概要
山田鐘人原作、アベツカサ作画の漫画、『葬送のフリーレン』第1話「冒険の終わり」で、同作主人公のフリーレンが後悔の涙を流しながら言った台詞の一節。
経緯
※この節は原作に基づいています。アニメ版における変更点は後述します。※
長い時を生きるエルフ・フリーレンは千年以上の時間を過ごすうちに寿命の短い人間との関わりを軽く見るようになってしまった。
そして、自分にとってはあっという間の10年が人間にとってどれだけ長いかもわからず「仲間達と冒険した年月も短い間だった」とあっさりしていた。
仲間達が冒険で楽しかったことを語り合う中、無表情でそっけなく返す彼女を冷たく思う読者も多かっただろう。
だが「冒険の終わり」を迎えて50年後。
そんな彼女の運命を大きく変える出来事が起きる。
勇者ヒンメル、ハイター、アイゼンらと約束していた「半世紀流星を眺めるのにもっといい場所」への短い旅を終えて間もなく、ヒンメルが身罷ったのである。
聖都の司教となっていたハイターによる葬儀が執り行われ、そこにはアイゼンと共に会葬するフリーレンの姿もあった。
大勢の人々が悲しみに暮れる中、一人フリーレンだけは表情を変えないままでいることに対し民衆から「薄情」の声が飛び交う。
その場はハイターとアイゼンが取りなしたものの、フリーレンはこう切り出した。
「…だって私、この人の事何も知らないし…」
この自らの言葉が琴線に触れたか、フリーレンの目から涙が溢れ始めた。
「たった10年一緒に旅しただけだし…」
それから彼女はヒンメル、ハイター、アイゼンら3人と過ごしたその「たった10年」の出来事を思い出すと、後悔の涙を大きく溢れさせながら次のように吐露した。
「…人間の寿命は短いってわかっていたのに…」
「…なんでもっと...知ろうと思わなかったんだろう…」
この様子を見たハイターは、アイゼンが見守る中、彼女の頭を優しくなでて宥めた。
実際のところ、生きた時間の100分の1にも満たない冒険は彼女にとって大事なもので、その時間を共に駆け抜けたヒンメルのことも大事に思っていた。
フリーレンはヒンメルを喪って初めて、ようやくこの事実に気づくことができたのだ。
その後、フリーレンは葬儀を終えて聖都へ戻るハイターを見送った後、アイゼンに「これまで続けてきた魔法収集の旅を兼ねた『人間を知る旅』に出る」と告げて去っていく。
「私はもっと人間を知ろうと思う。」
今度はもう、後悔しない為に。
そして、ヒンメル達と過ごした時間を未来へ届ける為に…
アニメでは
葬儀後の埋葬のシーンが追加されており、フリーレンの涙と後悔はこの場面での出来事に変えられている。
ヒンメルの棺が墓穴に収められ、土が掛けられつつあった。その様子を見守っていたフリーレンはつぶやいた。
「…だって私、この人の事何も知らないし…」
その刹那、彼女はヒンメル、ハイター、アイゼンら3人と過ごした10年の出来事を思い出し始めた。棺が土で完全に見えなくなったあとも、思い出のフラッシュバックは続く。
「たった10年……」「一緒に旅しただけだし…」
フリーレンの頬を、涙が伝う。若き日のヒンメルの後ろ姿が蘇る。
「…人間の寿命は短いって、わかっていたのに…」
涙声になっていくフリーレン。そして___
「…なんでもっと………知ろうと思わなかったんだろう……」
彼女の顔は、後悔の念からくる、大粒の涙でぐしゃぐしゃになっていたのだった。
関連イラスト
『わんだふるぷりきゅあ!』でフリーレンとは中の人繋がりの人物によるパロディ(但し同作の設定も考慮すると割とシャレにならない可能性も懸念されている…)