日本維新の会〈Japan Restoration Party〉
にほんいしんのかい
初代(2012~2014)
大阪市市長の橋下徹が、平成24年9月12日に大阪維新の会を母体として結党した国政政党。「維新八策」が党の綱領とされる。代表は石原慎太郎と橋下徹の共同。
平成24年末の衆議院選挙直前に、強行保守的政党〈太陽の党〉の代表石原慎太郎が合流。そのため同党の公認候補にはかつてのたちあがれ日本のメンバーが並ぶことになり、「維新八策」の内容も大幅に修正された。また、民主党から移籍した者、橋下主催の政治塾出身の新人達も多く候補に加わった。
このデビュー戦ともいえる2012年の衆議院選挙では元たちあがれ日本のメンバーが多く当選する結果となった。民主党は野党に転落し壊滅状態となり、自民党は強固になり与党に復帰した。維新の会は自民党の与党復帰を好意的にとった。
分党へ
しかし、参議院選挙でも自民党は大躍進し、『日本を取り戻す』方針において〈憲法改正〉〈国防軍保持〉を掲げる、かつてより急進的な自民党政権の政権・与党の体制が磐石となると、同じく〈憲法改正〉なども含む急進的改革政党の維新の会への期待も急速にしぼむ事態となり、維新の会の方針の『八策』などを主張することが困難となった。更に母体党の『大阪維新』においても橋下が大阪の行政において強引に改革を進めたことによって求心力が低下したことも重なり、維新の会は延命として国政においては与党・自民党と協力政策を採る方針をとり、石原が主張する『改憲』政策などは封殺した。
同じく自民党と協力する『みんなの党』も分裂し、『結いの党』が生まれた。『結いの党』は参議院での『維新の会』との提携を提案。これを橋下代表が了承する一方、石原代表は『左派』と断じて反対。最終的には石原側の意見に反して、結いの党と提携することとなった。
再三に渡り石原の意見が潰されたこと、同志であった橋下とも意見が違うことが原因となり、石原と橋下の溝は深まった。そして2014年5月28日に両氏が会談し分党が決定した。
石原は『自主憲法制定』『自立』『新保守』『次世代』を強固に押し出だしながら自民党と協力をしていくことが狙いであったとされる。
2014年8月、石原グループは新たに次世代の党を結党。
2016年9月、橋下派を中心とするグループが残った日本維新の会に結いの党が合流、政党を継承した上で改称する形で維新の党となり、いったん「日本維新の会」の呼称は消滅した。
日本維新の会綱領(維新八策)
『結党の理念』
日本維新の会は、国家再生のため、日本が抱える根源的な問題の解決に取り組む。決定でき責任を負う民主主義と統治機構を構築するため体制維新を実行する。
『現下の窮状』
- 国際的な大競争時代の中で多くの分野で停滞あるいは弱体化した。
- 国民は多くの不安を抱えている。
『目指すもの』
- 日本国が世界において名誉ある地位を占めること。
- 都市と地域、個人が自立できる社会システムの確立。
- 世界において常に重要な役割を担い続ける日本を実現。
- 我が国の歴史と文化に誇りを抱き、良き伝統を保守。
- 多様な価値観を認め合う開かれた社会を構築。
- 国からの上意下達に依ることの否定。
- 地域や個人の創意工夫。
- 自由な競争。
- 経済と社会を活性化。
- 賢くて強い日本を構築。(世界に覇を求めず、平和と繁栄の増進に貢献するのが賢くて強い国である)
『大競争時代の中での急務』
- 「国民の安全」「生活の豊かさ」「伝統的価値や文化」などの国益を守り、かつ世界に伍していく。
- これを、伍していくには効率的で自律分散した統治機構を確立すること。
『妨げ』
- 中央集権、官僚主導、護送船団型の国家運営(脱工業化と情報化の高度成長の妨げ。)
『世界の平和』
- 「法の支配」「自由主義」「民主主義」等の価値を共有する諸国と連帯する。
- 『明治以来の技術基盤と技術革新力により文明の発展と世界の繁栄に寄与。
維新八策
かつての所属議員
2代目(2016~)
「維新の党」において橋下・松井ら「日本維新の会」系幹部と「結いの党」系議員との対立が表面化。2015年8月に橋下・松井が離党する。
2015年11月に「維新の党」から「日本維新の会」(大阪)系の議員が離脱・結集する形で松井一郎大阪府知事を党首として「おおさか維新の会」が結成される。
2016年3月に初代「日本維新の会」の継承団体である「維新の党」は解散。
2016年8月に「『おおさか』の名称は地域エゴに見られかねない」として新党名を検討していた「おおさか維新の会」が政党名を変更し「日本維新の会」に改称。
以上の通り、書類・手続き上は「初代」と「二代目」は同名であり、中心的構成員の多くが同じでありながら別団体である。
政策面では、反公務員・新自由主義的傾向が強く、地方分権・地域主義を掲げている。自民党の掲げる改憲を支持する一方、公務員制度改革や財政政策をめぐって対立関係にある。森友学園問題や議員のスキャンダルなどをめぐって、週刊新潮や週刊文春などの保守系週刊誌から批判的な記事を書かれることもある。
2020年コロナ禍のさなか「イソジンを使ってうがいをすることによって、新型コロナウイルス患者が減る」という吉村知事の発言や、医療機関に防護服の代用品として雨具を配るなどCOVID-19への独自の対応が(否定的反応も含めて)話題になり、調査会社によっては支持率で野党トップになることもある。所属議員が「民主主義への冒涜」とも言われた愛知県知事リコール不正署名にも関与した疑いがもたれている。
「自民党でもええけど、おもろないな」「公務員ばっか金もらいすぎやろ」という層の受け皿になることにより支持を拡大。
また、その得票は極端に大阪に集中している。
主な要因は主に二つ存在し、ひとつは大阪に伝統的に存在するとされる東京中央への反感を獲得していること。大阪府で圧倒的に強いが、支持基盤は関西地方が中心で、他の地方での支持は薄い。関西のテレビ局への出演は多いが、東京では扱いが低いためその反感も票になっている模様。
そしてもう一つは、国政政党としての日本維新の会の事実上の基盤となった大阪維新の会について、(都構想が二度にわたり頓挫したように必ずしも全面的な支持ではないのは確かなものの)大阪地方行政における各種の改革が市民に一定の評価を得ていることも関係している。
というのも維新が台頭する以前の大阪の政界では部落問題をはじめ多くの利権や一般市民に無益なバラマキが行われているとして、腐敗が批判されることも多かった。その元凶ともいえる左派勢力と、その状況を一向に改善できずむしろ癒着している節もあるとみなされていた自民の双方に対して2000年代後半に至るまでの長年にわたって府民の不満が高まっており、そんな中で橋下氏ひいては維新が登場して曲がりなりにも各種の改革を実行に移した…という背景がある。
上記に関連して、大阪にすぐ隣接しており左派の増長という似たような問題を抱えていたうえに土井たか子の地盤ということもあり左翼が強固な地盤を持っていた兵庫県の阪神地区や神戸においても、それらの勢力に反感を持つ40代以下の世代を中心にある程度の支持層を抱えているとされる。
選挙の動向
世代的には冷戦末期の東欧崩壊や小泉民営化旋風を経験した1970年代~1980年代生まれ世代で強い(この世代は特に共産党支持が少ない世代でもある)。
2019年の参議院議員選挙では大阪・兵庫で勝利、2021年の衆議院議員選挙では大阪全19小選挙区のうち、(公明党に配慮して出馬しなかった4選挙区を除く)立候補した15選挙区全てで維新候補が勝利。議席も公示前(2017~2021)の11議席から41議席と大きく躍進し、野党第2党、全体でも第3党となったことで政治関係者から一般国民までをも驚愕させた。
また大阪10区で立民の大物である辻元清美の打倒に成功。大阪11区でも同じく立民の大物である平野博文を打倒した。その上、2人とも比例復活できないという轟沈状態にした。ネットの保守層、特にTwitterでは飲めや歌えの大乱痴気騒ぎとなった。
「お前ら辻元清美落選に対して『高槻市民よくやった』『見直したぞ』とか誉めまくってくれてるけど、本当に一番喜んで嬉しくて泣きそうなのは高槻市民やで、ホンマありがとう。もっと誉めてくれてもええんやで?」
そして2022年、参院選の結果は改選前より6議席増やし12議席獲得。非改選含め21議席となり比例票において野党第一党となる快挙を成し遂げた。
ただし選挙区のうち最重要としていた京都選挙区と東京選挙区の候補はいずれも僅差で敗れている。
また松井代表は、与党になれなかったことでこの結果に不満を抱いている。
ついでに辻元清美も復活。全国比例だししょうがない。
その他
日本維新の会とは無関係に、「維新の会」を名乗る政党が全国各地にいくつかある(「西宮維新の会」を名乗った野々村竜太郎など)。