を守れずに格付けを誤ったムーディーズ社は25億ドル、スタンダード・アンド・プアーズ社は15億ドルの制裁金を連邦政府や各州の当局たちにそれぞれ支払うこととなった。

金融機関に対する信用も大きく崩れてしまったため、業界再編や法整備が進められていった。スイスのバーゼル銀行監視委員会は、金融機関の自己資本比率を基準とした債券発行の国際ルールである「バーゼル規制」(バーゼル合意)の『バーゼルⅡ』を改良して2013年から『バーゼルⅢ』を施行し、金融危機の再発防止に務めることとなった。

破綻したリーマン社は2019年まで清算が行われた。


呼称について編集

前述のパリバが発端となった証券価格暴落と為替ショックは「パリバ・ショック」と呼ばれ、これがこの経済危機そのものの名称として用いられる場合もある。

ただし「リーマンショック」も「パリバショック」も和製英語のようで、英語Wikipediaでの名称は「2007年-2008年の金融危機(2007–2008 financial crisis)」、もしくは「サブプライム住宅ローン危機(Subprime mortgage crisis)」となっている。


関連項目編集

サブプライムローン投資銀行 金融危機 世界恐慌 不況 パニック


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