犬飼いろは
いぬかいいろは
『わんだふるぷりきゅあ!』に登場するキャラクター。アニマルタウンに住む私立湾岸第二中学校の2年生の女の子。
彼女の自宅は、母・犬飼陽子と父・犬飼剛が営む「フレンドリィ動物病院&サロン」と同じ建物。
本作の主人公はこむぎだが、企画書段階で「ダブル主人公」とされており、いろはは人間の視点から物語を進めるもう一人の主人公的な役割を担っている。
口癖は「ワンダフルー!」。この口癖は後に人間の姿になったこむぎにも受け継がれているが、彼女はひらがなしか読めないため「わんだふるー!」となっている。
動物が大好きで、特に飼い犬のこむぎには深い愛情を注いでいる。朝の日課として、こむぎと一緒に散歩をすることが楽しみのひとつ。
世界中のすべての動物と友達になることが目標。
同じ学校に通う同級生、兎山悟とは恋人。第36話までは普通の友人として接していたが、悟からは物語序盤から恋愛感情を向けられていた。(詳しくは『悟いろ』)
プリキュアになったきっかけは第2話。ガルガルとなった動物を助けたいという気持ちと、先にプリキュアになったこむぎに追いつきたいという思いから、キュアフレンディに変身する。
誕生日は8月7日(「だいすきプリキュア!わんだふるぷりきゅあ!&プリキュアオールスターズ ファンブック vol.1」より)。
この日は「パートナーの日」や「RAINBOW RIBBON DAY」(保護犬・保護猫を守る大切さを広める記念日)でもある。
本作の舞台は2024年である(第42話のカレンダーの描写を見るかぎり)ため、いろはの生まれた年は2010年となる。
プロフィール帳によると好きな色は紫で、好きな食べ物はグレープシャーベット。
世話焼きで面倒見がよい性格。困っている人や動物を放っておけない博愛精神を持っている。
この性格から友達も多く、動物にも懐かれることが多い。
また、自然豊かなニコガーデンを前にすると目を輝かせるなど、純粋で素直な一面をもつ。
また、自分ひとりで無理をするのではなく、必要なときは周囲に頼ることができる謙虚さもある。
勇敢さも持っており、未知の巨大生物・ガルガルに出会ったときも、逃げ遅れた人を助けるために、自らおとりになることをすぐに決めていた。
一方、嘘や隠しごとが苦手で、嘘をつくと顔や態度に出てしまう正直者でもある。
メエメエにプリキュアとニコガーデンのことは秘密にするよう忠告されているが、物語序盤では、信頼できる友人の悟に話したいという気持ちで悩んでいた。
最終的に、悟を助けるため目の前で変身したことで、戦闘後に秘密を打ち明けた。(その後、悟がメエメエに説得したことで彼に相談できるようになった)
しかし、正直すぎる性格から秘密を簡単に話してしまうこともある。
特に、まだ一般人だった頃の猫屋敷まゆ(キュアリリアン)に秘密を打ち明けた際には、結果的にまゆをガルガルの事件に巻き込んでしまった。
これにより、まゆの飼い猫である猫屋敷ユキ(キュアニャミー)から、一時的に敵視される事態も発生した。
さらに、難しい話を聞くのが苦手で、説明を途中で聞き流してしまうこともしばしば。その度にメエメエに叱られている。
しかし、第11話以降は少しずつ注意深く話を聞けるようになっている。
嘘をつくのは苦手だが、元気のないことをごまかすのは上手。第45話では、いつもと違ってどこか浮かない様子だったことを悟やまゆに心配されていた。
恋愛に対しては鈍感で、悟の気持ちにも第3クール終盤になるまで気づかなかった。
犬になった姿については犬いろはを参照。
左右のもみあげが長いセミロングヘアで色は朱色。頭部右側にハート型のヘアピンを付けている。瞳の色は緑色。
また眉の短さが特徴的で、歴代プリキュアの中でもあまり見られない。
これはこむぎの人間態でも同様の特徴である。
服装
春服
首部分にピンクのリボンが付いた肩出しの白いトップス(カットアウェイショルダー)に薄紫のサスペンダー付きのキュロットを着ている。
よく見ると、トップスとキュロットの間も少しお腹が出ている。
足元は白いフリルソックスとリボンが付いた紅色のパンプス。
お尻のポケットがないハーフパンツが魅力的。
夏や秋も共通。
デートでの服
第37話にて悟とのデートで着用した服。
薄紫の半袖ワンピースと菫色のストラップパンプスが特徴。
ワンピースは母親の陽子が昔着ていたもの。
袖部分に紅色のリボンが付いた白い半袖のトップスの上から紫のキャミソールの様な上着と同色のスカートを着用する。
冬服
白いブラウスの上から袖口が広い紫のカーディガン、ボトムスは紫のキュロットパンツをリボンがあしらわれたピンクのベルトで締め、薄紫のニーハイソックスに紫のショートブーツを履いている。
運動神経がよく、学校の運動部から助っ人を頼まれることもある。
(ただ、身体能力はあくまで普通の中学生の範囲内で、直近の主人公たちのような超人的なものではない)
一方で、運動以外は少し不器用。料理では、こむぎをモチーフにしたおにぎりを作った際、おにぎりの見た目が黒い塊に赤い点がついたものになっていた。
当のこむぎも驚いていたが、悟は持ち前の観察力で「こむぎのおにぎり」と言い当てた。なお、見た目はアレだが味などに問題はなく、"事故"は起こらなかった。
手芸では、こむぎの刺繍がただの茶色い線のようになってしまった。
彼女の誕生日である8月7日は、何気に『ふたりはプリキュアSplash☆Star』の日向咲と同日である。(咲の場合は「8月7日=花の日」の語呂合わせ)
誕生日が他のプリキュアと重複するのは歴代で初となる。プリキュアは人数が多く、誕生日もできれば作品テーマに関係する記念日にしたいことを考えると、被ることもやむなしではある。
演者について
演者の種﨑敦美氏は、11年前の『ドキドキ!プリキュア』のモブキャラでプリキュアシリーズ初参加。
本作放映年の前年である2023年の9月に上映された劇場版『プリキュアオールスターズF』では妖精プーカを演じていた。
(『わんぷり』で3度目のプリキュアシリーズ出演となる)
なお、このプーカは映画オリジナルプリキュアであるキュアプーカに変身するため、広義のプリキュア役としては2度目の起用となる。
特筆すべきは、キュアプーカを演じてから半年にも満たないわずかな期間でキュアフレンディという別のプリキュアも演じるようになったことである。
TVや映画に出てくる非レギュラーのプリキュアを演じた声優が、その後のTV作品でレギュラーのプリキュアを演じることになった例は過去にもあったが、今回のような間隔の短さ(約5ヶ月)は極めて異例である。
MANTANWEB 2024年3月10日記事の種﨑氏へのインタビューでは、『わんぷり』オーディションの声がかかったのはプーカ役に決まった後であったため、「テレビシリーズのオーディションを受けてもいいんだ」と本人もびっくりしたらしい。
しかし、後に映画側とTV側はキャスティングについては全く連携せずに動いていたことが明かされている。(アニメディア誌2024年3月号より)
そのため、短期間で映画とTVの両方のプリキュア役に抜擢されたのはあくまで偶然である。
ちなみに、種﨑氏本人は「せれぶ」という名前の猫を飼っており、猫タワー欲しさに引っ越しまでするくらいの愛猫家でも知られている。
「プリキュアオールスターズF」に出演が決まった時もプリキュアに携われるだなんて…と、光栄でとても嬉しかったのですが、まさかテレビシリーズでもこんな機会をいただけるなんて。映画でこれまでのたくさんのプリキュアたちを見て、キャラクターから、キャストさんから、それぞれのシリーズをみんなで1年かけて作り上げてきた絆を感じました。映画の収録の時、目には見えないけど確かに感じるそれがとても素敵で羨ましいなと思っていたので、ああ、自分もそれができるんだ…と、本当に嬉しかったです。
「キラキラかわいい憧れな存在」という印象が強かったのですが「プリキュアオールスターズF」で作品にしっかり携わらせていただいて、お互いに支え合いながら、強く、かっこよく、勇ましく立ち向かっていく姿をたくさん見て、印象がガラリと変わりました。自然と胸が熱くなって「自分もこうなりたい!」と純粋に思える存在。プリキュアという「存在自体」が魅力なんだなぁと思いました。
いろはちゃんの印象で一番に思い浮かぶのが、誰かの「本当の想い」をちゃんと聞こうとする気持ち。想像や憶測ではない、本当の心の声。それを大切にできるのってとっても素敵だと思います。他のキャストさんの声やお芝居をちゃんと受け取りながら、耳をすませながら、たくさんの方に愛していただけるようなキュアフレンディを、「わんだふるぷりきゅあ!」を作っていけたらと思います。
本編
■第1話
- 「うっ!?ぐへ~!」自分の上にダイブしてきたこむぎに起こされる形で、いろはは目を覚ました。「こむぎ~…」と叱ろうとするも、無邪気に目を輝かせ、「早くお散歩に行こう」と言いたげにじゃれつくこむぎには、怒るに怒れない。「は~い、起きたよ~。こむぎ、おはよ!」こむぎが自分の事を大好きなのは知っているし、いろはもこむぎが大好きだった。
- 父の剛におはようを言った後、こむぎを連れて朝の散歩へ。ここアニマルタウンでは、ペットや野生の動物がたくさん暮らしている。ニワトリや小鳥、池のカメにまで元気に挨拶するいろはとこむぎ。朝陽が昇り、今日もいい一日になりそうだ。
- 朝食時、母の陽子に「バレーボールの試合、頼まれて出るのって今日じゃなかった?」と言われて思い出し、大慌てで出かけようとすると、いろはと一緒にいたいこむぎがしがみついて離れない。「こむぎ、おすわり!おてて!握手!イエーイ」と仲良しサインを交わし、言う事を聞いたところで改めて出発しようとしても、やっぱりこむぎがしがみついてきて同じ事の繰り返し。陽子が引き剥がしてくれて、ようやく出発。こむぎはなおも名残惜しそうに、2階のいろはの部屋から見送っていた。
- 帰宅すると、早速大喜びでこむぎがお出迎え。「ごめんね、淋しかったよね」と頭を撫で、ブラッシングしておやつをあげた後は、本日2度目のお散歩に出かける。
- 鏡石のところで兎山悟とペットの大福と出会い、おしゃべり。鏡石に姿が映ると願いがかなうという言い伝えを引き合いに出し、「小っちゃい頃は『動物とおしゃべりできますように』ってお願いしてた」と言った後、「今のお願いは『悟くんと同じクラスになれるように』かな」と口にして、悟を赤面させる。ちなみに「去年はクラス離れちゃったから、同じクラスになれたらもっとも~っと話せるでしょ?」と全く他意の無い台詞なのであった。その時、鏡石に一瞬だけこむぎの姿が映ったが、当のこむぎは勿論、いろはも悟も大福も気付かなかった。
- Pretty Holicという店が新しく引っ越してきた様子。こむぎが吠えたのでその建物の2階を見上げると、可愛らしい白猫がいた。その飼い主が大慌てで隠れたのには気付かず、「可愛い猫ちゃん発見!初めまして!わたし、犬飼いろは!この子はこむぎ!よろしくね!」と白猫に挨拶して、そのままお散歩に戻った。その飼い主の少女とは、今日時点では出会わずじまい。
- 大勢の人々とペットで賑わう海浜公園でボールを投げて遊んでいると、こむぎが奇妙な石に興味を示す。「石?真ん丸でキラキラしてる…あっ、ちょっと鏡石に似てない?」と考えていた時、こむぎが唸り声を上げ、公園中の動物達も同じように警戒心剥き出しで唸ったり興奮し始めた。そして林の中から、巨大な羊のような怪物・ガルガルが現われる。
- こむぎを抱いて逃げようとした時、犬の吠える声を聞きつけて振り向いたいろはが見たのは、怯えて泣き叫ぶ幼い男の子と、彼を守ろうとするペットのセントバーナード、そして迫り来るガルガルだった。いろははこむぎを地面に降ろし、「こむぎはここで待ってて。絶対戻って来るから…いいね?あの子達をほっとけないから!」と言い聞かせて走り出す。
- 「こっちだよ~!」指笛を吹いてガルガルの注意を引き付けたいろはは、男の子達を逃がそうと自ら囮になった。懸命に走るが、フェンスを突き破り、ベンチを踏み潰し、木々をなぎ倒しながらガルガルは執拗に追ってくる。さすがの体力自慢のいろはも息が切れ、遂に足がもつれて転んでしまった。
- ガルガルは咆哮と共に巨大な前足を振り上げる。もはやここまでかと思った時、必死に走って来るこむぎの姿が見えた。次の瞬間、周囲が眩い光に包まれ、目を開くと見知らぬ少女が両手を広げてガルガルの前に立ちはだかっていた。彼女はキュアワンダフルに変身し、「いろはを傷つけちゃ…だめー!」と叫んでガルガルと戦う。「凄い…でもあの子、なんでわたしの名前を?」
- キュアワンダフルに翻弄された末に、ガルガルは彼女の説得で本来の姿らしき羊のような生き物に戻った。そして変身が解けた少女は、「いろは!これでいろはと一緒だよ!」と嬉しそうに笑いかける。この子はもしかして…。「お…おてて」「ワン!」「握手!イエーイ!」いつもの仲良しサイン、もう間違いない。「やっぱり…こむぎなの!?」「ワンワン♪わんだふる~!」「えぇ~!?なんか…ものすっごく…ワンダフル過ぎな~い!!!?」「ワオーン!」かくして二人のワンダフルな日々が幕を開けたのだった。
■第2話
- 人間になったこむぎを前に目を白黒させていると、さっき助けた羊が目覚め、「この度は助けていただきありがとうございます」と2本足で立って礼を言ってきた。彼の名は執事のメエメエ。動物の楽園ニコガーデンで平和に暮らしていたが、ある日真っ黒な物が押し寄せてきて心が闇に染められ、ガルガルと化してしまったのだという。
- 他にもガルガルにされてしまった動物がたくさんおり、プリキュアの力で助けてほしいと懇願するメエメエ。こむぎは「いろはと一緒ならいいよ!」と答えるが、「ダメェ~!こちらの人はプリキュアでないのでダメェ~です!」と却下され、「じゃあやだ!こむぎはいろはと一緒に遊びたいの!」と依頼をお断りする。何とか言ってくれとメエメエに抗議されるいろは。両親に相談するのも、プリキュアやニコガーデンの事を口外するのも「ダメェ~!」とダメ出しの嵐。とうとう眩暈を起こしたメエメエは「後はよろしく」とキラニコトランクの中に引っ込んでしまった。
- ひとまず帰宅する事にしたが、こむぎが人間になった事をどう両親に説明しようか悩んでいた所、お構いなしのこむぎが「これ押してみたかったんだ!」とインターホンを鳴らしてしまい大慌て。しかし剛が出てきた時には、こむぎは犬の姿に戻っており、胸を撫で下ろす。
- いろいろあって疲れたのか、無心に眠りこけるこむぎを眺めつつ、「どうかプリキュアの力で助けてください」というメエメエの頼みが頭をよぎる。「助けてあげられたらいいんだけど、でもそれって…こむぎが危ない目に遭うって事なんだよね…」いろははふと、昔を思い出していた。
- 小学生の頃のある雨の日(日付はおそらく5月13日)、怪我をして動けないずぶ濡れの子犬を見つけた。「どうしたの?大丈夫?動けないの?どこか痛いの?」いろいろ尋ねてみたが、どんな目に遭ったのか、人間を信用できないらしく、「近寄るな」とばかりに唸り声を上げながら子犬は後ずさりする。「あなたの声が聞こえたらいいのに…うちにおいで」それがいろはとこむぎの出会いだった。「ガルガルの事は気になるけど、こむぎに危ない事してほしくない…」
- 翌朝、例によってまだ寝ているいろはの上にこむぎがダイブしてきたが、何と「いろは、おはようワン!お散歩行こ!」と、犬の状態でも流暢に言葉が話せるようになっていた。起こしに来た陽子に「お母さん、おはよ…!」と普通に挨拶しそうになるこむぎの口を塞ぎ、「犬の姿の時はしゃべっちゃダメ!」と釘を刺すなど大わらわ。
- アニマルクリニックに猫屋敷まゆが来店。続けて悟も来店するも、まゆは隠れてしまう。その後、いろはも顔を出し悟と共にドッグランへ。その様子をまゆが見つめていた。
- ドッグランでこむぎと大福を遊ばせる2人。前回起こったガルガルの事件がバレそうになり、いろははあたふたする。悟は「困った事があったら言って。いつでも相談に乗るから」と言ってくれたが、プリキュアやニコガーデンの事をしゃべるわけにもいかず、「うわ~ん、めっちゃ相談したいよ~」と心の中で悶々とするしかない。
- その時、またもこむぎや町中の動物が吠えたり騒ぎ始める。駆け付けてみると、河川敷でダチョウのガルガルが暴れていた。困惑するいろはに、こむぎは「いろは、あの子を助けたいんでしょ?こむぎを助けてくれたみたいに!」と、いろはが思っていた事を言い当てる。
- それだけではなく、こむぎはいろはに助けられた時の事をちゃんと覚えていた。「こむぎはね、いろはがいるから毎日わんだふるなの!ガルガル放っといたらいろは、わんだふるじゃなくなっちゃうよね?だからこむぎ、行くよ!」そう言うとこむぎは、キュアワンダフルに変身してガルガルに立ち向かう。
- 俊足で逃げ回るガルガルに手こずるワンダフル。居ても立ってもいられず、いろはも走り出した。蹴り飛ばされるワンダフルの姿に、いろはは我が身の事のように心の痛みを感じる。「こむぎが痛いとわたしも痛い…わたしもだよ…こむぎとお散歩したり、ご飯を食べたり、眠ったり…そんな毎日が…こむぎと一緒の毎日がワンダフルなの!だからわたしも…!」
- こむぎへの思いが胸に溢れた時、公園の鏡石が輝き、新たに生み出されたワンダフルパクトがいろはの目の前に出現した。「わたしも…一緒に!」ワンダフルパクトを手に取ったいろはは、キュアフレンディに変身する。「みんなの笑顔で彩る世界!キュアフレンディ!あなたの声を聞かせて!」
- 「一緒だ!お揃いだ!」と大はしゃぎするワンダフルに、「あの子を助けたい。力を貸してくれる?」と頼み込んだフレンディは、2人でガルガルを追いかける。自分が凄い速さで走れる事に驚きながらも、「メエメエから聞いたよ!突然闇に襲われて心が真っ暗になって、ガルガルになったんだって!その姿は本当のあなたじゃないんだよね?教えて、あなたの事!」と懸命に説得を試みる。
- 自分の羽が傷つくのも構わずに周囲を破壊しようとするガルガルにしがみついたフレンディは、なおも訴えかける。「大丈夫だよ、あなたを傷つけたりしないから!わたしはキュアフレンディ!あなたの力になりたい!仲良くなりたいの!わたしと友達になろうよ…!」その温かい心が届いたガルガルの体から黒い靄が消え去り、ダチョウのような鳥の姿に戻った。
- しかしその鳥は、ガルガルにさせられた反動で消耗しており、倒れてしまう。キラニコトランクから呼び出したメエメエに「わたしもプリキュアやるよ!ガルガルになって苦しんでる子達を放っておけないから!」と決意を告げたいろはがその鳥をどうしたらよいか尋ねると、「ニコガーデンで休めば元気になる」との事。動物を助けるためなら迷いはなく、いろははこむぎと手をつなぎ、トランクの中の不思議な空間へと飛び込んでいった。
■第3話
- 到着したニコガーデンは多くの動物が楽しそうに暮らしており、「キラキラしたものがいっぱい!可愛い子達がいっぱい!ニコガーデン、ワンダフル~!」と大喜び。連れてきたダチョウも、メエメエが与えた「ニコガーデン特産の、美味しくてニッコニコになるニコの実」を食べて元気になった。
- いろはも一口食べて「甘~い、美味し~い、グミみたい!」と喜んでいると、こむぎが「こむぎも食べるワン!」と興味を示してきた。「ちょっと待って!もしグミだったら犬は食べちゃダメだよ!」と止めたが、諦めきれないこむぎは人間の姿になって食べ始める。「人間の姿ならいっか…いいのかな?」と首を傾げつつも、とりあえず問題なさそうなのでセーフという事に。リアルでは犬に食べさせるのはアウトだが、作品としての落としどころか。
- お茶を勧められるも、犬の習慣で直接舐めようとして「熱っつーい!」と悲鳴を上げるこむぎに、「お茶の飲み方はね、カップをこう持って、こうやってカップを口元に持って行って少しずつ飲むの。熱かったらフーッってしてね」と指導。これも一つのカルチャーギャップ。
- ニコガーデンに暮らすニコアニマルは、元々人間界で暮らしており、太古の昔ニコ様と共にここへ移り住んだという。しかしそのニコ様は、ニコガーデンが闇に覆われた時に行方不明になったらしく、メエメエはどうかプリキュアの力で助けてほしいと懇願する。しかしニコアニマルやガルガルをどうやって探したらよいかもわからないので、せめて悟に相談したいと頼むも、「言っちゃダメェ~!!! 絶対ダメェ~!!!!」と、口外せぬよう釘を刺された。
- 自分達で頑張るしかないかと思いつつ帰宅すると、悟が待っていた。突如ドッグランから飛び出していったいろは達を心配しており、苦しい言い訳で何とか誤魔化したものの、彼が去った後、「罪悪感で胸が痛いよ~。わたし秘密とか嘘とか、すっごい苦手なんだよ~」と凹む。
- まずはこむぎの嗅覚を頼りにガルガルを探す事にしたが、可愛らしいアヒルの親子に気を取られ、追いかけている内にすっかり当初の目的を忘れている呑気な二人(一人と一犬)。そうする内にこむぎが『グルルルル、ギャフーン』なガルガルの匂いを嗅ぎつける。駆け付けた先でウサギのガルガルに襲われていたのは、何と悟だった。
- 走って来るいろはに気付き、自分の身も顧みず、「来ちゃ駄目だ!逃げて!」と叫ぶ悟。いろはの脳裏に「言っちゃダメェ~!」というメエメエの言葉がよぎるが、そんな事を気にしている場合ではない。「ダメでも何でも!友達のピンチを放っとけない!」とフレンディに変身する。続いてこむぎも犬から人間へ、さらにワンダフルへと二段変身を披露し、いろはが何か隠し事をしているのではと悩んでいた悟は、「隠し事ってこれか!」と唖然。
- ガルガルは、額の宝石から出すビームで木を枯らしたり、尻尾にしがみついたワンダフルを振り落とすなどで暴れて近寄れない。危ないから逃げるよう促す悟に、フレンディは「ううん、逃げないよ。あの子を助けなきゃ。あれはあの子の本当の姿じゃないの。心が黒く染められてガルガルになってるだけで…あの子を元に戻してあげないと!」と返す。事情を察した悟は、「相手がウサギならば、警戒心が強いから追いかける程逃げてしまう」とアドバイスした。
- それを聞いたフレンディは静かにガルガルに近づき、「ごめんね、怖がらせるような事して。安心して、あなたを傷つけたりしないから。わたし、ニコガーデンに行ったよ。凄く素敵な所だね!一緒に帰ろ…」と説得しながら、ワンダフルと共に優しく撫でる事で、ガルガルを元のキラリンウサギの姿に戻した。
- キラリンウサギをニコガーデンに連れ帰り、「ニコの実を食べれば元気になる?」「そうですね、ニコの実を食べてゆっくり休めば…メエ~!アナタどなた~!?」いろはとこむぎは、プリキュアである事がバレたついでにニコガーデンの事も明かし、悟をニコガーデンに連れてきたのだった。立腹するメエメエだったが、秘密は守るしニコ様の捜索にも手を貸すと願い出た上に、何よりいろはやこむぎと違って話をちゃんと聞いてくれる悟に感激。こうして、新たな心強い仲間が加わった。
■第4話
- メエメエに呼び出され、キラリンウサギの力でニコガーデンの一部が復旧する様子を見た上で、「9名のキラリンアニマルが戻れば、ダイヤが輝きを取り戻し、ニコ様も戻るかもしれない」と説明されるが、途中で切り上げてさっさと帰ろうとするいろはとこむぎ。今日は気になっていたコスメ店『Pretty Holic』の開店日で、何としても一番乗りしたいのだという。
- ダッシュで駆け付けて一番乗りを確保。店の前でまゆとあれこれ話している内に、彼女の母すみれに歓迎され、いざ店に入ろうとすると、「ごめんなさい、ワンちゃんにはいろいろ危ないからちょっと…」とペットの入店をお断りされる。「出直そうか」と言い出すいろはにこむぎが「えー?」と人語で不満を漏らしてしまい、驚くまゆを何とか誤魔化しながら一旦退散。
- 「こむぎ、人前でしゃべっちゃメッ!だよ」と叱るも、「こむぎもいろはと一緒に行きたいワン!行きたいワン!一緒に行きたいワン!行きたいワン!」と転げ回って駄々をこねる。「じゃあ、人間になっちゃう?」「なっちゃうワン!」と人間の姿で改めて来店。こむぎとバレそうになるも、なんとか店内へ。
- 動物デザインのコスメの数々に目を輝かせていると、お試しのメイクを勧められる。コスメの香りを堪能するこむぎに犬っぽい挙動を指摘するいろは。すみれが別の接客へ向かったため、まゆがいろはのメイクを担当するする事に。同い年で、同じ湾岸第二中学校に通う事が分かり、あれこれ話し掛けるも、まゆは緊張と集中のあまり黙ったまま。しかし「一生懸命やってくれてありがとう!」と笑ういろはに、まゆの緊張も少しずつほぐれていった。
- 別れ際に「まゆちゃんまたね!また来るし、学校でも会えるね!」と声を掛けるが、まゆの顔に一瞬暗い影が差したのを、いろはは見逃さなかった。「まゆちゃん、時々不安そうな顔してたんだよね、なんでかな?」とこむぎに聞いてみたものの、「お散歩すれば元気になるワン!」と呑気なお答え。それを聞いたいろはは、ある事を思いつく。
- ガードレールや樹木を齧るガルガルを発見。いつものガルガルに比べるとかなり小さい事が気になりつつも追いかけるが、ガルガルはジグザグ走行で素早く逃げ回る。フレンディは「あの子、もしかして怖がってるのかも」と気づいた。「ずっと逃げてる。ジグザグに、怯えるタヌキみたいに。初めて来た町で、友達もいなくて不安で、どうすればいいかわからなくて怖がってる…そんな気がする」フレンディの脳裏には、先刻の不安げなまゆの顔が浮かんでいた。
- 「それじゃあ言わなきゃ!わたし達怖くないよって、一緒に遊ぼって!」とワンダフルもうなずき、「だね!友達になろって伝えよ!」とフレンディは怖がらせないようにそっと近づこうとするが、それでもガルガルは逃走し、道路に飛び出してトラックに轢かれそうになる。危ない所をフレンディが助け出し、急ハンドルを切ってガードレールに激突しそうになったトラックは、ワンダフルがプニプニバリア受け止めた。
- 身を挺して守ってくれたワンダフルの優しさはようやくガルガルに通じ、闇から解放される。小柄だったのも道理で、本来の姿は子ダヌキだった。「いろは様、こむぎ様、お疲れ様でした。おかげさまでニコタヌキさんも無事…」とメエメエに礼を言われるが、こむぎが「いろは、お届けは?」と言い出して、いろはも「あ、そうだった!メエメエごめん!まだ今度!」とまたも話の途中で通信を切ってしまい、気の毒なメエメエは悟に泣きつく羽目に。
- 猫屋敷家を訪れ、まゆにバッグを手渡した。「サプライズプレゼント!これあげる!うちのお父さんがサロンでお勧めしてるお散歩バッグ。わたしとお揃いだよ!良かったらこれを持ってユキちゃんとお散歩してね!」「どうしてわたしに…?」と訝しがるまゆに、「まゆちゃん、ユキちゃん、アニマルタウンへようこそ!これからよろしくねって事で!」と笑顔を返していろはは帰って行く。その背中を見送りつつ、バッグをそっと抱き締めるまゆの中では、今までなかった何か温かい思いが芽生えていた。
■第5話
- 散歩の途中で出会ったえまという女の子は、愛犬のポンがリードをつけたがらなくて悩んでいた。いろはは自宅に連れてゆき、剛と共に「外が怖くないように最初は抱っこして散歩させ、リードをつけるにも褒めたりクッキーをあげたりして慣れさせる事。でも一番大事なのは、えまちゃんがポンちゃんと仲良くなる事だよ。リードは信頼の証だからね」とアドバイスする。えまは、こむぎがリードを嫌がらない事を驚いていたが、いろはも決して簡単につける事ができたのではなかった。
- こむぎを拾った日、「この子と一緒にうちで暮らしてもいい?」と願い出るいろはに、陽子は「首輪をつけているから、他に飼い主がいる筈。体だけではなく心が傷ついているこの子と仲良くなるのは時間がかかるし、仲良くなっても元の家族が見つかったらお別れする事になる。それでもこの子と暮らしたい?」と厳しい現実を包み隠さず教えた上で、いろはの覚悟を問う。しばし迷ったいろはだったが、こむぎが怪我を手当てしてくれた自分に心を許し、手を舐めてくれた事で、いろはは決断した。「お母さん…わたし、この子と仲良くなりたい」
- 新しい環境に不安そうなこむぎをとにかく怖がらせず、いろいろな事に根気よく慣れさせようとするいろは。リードをつけようとすると不機嫌になり逃げだすこむぎにも、「そうだよね、お散歩には必要だけど、まだ怖いよね…」と決して叱らなかった。
- 寝る時も自室ではなく、わざわざこむぎのケージの近くに布団を敷いて、少しでも近くにいて安心させてあげたいといういろはの気持ちはこむぎにも通じ、自らいろはに近づいて一緒に寝るようになった。そしてこむぎに似合いそうなリードを恐る恐るつけてみると、遂にリードを嫌がる事もなくなる。喜んでお散歩するようになったこむぎを見て、「いろはとなら大丈夫だって思えたのよ」「リードは信頼の証だからね」と両親も太鼓判を押した。かくしていろはとこむぎの絆は紡がれたのだ。
- そういった過去を思い出してぼうっとしていたところ、こむぎに呼ばれて我に返り、改めて「どうしてリードをつけても大丈夫だと思えるようになったの?」と尋ねると、「だって、これはいろはが選んでくれた物ワン。それにリードをつけると、いろはを近くに感じるワン!いろはと一緒にいるこむぎは、ずーっと楽しくてうれしくて、わんだふるなんだワン!」と笑顔のこむぎ。「こむぎがプリキュアになってくれて良かった。こんな風にこむぎの気持ちが聞けるなんて、すっごくワンダフルだよ!」といろはも幸せを感じていた。
- アニマルタウンの沿岸に氷山が出現。ペンギンのガルガルの仕業だった。慣れない氷上もスケート風の動きで何とか対応して追跡するが、ガルガルは海中と氷上を自在に行き来しながら、氷の橋を作って町へ向かおうとしていた。ワンダフルが大ジャンプで捕まえかけたものの、氷の橋が崩れてガルガルに逃げられた上に、ワンダフルは極寒の海に落下しそうになる。
- その時、二人のお互いを想う心が具現化したかのように、ワンダフルパクトからリードが出現してフレンディとワンダフルの手をつないだ。こんなピンチなのに「こうやっておててをつなげば、リードをつなげてる時みたいにフレンディを近くに感じられるんだね!」とうれしそうなワンダフルに、「わたしも同じ事を思ってた!」とフレンディも答える。
- 氷の橋は完全に崩れ、二人とも海に落ちたかと思いきや、その体は宙に浮いており、リードはフレンドリータクトに変わった。キラリンウサギの力を借りたフレンディは、強化された聴力で海中のガルガルの位置を正確に察知し、海面から飛び出したところを捕まえて浄化する。
- 帰り道、悟に「こむぎとお話ができたでしょ。ずっとこむぎの気持ちが聞きたかったの。ワンダフルだよ!」と上機嫌で打ち明けるいろは。なぜかフレンドリータクトが自分には反応せず、若干むくれ気味のこむぎも、「犬の姿でも人の姿でも、これからもたくさんお散歩しようね!」と手をつないでくるいろはに、笑顔になるのだった。
■第6話
- キラリンペンギンが戻った事で、また一歩復興に近づいたニコガーデン。力を貸してくれたキラリンウサギや、情報を提供してくれた悟に礼を述べ、「みんなで力を合わせれば出来ない事はないね」と喜ぶいろはだが、「こむぎ、力を合わせてないワン…。フレンドリータクト、こむぎはどうして使えなかったワン?」と一人落ち込むこむぎ。「こむぎもタクト使いたい!使いたい!使いたい!使いたいワ~ン!!」と泣きつかれて、いろはは困惑。
- 戌井という女性が連れてきたプードルのチョコは、予防接種を嫌がって、しきりに暴れていた。しかし「こんにちは、チョコちゃん。どうしたのかな?不安になっちゃったのかな」と笑顔で接すると、チョコは落ち着きを取り戻す。驚く戌井に「昔から、臆病な子や怖がってる子も、みんながいろはに懐くんです」と説明する陽子。それを見ていたこむぎは突如いろはの周りをグルグル走り出し、診察の邪魔になるからと家に戻されてしまった。
- その夜、こむぎは「いろはのお手伝いがしたいワン」と言い出した。昼間絡んできたのも、お手伝いがしたいというアピールだった。「お手伝い?う~ん、じゃあ…ボール取ってきて」「一緒に寝てくださ~い」等々、一緒に遊ぶ"お手伝い"を頼まれ、「違うワン!」と思いつつも楽しいので、結局丸め込まれたこむぎはスヤスヤ。その寝顔を眺めつつ、いろはも眠りにつく。
- 翌朝、散歩に出かけようとして、いつもつけているお気に入りのリードが無い事に気付いたこむぎは大ショック。前回の戦いでリードはフレンドリータクトに変わったと悟ったいろはは、新しいリードを用意しようとするが、こむぎは「あのリードじゃなきゃ嫌ワン!」と頑として譲らない。さすがのいろはも聞き分けのないこむぎに立腹。「そんな事言ったって、無いんだからしょうがないでしょ」「いつものがいいワン、あれじゃないと駄目ワン!」「わがまま言わないの!」「絶対嫌ワン!絶対嫌ワン!あれじゃなきゃ絶対お散歩しないワン!!」「じゃあ今日のお散歩は中止!!」とうとう喧嘩に発展してしまった。
- 家の中でも視線を合わせようとしない二人(一人と一犬)に、心配する剛と、「たまには喧嘩する事もあるでしょ」とさばさばした態度の陽子。しかしこむぎはドッグランで走っている時も、悟と会話するいろはが気になり、よそ見した為に柵に頭をぶつける。いろはが「こむぎ、前をよく見て。危ないから」と声をかけたが、素直になれないこむぎはそっぽを向く。いろはも再び頭に血が上り、「聞いてよ!こむぎったらわがままばっかり言うんだよ!タクトの使い方なんてわたしだってよくわかんないよ。わかんないのにどうしたらいいかなんて言える訳ないじゃない!そうでしょ!?それにいつものリードは無いって何度も言ってるのに、『あれじゃなきゃ嫌』だって!無いものは無い、無理なものは無理なのに!」と不満をぶちまけ、悟はたじたじ。思春期男子を殺しにくる無自覚同級生の図byRENPOUNASU
- だが、こんな状態はもちろんいろはとしても本意ではなかった。「話せるようになったら、もっと仲良くなれると思ってたのに…喧嘩なんかしたくないのに…」としょげるいろはを、「それはこむぎちゃんも同じだと思うよ。こむぎちゃんはいつも犬飼さんの為に頑張ってる。役に立ちたいんだよ」と励ますが、いろはは「わたしは仲良くしたいだけなんだけどな…」と呟く。こむぎともっと仲良くできればそれで良いと思ういろはと、それだけではなくいろはの役に立ちたいこむぎ。お互いに大好きなのは一緒でも、その思いは微妙にすれ違っている。
- その時、遠くからガルガルの雄叫びが響いてきた。「こむぎ、行くよ!喧嘩は一旦終わり!ガルガルを止めよう!」いろはは私情より使命感を優先。こむぎも同意してガルガル目指して走り出す。だが見つけたまではいいものの、ライオンのガルガルの咆哮を聞いたワンダフルは、体がすくんで動けず、攻撃をもろに食らってしまう。動物の本能が、百獣の王ライオンに対して恐怖を感じるのは無理からぬ事だった。
- それを察したフレンディは「ワンダフル、退がってて。悟くんと大福ちゃんと一緒に安全な所にいて。いいね?」と言いつけると、単身でガルガルに近づき、「わたしはキュアフレンディ。安心して、あなたを傷つけたりしない。わたしはあなたと友達に…」といつものように説得しようとしたが、ガルガルは容赦なく襲い掛かってきた。
- フレンドリータクトでキラリンペンギンの力を借りたフレンディは、スピードスケートのようにガルガルの周りを滑走しながら、隙ができるのを待とうとした。ところが、避難するように言われていたワンダフルは従わず、「やだ!…やだやだやだ!いろはと一緒にいたい!」と悟の制止を振り切って戦場に近づいてゆく。タクトを必死に振りかざしてもやはり何も起こらず、更にガルガルが気付いて突進してきた途端、ワンダフルの手の中からはタクトが消えてしまった。
- 愕然となったまま立ち尽くすワンダフルの前にフレンディが飛び込み、身を挺して庇おうとしたが、前足の強烈な一撃を食らって吹き飛ばされた二人は、変身解除に追い込まれた。悟は顔面蒼白になるも、ガルガルは突如苦しみ始め、山奥へ逃げ去ってゆく。何とか危機は逃れた…が、またもいろはとこむぎは口論を始めた。
- 「こむぎ、退がっててって言ったでしょ!どうして出てきたの!?」「だって…だってこむぎもいろはと一緒に!」「全部一緒は無理なの!!怖くて震えてたでしょ!!?」「こむぎだってプリキュアワン!」「危ない時は退がってて!」悟が割って入り、ガルガルが隠れそうな所を探してみると言い、今日の所は一旦帰宅する事にしたが、「こむぎ、おうち入るよ」といろはが声をかけても、こむぎは無言で背を向けたままだった。そしてその深夜、こむぎはこっそりベッドを抜け出し、「いろは、バイバイ…」と言い残して姿を消してしまう…。
■第7話
- 朝、目を覚まし恒例のこむぎダイブに備えて身構えるが、こむぎの姿はなく、それどころか家中探しても見つからない。「戸締りはしっかりしてあったから、外に出る事はないと思うけど…」「まさか、自分で鍵を開けて家出したんじゃ…な~んて、あるわけないよな!」と不思議がる陽子と剛。しかし、今のこむぎはその『まさか』ができる状態だと知っているいろはは顔面蒼白。
- メエメエに尋ねてもニコガーデンにもいないらしく、「こむぎ様はプリキュアとしての自覚が足りないのでは?」と小言を言われていた時、悟からこむぎが家にいるとの電話が入る。母にメエメエの存在がバレそうになり、「滅相も無い」とごまかす。安堵しつつ、すぐに迎えに行こうとすると、悟は「お迎えはちょっと待ってくれないかな。こむぎちゃん泣いてて…ボクが話してみるから、家で待っててくれる?」といろはを制した。
- その場は引き下がったものの、こむぎが泣いていたというのが気になり、「帰ってきてくれるかな…」と考え込んでいたところに、まゆがやってきた。「ちょっとね、こむぎと喧嘩…っていうか、機嫌損ねちゃって…」と取り繕いながらも、明らかに元気がないいろは。その雰囲気を感じ取ったまゆは何とか励まそうとしたが、何を言ったらよいかわからず、一人で悶々。
- 逆にいろはの方が、「その傷…ユキちゃんに引っ掻かれたの?」と、傷だらけのまゆの腕に気付いた。足も傷だらけだというまゆは、それでも気にしておらず、「引っ掻かれる事もよくあるし、言う事聞いてくれない事もたくさんあるよ。思う通りになんて全然ならないけど、でも…大好きだから」とユキへの愛情を口にする。いろはも同じ思いだった。例え喧嘩しようと、こむぎを大好きな気持ちは微塵も変わらないのだ。
- まゆは、先日のお散歩バッグのお礼として、手作りのこむぎ用洋服ハーネスを差し出す。「素敵過ぎてびっくり!まゆちゃん、ありがとう!」まゆを抱き締めて感謝するいろはの心は、そのプレゼントとまゆのユキに対する愛情のおかげで明るくなった。大ピンチ猫屋敷☆まゆちゃん爆発5秒前!byうっかり特捜ギャリバン
- まゆを見送った後、「早くこむぎに見せたい!迎えに行こう!」と悟の家に向かっていた途中、山の方からガルガルの声が聞こえてきた。こむぎは気になるが、ガルガルも放っておけない。いろはは山を目指して走り出す。
- 目星を付けた場所で変身したものの、謎の声によって前回より凶暴化したガルガルが襲い掛かる。説得を聞こうともせず暴れるガルガルに追い詰められるフレンディ。そこへこむぎが駆け付けてきた。ガルガルの一吠えでまたも体がすくんでしまうが、いろはを助けたい一心で勇気を振り絞り、ワンダフルに変身する。
- そのワンダフルもガルガルの突進で弾き飛ばされ、崖下に転落。血相を変えて駆け寄るフレンディに、「みんな元気…みんな仲良し…そういうのがいいんだよね?いろはの『わんだふる』を守りたい…だからわたしはプリキュアに…キュアワンダフルになったんだよ」と、傷つきながらもワンダフルは笑顔を見せた。その健気さがたまらなく愛おしく、フレンディはワンダフルを抱き締める。「来てくれてありがと…」
- いろはへの思いで恐怖を乗り越えたワンダフルに、遂にフレンドリータクトも応えた。フレンディとワンダフルはキラリンペンギンの力を借り、スケートスタイルで滑走しながら、ガルガルを翻弄する。「ワンダフル、怖くないの?」「怖いよ。でも…一緒だから大丈夫!」「わたし、こむぎと…ワンダフルと一緒にいる時が、最高にワンダフルだよ!」「いろは…大好き!♡」固く手を握り合った二人は、新浄化技プリキュア・フレンドリベラーレでガルガルを浄化、キラリンライオンの姿に戻した。
- まゆが作ってくれた洋服ハーネスをこむぎも気に入ってくれた。「いつものリードとは違うけど、いい?」と恐る恐る聞いてみると、「どんなリードでも、いろはが持ってくれたらいいワン!」と、こむぎは気持ちを改めわがままを言わなかった。「よーし!朝散歩できなかった分、いっぱいお散歩するよ~!」「ワン!」すっかり喧嘩を乗り越えて、元気にお散歩に出かけるいろはとこむぎだった。
■第8話
- 新学期早々寝坊で遅刻しそうになり、こむぎに「いろは~、早く学校行くワン!」と促されて、「うん!行ってきまーーーぁぁぁぁぁぁ…す、って…え?」玄関を出ようとしたその時、ふと覚えた違和感に恐る恐る足元に視線を落とすと、そこには満面の笑顔で飛び出そうとしているこむぎの姿が。こむぎは「早く学校に行って」ではなく、「早く一緒に学校に行こう」と言っていたのであった。「いやいや…こむぎはお留守番だよ?」と言うも、一点の曇りも無い瞳で「なんで?」と問い返され、逆に返答に困る。
- 「こむぎ、いろはと一緒に行くワン!人間の姿になって行くワン!」「いや、無理だよ…」「嫌ワン!こむぎも連れてくワン!」「でも学校に行くにはいろいろ手続きしなきゃだし~…」「連れてくワン!連れてくったら連れてくワン!」ジャンピングして訴えるわ、顔面に飛び付くわで、時間も無いのにこむぎは聞き分けが無い。しかしそんなこむぎを熟知しているいろははこむぎの後頭部のお気に入りポイントを撫でて落ち着かせる。気持ち良さでこむぎが蕩けて脱力した隙に、何とかダッシュで振り切った。
- 登校し、教室で友人の大熊や蟹江に挨拶した後、悟を見つけ、「あっ、悟くーん!おはよ!お願いかなったね!ほら、鏡石に悟くんと同じクラスになれますようにって、お願いしたって言ったでしょ?これからは学校でも毎日会えるね!」と、傍から見れば好意丸出しとしか思えない台詞で悟をドギマギさせる。ただし当のいろはにとっては相変わらず他意は全く無し。
- さらに転入生としてまゆがやってくる。彼女は、担任の馬場園先生と自分の名前を混同して、「猫馬場敷まゆです!」と自己紹介するほど、緊張のあまりテンパっていた。いろははそんなまゆに手を振り、「まゆちゃんのお家は『Pretty Holic』っていうお店をやってて、可愛い猫を飼ってて、ちなみに苗字は『猫屋敷』!」とフォロー。ユキの話を振られたまゆは、いつものユキ大好きモードで暴走して話しまくり、我に返って赤面するが、これも「まゆちゃんはユキちゃんの事だ~い好きなんだよね!」とのいろはのフォローで事無きを得た。
- まゆはいろはの隣の席になり、先生から学校の案内を頼まれて、一緒に校内を回る。試合の助っ人をしてくれた礼を言うバレー部員や、「次はうちもよろしく」と依頼するバスケ部員らと談笑するいろはの姿を羨ましそうに見つめ、「いろはちゃんって、友達たくさんいるんだね」と言うまゆを、いろはは「ま~ゆ~ちゃ~ん~に!ワンダフルな友達を紹介するよ」と、動物飼育エリアへ連れてゆく。
- ヤギ・馬・羊・アルパカまでいて、動物がいっぱいの光景に心癒されるまゆ。カメに餌をあげて喜ぶ彼女を見て、いろはも嬉しそうな表情を浮かべる。しかしまゆを送り出した後にガルガルが出現。皆の避難は悟が引き受け、ガルガルの相手を任されたが、「とは言ったものの…一人でか…」と心細くたじろいでいると、その思いが伝わったがごとく「いろは~!こ~む~ぎ~が~来たよ~」とこむぎがダッシュで到着。「ガルガル出たんでしょ?プリキュアに変身しよ!」人目も気にせず変身しようとするこむぎを「ここじゃダメ!こっちこっち!」と木陰に引きずっていってから変身し、先週相談した決めポーズで初名乗り。「わんだふるぷりきゅあ!」
- 馬のガルガルの俊足に手こずり、飛び乗って宥めようとしても振り落とされる。「馬は優しくて穏やかな性格だけど臆病だから、正面から目を見て話し掛けないと…」と考えたものの、相手の速さに追いつけない。しかしワンダフルがキラリンライオンの力で脚力をブーストし、ガルガル以上のスピードで翻弄して正面に回り込んで、「ニコガーデンに帰ろう」と説得、浄化に成功した。
- 今日の戦闘ではかなり助けられ、「こむぎが来てくれて助かったよ」と礼は述べたが、それはそれこれはこれ。お留守番しててと言ったのに、こむぎが勝手に学校まで来た事実は変わらないので、「…って、犬のまま一人で街に出ちゃダメだってば!」と叱り、「だって~…学校行きたかったワン…」とこむぎはしょんぼり。だがそれがまさか現実になるとは、この時の彼女らには思いも及ばぬ事だった。
■第9話
- 朝、いつも通りこむぎの声で目を覚ましたと思いきや、「おはようございます」とメエメエが訪れていた。湾岸第二中学の制服を取り出した彼は、「これはこむぎ様の制服です。本日よりこむぎ様は、いろは様と一緒に学校へお通いください」と、驚くべき事を言い出した。
- 喜ぶこむぎを横目に、「学校はいろいろ手続きしないと入学できないんだよ?」と素朴な疑問を口にするが、ニコダイヤの聖なる力の奇跡により、転入試験、戸籍、諸々の手続きをすっ飛ばした何らかのご都合…もとい常識改変が起こったらしく、全て問題は解決済みとの事。しかしメエメエが詳しい説明をする前に、こむぎは犬の姿のまま制服を着て走り出そうとして、「話を聞いてくださ~い!」といつものパターン。
- ちなみに両親の認識はどうなったのか、今日の時点では不明。
- 制服を着て、いろはと並んで登校するという夢のような状況に「♪学校、学校、いろはと学校!楽しみだねぇ」とご機嫌なこむぎに対し、「楽しみだけど…大丈夫かな?」と、いろはは不安の方が大きい。案の定、校門をくぐるや早速こむぎは手当たり次第に「おはよう!」と挨拶しながら、いろはが止める間もなく走り回る。更にサッカー部の朝練を見て「ボール遊びだ!」と興奮しながら乱入し、キーパーが止められなかった猪狩勝のシュートを軽くキャッチして「ワン!」と得意顔。いろはは平謝りしながら、ようやく教室へ。
- 転入生として紹介されたこむぎは、「ワンワ~ン!こむぎだよ!よろしく!」とフリーダムに挨拶し、クラスメイトは唖然、いろはと悟は冷や汗ダラダラ。さらに面識のあるまゆに「こむぎちゃんも転校してきたんだ」と振られては、他人のふりもできない。「こむぎさん、名字は何?」と質問され、名字が何か知らないこむぎから「いろは、『みょーじ』って何?」との視線を送られたいろはは、しどろもどろになるも、悟の「犬飼さんの従姉妹なんだよね?だったら名字は同じ犬飼かな?」というナイスフォローに乗っかり、「そう!そうなのよ!『犬飼こむぎ』!」と何とか誤魔化しきった。そんな二人の苦労も知らず、当のこむぎは「『犬飼こむぎ』…はぁ~…!☆」と、いろはと同じ苗字になった事で有頂天になっていた。
- サッカー勝負を挑んできた勝を退けたあたりはよかったが、授業が退屈で窓の外のチョウチョを追いかけそうになったり、机の上に座って歌ったり、分けてもらったお弁当を犬食いしようとするなど、人間に変身している事を時折忘れかけるこむぎの行動にハラハラさせられっぱなしのいろはと悟。さらに、お腹一杯になって大あくびをしたこむぎは、廊下のど真ん中で犬の姿に戻り、眠り込んでしまった。
- 「えぇ~!?ど…どど…どうしちゃったの!?」大慌てで制服とこむぎを拾い上げ、辺りを見回した途端、まゆが通りかかって「どうしたの?」と尋ねてきた。寝ぼけたこむぎが「う~ん…呼んだワン?」と返事をするものだから、さらに慌てて言い訳するも、結局こむぎの姿を見られてしまうが、「犬のこむぎちゃん、お家からついてきちゃったの?」とまゆが思い込んでくれたおかげで、命からがら切り抜けた。
- ぐっすり寝ているこむぎを眺め、ようやく一息。「はしゃぐのも無理ないよ。こむぎちゃん、ずっと学校に行きたいって言ってたでしょ。夢が叶ってうれしいんだよ」と言う悟に、「そっか…そうだよね」と相槌を打った時、こむぎが目覚めた。
- いつもの犬飼家の中ではなく、周りの見慣れぬ光景に「ここ、どこ?」ときょろきょろするこむぎに、「学校だよ」と悟が説明すると、こむぎはさっきまでの楽しい出来事が全て夢だったと思い込んでしょんぼり。だがいろはが「夢じゃないよ」と訂正すると「ワフ~、よかったぁ」と安堵の笑顔を見せた。
- こむぎが『イカリの匂い』を嗅ぎつけたので行ってみると、勝が奇妙な卵を頭に乗せてバランスを取りながらランニングしていた。「頭のあれ、何?」「変なボール!」と呑気ないろはとこむぎに対し、悟は青くなる。「あれ!ガルガルの卵だよ!」
- 卵が孵る前に何とか取り返そうとするも、こむぎへのリベンジに燃える勝は「これは打倒犬飼こむぎ!そのための必勝アイテムなんだ!」と手放さない。しかし彼が足を滑らせて落とした卵を、こむぎが頭でキャッチし、いろはの号令で走り出して、あっという間に振り切った。そして勝が後を追って見えなくなるのを呆気に取られたままいろはと悟が見送ると、走り去ったはずのこむぎがなぜか後ろから出現。なんと勢いのまま、学校の敷地を1周してきたのだった。
- だが、肝心の卵は孵化してしまい、アヒルのガルガルが誕生。池に入ってのんびり泳ぐ姿に「なんか可愛いね」とほっこりするが、やはり相手はガルガルで、池の水を飲んだかと思うと水流砲を噴射してきた。さらに飛び跳ねてボディプレスで圧殺しようとしてきたが、ワンダフルがキーパーの要領で、プニプニバリアーで受け止めて浄化に成功。
- 「学校ってとってもわんだふる!」大満足で家路につくこむぎ。いろはも最初は微笑んでいたが、穏やかな口調ながら真面目な態度でこむぎを叱った。「こむぎ、学校は楽しいだけじゃないよ。学校は遊ぶところじゃなくて、勉強するところなんだから。授業中はずっと座って勉強しなきゃいけないし、寝ちゃダメだし、もちろん人前で犬の姿に戻っちゃダメ。もしテストの成績が悪過ぎたら、学校にいられなくなるかも。それでも頑張れる?」大好きだけど、決して甘やかさない。いろははこむぎに、人間として生活する覚悟を問う。
- 「えぇ~、そうなの!?」と少々尻込みしかけたこむぎだったが、いろはが自分を思っているからこそ厳しく言っているのは伝わった。「こむぎ…ううん!わたし、頑張る!だっていろはと一緒にいたいもん!」こむぎは即答。一人称を"こむぎ"ではなく"わたし"と言い直したのは、正に決意の表れだった。
- いろはも再び笑顔になる。「うん、わたしも。大変な事も一杯あるけど、わたしもこむぎと学校行きたい。だから一緒に頑張ろ!」「ワン!」「『はい』だよ」「はいワン!」「ふふ、もう違うでしょ。もう1回『はい』」「はいワン!」笑い合う二人の声が夕陽の町に響いていた。
■第10話
- 授業中、まゆは先生に指名されても気付かず、熱心に何かノートに描いている。いろはが「まゆちゃん!ま~ゆ~ちゃん!」と声を掛けるとようやく我に返ってパニックに。更にそのノートのイラストを見たこむぎが「何描いてるの?わぁ~、楽しそう!こむぎもやる~!」とはしゃいだ事で、二人揃って先生に怒られる羽目に。
- 昼休みに「まゆちゃんごめんね。こむぎが騒いじゃって」と謝ると、まゆは逆に「ううん、わたしが悪いの」と謝り、『Pretty Holic』に出す新商品のアイデアを描いていたと打ち明ける。ノートを見ていろはが「何これ、可愛い!」と声を上げると、他のクラスメイトも寄ってきて、全部絶賛してくれてまゆは有頂天になるが、商品化のためにはどれか一つに絞らねばならず、悩む事になる。
- 川で黒い卵を見たという小学生の立ち話を悟が偶然聞きつけ、もしやガルガルの卵ではといろはに伝える。「ガルガルになっちゃう前に見つけて助けられたらいいよね」と気を引き締めていると、こむぎが突如「あった~!」と言いながら走り出し、水たまりに突っ込んだ。サッカーボールを卵と見間違えただけだったのだが、こむぎは全身泥だらけで真っ茶色になるわ、リードを持っていたいろはも引きずり倒されて砂まみれになるわで、もう散々。
- 通りかかったまゆは、こむぎを綺麗に洗ういろはを見て、「懐かしいな…」と呟くと、ユキとの出会いを語った。「わたしも見たかったな、ユキちゃんの笑顔」といういろはの台詞を聞いたまゆは、新商品のアイデアが閃いたらしく、「いろはちゃん、ありがとう!」と礼を言いつつ、急いで帰ってゆく。
- そうしている間に卵は孵化し、アライグマのガルガルが誕生。大人しくさせるために一計を案じたフレンディは、河川敷で作業員が使っていたペンキの缶に、ガルガルの指を突っ込ませる。「手を洗うなら川はあっちだよ!」と誘導したのだが、ガルガルは一発反撃後、別方向に逃げてしまった。当てが外れ、「アライグマなら手を洗いたくなると思ったのにな」とぼやくフレンディは、「アライグマは特に綺麗好きではなく、君が思っているような可愛い姿は、実は川の中の獲物を狙っているだけ」と悟に解説され、「そうなの!?」と自分の思い込みに赤面。
- さらにガルガルは、意外と凶暴で手先が器用なアライグマの特徴通り、自販機を投げつけたり、郵便ポストを引っこ抜いたりと大暴れ。リボンバリアもバラバラにされるが、悟のアドバイスで再度リボンバリアを張り、ガルガルが再びリボン状にほどいて一端を掴んだところで、ワンダフルがもう一端を掴んでぶん投げ、フレンドリベラーレへと繋いだ。
- 『Pretty Holic』のすぐ外で繰り広げられていた戦闘に、まゆは全く気付かないままデザインを完成させる。ユキを模したチャームはお客様に大好評で、いろはも「よーし、わたしもお小遣い貯めようっと!」と声を弾ませていた。
■第11話
- 「見晴山に出る謎の巨大生物」の噂話がクラスで広がっており、ガルガルではないかと考えて、悟を誘って捜索に行く事に。二つ返事で引き受けた悟は、「犬飼さんに誘われて休日に待ち合わせ…これって、こう…デ、デー…」と胸をときめかせ、待ち合わせ場所に走ってきたいろはがキラキラした笑顔のスローモーションに見える等、すっかり恋愛モード。しかし飛びついてきたこむぎに頭突きを食らい、ピクニック気分でテンションが上がって全力疾走し出したいろはとこむぎに置き去りにされたりと、踏んだり蹴ったり。現実は厳しかった。
- 噂のガルガルは大きいらしいと聞き、「わかった!今回のガルガルはズバリ!クジラだよ!クジラってすっごく大きいでしょ、しかも足がない!山道に足跡が残っていないのも納得だよ」と迷推理を披露し、悟に「クジラは大きいけど、海に棲む生き物だから、山には居ないんじゃないかな」とやんわり否定される。その後も「山にいる、山にいる…わかった、ガルガルはリスだよ!」「確かに山にいるけどすごく小さいよね」「じゃあトド!」「海の生き物だね」「モグラとか…」「大きくはない…かな」「シャチは…」「海の生き物だね…。」と、なぜか山にいる小動物もしくは海にいる大型生物という両極端の想像しか浮かばず、ことごとくダメ出しされた。意外とアホの子?
- キノコをガルガルの卵と勘違いしたり、こむぎが「おーい!ガルガル!出てくるワ~ン!」と叫んだら、ガルガルの代わりに『Pretty Holic』常連のマダム達が現われたりはするものの、なかなかガルガルは見つからない。しかし頂上で昼食にしている時、周囲から動物の姿が消えている事に気付く。上に登るにつれて動物を見なくなった事、先刻のマダム達は「祠の周辺に動物はいなかった」と言っていたが、本来ならその辺りはタヌキやイタチが生息しているはずという事から、「もしかしてガルガルがいて、動物達が逃げていったのかも…という事は、ガルガルは祠の近くに隠れてる!…かも」と今度は名推理。ズバリ的中して、ガルガルの卵の殻を発見した。
- 周囲には大きな足跡もあり、さらに樹木の上に、熊が木の上で餌を食べるための場所である熊棚もあった。熊のガルガルはその中で休んでいたが、謎の声に扇動されて凶暴性に目覚めながらいろは達の前に姿を現した。
- ガルガルのパワーはすさまじく、フレンディとワンダフルは走って一旦距離を取ろうとするが、急激な動きをしたために、臆病な熊の習性を逆に刺激して追い回される。しかし木から落下したワンダフルをフレンディが偶然肩車する形になると、自分より大きいものが怖いガルガルの動きが止まった。そのまま説得しようとするも、木の枝を踏んで音を立ててしまい台無し…と思いきや、額の宝石に傷がついていたガルガルは苦しみ始め、その隙になんとか浄化した。
- 元の姿に戻ったキラリンベアーに額の傷は誰につけられたものか尋ねると、「はっきりとは覚えてないキラ。けど、すっげぇ強かったぜ、もう一人のプリキュア!」と言う。フレンディとワンダフル以外にプリキュアがいる…?
■第12話
- まゆがため息ばかりついていて元気がない。聞けば、最近ユキが時々姿を消し、探せばいつの間にか部屋に戻っているという行動を繰り返しており、いずれ永遠にいなくなってしまうのではと不安で仕方ないらしい。悟から「猫は僅かな隙間でも通れるし、ドアや窓を開けられる子もいる」と聞いたいろはは、ユキの行動を確かめるべくこむぎと共にまゆの家へ行く事にした。
- 翌日、犬の姿のこむぎを連れて猫屋敷家を訪問するも、「こむぎちゃんは一緒じゃないの?」と尋ねられ、「約束したのは人の方のこむぎだった~!」とこむぎ共々内心焦りつつ、なんとか誤魔化す。裁縫好きなまゆの部屋を見せてもらったり、すみれにも歓迎してもらって、楽しいひと時を過ごした。
- こむぎの嗅覚でユキの行動を追跡してみたが、収穫はなし。ならばとフクロウ型の見守りカメラまで用意してくれたいろはに、気を遣わせて申し訳ないとまゆが詫びると、「そんな謝るような事じゃないよ。わたしもユキちゃんの事が心配だし、友達でしょ?」といろはは微笑む。その『友達』という一言は、今まで友達がおらず、勿論自宅に招くような事は初めてだったまゆに大きな喜びを与えた。気取られたくなくて取り繕おうとするも、どうしても顔に出てしまう嬉しそうなまゆ。しかしユキは、なぜかいろはが気に入らないらしく、ふくろうカメラにも敵意を露わにし、いろはが声を掛けても知らん顔で去ってしまった。
- そんな時、こむぎがガルガルの出現を察知。嘘が下手ないろはは、「え~っと、その…やっぱりカメラが1台だけじゃ足りないよね?家に帰ってお父さんにもっと借りてくるよ」と、苦しい言い訳をしながら猫屋敷家を出て、森に向かう。フクロウのガルガルを見つけるも、説得するより前に相手が攻撃態勢に入った時、1人の銀髪の少女が風の如く現れた。
- 「だ…誰!?」驚くフレンディとワンダフルの前で、少女はガルガルが放った羽根手裏剣の弾幕を軽々と躱し、弾きながら跳躍、高空のガルガルを地上に蹴り落とした。さらに襲い来るガルガルに彼女が右手を一閃すると、猫の爪痕のような三本線の傷が刻まれる。
- フレンディは息を呑む。ガルガルを宥めて落ち着かせ浄化するという、自分達のやり方とはまるで別物。対話すら試みず、一方的に相手を叩きのめして倒そうとしているのだ。再び地べたに転がされたガルガルは戦意喪失し、命乞いとばかりに怯えた悲鳴を上げるが、彼女は情け容赦なく、とどめの蹴りを叩き込むべく足を振り上げた。
- 「ダメ!!」間一髪、フレンディが間に割って入る。「ガルガルを傷つけないで!」「喧嘩はメッ!仲良くしよっ!ねっ!」フレンディとワンダフルの必死の訴えに、少女はようやく足を下ろした。ふと見ると、フクロウのガルガルにつけられた三本線の傷は、先日の熊のガルガルの額の傷とそっくりだった。「熊のガルガルを傷つけたのもあなたなの?ガルガルはこの子の本当の姿じゃないの。心を黒く染められているだけなんだよ!」「そう!助けてあげれば、みんな心の優しい良い子達なんだよ!」無言で立ち去ろうとしていた少女は、そのフレンディとワンダフルの言葉に何か思う所があったのか、足を止めた。
- 「貴方達がそうしたいならそうすれば良い。でも…わたしの邪魔はしないで」感情を見せぬクールな瞳のまま答える少女。悪意はないのかもしれないが、味方とも思えない。ガルガルをフレンドリベラーレで元の姿に戻し、ニコガーデンに帰す様を見届けた彼女は、「待って!あなたは…!?」と尋ねるフレンディに「わたしの名前は…キュアニャミー」とだけ名乗り、月夜に跳び上がって姿を消した。それを見送ったワンダフルとフレンディは顔を見合わせ、「わたし達と同じ……プリキュア!?」と驚くことしか出来なかった。彼女は一体何者……?
■第13話
- メエメエにキュアニャミーの事を報告し、「もしプリキュアなら是非一緒にニコガーデンを救っていただきたい」と期待されるが、ガルガルを攻撃する彼女が素直に協力するとも思えず、「何か目的がありそうなんだよね」と考え込むと、「じゃあニャミーに聞くワン!探すワン!みんなで探せば見つかるワン!」とこむぎが発案し、ニャミーを探す事になった。
- しかしそもそも手がかりは乏しく、白い服を着ていたという漠然な特徴しか覚えていない。早速こむぎが「見つけたワン!」と言ったのは、白っぽい服を着ている小さい女の子で、いろはと悟は「どう思います?悟くん」「見た目は小さい子だけど、こむぎちゃんがワンダフルになる事を考えると、もしかしたら…」と、ひそひそ相談。その間にこむぎが犬の姿のまま「君はニャミーワン?」と女の子に直接尋ねてしまい、大慌てで口止めして退散。
- その後もこむぎは白いというだけで関係無いものばかり見つけるし、いろはと悟も観光馬車に乗ってはしゃいだり、珍しいコモンドール犬に夢中になったりしていて、肝心のニャミー捜索は遅々として進まない。そんな中、マダム三人組の持っていた猫型コンパクトにこむぎが反応し、思わず人語で「ニャミーワン!」と口走ってしまう。「お…面白いですよね!時々言うんですよ、犬なのに『ニャー』って…ね!」と半端な言い訳でなんとか取り繕い、こむぎが適当に「…ニャーワン」と口裏を合わせた事で、辛うじて難を逃れる。そのコンパクトの線で『Pretty Holic』も尋ねてみるも、収穫なし。
- そうこうする内にガルガルが出現し、変身して駆け付けた先ではニャミーがハリネズミのガルガルの攻撃からまゆを守っているところだった。ガルガルが一旦逃げた後、「二人とも大丈夫?」と駆け寄り、まゆ相手にまたも正体バレしそうになるワンダフルの口を押さえつつ、「あなたと話したくて探してたの、キュアニャミー」と語り掛けるが、そこへガルガルが体を丸めた回転攻撃で再度襲ってきた。ニャミーはまゆを抱きかかえたまま、身軽な動きでガルガルを翻弄して姿を消す。「ニャミー、まゆの事助けてくれたのかな?」「ワンダフルもそう思うよね?」ニャミーが決して冷酷ではなく、人を守る心も持っている事に歓喜するが……「でも今はそれより…」「怒ってる~!」「そうだよね~!」ニャミーに攻撃がことごとく躱され、怒り心頭のガルガルが標的をフレンディとワンダフルに変えた。
- リボンバリアとプニプニバリアの間でキャッチボール風に受け止めようとしてもまとめて弾き飛ばされ、二人がグロッキーになっていると、ニャミーが戻ってきた。飛び掛かろうとするも躱され、体毛のトゲが木に刺さってガルガルが動けなくなったところに、ニャミーは手刀を構えて迫って行く。だがフレンディとワンダフルは、彼女にしがみついて制止した。「わたし達、あなたの事が知りたいの!」「ニャミーもプリキュアなんでしょ?まゆの事助けてくれたし!」
- 「わたしはあの子が言うから様子を見に来ただけ。貴方達の邪魔もしない。それで良いでしょ?」と素っ気ないニャミーに、「違うよニャミー。わたし達、あなたと仲良くなりたいの!」と訴えるも、ニャミーは無言のまま去って行く。残ったガルガルの回転攻撃は、キラリンベアーの力を借りたワンダフルが大木を盾にして削らせ、体力を消耗させる作戦で対応。豪快な仕事っぷりに「わ~お、ワンダフル~…」と若干引きつつ、疲れ切ったガルガルをフレンドリベラーレで浄化した。
■第14話
- 「うちのユキを助けてください!」目に涙まで浮かべ、真っ青になったまゆが『フレンドリィ動物病院&サロン』に駆け込んできた。ご飯も食べず顔色も悪いユキの様子を見て重病かもと思い込んでいたようだが、陽子の診察の結果、疲れが溜まっただけで、点滴を打ち安静にすれば治ると聞いて一安心。しかしそれでも、まゆの表情からは「万一の事があったらどうしよう」という不安がありありと伝わってくる。
- そこでいろはは、「ねぇまゆちゃん、今日ユキちゃんと一緒にうち泊まってかない?うちにいれば何かあってもすぐお母さんが診てくれるし」と申し出る。陽子は快諾し、実は友達の家に泊まるのは初めてのまゆも、逡巡の末いろはの好意に甘える事にした。剛と陽子に歓待され、こむぎを抱っこしたり、湯上りのアイスをいろはと分け合う等、初めてのお泊りを満喫するまゆに対し、肝心のユキは体調は快復したものの、いろはとこむぎに対してお世辞にも好意的とは言えない視線を送っていた。
- 「ユキの事で泣きそうだったのに、いろはちゃんのおかげで笑って過ごせた」「またいつでもおいでよ」と笑顔を交わしつつ、いろはとまゆは眠りについた。ところが翌朝の夜明け前に、古典的な鼻ちょうちんを膨らませながら熟睡していたいろはは、ガルガルの気配を察知したこむぎに起こされる。「どうしよう、もうすぐ朝になっちゃう。みんなが寝てる間に何とかしないと…!」まゆや両親に気付かれない内に事態を収拾せねばと焦るいろはだったが…。
- 「ガルルッル~!」ニワトリのようなガルガルの咆哮が街中に轟き、まゆが目を覚ました。着替えて出かけようとしたところをまゆに見つかって、どこに行くのかを尋ねられ、嘘の下手ないろはは「あっ、えっと、あの、その…いろはちゃん、どこ行こうかな?えっと…」と、しどろもどろに。そこで待ちきれなくなったこむぎが「もう!早くガルガルのとこ行くワン!」と人語で声を上げてしまった。
- 「今、こむぎちゃんがしゃべってた…。えっ?夢見てるのかな?」と驚くまゆに、「ち、違うのこれは!こむぎってば駄目だよ!プリキュアだって事は内緒なんだから~!」「プリキュアは今言ってないワン!」「あ、ごめん」と、更に慌てまくったいろははどんどん墓穴を掘ってゆく。あまりにも軽はずみに秘密をバラしてしまったこむぎといろはを、キャリーケースの中からユキが怒りをたたえた表情で睨んでいた。
- 「こむぎちゃんしゃべってるのは夢じゃなくて…プリキュア?ガルガル?」混乱するまゆを前に、いろはは覚悟を決めた。もう隠し立てはできないし、友達であるまゆに嘘もつきたくない。「まゆちゃん、驚かせちゃってごめんね。戻ったらちゃんと話すから、だから今はわたしを信じて」いろはの真剣な眼差しに、まゆも何か事情がある事だけは呑み込めた。いろははまゆとユキを残して、ガルガルの元へと向かってゆく。
- ニワトリのガルガルは鳴き声一つで建物のガラスを割り、更に超音波攻撃によってワンダフルのダメージが大きく、二人は苦戦。そこへ、悟から全ての事情を聞いたまゆが駆け寄ってきて、「わたしじゃ何もできないかもしれない。でもわたしも二人の力になりたい!」と訴えた。その言葉に力づけられたフレンディとワンダフルは、悟のアドバイスを受け、バリアで超音波を跳ね返してガルガルを浄化する。
- 勝手について来た事を詫びつつ、「二人共すごくかっこよかった」と言うまゆに、「まゆちゃん、力になりたいって言ってくれたでしょ。すごくうれしかった。あの時のまゆちゃんだって、すっごくかっこよかったよ!」と笑顔で返すいろは。秘密を守る事を約束し、仲間に加わったまゆと手を取り合って喜んでいたが……ガルガルとの戦いにまゆを巻き込んだいろはとこむぎに対し、ユキが非難するような怒りの視線を浴びせている事には誰も気付いていない……。
■第15話
- 仲間になったまゆをニコガーデンに連れてゆき、メエメエと対面させる。「実はわたし達がプリキュアだとバレちゃったんだ」と正直に打ち明け、「あれほど言っちゃダメェ~と言ったのに…」と愕然となるメエメエにも、「うん、だから言ってないよ」「そうだワン、バレただけワン」と、いろはとこむぎはあっけらかん。
- 「それでね、今日はまゆちゃんにニコガーデンを案内してあげてほしいの」と頼むが、仕事が忙しいとの事で、まゆがメエメエの仕事を手伝うという条件つきで許しを得る。ニコガーデンはキラリンアニマルやニコアニマル、絶滅種のジャイアントモアなども住んでいる動物の楽園で、その広大な土地をメエメエは一人で全て管理していた。しかしキラリンペンギンやキラリンウサギは何かこそこそ準備している様子。
- それを自分の為のパーティだと思い込んだメエメエは、仕事を猛スピードで片づけ、ガルガル相手にも体を丸めて巨大毛玉になり攻撃を受け流すなど大活躍。キラリンアニマル達が準備していたのはプリキュアへの感謝パーティとわかって凹むも、アニマル達は日頃のメエメエの働きをちゃんと理解しており、自分を描いた絵のプレゼントをもらって、嬉し涙を流すメエメエであった。
■第16話
- こむぎと登校中、診察の為、車で動物園に向かう陽子が声を掛けてきた。能天気なこむぎが「お母さん、お仕事偉い!」と口を滑らせてしまい、いろははギクリ。人間態のこむぎを、まだ陽子に会わせた事が無かったのだ。そんないろはの心中も知らず、こむぎはどんどん正体バレにつながりそうな発言ばかりするので、口を塞ぎ、「ご…ごめん!遅刻するから!」と何とかその場を逃げ出すいろは。「わたしって、どうして嘘がこんなに下手なの~!?」
- ぐったりして学校に辿り着き、悟に悩みを打ち明ける。「嘘つくと罪悪感で胸が痛い…」と落ち込むいろはに対し、こむぎはどうして内緒にしなくてはいけないとか全然理解していない様子。悟が「動物が人間になるなんて普通はあり得ない事で、知られたら騒ぎになるから秘密にした方がいい」と説明してくれたが、正直者のいろはにとっては両親に隠し事をするなど心苦しい限りで、「わかってるんだけどワンダフルじゃないなあ…」と、ため息をついてひたすら悩む。
- 蟹江達が、鏡石について話しているのを聞きつけ、「わたしも鏡石にお願いしようかなぁ…平気で嘘をつける大嘘つきになれますようにって」と屈折したお願いまでしそうになるいろはを制しつつ、「こむぎも鏡石にいっぱいお願いしたよ!いろはとお話したいって!」というこむぎの発言から、悟は全ての謎の秘密は鏡石にあるのではと考える。放課後いろはとこむぎは早速鏡石に行ってみたが、立て看板の文字も読めないし、何もわからない。「こういう時はこむぎ!走りに行こう!」と気分転換すべく自宅のドッグランへ。
- するとドッグランの中を、明らかに周囲とキャラデザが違う男の子が走っていた。男の子の愛犬も交えてひとしきり走って汗を流した後、名前を尋ねると彼は「オラ野原しんのすけ!こっちはシロ」と名乗った。いろはも名乗るが、「こっちはこむぎ」と紹介すると「小葱?玉葱?」としんのすけがボケ倒すため、イラついたこむぎが「こむぎだワン!犬はたまねぎ食べちゃ駄目ワン!」と喋ってしまった。
- いろはは顔面蒼白になるも、しんのすけは「アニマルタウンの犬もなかなかやりますな!オラもシロとお喋りできるゾ!」と自慢しつつ、「“オラはとっても頼りになる幼稚園児だ”ってシロは言ってるゾ」とシロの言葉を代弁する。だがこむぎの通訳では「そんな事言ってない。しんちゃんはあちこち走っていっちゃうから、ついていくのが大変だ」と全然違うらしく、とにかく場が和んで大事にはならずに済んだ。
- しんのすけとシロが元気に去って行った後、しんのすけとの出会いを通じて、「お喋りするのって、楽しくていい事だよね!」と感じたいろはは悟とメエメエを呼び出し、改めて両親に秘密を打ち明けてよいかお願いするが、当然「ダメェ~!」と拒否される。ところがその声を聞きつけた剛と陽子がやってきて、メエメエは咄嗟に普通の羊のふりをしてやり過ごそうとするも、こむぎに「アハハッ!メエメエ、羊みたい!」と笑われ、「みたいじゃなくて羊です!羊の執事です!」とキレて怒鳴り返したのをしっかりと見られ、とうとう二人に秘密がバレてしまった。
- 今まで隠していた事を平謝りするいろはに対し、幸い両親は「こむぎとしゃべれるなんて夢みたい」と受け入れてくれた。そして「鏡石の昔話みたいだ」と、剛と陽子は鏡石の伝説を語り出す。昔々、このあたりは人間と動物が仲良く暮らしており、人間ともっと仲良くなりたいという動物の願いを神様が聞き届け、不思議な力を持つ光る石を与えた。その石にお願いすると動物は言葉を話せるようになり、人間と動物はますます仲良くなった。噂を聞いたたくさんの動物が集まってアニマルタウンができたが、生き物達が争うようになり、悲しんだ神様は鏡石をただの石にしてしまった。今では「鏡石に願えば願いがかなう」と言い伝えだけが残っている…というものだった。
- その時こむぎがガルガル出現を察知。立ち上がったいろはは、驚く両親に「お父さん、お母さん…わたし、行かなきゃ!」と告げる。こむぎも人間に変身し、更に驚く二人を残して現場へ急いだ。鳥型のガルガルは「コンニチハ、ガルガル!」と話し掛けてくるので、「礼儀正しい子だね、もしかしたら話ができるかも」と安堵して説得に入ろうとするフレンディだったが、悟が「それはインコのガルガルだ!人の言葉を真似してるだけだよ!」と指摘した通り、ガルガルは凶暴性を発揮して攻撃してきた。
- 空を飛ぶ上に、近づくと突風を起こすガルガルに対し、フレンディはキラリンコジカの力を借り、高々とジャンプして空中でしがみつく。地上に降りさせ、ワンダフルの「一緒に遊ぼ!」という呼び掛けに「アソボ!アソボ!」と返すようになり、おとなしくなったところでフレンドリベラーレにて浄化。
- 帰宅後、剛と陽子はメエメエが淹れた紅茶を飲んですっかりくつろいでいた。しかもメエメエは「アニマルタウンで迷子になっているニコガーデンの動物達を、いろはとこむぎが探してあげている」と説明し、プリキュアの事だけは伏せてくれたらしい。悩みからすっかり解放され、「みんなでおしゃべり、一緒にご飯…これってすっごくワンダフル~!」と笑顔のいろはだった。
■第17話
- アニマルタウンでは多くの動物が出産する時期になったため、動物の赤ちゃんを観察する『赤ちゃんツアー』を企画し、悟とまゆをご案内。花屋の軒先のツバメ、公園のリス・鹿・ウサギなどを見て回り、カルガモの親子を見守ったところでランチになるが…。
- 悟が動物風の可愛らしいサンドイッチ、まゆが猫型クッキーを出す中、いろはが「わたしも自分のお弁当は作ってきたんだけど…」と取り出したのは謎の黒い塊状の物体。ここに来てまさかの料理下手が発覚。
- 悟とまゆがドン引きするのもお構いなしに、「おにぎりだよ!これ何の形だと思う?」と笑顔で出題するいろはに対し、悟は「犬飼さんの嗜好パターンをXとした時、キュアフレンディの行動パターンをYとすると…」と頭脳をフル回転させて、「こむぎちゃん?」と見事大正解。当のこむぎは自分と似ても似つかないというか、むしろガルガルっぽさすら感じるおにぎりに愕然となっていた。
なお、特に味には問題はなく、このような事態にはならかった模様。
- トラのガルガルが出現するが、鋭い爪と強大なパワーで迂闊に近づけない。それを見守るまゆは、さっき公園にいたカルガモの親子が道路を横断しているのに気付く。ガルガルが前脚をアスファルトに叩きつけると地割れが発生し、雛が1羽落下しかける。まゆは懸命に手を伸ばして雛を救ったが、ガルガルがまゆ目がけて突進してきた。フレンディがキラリンライオンの力を借りようとしても間に合わず、まゆ絶体絶命…!
- だがその瞬間、ガルガルとまゆの間に何かが飛び込んできた。何とユキだった。さらに驚くべき事に、ユキは人語でしゃべったかと思うと、その姿は人間の美少女に、さらにキュアニャミーへ変身を遂げる。ユキこそがキュアニャミーの正体だったのだ。
- ニャミーはガルガルを引きつけながら、まゆから離れていった。一安堵したフレンディはカルガモの親子を見送り、悟とまゆに避難を促してニャミーの後を追う。しかしまゆは逃げようとしなかった為、ニャミーは彼女を抱きかかえると「後は任せるわ」とだけ告げ、姿を消してしまった。困惑するフレンディとワンダフルだったが、既にニャミーに叩きのめされてグロッキー状態のガルガルを浄化した。
- ともあれ、ニャミーの正体がユキだと判った事で、ようやく仲間に出来ると期待していたいろは達だったが、ユキの反応は的外れなものだった。「これからは一緒にプリキュアしよ!」と誘うこむぎに、「一緒?何故?わたしはまゆを守りたいだけ。なのに貴方達は、まゆを危険な事に巻き込もうとしている!」と怒りを露わに糾弾するユキの言葉に、いろはは言葉に詰まる。「これ以上、まゆに関わらないで…!!」そう言い放つ彼女に何も言い返す事ができず、いろは達は茫然と立ち尽くすだけ…。
■第18話
- まゆの手を引いて去って行くユキを引き留める事も出来ず、こむぎと顔を見合わせる。とりあえずニコガーデンに行き、メエメエにニャミーの事を報告すると、キラリンアニマル達は「プリキュアが増えたキラ!」と喜んだが、どう考えても自分達に敵意剥き出しニャミーが素直に仲間になってくれるとは思えない。「犬飼さん達がニコガーデンのみんなの為に頑張ってるみたいに、ニャミーにも守りたいものがあるんだと思う」悟の言葉を聞き、いろはは考え込む。
- 翌日、何となく罰が悪そうにしているまゆに「まゆちゃん、今日は距離が遠いな~」と話しかける。申し訳なさそうに謝る彼女にも、「いいのいいの、ユキちゃんの気持ちもわかるし。ユキちゃんは一生懸命なんだよね。まゆちゃんを守る為に。ユキちゃんと一緒にプリキュアできないのは残念だけど、わたしはこれからもまゆちゃんと仲良くしたいな。だって友達だし!それはそれ、これはこれだよ」と割り切る。その温かな心遣いに、まゆにも笑顔が戻った。
- しかしこむぎがガルガルの出現を察知するや、どこで見張っていたのかユキがすかさず現われ、「まゆ、帰ろう」と連れ帰ろうとする。だがいろはもこむぎも気を悪くする事なく、笑顔で手を振って駆け出して行き、まゆの心はまたも罪悪感に苛まれる。
- 海辺で大穴を見つけ、その中にいたガルガルは、体を縮小化させてワンダフルの追跡を振り切り逃走。翌日学校で猿渡や大熊達が、「夜中に地面の下から『ガルガル~』という謎の声が聞こえた」という噂話をしており、早く見つけるべくとメエメエに相談する。
- 地面を掘る行動からして、ガルガルの正体はキラリンハムスターではないかとの情報をキラリンウサギから聞いていた時、そのガルガルが今度は公園に現れる。ガルガルが逃げ込んだ巣穴の中には多数のトンネルや部屋があり、ドングリの貯蔵庫で見つけたガルガルは、ウサギくらいの大きさからたちまち巨大化し、ドングリをマシンガンのように発射しれきた。「ハムスターって木の実をほっぺにいっぱい詰めて、可愛いんだよね」と戦闘中にも拘らずほっこりするも、ガルガルはまた縮小化して逃げて行った。
- フレンディはキラリンウサギの力を借り、ガルガルが地中を掘る音を探知して追跡する。だがその先で見たものは、倒れたガルガルにトドメを刺そうとするニャミーの姿だった。「ニャミーやめて!ダメだよ!あの子、凄く怖がってる!」訴えかけるフレンディの手も払いのけたニャミーは、ガルガルを庇って立ち塞がるワンダフルとも押し問答になるが、その隙にガルガルは逃げ去ってしまった。気が付くとニャミーの姿もなく、フレンディはニャミーとの間の埋まらぬ心の溝を痛感する。
- ハムスターがいそうな場所を考えながら帰ろうとした時、まゆとユキの姿を見かけるが、こむぎが声を掛けた途端、まゆは怯えたように駆け出し、ユキも彼女を追って走り去った。二人の間に漂うただならぬ雰囲気を感じ取ったいろはは、「わかんないけど大丈夫かな…」と心配そうにまゆ達を見送った。
■第19話
- ガルガルを探索中、街路樹の上で昼寝するユキを発見。挨拶しても、いろは達に対する拒絶感を隠そうともせず、そっぽを向くユキだったが、その視線の動きを見たいろはは、「ここからまゆちゃんを守ってるんだね」とユキがいつもの定位置ではなく、こんな所にいる真意を見抜いた。その街路樹からは、すぐ近くの『Pretty Holic』2階のまゆの自室が見えるのだった。
- 悟に「猫屋敷さんの傍に行かないの?」と言われても、「貴方達には関係無い」とにべもないユキ。しかし「まゆちゃんと喧嘩して、ちょっと気まずい感じかな?」といういろはの鋭い指摘には、ピクリと耳が動いて反応した。気を悪くさせたかといろはは謝るも、「わたしはまゆを守るだけ。まゆに嫌われても構わない」と、ユキはあくまでも頑なだった。もっとも、守る対象であるまゆに嫌われてしまっては本末転倒なのだが…。
- その時、こむぎがガルガルの出現を察知。動物達の騒ぎ声の方向へ向かう前に、いろはは言葉を送る。「ユキちゃん、一つだけ。まゆちゃんとお話ししなよ。あなたの気持ち、あなたの声、伝えてあげて」話し合えばきっとわかりあえると信じ、いろはは走り出した。
- ガルガルを見つけて変身し、いつもの変身口上……を言っている間に、ガルガルは穴を掘って逃走。「聞かせてくれない!?」大慌てで後を追う羽目に。
- 追いかけた先では臨戦態勢のニャミーがガルガルと対峙していた。ワンダフルと共に必死に引き留め、聞く耳を持たないニャミーと押し問答になるが、その隙にガルガルが額の宝石から放った光線の直撃を食らう。気が付くと、ガルガルは見上げる程の大きさに巨大化していた。しかし自分らの周りをよく見ると、大きな落ち葉や石が。「わたし達が小さくなっちゃった!?」
- 小さくなったのはプリキュアの方だった。前回、ニャミーに手酷く痛めつけられたガルガルは、謎の声の主から自分以外の生物も縮小させる能力を与えられ、ニャミーへの逆襲を目論んでいたのだ。ガルガルの前脚の一撃を食らって遠くまで吹き飛ばされたフレンディとワンダフルは、幸い大型犬の背中に軟着陸。ニャミーを助けなくてはと、悟の肩に乗って現場に戻ったフレンディ達が見たのは、「ユキを守りたい」という一心で鏡石からシャイニーキャッツパクトを与えられ、キュアリリアンに変身するまゆの姿だった。
- リリアンは見事ガルガルを浄化してキラリンハムスターに戻し、フレンディ達がニコガーデンに帰還させた。喜び合うフレンディ・ワンダフル・リリアンを余所に、ニャミーだけが離れた場所で立ち尽くしていた。危ない目に遭わせたくなかったまゆがプリキュアになり、もう自分が守る必要が無くなってしまった。そしてまゆは今後も危険を厭わずに突き進んでいくのでは…。ニャミーの複雑な気持ちが伝わって来るが、今必要なのは自分の本当の気持ちを伝える事のはず。
- まゆに声をかけられても目を逸らすユキに、いろはとこむぎは『ほら、ちゃんと言わなきゃ!あなたの気持ちを聞かせて!』とばかりに、無言のジェスチャーで後押しする。ようやく口を開いたユキは「まゆと一緒にいたい」という思いの丈を涙ながらに明かし、まゆもそんなユキの気持ちを汲み取り、微笑んだ。二人の抱き合う姿に、こむぎといろはも手を取り合い、ピョンピョンと飛び跳ねながらワンダフルな喜びを分かち合うのだった。
■第20話
- 猫屋敷家を訪れ、「まゆちゃん ユキちゃん、ニコガーデンに行こう☆」とお誘い。まゆとユキがプリキュアになったと報告する為だが、まゆはともかく、ユキは「行かない」と相変わらずつれない。まゆの懇願でどうにか同行させたものの、歓迎するメエメエに対しても「協力はしないって言ってるでしょ。知らない動物なんて関係無い。わたしはまゆを守るだけ」とユキはそっぽを向き、「ダメェ~じゃないですか!」とメエメエを嘆かせる。
- ユキはそのまま何処かへ行ってしまい、皆で探す中、まゆは「やっぱりユキがみんなと一緒にやっていくのは難しいと思う」と悲観的な見解を述べ、大勢の中にいるのに慣れておらず、店の前で昼寝していても客足が増えてくると家の中に入ってしまうというユキの習性を明かした。
- そんなユキと自分を重ね合わせるまゆを、「ユキちゃんはまゆちゃんの事があんなに大好きになったんだもん。だからわたし達や他のみんなとも、もっともっと仲良くなれるって!」といろはは前向きに励ます。その言葉でまゆも希望を見出した。
- ガルガルを発見し、変身して3人で追跡するも、キツネのガルガルはすばしこく、見失ってしまう。追った先の空き地には消防車が停まっており、「もし火事なら、プリキュアとして何か手伝えるかも」と尋ねようとすると、消防車のホースがひとりでに動いて放水、フレンディとワンダフルは遠くへ吹き飛ばされてしまった。この消防車はガルガルが化けたものだったのだ。
- 現場に戻るとニャミーが参戦しており、リリアンとニャミーのシャイニーキャッツパクトが、アミティーリボンタンバリンに変わる瞬間を目にする。「わかった!きっとそれ、わたし達のフレンドリータクトみたいなものだよ!」フレンディのアドバイスを受け、これを使えばガルガルを救えると理解したリリアンとニャミーは、合体浄化技アミティールミエールで、ガルガルをキラリンキツネの姿に戻す。後を引き受けたフレンディ達は、キラリンキツネをニコガーデンに送り返した。
- ガルガルを傷つける事なく浄化できるようになり、ようやくユキもプリキュアの仲間入りとなるが、その条件としてユキも学校に通わせる事を要求。澄ましてはいるものの、喜び全開のまゆと本音は同じ。いろはと悟は「ユキちゃんも可愛いところあるね」「ねっ」と囁き合った。
■第21話
- ユキが転校生として2年1組に編入。その美貌でクラス中を魅了したかと思いきや、勝手にまゆに密着して座ったり、まゆの隣席の狸原をどかそうとするマイペースぶりに、いろはや悟は冷や汗を流しつつ苦笑するのみだった。
- 「人間のふりをするなんて簡単よ」と豪語するユキは、その言葉通り勉強、体育、美術は言うまでもなく、料理や刺繍の腕も非常に高い。その一方で、いろはとこむぎの作品は下書き状態と言うか、ウソ発見器か心電図の線画のような代物。料理下手に続いて、画伯である事も判明。
- 刺繍をまゆとユキに教わる中、悟が大福へのプレゼントに作った刺繍を見たのをきっかけに、「誰かにプレゼントするって思うとやる気が出るかも!」とみんなで作った刺繍を交換する事を思いつく。とこころがそれを聞くや、ユキは「そんな事しないわ、絶対に」と冷たく撥ね付けた。理由を尋ねても返事をしなかったが、まゆが同意したため、渋々ユキも参加する事に。
- まゆに縫い方を尋ねようとしたが、まゆは集中しており返事もしなければ視線も合わせない。こむぎが大きな声で呼びかけても完全無視。しかしいろはは嫌な顔一つせず、「すごいね、まゆちゃん。周りの声も聞こえないくらい集中してるんだ。かっこいいなあ」と、寧ろ笑顔でまゆの集中力を称賛する。その言葉を聞いて何かを思ったユキは、まゆの過去について語るべくいろはを吹き抜け広場に連れ出した。
- 転校前、まゆはその集中力が災いして唯一仲の良かった少女に自分の事を無視しているとの誤解を招いてしまい、関係が崩れてしまった。そうした経緯から、友達そのものに対して悪印象を抱いていたユキ。一通り過去を聞いた後、いろはとこむぎは、互いに心を通わせながら口を開いた。「いろはとわたしは仲良しだけど、喧嘩した事もあるよ。ユキだってまゆと喧嘩してたよね?いろはと喧嘩して悲しかったけど、もっと仲良くなれたよ。わたしといろはは、これからもず~っと一緒!ねっ!」「明日喧嘩するかもしれないからって、今日仲良くするのをやめちゃうのは淋しいよ。わたしはユキちゃんともっと仲良くなりたい。喧嘩しちゃうかもしれないけど、それでも…!」まゆを守りたいが故に、とにかく彼女を傷つける恐れがあるものから遠ざけてきた自分とは対照的な、傷つく事を恐れない前向きな姿勢は、ユキの心を揺さぶる。
- 校庭に出現したジャイアントパンダの巨大ガルガルから催眠波が発生し、学校中のみんなが眠り込んだ。いろはも例外ではなく、鼻ちょうちんを出しながら爆睡。しかしこむぎだけがやたら元気。ほっぺたにコンパクトをぐりぐりされてようやく目が覚め、プリキュアに変身。
- しかし大の字になって眠りこけるガルガルは寝相が悪く、迂闊に近づけない。さらにいびきからも催眠波が発生し、フレンディは悟共々再び眠入ってしまい、以降はニャミーとリリアン、そして巨大なタイヤに変身させられたワンダフルの活躍でガルガルが浄化されるまで目を醒ますことはなかった。
- まゆからこむぎが刺繍されたハンカチをプレゼントされる。「うわぁ、すっごく可愛い!♡ありがとうまゆちゃん!」と喜ぶいろは。対照的に、いろは作のユキの刺繍は相変わらずの画伯っぷりだったが、いろはが一生懸命縫った思いが伝わり、まゆからも礼を言われる。こむぎとユキもハンカチを交換して仲を深めるのだった。「これからも、もっとも~っと仲良くなるよ!」
■第22話
- ドッグトレーナーの犬束が、ボーダー・コリーのウィットを連れて来店。ドッグスポーツの「アジリティ」を見学・挑戦させてもらう事に。アジリティに興味津々のいろはは、シニカルなユキから「どうしてそんなにはしゃげるのよ。初めてでよくわからないものなのに」と呆れられても、「よくわからないからワクワクするんだよ」と返す。
- 「人とワンちゃんがぴったり息を合わせて挑戦するスポーツ」との説明の通り、犬束とウィットはお手本にトンネルやハードルをクリアしてみせる。こむぎも挑戦したが、ハードルを跳ばずに滑り込んだり、障害物を完全に無視したりとやりたい放題。得意顔で帰ってきたこむぎに「いや~…全然できてないからね…」とツッコミを入れるが、犬束は「ちゃんといろはちゃんの声を聞いて走っている」とフォローしてくれた。
- 「ドッグスポーツをやる上で大切なのは、焦らずにワンちゃんと向き合う事。どんなに時間がかかっても、オンリーワンの信頼関係を築く事を目指してゆく」彼女の言葉に感銘を受けたいろはは、「わかります!『オンリーワンダフルな関係』になろうって事ですよね!」と解釈し、こむぎと共に再チャレンジ。犬束は「こむぎちゃんには才能があるし、いろはちゃんにもハンドラーの才能がある」と目を細めた。
- 帰り際に犬束は、「コマンドはわたし達と同じじゃなくて、覚えやすい言葉でいい」とアドバイスをくれた。「わたし達だけのオンリーワンダフルなコマンド」を考えたいろは。『大好き』って言ったらジャンプ、『仲良し』って言ったら左右にゆらゆら、そんでもってスタートは『わんだふるご~!』
- そこへリスのガルガルが出現。悟曰く、「リスの前歯は一生伸び続ける為、常に何かを齧って削らなくてはならない」との事だが、ガルガルともなればベンチや鉄柵などを手当たり次第に齧っている。「あんなの齧り続けたら口の中怪我しちゃうよ」フレンディ達はやめさせようとするが、ガルガルは齧った物体を弾丸化して攻撃した後、逃げ出して浜辺の灯台によじ登り、頂上のレンズも齧り始めた。
- 近づこうにも、中の階段を悠長に登っていては逃げられる。一計を案じたフレンディは「わんだふるご~!」と号令をかけながらリボンバリアを放ち、すかさずジャンプしたワンダフルに「ワンダフル!大好き!」と合図を贈ると、ワンダフルはバリアの上に飛び乗ってさらに高く跳ぶ。「ワンダフル!仲良し!」との掛け声と共にフレンディが放った多数のリボンバリアの上を跳び移りながら、頂上に到達したワンダフルがガルガルを捕まえ、最後はリリアンとニャミーが浄化した。プリキュアの力を差し引いても、先程のアジリティの練習が役に立ったのだった。
■第23話
- 寝ているこむぎを起こすと、鏡石の夢を見ていたとの事。「鏡石が?それ、お祭りの夢かもしれないね。今日は年に一度の七夕祭だよ。一緒に浴衣着て遊びに行こ!」『お祭り』と耳にした瞬間喜び出したこむぎのダイブを食らい、「 ぅ゙ ご ぁ゙ !! 」と悶絶。
- 祭の会場でまゆ・ユキ・悟・大福と合流。いろはの浴衣姿を見て気恥ずかしい様子を見せる悟に気付いたまゆは「兎山くんって、いろはちゃんの事が好きなの?」とド直球で切り込み、彼を慌てふためかせる。「彼女を困らせたくないし、気まずくなるのも嫌だから、内緒にしていてほしい」とまゆに懇願しつつ、いろはの下駄の鼻緒が取れたのを見た悟。すかさず駆け寄って直してあげる。
- 「悟くん、ありがと」思いもよらず顔が接近していたいろはに礼を言われ、悟はまた顔を赤らめた。悟「全然。何時でも呼んで」今のいろはの目には、自分はただの仲の良い友達としてしか映っていないとわかっていても、彼はいろはの笑顔を見られただけで充分満足だった。
- まゆが「男の子も女の子も動物も、みんな平等に友達って感じ」と評した通り、いろはは短冊に『世界中の動物と友達になれますように』と書き、ライトアップされた鏡石にも「みんなの願いが叶いますように」と祈る。そのいろはの博愛が天に通じたかのように、お祭り会場を襲撃した白鳥のガルガルはキラリンスワンに戻り、これでメエメエの言っていた『9メェ~のキラリンアニマル』が全員そろった。「やったね、悟くん!」と喜ぶいろはに、「ボクも願い事叶っちゃった」と悟も笑顔を返した。
■第24話
- 9メェ~のキラリンアニマルが帰還し、ニコガーデンが本来の姿を取り戻した。そしてニコダイヤが一際眩く輝き、メエメエは「ニコ様がお戻りになったのでは!?」と期待するが、現れたのは角の生えた奇妙な卵。キラリンアニマル達もメエメエもこれがニコ様で間違いないと断定するも、なぜ卵の姿なのかはわからず、とりあえずメエメエが預かる事になり、いろは達はニコガーデンを散策する。
- 「初めて来た時も驚いたけど、ニコガーデンって本当に素敵な所だね」自然と動物が溢れる美しい光景に見とれ、キラリンアニマル達に口々に礼を言われるいろは達。しかし、全てのニコアニマルが戻った訳ではないらしく、母親がいなくなった子ゴリラがいた。いろはは「大丈夫…わたし達が必ず見つけるからね」と子ゴリラを励まし、「まだまだ頑張らなきゃだね」と決意を新たにする。
- その日の夜中、部屋が妙に明るくなったので目を覚ますと、何とベッドの上にニコ様の卵が。慌てながらニコガーデンに向かうと、ちょうどメエメエも消えた血相を変えて卵を探している最中だった。
- いつの間にか部屋にいたと言っても、「卵は勝手に動いたりしません!まさかお二人はニコ様と遊びたいあまり、卵を連れて帰ったのでは?」とあらぬ誤解をかけられる始末。何とか信じてもらい、メエメエは部屋中の窓や出入りできそうな所に板を釘で打ちつけて侵入者を完全シャットアウト……と思いきや、翌朝目覚めるとやっぱり卵はいろはの部屋に来てしまっていた。
- やむなく、ニコ様の卵をニコガーデンではなく人間界で育てるのはどうかと提案してみたが、もちろん「ダメェ~!でございます!」と却下される。しかし悟に「わざわざこちらの世界に来るのは何か理由があるのでは」と言われ、「ニコ様の偉大な御意志があるのかも」とメエメエも譲歩し、いろは達は卵を託される事になった。
- とりあえずみんなで温める事になり、こむぎ・ユキ・大福が密着。「ニコ様 わたし、犬飼いろはって言います。みんなでニコ様の事お世話するから安心してね」いろはは礼儀正しく挨拶して卵に手をかざし、まゆと悟も続いた。すると卵が淡く光る。「ニコ様の卵、うれしそうワン!」「うん…わたしにもそう見える!」こむぎといろはの言葉に、「きっと皆様の温かい気持ちがニコ様にも伝わっているのですよ」とメエメエも満足げ。
- ゴリラのガルガルが出現し、昨日出会った子ゴリラの母親だと気付いた一同はプリキュアに変身。浄化して元の姿に戻し、子ゴリラと再会させた。親子の仲睦まじい姿を見て感涙にむせぶメエメエは、「わたくし決めました!やはりニコ様の卵のお世話はわたくしがいたします!ええもう決めましたから!!二度と放しませんから~!!」と固い決意を述べる。そこまで言うなら仕方ないと帰宅したいろはとこむぎだったが、案の定、卵はいろはの部屋に既に舞い戻っていたのだった。「この卵…やっぱり不思議すぎる~!!」
■第25話
- まゆとユキを呼び出し、共同で自由研究をやろうと申し出る。「いろは・こむぎ・まゆ&ユキの連名でやろうよ~」と言うと、「なんであなた達二人の名前が先なのよ。まゆが1番目。もしくは『まゆ&ユキwith犬組』」とユキに難癖をつけられるが、「犬組でもいいよ」とあっさり妥協し、皆でアニマルタウンの入江に出かける。
- いろはの研究テーマは「ウミガメに会いたい」。今年の産卵場所の探索及び産卵の様子の観察…のはずだったのだが、同行した悟曰く「海亀が産卵する時間は午後8時から午前3時くらい」と教えられ、計画がパーに。しかし、「よーし遊ぼう!海が目の前にあるんだよ!遊ばなきゃ勿体ない!」と機転を利かせ、半ば織り込み済みだった海遊びに予定変更。
- 既に服の下に水着を準備しており、こむぎと共にサーフィンするなど海を満喫。ちなみに悟が到着早々まゆに自分の宿題が終わったにも拘らず助太刀に来たことを愛だとからかわれたり、水着姿のいろはに見とれていたり、まゆに勝手に想像された心の声を背後からアフレコされたりしていた事には全く気付いていなかった。
- ウミガメのガルガルと、その甲羅にしがみついたリリアンを追って沖合の島へ。砂浜で見つけたウミガメの卵を守ってほしいとリリアンに託されたニャミーは、フレンディ達の制止も聞かず、単身ガルガルに立ち向かうが、「絶対にみんな来てくれると信じてたから頑張れた」と言うリリアンから、仲間の大切さを知る。フレンディとワンダフルもそれに応え、バリアでガルガルの攻撃と動きを封じ込めてフレンドリベラーレで浄化。
- 夜、(剛と陽子の立ち会いの下で)観察を再開。昼間にみんなで守った卵に「元気に出て来てね、海亀さん達」と語り掛けていると、1匹のウミガメが砂浜に上陸し産卵を始めた。涙を流しながら卵を産むウミガメに感動しながら見守りつつ、「これで『まゆ&ユキwith犬組』の自由研究はばっちりだね」と言うと、ユキから「犬組じゃなくて、『まゆ・ユキ・いろは&こむぎ』でいい…」との言葉が。みんなで力を合わせて戦った事で、ずっと頑なだったユキもようやくいろはとこむぎを認めたのだ。
- 「えっ、いいの?ほんとに?ほんとに?本当~!?」と詰め寄ると、ユキは照れ隠しに「もう!!こむぎ!いろは!しつこいニャ!!」と口を滑らせる。ようやく自分達を名前で呼んでくれたとあって、「えっ…?」「今、名前を呼んでくれたワン!」「呼んでくれたよね!?」といろはもこむぎも大喜び。「もう1回!」「もう1回呼んでほしいワン!」「「もう1回~!」」ユキ「絶ぇ~っ対!いや!!!」
■第26話
- 「1、2!」「ワンワン!」「3、4!」「ワンワン!」毎日の日課の楽しい散歩…のはずが、朝から茹だるような暑さでいろははぐったり。途中で買い出しに出ていたまゆ&ユキとバッタリ合うも、暑さで頭が朦朧となった一同は、砂漠をさまよっているかのような幻覚を見始める。
- 世紀末の荒野を旅するような格好であてどなく歩き続けるも、こむぎとユキがダウンし、遠くに見えたオアシス目がけてダッシュ。オアシスの人影に水をせがんだところで、顔に水を浴びせられようやく現実に戻る。悟が撒いていた打ち水がかかってしまっただけだったのだが、人心地がついて「助かった…」「ありがとう…悟くん…」と涙ながらに感謝。
- エアコンの効いた悟の部屋でこむぎもユキも生き返ってリラックス。彼の本棚には動物関係の蔵書から英語の本までぎっしりと並べられていた。「やっぱり悟くんって努力家なんだね。尊敬しちゃう!」感嘆するいろはに対し、悟はそのいろはが自室にいるという事実に今更ながら気付いてドギマギ。まゆはそんな二人の様子を眺めつつ、例の如くニヤニヤ。
- 暑さ対策の話をしている時、ふと思いついてメエメエを呼び出し「夏の間だけニコガーデンで散歩させてください」と頼み込むも、「ダメェ~!です。ニコガーデンはニコ様が御造りになられた特別な場所。お散歩コースではないのです」と却下される。あれこれ妥協案を付けても頑として譲らないメエメエは「暑い暑いって、ちっとも暑くないじゃないですか」と豪語し、ニコ様の卵の様子を見に行くと炎天下に出かけ…あっという間に溶けて行き倒れに。
- そんな酷暑日でもガルガルは現れる。ガルガルといえど熱中症になるのではと心配して、照りつける太陽の下、一同はふらつきながら現地に駆け付けると、そこにいたのは40℃程度の灼熱なら余裕で耐えてくるラクダのガルガルだった。
- ガルガルは金属製の瓦礫を口に含み、金属片の弾丸として吐き出しながら攻撃してくる。リボンバリアを展開するも、暑さでパワーが落ちてちんまりしたサイズの物しか出せない有り様。リリアンがキラリンペンギンの力を借りて周囲を涼しくし、暑さで氷が解ける湿気によりガルガルがグロッキー状態になった為、すかさずフレンドリベラーレで浄化した。
- 帰宅すると、ニコ様の卵を見守っていたメエメエが出迎えたが、なんとトレードマークのもふもふの毛がほぼ消失し、えらくスリムな姿になっていた。画風が変わるレベルで驚く二人。暑さに耐えかねて剛に毛を刈ってもらったとの事だが、「暑いの平気とか言ってなかった?」といろはにツッコまれるも、「わたくし、暑さでどうかしてたんですかね?アハハハ…」と笑って誤魔化された。それで、ニコガーデンでの散歩の許可の件の結論は…?
- 翌日、まだ暗く暑くない内にこむぎを起こし、と早朝のお散歩に出かける。保冷剤も用意し、小まめの水分補給や暑くなる前の帰宅などを心掛け、二人は快適なお散歩をするのだった。みんなも暑さには気を付けよう!
■第27話
- 今日は鷲尾町長主催の『ツチノコ大捜索大会』開催日。猫屋敷家を訪れ、まゆを「ツチノコ探しに行こうよ!」と満面の笑顔でお誘い。動物マニアのいろはや悟はともかく、21世紀生まれのまゆや令和の小さいお友達が知っているわけがなく、「ツチノコって…何?」と首を傾げられる。ヘビに似た未確認生物である事を説明し、早くもいろはのテンションは最高潮。「わたしはいると思うよ、ツチノコ!だってアニマルタウンだしね!今年こそはツチノコと友達になりたい!」
- いざ現地に着いてみると、ツチノコ関連の食べ物やグッズの屋台がたくさん並び、祭りのような賑わい。余談だが、遠い所からわざわざ来てくれる人もいるとの事で、ツチノココスプレで名高い5年前の先輩も来場しているのではというネタ絵も。
- 「ツチノコさ~ん、出ておいで~」しかしツチノコはそう簡単には見つからない。昼食にしていると、メエメエからニコ様の卵の様子を確認する電話が入った。ところが家に置いてきたはずの卵はこむぎが持参しており、「持ち歩いちゃダメェ~!」とメエメエも合流する。
- なんとツチノコはニコガーデンにはたくさんいるとのこと。「今度ニコガーデンに行ったら会えるかな?わたし、友達になりたい!」しかしメエメエ曰く「それはオススメェ~できません。ツチノコさんはとてもシャイなのです。それにあの力が…実はツチノコさんを怒らせると…」とのこと。
- その時、メエメエがうっかり手を滑らせてニコ様の卵を落としそうになり、キャッチしようとしていろは達は受け損ねたりあたふた。更に、猫の習性で転がる物に反応したユキが猫パンチで卵を弾き飛ばしてしまい、卵は近くの小さな穴に転がり込んでしまった。穴からガルガルの気配を感じ、一同はキラリンハムスターの力で小さくなって穴の中に飛び込んでゆく。
- 穴の中は何かの巣のような造りになっており、孵化したガルガルがニコ様の卵を呑み込んでしまう。その姿はヘビのようだが、ヘビにしては胴が太く、首もあり、顔も平べったい。集音マイクでそれを聞いた悟はツチノコに間違いないと大興奮するが、プリキュア達にとってはそれどころではなく、ガルガルと目が合ったフレンディとリリアンの首から下が石化してしまった。さっきメエメエが言いかけた『ツチノコさんの力』とはこの石化能力だったのだ。
- しかし、日頃なら一番頼りになるはずのニャミーはヘビの類いが大の苦手で、悲鳴を上げたり怯えたりで、半石化したリリアンを抱えて逃げるのが精一杯。ワンダフルまで石化し、残ったニャミーはリリアンに逃げるよう促されるも、「わたしが逃げる?笑わせないで。仕方ない…構ってあげる!」と恐怖心を振り払い、目を瞑って相手の気配を察知する事で対抗する。
- ワンダフルにガルガルを優しく撫でるよう言われて、さすがに「そんなの無理ニャアアアアア!!!!!」と泣きが入ったが、悟が地面を掘って天井に穴を開けた事で、太陽光に弱いガルガルが怯み、石化も解けて一同はピンチを脱した。
- 放映3日後の8月7日はいろはの誕生日!
■第28話
- クラスメイトの大熊の実家・大熊牧場をみんなで訪問。広大で動物がたくさんいる光景に、こむぎ共々「ワンダフル~!」と大喜び。
- 悟から牧場に行くと聞いたメエメエが合流。しかし会話しているところを大熊に見られ、「羊が2本足で立ってる!」と驚かれるが全力で誤魔化し、「うちにこんな子いたかな…まぁ、いっか」と大熊によって、哀れメエメエは飼育担当スタッフに引き渡された。
- 乗馬体験コーナー。ふたり仲良くゆったりと馬を進めるいろはと悟の傍らを、突如凄まじい勢いで吹き抜けて行く一陣の風……正体はユキだった。
- 牧羊犬の仕事ぶりを見せるシープドッグショーを見物していると、牧羊犬に追い立てられる羊の大群の中にメエメエの姿が。もみくちゃにされてグロッキー気味になりながらも、こむぎや子供達の応援で奮起して、見事1着(?)で柵の中にゴールイン。「わたくしがしたかったのは牧羊犬に追いかけられる事じゃないんです」と愚痴るメエメエだったが、ニコ様の卵が光っており、「きっとニコ様も楽しかったんじゃないのかな」とのいろはの言葉に、「ニコ様が満足ならわたくしは結構です、執事冥利に尽きます」と機嫌を直した。
- 口から溶解液のボールを発射するアルパカのガルガルに苦戦する中、逃げ遅れた子牛を大熊が庇っていた。リボンバリアで彼女らを守り、その隙に悟が誘導して逃がしてくれたが、跳ね返ってきたボールの余波でワンダフルと共に干し草の山の生き埋めに。しかしバリアなら溶解液ボールも跳ね返せる事に気付き、4人の連携でボールを防ぎきって浄化に成功した。
■第29話
- 明け方、卵がまばゆく輝き、ひびが入り始めていた。大至急メエメエ・まゆ・悟らを呼び出すと、一同の目の前で卵は割れ、遂にニコが復活する。「皆さんお静かに!ニコ様からお言葉がありますよ!」とのメエメエの言葉に従い、いろは達は姿勢を正し厳粛な面持ちで待ち受けたが……「初めまして!ニッコで~す!ニコー☆」予想外の天真爛漫なノリの自己紹介に一同唖然。
- いろは達に一通り挨拶されて、自分の事をみんなメエメエからの情報で知っていると聞くや、「ニコ言ったよね……??無闇にニコやニコガーデンの事を喋っちゃダメだよって」と怖い笑顔で怒気を見せ、メエメエはビビリまくり。幸い、この面々はプリキュアとその協力者で、ニコガーデンの仲間達を救ってくれたと聞いて、許してくれた…かと思えば、いろは達がキラニコトランク保持している事にも言及し、「緊急用のトランクをあげちゃったの~!?」と更なる怒りの炎を燃やしては、「助けた動物達をニコガーデンへ返すためにはやむを得なかった」とのメエメエの必死の申し開きに、「そっか。じゃあ仕方ないね♡」とあっさり了承するなど、ONーOFFの激しいニコ様。
- ニコガーデンではアニマル達が、創造主ニコの帰還を喜んでいた。そこで改めてニコガーデンに何が起こったのか尋ねると、ある日ニコガーデンが闇に覆われて、アニマル達は黒い獣=ガルガルに変えられてしまったという。その首謀者の名はガオウ。絶滅種のニホンオオカミの群れのリーダーだった。
- その時こむぎとユキがガルガルらしき気配、それも今まで以上に邪悪なものを感じて、アニマルタウンに戻ると、一同の前に2匹の狼が姿を現し、人間の姿に変化した。ガオウの配下、ザクロとトラメ。トラメはガルガルの卵に力を与え、強化種のガオガオーンを生み出す。
- 「わたし達はニコガーデンの子達を助けたいだけ!あなた達とも争う気はないの。友達になろうよ!」フレンディは必死に訴えたが、ザクロとトラメは逆に怒りを露わにした。ザクロ「は?何バカな事言ってんの?アンタ知ってんの、昔この辺りで暮らしてたあたし達狼がどうして居なくなったのか!」トラメ「人間はオイラ達狼を危険な獣だと決めつけて攻撃してきた」ザクロ「あたし達は住処を追われて数を減らし、そして絶滅した…。絶滅したのは、アンタ達人間のせいなんだよ!!」ニホンオオカミが絶滅した原因は、紛れもない昔の人間の活動によるものであった。残酷な事実を突きつけられ、フレンディ達は愕然となる。ザクロ「そんな相手と仲良く友達になんかなれると思う?」トラメ「なれるワケねェ!なりたくもねェ!!」
- ショックを受ける一同に容赦なく襲いかかる猿のガオガオーンは、4体に分身して猛攻を加える。フレンドリベラーレもアミティールミエールも通用せず、プリキュア達は惨敗・変身解除してしまった。だがガオガオーン達がトドメを刺すべく迫って来た時、帰還を促すガオウの遠吠えが木霊した。ザクロとトラメは去って行き、野放しになったガオガオーンもそれぞれ散っていって、いろは達は絶体絶命の危機を脱した。だが敗北よりも、別の事がいろはを打ちのめしていた。「悪いのは…わたし達なの…?」
- 「狼を絶滅させたのは昔の人間達でしょ?」ユキの言うように、人間が一方的にニホンオオカミに害獣のレッテルを貼り、迫害・駆逐し、終いには絶滅させたと言っても、それはいろは達が生まれるよりも100年以上前の人間。「でも狼達から見たら、ボク達は同じ人間だ」しかし悟の言う通り、被害者である狼達からすれば、時代が良い方向へ大きく変化しても所詮は自分等を滅ぼした種族である人間。彼等の憎悪が時代を越えて現在の人々にも向けられるのも無理もない話…。
- うわ言のようにいろはは呟く。「狼達は凄く怒ってる…当然だよ…。仲良くしたいけど…」罪悪感と挫折感に圧し潰され絶望しそうないろはに、こむぎ、まゆ、ユキ、悟、メエメエ、そしてニコも、掛ける言葉が見つからなかった…。
■第30話
- 深夜、ニコとメエメエは鏡石の前にいた。先日とは打って変わって穏やかで厳かな佇まいのニコは、鏡石がニコダイヤの欠片であり、自分が昔ここに置いたものだと明かす。動物達が人間と共存共栄するという願いを叶える為のものだったが、身勝手な人間がニコダイヤの力を独占しようとして動物達を追っ払ってしまったのだという。
- 伝説のプリキュアがニコダイヤの力から誕生し、しかも動物であるこむぎやユキが人間と手を取り合い戦うことはニコにとっても思いがけない出来事であったが、もし狼達の怒りを鎮められないのであればプリキュアの力を返上してもらい、自分がガオウと向き合わねばならぬと考えていた。「そうなるとこむぎ達が変身できなくなる」とメエメエは訴えるも、「全ては動物達の幸せの為」と言われては返す言葉もない。
- 野放しになった4体のガオガオーンは夜が明けてもなお破壊の限りを尽くし、アニマルタウンの街角からは人の姿が消え、外出禁止を呼びかける町内放送が流れるという物々しい雰囲気になっていた。動物達も巣の中に隠れたり、水中に潜ったり、気配を消そうとする等、怯えていた。剛と陽子は、こんな状況下であっても傷ついた動物が運ばれてきた時に備えておこうと考え、まずは食事で元気を出そうとするが、いろははガオガオーンの一件で食欲がなかったため、自室に引き籠もってしまった。彼女はまだ「人間が狼を絶滅させた」という事実から立ち直れずにいたのだ。
- 「何もできなかった…。友達にもなれない…どうすれば…」いくら思い詰めてもハッキリとした答えは出ず、こむぎがいつものようにダイブしてきても無気力にベッドの上にこてんと横倒しになるいろは。こむぎが散歩に行こうと言いだしても、外は危険で、そもそもそんな気分ではない。だがこむぎは、人間態になってぎゅっといろはに抱きついてきた。
- 「こうすると元気になるんだよ。いろはと一緒に遊べればいいって思ってたけど、まゆやユキ、いろんな子達と会って一緒に遊んで、前よりも~っとわんだふるになったよ!いろは、オオカミと友達になりたいんでしょ?こむぎも最初はガルガルしてたけど、いろはの事大好きになったよ!いろは、世界中の動物と友達になるんでしょ?こむぎも、ワォ~ンな狼達と友達になりたい!なれたらすっごくわんだふるだよね!!」どこまでも明るく前向きなこむぎの言葉を聞く内に、いろはの心に光が差し込んだ。こむぎが差し出した手を、いろははしっかりと握り返す。「ありがと、こむぎ…」
- 悟がSNSで集めた情報によれば、狼が山から町の中心部に向かっているらしい。これくらいでしかプリキュアの役に立てない自分の無力さを嘆く悟に礼を述べる。「悟くん、ありがとう。いつも力になってくれて。わたし、悟くんからいっぱい力貰ってるよ。わたし狼達と話したい。だから行ってくる!」彼女の目にもう迷いはなく、こむぎと共に町に向かう。
- トラメがガオガオーン達を招集していた所に駆け付けると、まゆ・ユキ・悟・メエメエも現われた。早速変身しようとした時、ユキが待ったをかける。「この前は別々に動いてガオガオーンに敵わなかった。だから…4人一緒に!」今まで頑なに犬猫に拘っていたユキからの申し出にいろはもこむぎも笑顔になり、4人は初めて揃って名乗りを上げた。「みんな一緒に!」「せーの!」「「「「わんだふるぷりきゅあ!」」」」
- しかし協力して戦っても、ガオガオーンのスピードとパワーには歯が立たず、フレンディ達は一方的に叩きのめされてしまう。戦況を見守っていたニコは、「難しいようですね。元より彼女達にガオウの怒りを受ける義務はありません。ここはわたくしが…。」と、角を光らせてプリキュア達の力を回収しようとしたが、意外にもそれを制止したのはメエメエだった。
- 「ニコ様!そんな事しちゃダメェ~!!」「皆さんは頑張っております!それに何より、今までガルガルになったアニマル達を助けてきたのはあの子達です!」自分もガルガルにされていたところをプリキュアに救われた身。アニマルを助けるべく奮闘してきたプリキュアの活躍を誰よりも知っているメエメエは、初めてニコに逆らってまで皆を擁護する。その彼の思いに応えるかのようにフレンディが立ち上がった。「みんな、力を貸して…!」
- キラリンアニマルの力を借りて反撃に転じるプリキュア達。驚くニコにメエメエは続ける。「それだけではありません。ニコアニマルも皆応援しています!ニコ様、プリキュアを信じてください!」だがそれでもなおガオガオーン達は手強く、キラリンアニマルの力も切れてしまい、一同は追い詰められる。「そろそろ限界か?」と嘲るトラメに、フレンディは真摯に語り掛ける。「まだやるよ、あなた達と話せるまで!わたし、狼やあなた達の事、ちゃんと知らなかった。まだまだ知らない事いっぱいあると思う。だから教えてほしいの」「何で?」「友達になりたいからだよ!!」
- 「またそれか。言っただろ、友達になんかなれるワケねェって」心底呆れるトラメに、ニャミーが「そんなの!!やってみなきゃわからない!!」と反発し、フレンディはなおも続ける。「アニマルタウンの人達は動物が大好きで、みんなで楽しく暮らす為に頑張ってるよ。その為に考えて、話し合って、助け合って、思い合ってる。わたし達も、あなた達と仲良くする方法を探したいの!!」そして4人は手を取り合った。
フレンディ「みんな元気で…」
ワンダフル「みんな仲良し!」
ニャミー「簡単じゃない。でも…」
リリアン「そうなれたら嬉しいから!」
フレンディ「それが…」
「「「「わたし達のワンダフルだから!!!!」」」」
- プリキュアの熱い思いが遂にニコの心を動かす。「わたくしの願いは全ての動物達が笑顔になる事。貴方達となら…」ニコが生み出した新アイテム・ダイヤモンドリボンキャッスルによって、プリキュア達はダイヤモンドリボンスタイルにチェンジ。合体浄化技エターナルキズナシャワーで、難敵だった4体の猿のガオガオーンは、1匹のニコサルに戻った。「トラメ、ガオウに伝えて。会いたいって!」フレンディの呼び掛けに、「お前ら懲りねェなァ。でもワクワクしてきたぞ!」と嗤いながらトラメは姿を消した。
- いろは「凄い力だったね、ニコ様。力を貸してくれてありがとう!」こむぎ「ワンワン、わんだふるー!」ニコはプリキュアを認めていた。「『わんだふる』素敵な言葉ですね」一方、主に逆らったメエメエはリストラを覚悟していたが、ニコはそんな彼を咎めず、砕けた口調で逆に励ました。「わたくしにもダメなところはありますよ。狼達を止められず、ガルガルになった子達を助けられなかった……ニコこれからも頑張る!だからメエメエも執事ガンバ!」更にニコは「ニコで~す☆ここでお世話になってもいいかなあ☆」とあざとく剛と陽子を籠絡し、犬飼家に居候が決定。いろはとこむぎはもちろん大歓迎、そしてメエメエは「ニコ様!ニコガーデンは~!?」と今後も振り回されそうなのであった。
■第31話
- 顔見知りの客・知覧友真がチンチラのこてつを連れて『フレンドリィ動物病院&サロン』に来院。「友真って何だかまゆと似てるね!」こむぎのこの発言がきっかけで、彼女が転校前のまゆの友人だった事を知る事になる。
- こてつがザクロによってガオガオーンにされ、何とか傷つけずに元に戻そうと奮戦するフレンディ達。リリアンネットで捕えようとするも破られ、「網目を細かくして強度を上げてみる」と言うリリアンに、その間の時間稼ぎを引き受けたフレンディは、ワンダフル・ニャミーと共にバリアを張ってガオガオーンの攻撃からリリアンを守り、浄化に成功。一件落着後は、まゆと友真が仲直りするのを見守った。
■第32話
- いろはは昔の夢を見ていた。両親に連れられて『ふれあいパーク』に初めて行った時の事。大きな象がこわくて父の胸に縋りつく自分…。そこでこむぎに起こされたいろはは、思い立ってこむぎやまゆ達を『ふれあいパーク』に誘う。
- 一度来てみたかったと目を輝かせるまゆ、興奮してあれやこれやとユキに絡むこむぎと素っ気なくあしらうユキ、そしてさすがの年間パスポート持ちの悟と、それぞれのテンションの中いざ入園。その一同の前方には、どこかで見た青いサイドテールの少女の姿が。
- 大型動物が放し飼いされるエリアには、いろはの推しであるおばあちゃんインドゾウのさくらがいた。さくらは大人しい性格で、ここの動物はみんなさくらの事が大好きなのだという。「さくら~!おやつだよ~!」いろはが呼び掛けると、気付いたさくらはうれしそうに近づいて来て、手渡されたニンジンを食べた。こむぎの「さくら、いろはに会えて嬉しいみたい」との言葉通り、ちゃんといろはの事を覚えている。
- そんないろはも、幼い頃初めてさくらに会った時は、見た事もない巨大生物と相対して怖がっていた。だが、怯えて目を背けるいろはの頬に、さくらが長い鼻を伸ばして軽く触れる。あたかも「いろはちゃん」とさくらが呼び掛けてくれたようで、いろはは目の前の世界が明るくなった思いだった。「さくらに頬を触られた時にね、心が通じ合った気がしたの。『動物とも友達になれるんだ』って。嬉しかった…」
- キッチンカーの傍らでクマのぬいぐるみを連れた3人の少女がランチをしている頃、ザクロが『ふれあいパーク』に現れ、目星を付けた動物をガオガオーンに変えていた。人々の悲鳴を聞いて駆け付けたいろは達が見たのは、特徴的な長い鼻を持つガオガオーンの姿。そのまさか…!「あのガオガオーンはさくらだよ!!」一目でニコが見抜いた。いろは達はさくらを救うべく変身する。
- しかし陸上最大最強を誇るゾウのパワーは圧倒的で、キラリンベアーの超怪力も通じず、キラリンパンダの催眠波も弾き返された。外壁を突き破ろうとするガオガオーンを、フレンディ達は懸命にバリアで食い止める。ザクロはプリキュア達を「そんなんじゃガオガオーンは止められないよ。『全部ブッ壊したい』それがこのガオガオーンの望みだからね」と嘲笑するが、フレンディは真っ向から「さくらは、みんなが傷つく事なんて望んでない!!」と反発してこらえ続けた。
- だが闇の支配力が勝り、蹴散らされるプリキュア達。勝ち誇るザクロは「壁をブッ壊して、外の世界もブッ壊しちまいな!」と命じ、ガオガオーンは再び外壁に体当たりしようとする。その時、仲間のゾウを始めたエリア内の他の動物達が集結し、ガオガオーンの前に立ちはだかった。ニコ「そうだよね、放っておけないよね。さくらはここでずっと君達を見守ってくれている友達なんだから。」「おいお前ら!!どうして邪魔するんだ!あたし達は仲間だろ!!?」焦るザクロの叫びにも、動物達は頑として動かない。そうする内にガオガオーンが苦しみ始めた。
- ワンダフルとニャミーは感じ取った。「さくらの声が聞こえる」「暗い闇の中から微かに…」さくらはこんな事したくないと闇の力に抗っているのだ。フレンディはガオガオーンに近寄ると、その鼻を愛おしげに抱き締める。「もう大丈夫だよ、みんなここにいるから」体を覆っていた闇の気配が薄れ、ガオガオーンはそっと鼻でフレンディの頬に触れた。あの日と同じように…。プリキュア達はエターナル・キズナシャワーでガオガオーンを浄化し、元のさくらの姿に戻した。
- ニコの力でさくらは元気を取り戻し、祝福するかのごとく仲間達に囲まれた。自分達もすっかりさくらが推しになったというまゆ・こむぎ・悟・ツンデレ混じりながらのユキ。それを喜ぶいろはの頬に、またさくらが鼻で触れた。「ありがとう」とばかりに一声鳴き声を上げるさくらに、いろはも笑顔で応えるのだった。「これからもず~っと大好きだよ、さくら」
■第33話
- 「はぁ~い、ウィットくん、よく頑張りました~」「よかったね~、ほめられたね~」トリミングを終えた後、常連客のウィットを褒める剛。こむぎとじゃれあって芝生の葉っぱまみれになっているシーズーのモカの様子を見ても、「やり甲斐があるなぁ!今日も全部マルっとアニマルスマイルでいっちゃうぞ~!」と大張り切り。
- その高い声は剛の得意技『スマイルボイス』で、犬を怖がらせないようあえて優しい高い声で話しかけるというものだった。なかなか飼い主の言う事を聞かないモカに対しても、まず友達になる事から始めようと、こむぎも交えて芝生の上を転がり回るなど、あくまでも動物目線で接する剛のやり方は、モカの飼い主やまゆを感心させる。
- そこへ悟が大福の爪をチェックしてもらいに来るが、剛がまだモカの相手をしている為、いろはは「それまでわたしの部屋で遊んで待ってよ」と誘い、悟はドキーン!まゆやニコもいるので当然何も起こらず。
- 剛がなぜ男性としては珍しいトリマーになったのかという話題になり、その経緯を陽子が聞かせてくれた。剛は若い頃からトリマーを志していたが、その声帯ゆえに犬が懐いてくれず、海浜公園で出会った陽子が声を高く柔らかくしてはどうかとアドバイスしたところ、その顔も心も声も全部『マルっとスマイル』にした事が功を奏した。いつでも動物に一生懸命寄り添う理想のトリマーである剛が気に入った陽子は、ちょうど自分が開業しようとしていたサロンを併設した動物病院を一緒にやらないかと彼を誘う。それが二人の馴れ初めであり『フレンドリィ動物病院&サロン』のオリジンだったのだ。
- トラメが黒い卵から豚のガオガオーンを生み出した。街中を好き勝手に暴れながら逃げ回るガオガオーンを止められず、プリキュア達は四苦八苦。悟が「豚や猪は泥遊びが大好きだから、河川敷の泥だまりに誘導できれば」と発案し、フレンディは「だったらスマイルお父さん作戦で行こう!」と、みんなで手を叩いたり笑顔や高い声で呼びかけるなどしてガオガオーンの気を引いて河川敷に誘い込む。そしてガオガオーンが大喜びで遊ぶ隙に浄化に成功、ニコブタの姿に戻しニコガーデンへと送り返した。
- やんちゃなモカも剛の前ではすっかり大人しくなり、綺麗にトリミングされ、感謝する飼い主と共に帰って行った。それを見ていたこむぎやユキもブラッシングしてもらいたくなり、みんなでブラッシングタイムがスタート。動物の心を『マルっとスマイル』で掴んでしまう剛は、正にスーパートリマーなのであった。
■第34話
- まゆの父・貴行の写真展に招待される。挨拶しに現れた貴行は、一目でいろは・こむぎ・悟だと判っており、「テレビ電話で会話する時、まゆがいつも君達の事を『とても大事で大好きな友達』と話している」と明かす。「まゆちゃん!嬉しい!わたしも大好き!」いろはは大喜びでこむぎと共にまゆを抱き締めた。
■第35話
- 急いでと下校しようとしているいろはは、悟・まゆ・ユキに出会う。「今日はね、ケイジくんが来るんだ~!わたし、だ~い好きなんだ!」実はこの直前、悟は女子生徒の告白を断っており、それを目撃していたまゆとユキは、いろはが好きならその想いを伝えないのかとやきもきしていたのだが、そのいろはの口から出た思わぬ言葉に、悟は眼鏡がひび割れるほどのショックを受けて硬直。
- 「ケイジくんはね、すっごーくカッコいいの!頭が良くって頑張り屋さんで、足もとっても速いんだ☆」乙女チックな表情で目を輝かせながらでケイジくんを絶賛するいろはは、まゆが焦って悟を揺さぶったり、呆然自失の悟が現実逃避を始めているのにも全く気付かず。それどころか、「よかったらみんなもうちに来て。ケイジくんを紹介するから!」と言い出した。
- 「ケイジくん、待ってよ~!」ドッグランの隙間からこっそり様子を窺う悟達が見たのは、満面の笑顔のいろはと、その横に立つ二枚目の青年。しかも彼が「大好きないろはちゃんに会えたからね、大目に見てよ」と口にしたものだから、悟とまゆは顔面蒼白。そこでいろはに見つかるが、ケイジくんというのは嘱託警察犬を目指しているシェパードの名前で、青年はケイジくんの単なる飼い主だったという案の定のオチ。
- トラメが生み出したカンガルーのガオガオーンのパンチとキックの破壊力は凄まじく、リボンバリアも破られて、フレンディは吹き飛ばされる。心配して駆け寄る悟にも、フレンディは「きっとあの子はもっと痛いはず。早く止めなくちゃ!」と痛みをこらえて立ち上がった。
- フレンディ=いろはに対する様々な思いをぐっと飲み込みながら、悟は「カンガルーは後退出来ない。前にしか進めないんだ」とアドバイスを送った。礼を言ったフレンディはキラリンライオンの力を借り、「どっちが速いか競争だよ!」とガオガオーンを誘い、猪突猛進してきたところへリリアンがリリアンネットで待ち受ける。それが母親の袋のように見えたガオガオーンは、中にすっぽり飛び込んで大人しくなったところを浄化された。
- ニコカンガルーをニコガーデンに送り返した後、今日も悟の助言のおかげで助かったと礼を述べようとするが、悟の様相は何時にも増して真剣だった。いろはが誰かに取られる前に告白すべきと散々悟を焚き付けてきたまゆと、悟がいろはに告白したら今まで通り自分とお話ししてくれなくなるのではと気を揉むメエメエが見守る中、遂に悟は口を開いた。
- 「犬飼さん…」「うん、なぁに?」「……帰ろっか!」結局悟は告白する勇気を出せず、盛大にズッコケるまゆとメエメエ。とりあえず現状維持のままかと思いきや、安心したメエメエが「もう驚かさないで下さいよ。いろは様に好きって告白するかと思ったじゃありませんか!!」と口を滑らせてしまう。さすがのいろはもようやく察した。果たして悟の恋の行方は……
■第36話
- メエメエが発した言葉に、固まってしまういろは。慌てたメエメエが今のは冗談だと訂正したので、いろはも「あ…ははっ、びっくりした。そうだよね、そんな事あるわけないよね」と笑って済ませようとしたが、もはや後には引けない悟は遂に腹を括り、口を開いた。「冗談じゃないよ…。犬飼さん…ボクは、君が好きだ!」
- しばしの沈黙。悟は照れ隠しのように「つ…つまり…恋愛的な意味で…」と付け加えたが。さすがの鈍感ないろはも、彼の真剣な表情を見ればわかる。悟が自分の事を友達ではなく、異性として好き…。鼓動がどんどん早くなってゆく。「いろは、どうしたの?」と尋ねるこむぎに説明も出来ずに、耳まで真っ赤になったいろはは「えっ?え~っと……バイバイ!」とその場から逃げ出してしまった。
- (今の…何?悟くんがわたしに…)日が沈みゆく遊歩道を全力で走り続けるいろはの頭は混乱したまま。「君が好きだ!」さっきの悟の言葉がリフレインし、叫びながら走るいろはには、まゆもユキも追いつけない。が、「いろは~!待って~!」こむぎが猛ダッシュで追い付いてきた。
- 「いろは、なんで走ってるの?」「わかんない!!」「どこに行くの?」「わかんない!! こむぎ!わたしどうすればいい!!?」「何が?」「何がなんだかわかんないよ~~~~~!!!!」乙女心の動揺が止まらないいろはと、恋愛を解さない能天気なこむぎの会話は全く噛み合わず。更にお構いなしのこむぎは「じゃあお散歩しよ!」と逆にいろはを引っ張って高速お散歩に出発。
- へとへとになったものの、おかげで少し落ち着いて帰宅したところ、まゆとユキが待っていた。「まゆちゃ~ん!話聞いて~!」と泣きつくと、まゆは自分達はその為にここへ来たと出迎える。「こむぎもお話するワン!」とやっぱり空気が読めないこむぎは、ユキが遊び相手を引き受け、いろははまゆと共に自室へ。
- 悟がいろはの事をずっと好きだったと明かしたまゆに、彼の事をどう思っているかを尋ねられたいろは。「悟くんはいい友達で、すっごくいい友達で…。まゆちゃん!友達の『好き』と恋愛の『好き』ってどう違うの!?」だが自分も恋愛未経験のまゆは答える事ができない。
- そんな娘の様子を見て、陽子は「悟くんに告白でもされた?」と一目で言い当てた。何でわかったのかと慌てるいろはに、「何となくね。悟くんっていつもいろはへの『好き』が溢れてたから」と理由を明かす陽子と、「ですよねえ☆」と相槌を打つ悟いろウォッチャーのまゆ。気付いていなかったのは当の自分だけだったのだ。
- 友情と恋愛の違いについて尋ねられた陽子は、「言葉で説明するのは難しい」と言いつつ、自分も何度も告白された経験はあるが、自らアタックしたのは剛だけで、これからもずっと一緒にいたいと思ったからと明かす。「友達とも一緒にいたいって思うけど、それとは違うの?」いろはの素朴な問い掛けに、「うーん…違うかな。上手く言えないけど…特別だから、剛くんは」と、少女のようにわずかに頬を染めながら陽子は答えた。
- ベッドに入っても、目が冴えて眠れない。『特別な好き』とはどんな感じなのか、こむぎを『好き』と思う気持ちと『特別な好き』がどう違うのか、そしてこれから悟とどう接していけば良いのか…。答えが出ないまま寝不足で登校していると無差別に挨拶しまくっていたこむぎの「あっ、悟!」という声が聞こえ、思わず声にならない奇声を上げる。
- 当の悟はいつもと変わらぬ挨拶をしてきたのに対し、いろはは動揺してしどろもどろ。だが悟は「昨日言った事は忘れて。これからも今まで通り友達でいいかな?」と言い出した。拍子抜けしたものの、思い悩むいろは。授業中、こっそり後ろの席の悟の表情を盗み見るも、何の変化も見られず、悟が顔を上げたので慌てて視線を戻す。悟は『今まで通り』に戻ったつもりなのだろうか?でも、あの真剣な告白を忘れる事なんてできない…。気持ちに整理がつかないまま、曇天の1日は過ぎていった。
- 放課後、顔を曇らせたまま掃除をしていると、ユキが「貴女らしくない。わたしとまゆが喧嘩した時言ったでしょ」と声を掛けてきた。『あなたの気持ち、あなたの声、伝えてあげて』そう励ましてくれたいろはの言葉を引き合いに出し、「悟は気持ちを伝えてきた。あなたの気持ちも悟に伝えたら?」と言うユキに、いろはは考え込む。かつてユキの心を動かした言葉を、いろはは実践できずにいたのだ。「わたしの気持ち…」
- ガオガオーンが出現し、「行こう!」と促す悟に、今は複雑な胸の内は一旦置いて現場に向かういろは。変身して戦うが、空中から高速で襲い来るトビのガオガオーンに手も足も出ない。そんな中、ザクロに気に入られてしまった悟が連れ去られる事態が発生。「あんた、人間にしてはいい目してるね。揺るぎない強い意志が視えるよ。決~めた☆ 悟!あたしと一緒にときめくよ~♡」
- (やだ────!!)強い心拍とともに溢れ出る感情。足をもつれさせながらも立ち上がり跳躍したフレンディだったが、飛び去るガオガオーンには今少しの所で手が届かず落下してしまう。悟が拐われる、遠くへ行ってしまう…。「犬飼さん」「犬飼さん!」「犬飼さん…」悟の笑顔が走馬灯のように次々浮かんで消える。フレンディの瞳に決意が宿った。絶対に諦めてなるものか。「ヘルプ!キラリンアニマル スワン!」キラリンスワンの翼で、フレンディは再びガオガオーンを追撃する。
- 「悟くんを返して!!」「や~だね!悟はあたしの物だよ!」「悟くんは物じゃない!!」ザクロに嘲られ、ガオガオーンの翼に叩き落とされながらも、フレンディは必死に食らいつく。(悟くん──わたしが困ってる時、いつも傍にいてくれて、何度も助けてくれた。わたしもだよ!悟くんが困ってる時、わたしが助けになりたいの。悟くんと笑ってる時間が好きだから。これからもずっと、ずっと一緒にいたいから───!)
- 「しつこいね、アンタは他の奴にしなよ!」と苛立つザクロに、フレンディは悟に対する思いの丈を叫んだ。「代わりになれる人なんていない!!悟くんじゃなきゃダメなの!!!」その懸命な声は悟の耳にも届く。それと同時にニャミーとリリアンが追いつき、ニャミーシールドに進路を阻まれたガオガオーンはバランスを崩し、更にリリアンネットで捕獲されたが、その弾みで悟はガオガオーンの背中から投げ出されてしまう。
- 「悟くん!!!」気を失い、真っ逆さまに海へ落下してゆく悟に、全速力で追いついたフレンディ。しかし海面はもう寸前に迫り、フレンディは目を瞑り、ひしと悟を抱き締めて庇った。「プニプニバリアー!」その二人を救ったのはワンダフルだった。バリアーで無事にフレンディと悟を受け止めたワンダフルは悪戯っぽく会心の笑顔を見せ、ニャミーとリリアンも安堵した後、一同はエターナルキズナシャワーでガオガオーンを浄化した。
- 「悟くん、怪我は!?」「大丈夫だよ」「よかった…」ようやく戦闘から日常に戻って、悟は赤面し、フレンディも恥ずかしげに頬を染めて目を伏せる。その様子を見たザクロは「え?なんかいい雰囲気になってない?あぁ~やってらんない!やっぱりガオウ様が一番だよ!」と勝手な事を言いながら退散していった。変身を解き、フレンディがいろはの姿に戻る様子に、悟は思わず見とれた。
- ここに来ても空気の読めないこむぎは、まゆ・ユキ・ニコが散歩に連れて行き、いろはと、悟は二人きりになった。またも心臓の鼓動が高鳴る。「気持ち…わたしの気持ち…伝えなきゃ…でもなんて言えば…」しかし、先に沈黙を破ったのは悟だった。
- 「情けないなあ…。少しでも犬飼さんの力になりたくて頑張ってきたけど、実際は犬飼さんに助けられてばかりだね」「そんな事ないよ!わたしね、困ったり悩んだりした時、いつも悟くんの顔が思い浮かぶの。頼ってばかりで…いっぱい迷惑かけてごめんね…」「め…迷惑だなんて思った事ないよ。寧ろ、頼ってくれると嬉しい…」お互いの瞳を見つめ合う二人。いろはの中で、ようやくその思いが言葉になった。
- 「あのね!わたし、悟くんといるとすっごくワンダフルなの。普通のワンダフルじゃなくて、特別なワンダフルなの!」「特別…」「そう!こむぎやみんなといる時は、『ワンダフル~!』って感じで、悟くんといると『ワンダフル…』って感じ…。伝わったかな…?」「うん…今、物凄くワンダフルだよ!」「良かった…」悟といろはは、頬を染めながらも自然に笑い合う。不器用な二人の心は、ようやくワンダフルに通じ合ったのだった。
■第37話
- 今日は悟との初デート。いろはは鼻歌交じりでウキウキしながら、陽子と共におしゃれや化粧に余念がない。そこへ二人の交際をつい今しがた知った剛とまだ納得していないメエメエが血相変えて乱入してきたが、「もう出てって!!」とたちまち叩き出された。剛は「う…受け入れるまでもうちょっと時間が欲しいかな」と涙ながらに引き上げるも、メエメエは全く諦めておらず…。
- 待ち合わせ場所の鏡石の前では、悟が大福を相手にデートプランはこれでよいのか、今まで通りに遊ぶだけでは友達と変わらないのではなどと悶々としていた。手を振りながら現れたいろはの姿に赤面する悟と、もじもじするいろはは「ご…ごめんね、待たせちゃって」「ううん、今来たところだから」と定番通りの御挨拶。たまたま通りかかったまゆはその初々しさに大興奮するが、同時に違和感もあった。二人はそれぞれこむぎと大福を連れてきており、これでは普段と変わらないではないか?
- ユキがこむぎの遊び相手を引き受け、偶然を装って「みんなで一緒にお散歩しましょう」と、ちゃっかり割り込もうとするメエメエには、まゆが大福を押し付けたため、いろはと悟は完全に二人きりに。鏡石の前を離れる二人の動きは、まるで油を注してないロボットのようにガッチガチだった(しかも右手と右足が同時に出る始末)。
- ついに本格的なデートが始まった。だが早速何を話せばいいのかわからない。(あれ…?急に緊張してきちゃった…)「お散歩コースの予定だったけど、二人になっちゃったね」悟が口火を切ってくれたので、歩調を合わせようとしたが…「お…お…お散歩といえば!!この前こむぎとお散歩してたら雨が降ってきて!で…でもこむぎは雨が好きだから、た…楽しそうだったんだ~!!」「そ、そうなんだ。今日は晴れて良か…」「は…晴れて良かったね!!暑過ぎず寒過ぎず風吹き過ぎず!犬は暑いと舌出して体を冷やそうとするんだよ!ウサギは暑いと耳を冷やすんだよね!?いや~!まだまだ暑いからわたし達も気をつけないと~!!」等々、緊張のあまり取り留めのない話をまくし立てて、逆に悟に落ち着くよう窘められる始末。
- ベンチに腰掛けてお茶を勧められても、ぎこちなく礼を言うのが精一杯で、会話が続かない。(どうしよう…いつも通りが全然できないよ…)そこへえまが愛犬ポンと共に通りかかった。以前はリードをつけるのさえ嫌がっていたポンが、いまや散歩もできるようになっていたのだ。ポンの成長を喜んだいろはは悟と共にポンを愛でて、緊張が少しほぐれた。
- なお、その合間にメエメエが様々な変装をしつつ、自己アピールしてデートに水を注そうとするが、その都度大福にドツかれる。
- ショッピングモールの水族館に入った二人。「悟くん知ってる?ヒトデって思ったより固いんだよ」タッチングプールでヒトデに触ろうとしたところ、同じタイミングで手を伸ばした悟と手のひらが重なり、お互い赤くなりつつ手を引っ込める。「あ…。ほ…ほんとだ。意外だな~…」「う…うん…」
- 大水槽の幻想的な光景に目を輝かせるいろはの横顔に一瞬見とれた悟は、いろはと視線が合うと、照れ隠しのようにマンタの解説を始めるが、そんな悟の気遣いを申し訳なく感じるいろはは、悟に謝りながら本音を吐露する。「ごめんね悟くん。今日のわたし、なんか変だったよね。落ち着きなかったっていうか…。わたし、今日のデートすっごく楽しみにしてたんだよ。友達の頃だって一緒に遊ぶの楽しかったから。…きっと、もっと楽しいって。…なのに、一緒にいてくれる悟くんを見てたらね…急に、急に緊張しちゃって。…わたし」友達から一歩踏み出した関係になったからこその自らの心の変化に、いろはは戸惑っていた。
- だが悟はそんないろはの態度も好意的に取ってくれていた。「…ボクは、嬉しかったよ。少し不安だったんだ。友達だった頃と変わらないなら友達のままで良かったって思われるんじゃないかって。だから──犬飼さんがいつもと違ってくれて、嬉しい」いろはは悟のお陰で形容し難い自分の心の動きが少し理解できた気がしたが、同時に気恥ずかしさが押し寄せて来て、真っ赤になってへたりこんでしまう。
- 「やっといつもの自分に戻れたと思ったのに、またドキドキしてきちゃって…」悟「ボクはいつもの犬飼さんも、緊張している犬飼さんも─────好きだよ」もう照れたり曖昧に誤魔化す事なく、悟はストレートに好意を口にする。頬を染めたいろはは、時が止まったかのように悟の瞳を見つめていた。
- 水族館を出るなり響き渡る咆哮。いろはと悟は「「行こう!」」とお互い笑い合いながら使命に立ち返る。変身して駆け付けた先では、案の定リリアン達がキリンのガオガオーン相手に奮戦中。こむぎや大福がいなければ、ガオガオーンが出現してもいろはと悟は気付くまいとわかっていながら、どうか二人だけの時間を楽しんでほしい一心で、リリアン達は二人を呼び出す事なく、頑張っていたのだった。フレンディは微笑んでリリアンの気遣いに感謝し、悟のアドバイスでガオガオーンの脚部にバリアを集中させて動きを止め、浄化する。
- 夕陽の中を歩きながら「今日のデートすっごく楽しかった!」と満足げないろはは、悟の方へ向き直った。「でも、1個だけお願いがあるんだ。前からずっと思ってたんだよね。…名前で呼んでほしいって…」この瞬間をずっと待ちわびていたというような表情をする悟。「……いろはちゃん」「悟くん!」いろはも幸せそうに返事して、二人は自然に手をつなぐ。待ちきれずにいろはを呼ぶこむぎの声に、いろはと悟の明るい笑い声が重なり、夕陽のアニマルタウンに響いていった。
■第38話
- いつものようにこむぎに甘えられ、「こむぎはここを撫でられるのが好きなんだよね~」と後頭部のハートマークの模様を撫でてあげて、楽しい時間を過ごしていたいろは。そこへ訪れた女性客が驚きの声を上げた。「マロンちゃん!?…そのハートの模様…やっぱりマロンちゃんよね!?」こむぎが2年前にいなくなった犬とそっくりだというのだ。
- その結城綾子という女性は動物のボランティア団体をやっていて、入院などのやむを得ない事情で飼えなくなったペットの世話を引き受けていた。こむぎ=マロンの前の飼い主も2年前に老後施設に入る事になり、結城達にマロンを託したのだが、ある日マロンは脱走して姿を消し、警察にまで捜索を依頼したが見つからなかったという。
- 話が終わって外に出ると、悟・まゆ・ユキが心配して待っていた。いろはがいない間に、悟達に前の家族の事を尋ねられ、引き取りたいと言われるかもと聞かされていたこむぎは、不安を払拭するかのよう一緒に遊ぶようせがむが、いろははそれを制して「でもその前にお出かけの準備だね」と言い聞かせる。いろはは結城に頼み込んで、前の飼い主の居場所を教えてもらい、明日訪問する事を決めていた。
- 「でも、もしこむぎちゃんを返してって言われたら…」いろはの意外な決断に驚き不安がるまゆ。こむぎにも「いろはとこむぎはずっと一緒だワン!ね、いろは?」と迫られるが、いろははすぐに返事が出来ず口ごもる。それでも無理に笑顔を作って「大丈夫、心配いらないよ」と答えたものの、いろは自身も不安は隠せない。その夜はいろはもこむぎも一睡もできなかった。
- 翌日、寝不足で目の下に隈を作りながら、山奥の介護施設を訪れる。「行ってくるね」と口に出したが、緊張で足が進まず、悟に促され深呼吸して落ち着き、施設内へ。案内された広場にいた栗原という車椅子の老人こそが、こむぎ=マロンの前の飼い主だった。
- 「マロン、大きくなったね」栗原は2年前にマロンが姿を消した時は胸が張り裂ける思いで、自分が施設に入りさえしなければ離れ離れになる事はなかったとこむぎに詫びる。こむぎを抱いて後頭部を優しく撫でる様は、いろはと同じく愛情と温かさに満ちていた。
- 栗原曰く、マロンはとても小食ですぐ体調を崩し、臆病で人見知りするタイプだったそうだが、いろはは「とても食いしん坊で好奇心旺盛で一人でどこにでも行っちゃうんですよ」と現在のこむぎについて説明する。お互いの知るマロンとこむぎの様子とはかけ離れていると、栗原といろはは笑い合ったが、「きっと君がたくさんの愛情を注いでくれたからだね。今までマロンを大切に育ててくれてありがとう」との彼の感謝の言葉を聞いたいろはははっとなり、たちまち表情が曇って俯く。
- しかしいろはは意を決して口を開いた。「わたし、2年前にこむぎを保護した時、お母さんと約束したんです。もしもこむぎの前の家族が見つかったら、ちゃんとこむぎとお別れして、前の家族の元に返してあげるって…。だけど…毎日こむぎと過ごして、どんどん仲良くなって、いっぱい喧嘩して…わたし、こむぎの事が大好きになって…!」話している間に、いろはの瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちる。「こむぎと離れるなんて絶対に嫌!!わがまま言ってごめんなさい!でもわたし、ずっとずっとこむぎと一緒にいたいんです!だから…お願いします!」いろはは深々と頭を下げて懇願した。栗原の気持ちも確認せず、勝手な事を言っているのはわかっている。でもこれが今の自分の嘘偽りない本当の気持ち。何と言われようとこむぎとお別れしたくない、一緒にいたい…。
- その時、オコジョのガオガオーンが出現。悟が栗原を避難させている間にいろは達は変身する。残像が出来るほどの超スピードででニャミーとリリアンを打ち倒し、ワンダフルにも襲いかかるガオガオーンをフレンディがリボンバリアで阻止する。フレンディの守りたいという気持ち、一緒にいたいという気持ちが伝わってくる。ワンダフルはそれに応えてプニプニバリアーでガオガオーンを弾き飛ばし、キラリンウサギの聴力で本体の場所を見破って浄化した。
- 戦いが終わった後、こむぎは人間の姿のまま栗原に抱き着き、感謝を口にした。慌てて「人間の姿で言ってもわからないよ!」と引き留めても今更どう説明したらよいかわからず、かと言って犬の姿を見せる訳にもいかず、こむぎと共にあたふた。しかしそんな二人の様子を見て、栗原は全てを悟っていた。
- 「犬飼さん、さっきのお願いの返事をしないといけないね。マロンを…いや、こむぎをこれからもよろしくお願いします。君たちはこれからもずっと一緒だよ。二人は最高にワンダフルだからね」穏やかに微笑む栗原は、いろはとこむぎの固い絆を認めてくれたのだ。これからもずっと一緒にいられる。いろはもこむぎも無言で見つめ合い、喜びを分かち合う。その様子を木陰から、一人の少女が微笑を浮かべて眺めていた…。
■第39話
- ハロウィンで賑やかなアニマルタウン。いろははこむぎや悟とお菓子を配り、笑顔が溢れる。そんな街の様子を、謎の少女が微笑みながら見守っていた。一方、遠吠神社ではガオウが「聞こえる…人間の笑い声が…」と怒気を込めて呟きながら、動き出していた。
- 悟とお揃いのウサギのコスプレである事をまゆにからかわれていると、朝から姿が見えなかったニコが現われる。どこへ行っていたか尋ねると「うん、ちょっとね」とはぐらかすニコの頭では、角のダイヤが輝いていた。そのダイヤはみんなの笑顔『ニコニコパワー』で光るとの事で、人間と動物が仲良く暮らすアニマルタウンの様子を見て、ニコガーデン襲撃時のダメージも癒えたらしい。「じゃあこれからもっともっと元気になるよ」「アニマルタウンはわんだふるが一杯だからね!」とのいろはやこむぎの言葉を聞いて、みんな笑い合っていたのだが…。
- お菓子を配り終わった頃、ふと気づくとこむぎがどこにもいない。探し回って、河川敷でようやくこむぎを発見し、「黙っていなくなっちゃ駄目でしょ!」と叱ったが、こむぎは傍にいた狼の仮装をした男とおしゃべりしていたらしい。すると、いろはとこむぎの会話を聞いていた男は「なぜ人間にすり寄る…?人間は欲深く冷酷な生き物だ。信じてはならぬ…!」と不穏な事を言い出した。
- 「そんな事ないワン!いろはは…!」と反論するこむぎを「人間など信じてはならぬ!」と一喝する男の全身から、闇が溢れ出す。「これって、ガルガルやガオガオーンが現われる時と同じ…!」いろはがそう言うのと同時に悟も気付いた。「狼…ニコガーデンを襲ったのは狼だとニコ様が言っていた」それを聞いていろはの顔色が変わる。「まさか…あなたが…!」そこへ、一緒にこむぎを探していたまゆとユキが、同じように闇の気配を察知して駆け付けた。いろはは二人に警告を発する。「気をつけて!あの狼がガオウだよ!」ニコガーデンを襲撃し、アニマル達をガルガルにした狼のリーダー・ガオウが遂に姿を現したのだ。
- ガオウは水晶玉を光らせて、ワンダフルパクトやシャイニーキャッツパクトを包み、いろは達の変身を封じた上で攻撃してきたが、ニコがそれを阻んだ。更にニコは人間の少女へと変身する。こむぎが「ニコエボリューションだワン!」と呼んだその姿で、ニコはアニマルタウンの人々や動物を見守っていた。
- ニコは「人間は身勝手で残酷な生き物だと思っていたが、このアニマルタウンの人は違う」と説得を試みるも、人間への不信と怨念に凝り固まったガオウは、「今はそうでも人間はいつか必ず裏切る。仲間達の無念を晴らす為、人間に報いを与えねばならぬ」とそれを拒絶し、こむぎを闇の力でガオガオーンに変えようとする。
- 「プリキュアになれないのに危険すぎる!」と悟に引き留められる間に、唸り声を上げるこむぎの体はどんどん大きく、黒く変わって行く。「うぅ…うぅ…いろ…は…」わずかに残る理性でこむぎがいろはの名前を呼んだ。「こむぎ!」悟の手を振り切ったいろははこむぎに抱き着いた。「目を覚まして、こむぎ!」こむぎの体から立ち上る瘴気に苛まれても、いろははこむぎを抱き締めたまま必死に名前を呼んだ。「こむぎ!こむぎ!」
- 「牙を剥け、雄叫びを上げろ!」ガオウは更に闇を注ぎ込んでガオガオーン化を加速しようとするが、ニコがバリアを張って「こむぎ!呑み込まれてはいけません!」と懸命に阻んだ。その間もいろはは「こむぎ!こむぎ!こむぎ!」と必死で名前を呼び続ける。いろはの思い、そして謎の動物の遠吠えを聞いたこむぎは、闇を振り払って元の姿に戻った。「こむぎ!大丈夫!?」「うぅ…いろは…いろはの声、聞こえたよ…」
- ガオウとニコはお互い力を使い果たして痛み分けとなった。駆け付けたザクロが生み出したコウモリのガオガオーンをプリキュア達は退けるも、「仲間の無念を晴らす為だとしても、罪のない生き物達を傷つける事は許されません」「それでも我は為さねばならぬ…」と、やはりガオウとニコはお互い相容れない。そしてガオウは「時が満ちた時、お前達の世界は終わる」と不吉な言葉を残して逃げ去った…。
■第40話
- 「1!2!」「ワン!ワン!」「3!4!」「ワン!ワン!」といつも通りのお散歩……と思いきや、号令をかけているのは人間態のこむぎで、返事をしているいろはは何と犬の姿。しかもまゆまでも猫になってしまっている。「ワンニャン大事件だワ~ン!」
- 「どうしよどうしよ!」と狼狽して走り回り、悟に落ち着くよう言われても、「わたしも落ち着きたいけど、なぜか走り回りたくなるワン!ちょっとだけって思っても止まらくなっちゃうワン!」と、精神まですっかり犬化したいろは。まゆがユキに撫でられているのを見て、「いいなぁ、わたしも撫でたいワン」と羨ましがるが、いまや自分が撫でられる側で、こむぎになでなでされてご満悦。そこでようやく我に返り、「ハッ!溶けてる場合じゃない!ほんと…なんでこんな事になったんだっけ?」
- 時は1時間ほど前に遡り、いろは達は遠吠神社を訪れていた。数々の情報から、ガオウがここに潜んでいるかもしれないと考えたからであり、「わたし、ガオウとちゃんと話したい」といういろはの思いには、みんなも同調していた。神社はすっかり寂れて荒れ果てていたが、こむぎがガオウの匂いを嗅ぎつける。
- ニコも「最近までここにいた事は確か。気配でたどってみる」と人間の姿になり、輝くオーラの輪を飛ばして探索を始めた。ところが頭部のダイヤが点滅し、ニコが「う~ん…?」と悩み始めたと思いきや、突如彼女の周りに奇妙な煙が立ち込め、それが晴れた時には、いろはとまゆは犬と猫の姿に変わってしまっていたのだった。
- どう見てもニコの仕業だが、当のニコは「テヘッ☆そうで~す、ごめんね~♡」とあざといスマイルで誤魔化す。まだ力が不安定な為で、元に戻すにはパワーの回復を待たねばならず、「それはいつワン?」とのいろはの問いには、「みんなの笑顔がニコニコパワーになるから、みんなの笑顔次第かな?」と堂々の無責任ぶりで、いろはとまゆは愕然。
- 「これからどうしたらいいワン?」と途方に暮れていると、「こういう時は遊ぼう!いつか元に戻るなら、犬になったいろは達と今、いーっぱい遊びたい!」とこむぎが能天気ながら前向きな提案をする。悟も「確かにみんなの笑顔がニコ様のパワーになるのなら、一杯遊んで一杯笑うのはいい方法かもしれない」と同意した為、みんなで遊ぶ事に。
- ペットフリーエリアをこむぎと並んで全力疾走し、「すごいすごい!こんなに速く走れるなんて楽しいワン!こむぎがお散歩大好きなの、すごくわかるワン!」と、ようやく犬の姿をエンジョイする。しかしチョコやポンなど顔見知りの犬達が寄ってきて挨拶代わりに匂いを嗅がれ、「くすぐったいよ~」と思わず声を出してしまってピンチ。
- すかさず悟が抱きかかえて逃げ出した事で難を逃れたものの、人間の姿の時にはそこまで密着した事はなく、我に返って赤面する二人。更にこむぎから、「あっ!いろは、尻尾ぶんぶんしてるワン!嬉しいと尻尾振っちゃうよね~」と指摘され、ますますいろはは真っ赤に。
- そこへトラメがカエルのガオガオーンと共に襲来。幸いニコニコパワーが満タンになって、いろはとまゆはも人間に戻って変身。悟が教えてくれた、動く物しか認識できないカエルの習性を利用して、『だるまさんがころんだ』作戦でガオガオーンを捕獲して浄化した。
- いろはとまゆが「元に戻れてほっとしたけど、動物の姿も楽しかった」と語り合うのを聞いた悟が「ボクもちょっと興味あるな」と呟くのを聞いたニコは、「じゃあ体験してみる?」と、今度は悟をウサギの姿に変えた。
- やはり不安定で、またニコニコパワーを貯めなくては戻れないので、公園へ遊びに行く事にするが、「ウサギの速さはおよそ時速73キロ、犬より速いとされてるから、ここから公園までのおよそ4キロの道程をこのスピードで維持できれば、3分半くらいで着いちゃうって事!?」と、姿はウサギでもいつも通りの分析力を発揮しつつ走って行く悟を、笑いながら追いかけるいろは達だった。
■第41話
- クラスメイトの烏丸が、実家の蔵から出てきた古い文献を持ってきた。150年前に昴という男が書いたもので、そこには彼と狼の交流が記されていた。遠吠山で怪我をした狼を見つけた昴が手当てを施した事から始まり、後日彼が山中で迷った時は、逆に狼が道案内をして助けてくれるなどして、言葉が通じなくてもお互いの間には友情が育まれていったのだという。
- 「狼と仲良くしてた人がずっと昔にいたんだ!」と、ガオウとの和解の糸口を見つけて喜ぶいろは。だがそれ以上に歓喜したのは、横で聞いていた演劇部の狐崎。彼女はアニマルタウンの演劇祭に出るべく、ユキを改めて勧誘するも断られて意気消沈していたが、「これだわ…狼と人間…種族を越えた友情!降りてきた、降りてきたわ!」と演劇魂を燃え上がらせる。
- ただ、いろはの脳裏では、ザクロと初対決した時の「狼が絶滅したのは、あんた達人間のせいなんだよ!」という憎しみに満ちた言葉が木霊していた。文献は古い言葉で書かれていてすぐには読めない部分も多く、悟が預かって解析する事になったが、いろはは昴と狼の友情の結末が気になって仕方がない。「この後、どうしたのかな…」
- 一方狐崎は、わずか一晩で「狼王ウルフェン」なる脚本を書き上げてきた。しかし「ロミオとジュリエット」を演るつもりで進めてきた為、衣装から何から全部作り直しせざるを得ず、狐崎と狸原が途方に暮れていると、いろはが「よかったら手伝おうか?狼と人間が仲良しのお話、わたしも見てみたいから!」と助け船を出す。当然こむぎ・まゆ・悟も同調し、ユキも押し切られて出演を了承、劇の準備は急ピッチで進む。いろはは巨大な舞台セットを一人で運ぶ怪力ぶりを発揮。
- 演劇祭当日、劇の真っ最中にガオガオーンが出現したり、ニコがユキの代役で森の女神を演じたり、いろいろありながらもクライマックスまで来たが、劇に感情移入してしまったこむぎが、別れのシーンで思わず、「そんな事ないよ!」と舞台袖から声を出してしまい、いろはは「そんな台詞なかったよね!?」と大慌て。やむなくステージ上に出たこむぎのアドリブに狐崎・狸原・ユキが合わせ、「一緒にあそぼ!仲良くなればわんだふるだよ!」といつも通りのこむぎの無邪気さに、観客席も笑顔と拍手が溢れ、いろは達は胸を撫で下ろした。
■第42話
- まゆの父・貴行が鷲尾町長からアニマルカレンダー用の写真を依頼され、みんなでアニマルタウンを案内しつつ動物巡り。お鶴の愛犬フクちゃん、鳥枝のオカメインコ・ピーちゃん、蟹江の飼育するサワガニのズワイくんとタラバちゃん(食べる気か!)等々、貴行はたくさんの動物と笑顔あふれる人々の写真を撮って回る。可愛い女の子も多いぞ。
- シマウマのガオガオーンは俊足な上に、プニプニバリアーを走りながら避ける器用さもあって、なかなか捕まえられない。そこでフレンディはキラリンライオンの脚力を借りて先回りし、「避けちゃうなら…これでどう!」と大通り一杯にリボンバリアを張り巡らせる。強引に突破しようとするガオガオーンは、プニプニバリアーとニャミーシールドの重ね掛けで弾き返され、吹っ飛んだところをリリアンネットで捕獲、浄化された。
■第43話
- まゆに編んでもらったマフラーをユキが自慢し、みんなが羨ましがった事から、まゆ先生の編み物教室がスタート。皆が悪戦苦闘する中、いろはは一際真剣で、まゆに教えを乞う。背後に炎を燃え上がらせ、鼻息荒く、目をハートにしたいろはからは、『クリスマスに悟くんにプレゼントしたいんだ!』という思いが言葉にせずとも伝わってくる。その尊さに歓喜したまゆも心の中で『兎山くん、絶対喜ぶ~!』と大歓喜。「それでね、端っこにウサギの模様を入れられないかな?」と頼み込み、まゆの「ウサギか…正直かなり難しくなるけど…」との答えに再び燃え上がり、『でも挑戦してみたいんだ!』『一緒にやってみよ~う!』と以心伝心。
- 先日烏丸から預かった古文書を悟が解析したところ、やはり昴という男の友達だった狼はガオウだという事がわかった。「人間の友達がいたのに、人間の世界を壊そうとしてるの?」と、暗澹たる気持ちになりかけたいろは達だったが、今回ザクロとの会話を経て、彼女らの中にも愛情が存在すると知ったまゆの「もっとザクロやガオウ達と関わっていきたい。みんなの思いを紡いで、つないでいきたい」との言葉にうなずき、和解を目指してゆく事を改めて決意する。
■第44話
- 登校時、愛犬フクを散歩させているお鶴に出会う。今度の土曜日で、フクがお鶴の家に来て18年になると聞いたいろはは、お祝いをする事を提案した。人間年齢に換算すればおおよそ88歳。いろはにとっても、子供の頃からたくさん遊んだ友達だった。
- まゆ・ユキ・悟を誘い、お亀やお鹿も集まって、みんなでお祝いの準備。お亀やお鹿によるとお鶴は昔、鈴という犬を飼っていてとても可愛がっていた。しかし高校生の頃に鈴は亡くなってしまい、お鶴は「こんなに悲しい思いをするなら、もう犬は飼わない」と心に決める。しかし18年前、飼い主のいない犬に新しい家族を紹介する譲渡会のお手伝いをしていた時、人間を怖がる1匹の犬が、なぜかお鶴に懐いて来た。その犬に鈴の面影を見出したお鶴は、自分が飼う事を決意する。それがお鶴とフクの出会い。それ以来、お鶴はとても幸せそうだったという。
- ところがお祝いの当日、年老いたフクは起き上がれないくらい体調が思わしくなかった。こむぎが熱心に話し掛けても反応が鈍い。更にタイミングの悪い事にガオガオーン出現の気配をこむぎ達が察知し、いろはは「えっと…忘れ物しちゃった!」と苦しい言い訳で脱け出して現場に向かう。雨が降り始め、お鶴が「あの子達、大丈夫かしら…」と心配していた時、フクの容体が急変する。
- 到着した場所では地響きの音が断続的に聞こえ、動物達が逃げ出していた。こむぎ曰く「みんな『知らない動物だ』って怖がってる」との事で、一同の間に緊迫が走る。そして木々の間から巨大な口が襲い掛かった。何と今回のガオガオーンはティラノサウルス。この巨大な肉食恐竜が街に降りたら大変な事になる。絶対に食い止めねばと一同は変身した。
- 4人がかりのバリアも易々と噛み砕き、道路に大穴を開けるガオガオーンの猛威にプリキュア達は防戦一方で、せめて街の方へは行かせないようにと山の方角へ誘導する。それでも歯が立たない状況には変わりなく、ニャミーとリリアンが倒されてしまい絶体絶命。だが、ワンダフルとフレンディに噛み付かんとした瞬間、どういう事かガオガオーンが動きがピタリと止まり、全く身動きしなくなった。よくわからないながらもその千載一遇のチャンスを逃さず、フレンディ達はエターナルキズナシャワーでガオガオーンを浄化し、辛うじて命拾いする。急いで戻ろうとした時、フレンディの目に映ったのは、ペットカートを押して我が家の方角へと急ぐお鶴の姿だった…。
- その少し前……トラメは「いいぞ~!いけ、いけ~!」とガオガオーンの暴れっぷりを満足げに見物していたが、先程ガオガオーンが陥没させた道路の穴の前で、人間の女が何やら血相を変えてペットカートに呼び掛けている姿が目に付いた。気になって近寄ってみるとその人間――お鶴は、カートの中の何か小動物らしき相手を「必ず陽子先生の所に連れて行くからね!」と励ましているらしい。
- 「おい、どうしたんだ?こいつ」と尋ねると、お鶴は青ざめた顔で「この子は…もう長くないの…病院に連れていきたいのだけれど、道が…」と途方に暮れていた。小動物の姿は毛布を掛けられていて見えないが、小刻みに震えていて、命の灯が消えかけているのがわかる。「クッ…!」歯噛みしたトラメはしばしの沈黙の後、突如「止まれ!」と叫んだ。すると、道路が奇跡のように元通りになった。「ほら、行けよ」トラメに促されたお鶴は、訳がわからないながらもペットカートを押して去って行く。
- トラメは、ガオガオーンがプリキュアに浄化されれば周囲の破壊された物も元に戻ると知っていて、ガオガオーンをわざと制止して浄化させ、道路を修復したのだ。せっかくの楽しい遊びを情に流されて放棄したからか、それとも人間に味方してしまった己に苛立ったからか、トラメは「チェッ…つまんねぇの」と小声で言い捨てて姿を消した。
- 陽子がフクに処置を行うのを見守るお鶴といろは。陽子は「お鶴さん…フクちゃん、すごく頑張ってくれてます。でも…今夜は越せないかもしれません。お別れの準備をしてください」と静かに告げた。動揺しつつ頷くお鶴を見て、いろはは「お別れって…お母さん、何とかできないの!?ほんとに…ほんとにフクちゃんにはもう何もできないの!?」と陽子に詰め寄る。だが陽子とて、できる手段を全てやり尽くした末にやむなく下した結論だった。「今ならまだフクちゃんは家に帰れる。お鶴さんと一緒に暮らした場所で、お鶴さんと過ごす事がフクちゃんにとって一番いいと思うの」
- 足取りも重く、お鶴の家に向かう一同。いろははまだ諦めきれない。「ニコ様…ニコ様ならフクちゃんを助けられるんじゃ…」その訴えをニコは穏やかな口調ながら厳しく窘めた。「いろは、あなたもわかってるはずだよ」返す言葉もない。生命の摂理を覆す事など許されないのだから…。
- 別れの時が刻一刻と迫って来ている。座布団に横たわったフクに、まゆの提案によりみんなでプレゼントとして作ったパッチワークのブランケットがかけられた。こらえきれず、いろはの瞳が潤み始めた時、こむぎが無邪気な声を上げた。「へぇ~、そうなんだ!『この座布団、初めてお家に来た時に、お鶴ちゃんがプレゼントしてくれたの』だって!」確かにこの座布団はお鶴からフクへの初めての贈り物だった。驚くお鶴にこむぎはフクの思いを伝えた。「『お散歩一杯連れてってくれてありがとう』だって。『歩けなくても楽しかった』って」
- 「フクちゃん…あなたと一緒に暮らせてわたし…わたし、と~っても幸せだったわ…あなたが来てくれてから、毎日が本当に楽しかった」とお鶴は泣き崩れる。そしてフクは宙の一点を見つめ、そこにいたニコと精神世界で対峙していた。一声鳴いたフクに、「それが…あなたの最後の願いなのですね…」とニコは微笑む。先刻いろはに申し渡したように、去りゆく命を引き留める事はできない。でもその小さな願いならば…。
- 「フクちゃん!?」お鶴が驚きの声を上げた。動く事すらままならかったはずのフクが自力で立ち上がり、歩み寄ってきたのだ。お鶴の頬の涙を『もう泣かないで』とばかりに舐めとるフク。そしてこむぎが、フクの最後の言葉を伝えた。「『お鶴ちゃん、だ~い好き』だって!」「わたしもよ、フクちゃん!大好きよ、これからもずっと、ず~っと…」「『眠たいから抱っこして』って言ってるよ…」お鶴は万感の思いでフクを抱き締めた。「ありがとう…フクちゃん」
- お鶴の家を出た後もまだ打ちひしがれたままのいろはに対し、「ありがとう、いろはちゃん。フクちゃんの為に」「でも…」「フクちゃんの『フク』は幸福の『フク』なの。名前の通り、あの子はわたしにたくさんの幸せをくれたわ。一緒に過ごした幸せは、これからもずっとここにあるのよ」と、お鶴は胸に手を当て、フクとの思い出が心の中に永遠にあり続けるのだと微笑む。「いろはちゃんがお祝いをしてくれて、フクちゃんもきっと幸せだったわ。ありがとう」手を取って感謝を述べるお鶴。いろはは無言のまま、もう座る者のいない座布団をガラス越しに見つめた後、わずかな啜り泣きの声と共に、フクの魂が昇っていった夕焼けの空を見上げるのだった。
■第45話
- ペットフリーエリアで、こむぎとポンが走り回る姿をぼんやり眺め、えまに「今日は走らないの?」と聞かれても「ちょっと疲れちゃって」と曖昧に答えるいろはは、えまが2匹を追って行った後に、「楽しそう…でも……友達って楽しいばっかりじゃないなぁ…」と呟きながら夕焼け空を見上げる。そこへ悟と大福がやって来て、いつもと変わらぬような笑顔で手を振るが、悟はいろはがまだフクの事を引き摺っている事に気付いていた。「いろはちゃんって嘘つくのは苦手なのに、元気なふりをするのは上手だ…」
- 前回のティラノサウルスの帰還により、行方不明になっていたニコアニマルが全てニコガーデンに戻ったとメエメエから礼を言われるが、その間もいろはは上の空。そんな中、こむぎを散歩させていると、鏡石神社の前でマダム三人組に出会う。ここの供養塔にフクを入れてもらい、毎日お参りに来ているのだという。
- 「正直、悲しい気持ちはなくならないわ。家にいてもお散歩してても、フクちゃんの事を思い出して泣いちゃいそうになる事もある。でも、お亀ちゃんとお鹿ちゃんが話を聞いてくれるから。お友達ってほんとありがたいわぁ」と、お鶴はすっかり明るさを取り戻していた。「お鶴さんが元気でよかったです」と微笑んだものの、むしろまだいろはの方が立ち直れていない。
- 突如狼の遠吠えが響き、探した先ではトラメが何やら落ち込んでいる。「何しに来たんだよ!」と喧嘩腰の彼に「あなたの声が聞こえたから」と答えるも、こむぎに今日はガオガオーンがいない事を指摘されたトラメは「これから出すんだ!黒い卵を見つけたらな!」とそっぽを向いた。
- それを聞いたいろはは、先日の戦いでトラメが「お前ら、面白ぇ事考えるな~!」と喜んで笑っていた事や、ワンダフルが「トラメって、ほんとは一緒に遊びたいんじゃないのかな?」と疑問を呈したのを思い出す。彼がガオガオーンを暴れさせていたのは褒められた事ではないが、もしかして単に遊び相手が欲しかっただけなのではないだろうか。しかしニコガーデンに全てのアニマルが戻ったのならば、もう黒い卵はどこにもない。それを知ったら彼はがっかりするのでは…いろははしばし逡巡するも、思い切って事実を告げた。「黒い卵はもうないよ」「えっ…?」「黒い卵になった子達は、みんなニコガーデンに戻ったから…」
残念ながら…
- 「そう…なのか…?」予想通りしょんぼりしてしまったトラメだが、すぐさま気持ちを切り替えた。「ならしょうがねぇ…今日はおいらが直々にお前らと遊んでやる!」自らプリキュアと遊ぶ、イコール戦う気満々のトラメに対し、こむぎはその台詞を字面通りに解釈した。「何して遊ぶ?ボール投げ?かくれんぼ?」「そういうんじゃねぇよ!本当に遊んでどうすんだ!」調子が狂ったトラメや、呆気に取られるいろはに対し、こむぎは笑顔で答える。「一緒に遊ぶと楽しいよ!ねっ?いろは!お天気悪くても、喧嘩しても、悲しい事あっても、一緒に遊べばわんだふるー!だよね!」
- いろはははっとなった。昨日から今日にかけて、こむぎがやたら甘えるように足元にすり寄っていたと思ったが、あれは自分を励ましてくれていたのだ。フクはいなくなってしまったけど、自分にはこむぎがいる。まゆ・ユキ・悟もいる。こむぎの屈託のない表情を見て、いろはにも久々に本当の笑顔が戻った。「そうだね!トラメ、わたし達と一緒に遊ぼうよ。一緒に遊んでワンダフルになろう!」
- 「勝手に決めんな!」と困惑するトラメを余所に、まゆ達も加わって一同は変身。トラメを一方的に鬼に指定し、鬼ごっこを開始する。追いかける内に彼がだんだん楽しそうな表情になってきたのを見て、フレンディはキラリンペンギンの力で周囲をスケートリンクのような氷のステージに変えた。トラメは狼の姿に戻ってフレンディを捕まえ、「次、お前、鬼な!」と攻守交代して今度は逃げ回るが、逃げた先の崖が崩れ、谷底へ落下する。
- 「トラメ!手を!」後を追って崖からダイブしたフレンディは懸命に手を伸ばす。一度は空振りするも、お互いに懸命に伸ばした手と手はがっちりと握り合い、フレンディはすかさずキラリンスワンの羽で舞い上がった。空から見下ろすアニマルタウンは、山や海に囲まれた美しい街並みで、思わず見とれるトラメ。「あぁ~、びっくりした。ねぇ、追いかけっこまだ続ける?」「もちろん!」今度はリリアンが鬼になり、トラメは再び狼の姿で疾走してゆく。それを見ながらフレンディはワンダフルに語り掛けた。「わたし、こむぎと一緒に走りたくてプリキュアになったんだ」
- ニャミーに「困ってる動物を助けてあげる為じゃなかったの?」と尋ねられ、「もちろんそれもあったけど、こむぎが心配で、だけどいくら頑張っても全然追いつけなかったから…だからプリキュアになって、同じ速さで同じ景色を見ながら走れてうれしかったんだ」とフレンディは答える。ワンダフルも「わたしも!フレンディと一緒に走れてうれしかったよ!すっごく楽しかった!」と返した。
- すると、その会話を聞いていたトラメも加わった。「おいらもだ…おいら、いつも山を走ってたんだ…仲間と一緒に走るのが、すっげぇ楽しかった!だから、こんな風に走って遊びたかったんだ、もう一度…仲間と一緒に!」草原に出て楽しげに走る一同を丘の上から眺めながら、ニコはその光景に感嘆する。「トラメが…狼がニコニコしてる」悟が後を続けた。「きっとフレンディに会えたから…いつも誰かの為に頑張ってる、自分が元気なくてもみんなの笑顔の為に…それがキュアフレンディだから」「そうだね…」
- 走り疲れ、大の字になって寝転がり、心地よい風に吹かれる一同。トラメが口を開いた。「なぁお前…おいら、前に言ったよな?」確かに自分は言った。初めて対峙した時、フレンディの『友達になろうよ!』という訴えに対し、『なれるわけねぇ!なりたくもねぇ!』と冷たく突っぱねたのだ。「今でも本当になりたいと思ってんのか?」後ろめたさを含んだその問いに対し、フレンディは微笑んだ。「もう友達になってるでしょ?一緒に遊んで楽しかったら、もう友達だよ!」
- 「そうかもな!」フレンディの言葉にトラメも思わず笑顔になった時、彼の髪飾りの宝玉の中の鬼火が消え、トラメの体は淡い光に包まれながら宙に浮き上がる。ニコには理由がわかっていた。「ニコダイヤを染め上げていた狼の怒りが、完全に消え去ったのです。本来の彼は、はるか昔に絶滅した身。つまり…」言い淀んだニコの言葉を、事もなげにトラメが引き継いだ。「お別れの時間が来たって事だ」
- 「そんな!」愕然となるフレンディに対し、体を震わせながらトラメは尋ねた。「なぁ、お前達がいつもガオガオーンにやってるしゅわしゅわ~って奴、あれを浴びたらどうなるんだ?」ワンダフルが「ガルガルした気持ちがなくなって、ニコニコになるんだよ!」と説明すると、彼は「いいな、それ!おいらにもやってくれよ。こう寒くっちゃ、ガルガルしちまいそうだ」と自ら浄化を願い出た。
- 「えっ、でも…」それをやったらおそらく、トラメは消滅してしまうだろう。躊躇するフレンディにトラメは言う。「『あなたの声を聞かせて』…おいらはさ、たくさん遊んで大っ嫌いだった人間とも友達になっちまって、もう思い残す事なんてねぇんだ」さばさばしたトラメの声には、もう恨みも憎しみも未練も感じられなかった。
- またも友達との別れに直面したフレンディの頬を涙が伝う。だが「フレンディ、ガオウ様の事頼むな」と言われたフレンディは涙を拭った。「わたしの夢は、世界中の動物と友達になる事だから!だから…任せて!"友達"の願いを叶えるべく、フレンディ達はエターナルキズナシャワーを放ち、トラメは嬉しそうな遠吠えを一声残して昇天していった。
- その後には狛犬の石像が残された。トラメの正体は、遠吠神社の狼を模した狛犬に魂が憑依したものだったのだ。「いろは、よかったね!トラメと友達になれたね!」とこむぎに話し掛けられた時、いろはは一瞬視線を逸らし、その肩はわずかに震えていたが、「そうだね!」と向き直った時は笑顔になっていた。それを見たこむぎはいろはに抱き着く。「くっついてぎゅ~っとしてたら元気になるから!だから一杯ぎゅ~!」
- まゆとユキもそれに倣い、いろはをハグする。悟もまゆに手招きされ、赤面しながらハグの輪に加わった。「あったかい…これザクロやガオウともしたいな。友達って悲しいや苦しいもあるけど、でも嬉しいや楽しいはその何倍もあるから。狼達とも友達になって、一杯楽しい事して、友達の輪を作りたい。力一杯ぎゅ~ってしたい!」いろはの力強い言葉に、皆もうなずく。そして後日、鏡石神社と遠吠神社を回ってお参りしたいろはは、フクやトラメとの別れを乗り越えて完全に立ち直っていた。遠くに離れても思い出は消えない。ずっとずっと友達なのだから…。
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