「街を歩くだけでいつだって注目の的。」
「わたくしは、斎園寺しのぶ。 皇都一の美女と謳われる公爵令嬢。」
「羨ましくなんてない、わたくしは選ぶ立場だもの」
人物/容姿
西園寺公爵家の令嬢。22歳。
菜々緒ほどではないが、高い霊力を持っている。
見目麗しく社交界の花形として、誰もが見惚れる程の可憐な美貌で白薔薇と謳われており、前述のセリフ通り「皇都一の美女」だと自他ともに認めている。
だが、大和撫子といえる対照的な美貌を持つ菜々緒は真澄を始めとした男性陣を初対面で見惚れさせており、蓮太郎が「夜行が麗人と取り合うほど」だと美貌に納得を示していたことや、それ以前に菜々緒は華族の夜会に出席するどころか公けにお披露目をされていないという状況からしのぶが皇都一の美女とは言い切ることは出来ないのである…。
一見、令嬢らしくお淑やかに振る舞っているが蝶よ花よと甘やかされて育てられた為に本性は強欲でかつ非常に独占欲が強い傲慢であり白蓮寺家の人間と大差ない人間性をしている。
また、既に成人しているにもかかわらず、子供っぽい言動をすることが多く、後述の行動を起こすことからあまり、菜々緒の宿敵である悪知恵が働く明美のように自身で計画を立てる形ではなく側近に頼りっきりにしているため頭の中身は容量が悪く知識が浅はかな面がある。
なおプライドが高い一面があり、血を引いているのにもかかわらず白蓮寺家を「没落した白蓮寺なんて価値なんてないじゃない?」と平然とした口調で語るなど常に自分が上だとマウントを取っている節からプライドと格差などが強い傾向がある。
元は、紅椿夜行の婚約者であったが夜行の特異体質である「吸血」に怯え、それによって縁談は破談となり、今は彼の兄である鷹夜と婚約しているが・・・・・・・・・。
女の情念
「やっぱりわたくし、夜行様の方がいい・・・・っ」
夜行の吸血体質を嫌悪し、破談となったが、夜行を心の奥底ではまだ好いていた。
(夜行と婚約した時には彼が吸血体質を持っていることを知らなかった。だがある日、悪意を持った朱鷺子から夜行が持つ能力がいかに恐ろしいものだと吹き込まれる。しかし、吸血鬼と令嬢の恋愛ものの西洋のおとぎ話に憧れていたことから興味本位で夜行に吸血するように迫り、夜行を困惑させる。そして、血を求める椿鬼の本能に負けた夜行に吸血されるが、あまりの痛みに恐怖を抱いて夜行を拒絶し、破談に至ったという経緯があった。)
夜会にて巨大な妖に餌として襲われそうになった際、討伐のために出動した夜行に偶然に再会し助けられる。
(その直後夜行は元婚約者であるしのぶを見て動揺していた。)
救出後、従兄弟である綾小路真澄に鷹夜との縁談を破談にし、夜行ともう一度結婚したいと訴える。
(真澄は、夜行と菜々緒が既に婚姻関係であることを知っていたことから、唐突なしのぶの発言に驚きを隠しきれなかった。)
その後、夜会での騒動の事情聴取を受けた後に夜行に会うために陰陽寮の部屋に入るや否や、菜々緒を始めとした周囲の目を気にせずに大胆にもアプローチをし始める。
斎園寺家は陰陽寮に多額の資金提供しているため、夜行たちが下手に扱えないほどの大きな影響力を持っているが夜行との婚約を破談した過去を持ち、鷹夜と婚約している身にもかかわらず、堂々としているのはなかなかである…。
菜々緒の素性を知らなかったとはいえ、「差し入れとして持参した高級店の弁当を置こうと、既に机の上に置かれていた菜々緒の手作りの弁当を押し退けて一部を落とす」、「初対面である彼女を確認もせずに使用人と決めつけて命令をした」など、菜々緒に対して侮辱するような言動を重ねていったことで、それまで見惚れていた一般隊士は正気に戻り、ドン引きしている有り様であった。
夜行から菜々緒を「妻」だと紹介され、「菜々緒以外娶る気がない」と言われてもなお引き下がることはなく、「自分を娶ることは夜行に利がある」、「五家落ちした、白蓮寺家の娘より価値がある」と笑みを浮かべながら話を続ける、その姿を見た夜行からは「あまりの話の通じなさ」から母親の朱鷺子と話しているようだと呆れられている始末である。
前皇帝の姪で皇家出身である朱鷺子へさえも「紅椿家(子爵家)ですら自由にできていない」、「その程度で公爵様(しのぶの父)に楯突けると思って?」などと侮辱した上で紅椿家さえも見下している発言をしている。
ここから、夜行の「妻」である菜々緒に対して徐々に黒い感情をむき出しにし始め、暴走していくことになる。
その後、陰陽寮を後にして病院の前で馬車から降り立った菜々緒を待ち構えていたかのように、再び目の前に姿を現すと菜々緒に接近しようとする。
(後述する祖母の香代からの指摘を考えると先回りをしていた可能性が高い。)
だが、夜行から命じられて警戒にあたっていた後鬼から、礼儀として正式に菜々緒を紹介されると「夜行と菜々緒は既に"結納"を済ましている」、「菜々緒への用件は夜行を通すように」と牽制をされてしまう。
後鬼の態度に自身の従者である武井が逆上して暴言を吐き始めたのを静止すると"菜々緒の実家を確めて話がしたかった"と弁明し、仲良くしたいとして改めて自己紹介をする。
だが、この時に父親のことを聞いていないにもかかわらず、父親が大蔵大臣に就任したことを話していたことから菜々緒に対して遠回しにマウントを取っていると考えられる…。
そして菜々緒も警戒する中で自ら近づいて行き、彼女の首筋の傷を見ると
「あなた"も"夜行様に血を捧げたのですね」
「夜行様に強く求められたことがありますの」と突然、恍惚のヤンデレポーズをしながら赤裸々に語り始める。
その時、夜行からの連絡を受けて深刻な表情でその場に駆けつけた鷹夜から婚約を破棄する考えを持っていることを追及され、朱鷺子からは反発をされるが、のらりくらりと聞き流し、考えを改めることはなかった。
これで婚約破棄は二回目である…。
そもそも鷹夜から「話が全然合わない」と酷評されており、彼女自身も英雄の兄でしかない、当主になれなかった研究者の鷹夜に対して関心が無かったのだった。
なお、夜会で騒動が起こる直前には、鷹夜との婚約を祝福してくれた令嬢たちに対して「鷹夜の側にはいつも朱鷺子がいるから二人っきりになったことがない」と暴露し、それまで好評だった鷹夜の評判を下げるような行為をしている。
鷹夜との婚約破棄したことで自身に甘い父親の公爵に我が儘を言って、再び斎園寺家から夜行との縁談を申し出ていたが、既に菜々緒を気に入って一家の妻として認めていた紅椿夜一郎から拒否をされているにもかかわらず、夜行が自分になびかないことに不満を洩らす。
「実家が没落している菜々緒がなぜ大切にされているのか」と疑問を口に出した際に武井から「霊力は高いが菜々緒より劣っている」と指摘される。
その上で、お嬢様なら意のままにできると自己中心的な人間性を煽られて「笛を使い、妖を操って菜々緒を拉致して異国または白蓮寺家に売り払う」という菜々緒を物理的に排除する提案をされる。
この直後に妖が屋敷に押し入ろうとして武井を負傷させ、またもや窮地に陥るも、妖を討伐するために現れた夜行に助け出される。
襲撃してきた妖に対しての恐怖と夜行に再び救われたことから自分のために来てくれたという優越感が混ざった歪みきった笑みを浮かべていた。
その後、夜行に救出された際のスクープ写真が載った事実無根の新聞が社会に出回ったことで、事実を知らない人々が夜行との関係に沸き立っている状況を利用して既成事実を作ろうという浅ましい行為を重ね始める。
さらには斎園寺家の権力を使って強引に夜行を自分直属の護衛にすると彼だけではなく弍番隊隊長である緑川蓮太郎を始めたとした陰陽寮の面々までも自分の娯楽のために必要以上に街中に連れ回し、夜行から苦言を呈されるほど傍若無人に振る舞っていた。
あまり出歩かないでほしいと言う夜行に対して「出歩くと例の記事によってマスコミに囲まれる」からだと頬を染めながら自己解釈を披露し、新聞会社を買収して書かせたものだと気がついていた夜行がさらに嫌悪感を募らせていく。
「皇都の英雄」になった途端に手のひらを返し、「英雄の正妻」という名声を得るために手段などは問わず、挙げ句の果てには「護衛から下りる」ことを告げた彼に対して「夜行が一緒じゃないと注目されない」と本音を言いかけたのを誤魔化そうと虚言を撒き散らす、その姿を見た夜行からは麗人のようだと嫌悪感を抱かれていた。
そんな心の中の夜行の前で、洋装のリボンを解き、胸元をはだけさせると、色仕掛けをしながら血が枯渇した状態の彼に吸血行為を迫る。
しかし、夜行から情欲を向けられるどころか、「霊力が高い女子」という吸血対象を前にしても、彼自身が驚愕するほど吸血する気力すら湧いてこないという吸血対象以下でしかないと椿鬼の本能からも拒絶されていたのだった。
夜行が抵抗しようと腕を掴んだタイミングで部屋に入ってきた菜々緒の呆然としている姿を見ると優越感から笑みを浮かべ、彼女に同行していた達雄が騒ぎ出すとどさくさ紛れて夜行の腕に擦り寄っていたが、表情を取り繕って部屋から出ていった菜々緒を追いかけようとした夜行から腕を振り払われる。
その後、誤解が解けて仲睦まじく過ごしている二人がいる部屋に懲りずに乱入すると菜々緒が作った弁当を侮辱し、精神的苦痛を与えようとする。
しかし、夜行に本音を明かして愛情が変わらないと誓われたことで自信を取り戻した菜々緒から「五家の妻の仕事である料理」、「妻の務めの重大さ」を説かれるが、軽んじて話を聞こうとはせず、夜行を連れ出そうと躍起になっていた。
だが、業を煮やした夜行から拒絶された上に「守ってほしいなら邪魔をするな」と警告されてしまい、目の前で望んでいる吸血を菜々緒にしているところを見せつけられると屈辱感から部屋から出て行った。
(部屋から出た後も、追い討ちをかけるかのように野次馬となっていた無邪気な達雄から二人の様子を尋ねられるという仕打ちを受けていた。)
そもそも夜行から好感度は彼の吸血体質を拒絶した時点で破綻しており、公爵令嬢としての一定の敬意は払われはいるが、あまりにも身勝手で異常とも言えてしまう言動によって暁美同様に菜々緒の立場を脅かす存在でしかないと嫌悪感を抱かれてしまっていることに気づいてない可哀想な人物であると言える…。
朽ちた白薔薇
その後、茶会で参加している令嬢たちに夜行との縁談が進んでいると嘘を吹き込み、話は盛り上がっていた。
(この時、夜行が菜々緒に吸血している光景を思い出し、何か感情を抱くが、その感情を把握せずに無かったかのように振る舞っていた。)
その時、自身に対抗心を持っている扇を持った令嬢から「夜行が白蓮寺から嫁いだ若奥様とカフェで一緒にいるのを親戚が目撃していた」と夜行には既に別の女性がいることを指摘される。
だが、平然と菜々緒を「側室」だとして自分の寛大さを周囲にアピールし、逆に指摘をしてきた扇を持った公爵令嬢を「そんなこと気にするなんて心が狭い」などと煽り、茶会の場を険悪な雰囲気に発展させてしまう。
その態度を見かねた従姉妹たちから「敵を作り過ぎだ」と注意をされ、さらに「夜行とのスキャンダル記事はわざと書かせたものか」と追及されるが・・・
「大丈夫よ」
「子爵程度、公爵様がなんとでもしてくださるわ」
紅椿家を敵に回すことに恐れている従姉妹たちに悪びれることもなく、心の中では「良い嫁ぎ先を得られなかったから自身に嫉妬している」と見下しながら目にハイライトが入っていない何も感じていない表情で「公爵家と父親の地位を盾にする発言」をして彼女たちを凍りつけさせる。
さらに異様な空気となった会場に自身が苦手とし、見下している相手でもある祖母の綾小路香代が真澄を連れて乗り込んで来ると心の中では困惑しつつも、彼女から今朝出た夜行とのスクープ記事が載った新聞について問われる。
記事に掲載されている写真が良く撮れていると無邪気に話し出すが、その様子を見て、呆れた香代から「痛々しい」と両断されてしまう。
さらに人々がいる前で「もう二十二歳で結婚に焦っているのは分かる」と指摘されると図星であったのが顔を赤くしながら拍子抜けするも「スキャンダル記事を書かせたことによって紅椿家から怒りを買った」と告げられると「向こうは何も言ってこない」と紅椿家が公然と抗議してこないことに楽観視をして反論をしてしまう。
しかし、それまで香代の後ろに控えて静観していた真澄から「まったく相手にされていないだけだ!」と怒鳴りつけられる。
自分たち華族は陰陽寮の恩恵を受けている身にもかかわらず、彼らの名誉を踏みにじるともいえる身勝手な行為をしたと、その行為が陰陽一族全体に喧嘩を売っているようなものであり、罪がない他の華族の人々の今後の待遇にも影響を及ぼす事態に発展していることを指摘される。
だが、それでも引き下がらずに「菜々緒よりもふさわしい」と反論しようとするが、
「自分が周囲の笑い者となっていることを・・・、」
「そろそろ自覚なさい」
香代から周囲から笑い者にされていることに指摘をされ、辺りを見渡すと自分が周りの令嬢たちから「笑い者」にされていた事実に驚愕する。
その場にいた令嬢たちは以前から彼女の傲慢さに辟易していて、扇を持った令嬢が指摘した通り、既に夜行が正妻として菜々緒を迎え入れたということは社交界では広まっていたことから騙されずに済んでいたのだった。
身分故に逆らえず、しのぶに話は合わせていたが、彼の眼中すら入っていないのに自分が正妻だと振る舞っていたのを陰では痛い女として嘲笑の的にしていた。
さらに香代に非難されても、自身の行為を正当化し、醜態を晒し続けたことで社交界での立場がなくなることが確実となると本格的に手のひらを返されてしまう。
そして香代からは「紅椿夜行のことは諦めなさい。万が一にも貴方には望みはない」と厳しい目線と共に叱責を受けるのだが・・・・、
(駄目駄目駄目そんなの駄目!)
(夜行様じゃないと先に結婚した女たちを見返せない!!)
そう焦りを感じたしのぶは
「そうおっしゃいますけどねお祖母様。」
「”傷モノ”相手なら・・・・、話は違いますでしょう?」
口元を盛大に歪ませた笑みでこう呟く。
「菜々緒さんって──────、」
「額に大きな傷があるそうよ。妖に拐われ傷つけられた傷だとか」
「そのせいで、"傷モノ"と呼ばれて両親にも見捨てられたのですって」
「お猿さんのお面をつけさせられ、虐げられて」
「しゃべることすら禁じられていたとか」
香代から「紅椿家の妻にふさわしくない」と、断言されても自分の立場が悪くなっている現実を受け入れられず、作画崩壊といえるような目を泳がせた救いようがない歪んだ表情をしながら菜々緒の立場が悪くなるように彼女の過去を暴露し始めた。
(この際、菜々緒を侮辱するかのように己の額に「菜々緒が傷つけられた印」辺りを指を当て香代と真澄に説明している。)
「そんな曰く付きの娘、どう考えても夜行様の花嫁にふさわしくないでしょう?」
「論外も論外です。そんな娘より私の方が───、」
「お黙りなさい!!」
菜々緒の過去を聞いて戸惑い始めた令嬢たちの様子を見て優越感に浸り、さらに調子に乗り始めると菜々緒を「傷モノ」だと嘲笑をしながら自身が夜行にふさわしいと賛同されるように言いくるめようとするが菜々緒と親しい仲となっていた香代の火に油を注ぐことになり、さらに激高させることになった。
なんでできると思ったんだ・・・・。
そして、香代から「越えてはならない一線を越えてしまった」と言い渡され、通用しなかったことに呆然としている中で真澄と香代は菜々緒の悲惨な境遇を知ると悲痛な表情を浮かべながら彼女が病院にいた理由に納得し、理解を示した。
「人の痛みの寄り添える」、「あの英雄が菜々緒さんに惚れ込んだのもわかる」と悲惨な境遇だったにもかかわらず他人を思いやることができる慈悲深い菜々緒の人間性を評価し、さらに感銘を受けていたことを明かす香代から「入院中に一度も見舞いに行かなかった」と指摘され、苦しい言い訳をするが自己中心的な思考を「見苦しい」と断言された上で「自己顕示欲の化け物」と容赦なく一蹴されてしまった。
見栄を張ってまで嘘をついた上に醜態を晒したことでその場にいた華族の人々から軽蔑の目を向けられることになり、これまで「白薔薇」と讃えられていた華々しい立場が一変したのだった。
その後、事の顛末を知ったと思われる使用人たちからも嘲笑されながら失意の中で屋敷の部屋で軟禁されていたが、武井との計画を実行することを決めると隠し通路を使って脱出する。
そして、菜々緒を武井からの情報を元に皇都の街中を徘徊しながら待ち伏せる。
そこに馬車で通りかかった菜々緒が、髪が乱れて靴は脱げているという令嬢とは思えない、みすぼらしい姿をして出歩いていた、しのぶを不審に思いながらも馬車から降りて話しかけると菜々緒に気づいたしのぶは淡々と語りながら、敵意を剥き出す。
喚きながら「傷モノ」と侮辱し、菜々緒に平手打ちをしようとするが、後鬼に阻止されると「傷モノ」の菜々緒が大切されていることに嫉妬心を爆発させる。
「いらない いらない いらない いらない」
「消えろ 消えろ 消えろ 消えろ」
「わたくしより幸せな女はこの皇都にいてはいけないのおっ」
夜行との結婚を妨げていると責めると笛を吹いて妖を呼ぶ。だが当然、集まってきた妖に自身も捕まりそうになり、叫び声を挙げながら助けを求める。
後鬼は情けをかけてまで助ける必要はないとするが、しのぶの身に何かあったら護衛役になっている夜行が責任を負わされてしまうと懸念した菜々緒と考えた末に承諾した後鬼の作戦で、菜々緒が鷹夜からもらった籠目玉を使って小結界を展開すると、彼女に守られる形で結界の中に入った。
皮肉なことに陰陽寮に勤務しているだけのただの研究者と見下していた鷹夜にも間接的ではあるが守られる形となっている。
「どうして私のものを奪うの!?夜行様だって最初はわたくしの婚約者だったのに!」
「そうよどうして夜行様も駆けつけてくれないの!?今助けてくれなきゃ意味ないじゃない!わたくしは公爵令嬢なのよ!」
「早く早く来て夜行様!命かけてわたくしを守ってそれが英雄というものでしょう!?」
笛を取り上げようとした菜々緒と揉み合いになり、夜行がすぐ駆けつけて自分を守らないことに腹を立て子供のように泣きわめきながら彼を責め始める。
だが、それを聞き捨て成らなかった菜々緒から「権力を盾にして陰陽寮の隊士たちを良いように振り回し、夜行様に守られておきながら何様のつもりだ」と叱責されたことに対し「自分が振っていなかったら夜行と結婚できなかったくせに」と身の程を弁えろと泣き顔を晒しながら菜々緒に平手打ちを食らわそうとするなど否定を繰り返す。
彼女から否定をされたことでさらにヒートアップし、その場にいない武井に「菜々緒を消せ」と助けを求め、「菜々緒を結界から追い出すように」と指示されると躊躇なく菜々緒を籠目玉の結界から突飛ばし、猩猩に襲わせ、捕まえられるように仕向ける。
猩猩を前に怯えて身動きが取れない彼女を救出できないように武井が後鬼を術で拘束し、菜々緒を貶めることに成功できたことにもはや救いようがないほどの令嬢らしからぬ醜悪に満ちた笑顔で勝ち誇る。
だが、そこへ菜々緒の窮地に夜行が現れると、一瞬で猩猩を倒されてしまった。
戦いが落ち着いた後、猩猩によって心身ともに疲弊した菜々緒を介抱している夜行を誤魔化すように抱きつくと縋りつきながら感謝を述べる。
だが、彼から護身用の針を突き付けられながら「菜々緒をけしかけたのはお前か」と問われた際にはとぼけた仕草で知らないと装うが「妖を呼び寄せる笛」を手にしっかりと持っていたため夜行から「笛を用いてあやかしを呼び寄せたテロ行為」誤魔化しが利かなくなり、隊員から「しのぶが騒動を起こしている姿を見た」と庶民たちの証言によって追及された際には「そんなのでたらめですわ。きっとわたくしを貶めようとする庶民の妄言です。」とウソ泣きを始め、しまいには「醜聞が大好物で卑しいったらないわ。」となんと庶民への侮辱をその場で初めるなど浅ましい行為を行う。
しかししのぶの言葉に怒りを持った一般市民の女性が証言すると、巻き込まれた多くの一般人が次々と証言し、非難されたことで言い逃れができなくなった。そして夜行から皮肉にも「今回の行いはしのぶが愛してやまない新聞の一面に飾ることとなる。」と同時に全てを失うこととなると言われ、自身の悪行を今更察すると守ってほしいと懇願する様に青ざめた表情で縋り付こうとするが夜行の冷淡な視線に恐怖を抱くと、彼から菜々緒を傷つけたことを決して許さないと厳しく非難された上で「選ぶことはない」と完全否定される。
そして、ショックを受けたことによって、その場に崩れ落ちると最終的に真澄と陰陽寮の隊員たちによって連行されていった。
その後、自身の華族としての身分が剥奪されるが、さらに父親の静雄によるこれまでの不祥事が露見すると自慢にしていた公爵家自体の没落が決定的となった。
菜々緒を「傷モノ」として、見下していたが本性が暴かれ、醜態をさらしたことでそれまで「白薔薇」と持て囃されていた社交界からは笑い者として成り下がり、罪を犯したことで事実上の「傷モノ」令嬢となってしまったのだった…。
その後は不明だがおそらく斎園寺公爵家の没落は確定したため二度と社交界にも姿を現すことはないと推測する。
小説版では菜々緒個人に危害を加えようとした暁美は牢に入ったまま(同じく麗人も独房に入れられていたが一族の保釈金により釈放されている。)であり、漫画版では釈放されたものの、それぞれ追放と幽閉という悲惨な末路となっている。
しかし、しのぶは一般人までも巻き込んだテロ行為を犯したことが決定打であるため社交界に舞い戻ることは叶ぬこともおろか、暁美と麗人の末路よりも悲惨であることは間違いない。
余談
行き遅れ?
年齢は22歳と現代なら"行き遅れ"と断言できる年齢ではないが作中のモデルとなっているであろう、明治~大正時代辺りの、女性の結婚法年齢は15歳からではあるものの、一般的には18歳から22歳が平均的な結婚年齢であることからかなりギリギリである。
↑上記の平均結婚年齢は家族を養うために婚期が遅れがちな貧困層も含めた平均のため、華族令嬢の平均結婚年齢は17歳~19歳(女学校を中退させられ15歳で嫁ぐことも珍しくない)ということはつまり……。
ちなみに、菜々緒は本来15歳で麗人に嫁ぐ予定だったこと、暁美が10代後半で嫁ぎ、夜行の上の妹の小夜子は21歳で既に嫁いでいることから相当な行き遅れであることは否定しようがない。
作中の彼女の回想では同世代の令嬢たちが先に結婚していく中で、彼女たちに祝いの言葉をかけるも心の中では見下しており、さらに結婚相手を勝手に評価しては嘲笑った上で、羨ましくない、自分は選ぶ側だと、高を括っていたが香代から指摘されたとおり焦りは感じていた模様。
なお、夜行との婚約破棄から鷹夜との婚約までに縁談があったのかは不明だが、上記してある同世代の令嬢たちを見下している場面で、とある令嬢が自身に執着していた男性と結婚したのを嘲笑していた。
だが、その男性はしのぶに執着していた割に、すんなり別の令嬢と結婚に至っており、同世代の令嬢たちが日頃からしのぶのあからさまな態度に辟易していたことが明らかになったことから性格が足枷となったと考えられる…。
声優への期待
ボイスコミックでの麗人、暁美、朱鷺子(暁美との兼役)の声優が悪役を演じるイメージがない江口拓也氏、戸松遥氏であったため、しのぶもそのような声優が演じるのではないかと予想がされているが果たして・・・。