※本登場人物は、『わんだふるぷりきゅあ!』の第48話以降のネタバレそのものであるため、閲覧注意。
「……オレは、狼達と共に生きるつもりだった。だが、それは叶わなかった」
「賢く、誇り高く、仲間思いの狼達……しかし、そんな狼達を人間は忌み嫌い、住み処を奪い、"ガオウ"の命までも……!!」
「オレは怒りを抱えたまま、永い時を眠っていた。だが、目覚めてしまった」
「その時……声が聴こえたんだ……。」
「のうのうと栄えて生き続けている人間達への声が……!!」
「オレは許さない……。狼達の怒り……無念……全てを忘れ去り生きる人間達を!!」
「─────"ガオウ"に代わって、友の無念を晴らす!!!!」
概要
『わんだふるぷりきゅあ!』の登場人物であり、本作の一連の事件の真の黒幕。
スバル本人としての初登場は第41話での回想であり、更に本格的に活動し始めたのは第48話とかなり終盤に存在が判明した人物である。
元々は150年前の過去の人物だったが、現代のある嵐の夜に怨霊として目覚め、神社本殿に祀られていた惨たらしい血痕も生々しく根元から抉り取られた一本の「狼の牙」(御神体)を依り代に獣人(現在の「ガオウ」の姿)として復活した。
つまり、今までのガオウはスバルが狼の姿を借りていたに過ぎず、本物のガオウは現代に蘇っていなかった。
また、声優は大塚氏のままであり、声色もほぼ変わっていないことから、「ガオウ」としての声もスバル本人が出していた事がわかる(なお、本物のガオウの声は高橋伸也が担当している)。
年明けにアニマルタウンへ侵攻した際、ニコとの戦いで「ガオウ」としての仮面が割れたことで、プリキュア達にも"スバル"としての正体が発覚する。
スバルの日記とその真相
第41話にて、ガオウたちについて調べていた悟は、クラスメイトの一人・烏丸から自身の神社にあった古い文献を見せられる。
それは150年程前に書かれた日記だった。
「スバル(字幕でもそう表記されている)」と名乗る人物が1匹の狼と仲良くなり、交流する様子が記されていた。
(そして、このエピソードに感銘を受けた狐崎は、彼をモデルにした演劇のシナリオを制作した。)
日記の内容
「四月五日、遠吠山に野草をつみに行った帰り、狼に出会う。石が脚の上に落ちてきたらしく、怪我をしていた。薬草を貼って治療した後、水を汲みに川へ向かったが、戻った時にはもう狼はいなくなっていた。無事だといいが・・・。」
「七月九日、魚釣りをしている内に夜になり、迷ってしまった。途方に暮れている私の前に、あの時の狼が現れた。狼は、まるでついて来いと言うかの様に私の前を歩いた。その狼について行くと、私は知った道に出る事ができた。」
「九月二十五日、今日も私達は遠吠山の山頂で過ごした。彼の言葉はわからなくとも、その瞳や仕草で私を友人だと認めてくれているのが伝わる。共に風に吹かれるこの時が何よりも幸せだ。」
「十一月十日、今日も私達は遠吠山の頂上で過ごした。近頃は、仲間の狼も来るようになった。頭領と共に過ごす私を、仲間と認めてくれたのかも知れない。」
「しかし、平穏は、長くは続かなかった。運悪く村人と鉢合わせてしまった。」
「村人は『危険だ』『離れろ』と狼を追い払おうとした。」
「村に戻ると『もう遠吠山には近付くな』と言われてしまった。」
「全ての狼が危険なわけではないと繰り返したが、村人は聞く耳を持たなかった。狼と人間、共に生きていく道は無いのだろうか。彼は、私にとって、唯一無二の友なのだ。そう、私にとってガオウは・・・。」
真相
現在のアニマルタウンに相当する山村に住んでいたスバルは、遠吠山に野草を摘みに行った帰りに怪我をしている狼に出会い、治療するとその場を去った。
それから約3か月後、魚釣りに行った遠吠山で遭難しかけた時に助けた狼に再会する。その狼についていき、無事に帰ることができた。
これをきっかけに、スバルは遠吠山の狼達と仲良くなり、狼達からも仲間の一員として認められる。時に狼の頭領であったガオウとは唯一無二の親友と言えるほどの関係になっていた。
しかし、幸せは長く続かなかった。村人達は狼を敵視し対立するようになる。スバルは一貫して人間と狼の共存を訴え続けたが、村人達は聞き入れず狼達を殲滅してしまった。
スバルは狼達を助けられなかったことを悔やみ、人間に対して死後もなお収まることのない憎悪を抱くようになる。
容姿
人間時代(生前)
黒髪の短髪に黒い瞳の青年男性。
青い野良着を着ていた。
怨霊態(現代)
「ガオウ」に扮していた時の服をそのまま着用しており、瞳のハイライトがほぼなくなっている。
憎しみをたぎらせると「ガオウ」を思わせる青い長髪に変化して瞳も青く光り、目の下に狼の爪痕のような紋様が現れ、肌の血色がトラメやザクロと同様に悪くなる。
怪物態(現代)
ニコダイヤを自らに取り込んで怪物となった姿。
顔全体を覆う白い仮面を付けた巨大なオオカミの怪物となっている(仮面が耳すら覆っているのは「最早誰の言葉も聞く耳持たぬ!!」という意思の表れか…)。体毛は首回りが青白く、それ以外は黒に近いグレー。基本的に四足歩行だが、二足で立つことも可能。腰には青い腰帯を巻いている。錯乱状態になると素顔が露出し、上半分が人間、鼻から下はオオカミの吻の形状をしている。
人物像
本来の一人称は「オレ」(日記には表現の都合上「私」で表記していた)。
元々は心優しく、義理堅い性格。人間達から疎まれていたオオカミ達にも偏見を持たず友好的に接しており、駆逐されようとしていた彼等を身体を張って守ろうとする勇敢さも持つ。
しかし、力及ばずガオウの命を奪われ、オオカミ達も殲滅されてしまったことに酷く悔恨し、オオカミを滅ぼした人間達に強い憎しみを抱くようになる。現代では人間とオオカミの事件とは無関係なニコガーデンを蹂躙する等、目的のためには手段を選ばない復讐鬼と化している。
また、ガオウの最期が自分を庇って銃弾に斃れるというものであった事から、ガオウを守れなかった自分をも憎悪の対象に含んでいるため、心変わりし始めたザクロから「こんな事をしてもガオウ様は幸せになれない」と諫言されても「幸せなどいらない」と切り捨てている。
もっとも同胞達への思いやりの気持ちは残っており、命令を果たせなかったザクロに「すまない」と謝罪している。人間以外の動物への敵意は持っておらず、動物達から懐かれている。
スバルは部下であるザクロとトラメにも自分の正体を隠していたが、ザクロは最初から彼がスバルであることを気づいており、そのことをスバルに隠して気づいていない振りをしていた。
正体が発覚したあとは「スバル」と呼んでおり、プリキュア達には「惚れた相手を間違えるわけないだろ」と返した。
トラメは正体に気が付いていたのかは不明だが、回想シーンではガオウやザクロと共にスバルとは旧知の間であったことから、おそらく復活した時点で既に気づいていた可能性が高い。
劇中での行動とその結末
復活した彼は、狼を迫害した人物の末裔もいるかもわからないとはいえ、怨敵である人間達がニコニコと笑い合いながら暮らしている世界に憤り、復讐を決意。その復讐の手段は「ニコダイヤの力で人類を滅ぼし人間界をオオカミが生存していた時代の環境に創り変えること」そのために必要なニコダイヤを強奪するためにニコガーデンを襲撃し(どのような手段でニコガーデンにやってこれたのかは語られていない。強い怨念の力によって成し遂げたと解釈すべきだろうか。つまる所、スバルこそがニコガーデンに訪れた最初の人間(ホモ・サピエンス)ということになる。
そしてニコガーデンに訪れた後アニマル達をガルガルやガオガオーンと呼ばれる黒き獣に変え、人間達を襲わせていた。
■第48話
ニコの力を奪う目的で年明けのアニマルタウンへ侵攻した際、ニコと対峙し、彼女と交戦したことで仮面が割れ、プリキュア達に正体がばれた。
それでもニコの力を奪うことには成功し、さっそくアニマルタウンを草木が生い茂る環境へと変貌させる。
人間達は蔓に巻き取られて昏睡させられ、アニマルタウンは実質的に壊滅した。その後、鏡石の元へと向かう。
■第49話
ここにきて、ようやく彼の人物像や本当の目的が判明する。彼の真の目的は、ニコの力と鏡石の力を合わせて「本物のガオウを復活させること」であり、それを実行しようとするも何も起こらず動揺する。そこへニコから「あなたの願いは叶わぬものなのです…」や「これまで幾度もお伝えしましたが、一度終えた生命を蘇らせることはできないのです。鏡石にも…わたくしにも…」と死者蘇生は絶対にできない事実を告げられ、スバルは怒りのあまり鏡石を粉砕。そして自身の持つ宝玉に封じ込めていたニコダイヤを巨大化させて自分の身体に突き刺し、絶望と憎悪に身を焦がした巨大なオオカミの怪物に変貌した。
人間への強い憎しみと復讐心を剥き出して暴れ回るが、キュアワンダフルを攻撃して彼女を昏倒させると、その姿がガオウの最期と重なってしまいニコダイヤの力を暴走させてしまう。
元来、人間を怨んでいたがその中でももっとも怨んでいたのはガオウを守れなかった自分自身だったのだ。その結果、自分自身を苦しめるかのように能力を暴走させ続ける。
鏡石の力で再び戦士となった悟と大福の協力を得たプリキュア達が説得に向かった時には顔の上半分だけが人間、それ以外がオオカミという姿になっていた。昏睡時に意識の中でガオウに会ったワンダフルからガオウの気持ちを聞かされ涙を流す。そしてプリキュア・エターナルキズナシャワーで生前の姿に戻される。
気がつくと一匹の青い狼──────彼がずっと探し求めていた''ガオウ''が目の前に立っていた。
■第50話
ずっと会いたかったガオウが突然に現れて呆然としていたところ、かつてガオウを守れなかったことに後悔の涙を流すスバル。
しかし、「謝らなければいけないのは私の方だ」とガオウに言われ、その後に長い間苦しい思いをさせてしまったことを謝り返された。「そばにいたのに」
そう、彼はガルガルやガオガオーンの声を借りてスバルに訴えかけていたのだが届かなかったのだ。
ガオウはその後、「無念がないとは言えぬ。だが、私には怒りも憎しみもない。」そして…スバルが「我等オオカミ達にたくさんの幸せをくれたことなどを告げ、身勝手な人間は大勢いるが、お前のように我等オオカミ達に対して友と呼んでくれる、力を尽くしてくれる者もいる」と。
そうスバルに告げた。
スバル「…っ!!ガオウ──────」
だが、その時ニコダイヤを封じ込めていた宝玉に亀裂が入ってしまい、ガオウ、スバル二人の体が消えかける。
ああ、もうダメなのか…
そこをわんだふるぷりきゅあ!の4人のプリキュア、悟と大福、メエメエ、ニコが見かねて1人ずつ二人をハグ。それにより、消えかけていた体は戻り、少しの間だが時間の猶予が生まれた。抱きしめて、二人は交わし合う。
ガオウ「スバル…お前と会えて、良かった。大好きだ…!!」
スバル「ガオウ…オレも、大好きだ…!!」
「大好き」。この言葉こそ、幾星霜の時を経てやっと会えた
二人が本当に言いたかった言葉なのだろう。
ワオ──────ン!
仲間の遠吠え…そう、トラメ含めたオオカミの仲間達が迎えに来たのだ。
キュアワンダフル「みんな迎えに来てくれたんだ!ワンダフルだね!!」
ガオウ「わんだふる…?」
キュアワンダフル「うん!!大好きなみんなと、一緒で嬉しい!そういう気持ちを…わ、ん、だ、ふ、る、って言うんだよ!」
ガオウ「──────!!」
スバル「…ありがとう!!」
ガオウ「我等は、『わんだふる』だ。──────行こう」
スバル「ああ」
浄化された彼、スバルは友のガオウ、そしてその仲間達と一緒に緑あふれる森に駆け出していった…『わんだふる』という素敵な気持ちで。
キュアワンダフル「ばいばーい!またね──────!!」
ワオ──────ン!!
そう返事が返ってきたのであった。
かくして、彼らは永遠の世界へと姿を消した…。
余談
伏線
実は、第41話の前から各エピソードにおいて「現在に蘇ったガオウが本物(狼)ではなく、スバル(人間)が成り代わっていること」が割と早い段階から示唆されていた。
- 口が一切動かなかった。
- 動物に懐かれていた。
- 仲間であるトラメやザクロと異なり、名前が宝石由来ではない(そもそも彼らと種族が違うことへの伏線)。
- ハロウィンの時期にアニマルタウンに出向いた際、周囲からは「オオカミの仮装をした人間」と受け入れられていた。
- ガオウ(に化けたスバル)によってこむぎがガオガオーンになりかけた際、夢の中に現れたオオカミの遠吠えでこむぎは正気を取り戻した。
- つまり「こむぎを助けようとするオオカミ」の存在が明確に示唆されている
- ガオウは第29話で遠吠えを披露したが、この時にこむぎの夢の中に現れたオオカミとは違う遠吠えだった。
- ニコがガオウを能力で捜そうとした際、上手くいかなかった。
- ニコは「オオカミ」のガオウを捜していたので、「人間」だったガオウは判らなかった。
- 過去回想でスバルとガオウが佇んだ岩で、現在のガオウはスバルが座った位置にいた。
ラスボスを狼ではなく人間に設定したことについて、佐藤雅教監督は「ガオウを狼にすると、プリキュア=人間と仲良くなる流れは人間にとっての都合のいい展開に過ぎない」「人間とアニマルの絆がテーマなのだから、狼にもパートナーになる人間がいてほしかった」とその理由を語っている(アニメディア2025年3月号)。
鏡石に最初に願ったのは誰か?
劇中の昔話では鏡石誕生の逸話として「人間と話せるようになりたいと願った動物」が出てくる。昔話では、これが鏡石が叶えた最初の願いとされる。
視聴者の間では「狼のガオウが人間の友(スバル)と話せるようになりたいと願った」ということだと長らく思われていたのが、最終話ではガオウが喋ったことにスバルが驚いている描写がある。
その一方で、第49話では「スバルは狼の遠吠えを真似ることで狼たちから仲間と認められた」とザクロが語っている。
これらのことから、「人間のスバルが動物のガオウと話せるようになりたいと願った」が実際にあったことである可能性が高い。
第30話では動物だけでなく人間も鏡石の力を求めており、その力を独占しようと鏡石に動物たちが近づかないよう排除を進めた事がニコ様から語られている。しかし、現代に伝わる鏡石の昔話では人間は鏡石に一切介在していない。当時の人間たちが自分たちの罪を語るのを憚った結果、物語が歪められたのだと思われる。「人間のスバルが鏡石に願い、狼の言葉を習得し、二人は想いが通じるようになった」という事実も「狼のガオウが鏡石に願い、人間の言葉を習得し、二人は想いが通じるようになった」にすり替わってしまったのではないだろうか。
メタ的な視点で見るならば、狼のガオウが黒幕だと視聴者に思わせるためのミスリードでもあったのだろう。
名前について
日記の書面では「昴」と漢字表記されていたが、字幕やエンドクレジットではガオウたちに合わせるため、本タグ同様にカタカナで表記されている。また、名前はガオウとよく空を眺めていた設定から空に関する名前に定まった(出典:アニメージュ2025年2月号)。
ちなみに、『昴(スバル)』とは牡牛座プレアデス星団の星々を指す和名である。41話での演劇『狼王ウルフェン』におけるスバルをモチーフにした人物の名前が「プレアデス」であるのもこれに因む。
声優について
演じる大塚剛央氏は本作がプリキュアシリーズ初出演。
過去作の敵首領役はベテラン声優がキャスティングされることが多かったが、大塚氏は1992年生まれの(第29話時点で)31歳と本作のプリキュア声優とほぼ同世代であり(声優としての活動期間でみればメイン声優6名+敵幹部・怪物役3名の計9名全員と比べて後輩)、ふたりはプリキュアSplash☆Starの真の支配者ゴーヤーン役の森川智之氏(当時38歳)を抜いて歴代最年少、かつ初の平成生まれでの抜擢となった。
その他
- 地球人としての黒幕はノワール、ジョージ・クライに次いで3人目となるが、首領のみが人間で、それ以外が人外という敵組織の構成は本作が初となる。ただし、怨霊であることから、ノワールと同様に純粋な人間ではない。更に日本人がラスボスとなるのも初である。
- 「人の身でありながら友だった動物を種族ごと死に追いやった人間に復讐するために自ら畜生へと堕ちた」というスバルの生い立ちは、皮肉にも「大好きな人間を守るために動物から人間の姿に変身した」本作のプリキュア(こむぎとユキ)とは真逆の構図となっている。
- 一人称が「オレ」のラスボスは、『ハピネスチャージプリキュア!』に登場したレッド以来である。
- 彼の魂は狼達と同じ遠吠神社に封印されていたわけだが、一部の視聴者からは「スバルは狼を庇った異端者として、狼達共々殺されてしまったのではないか?」と考察されている(事実ガオウの死のきっかけでは明らかにスバルを狙って狙撃されていた)。
- 一方、何者かによって神社に隠されるような形でスバルの日記が保管されていた事から、表立っては言えなかったもののスバルに理解を示す者もいた、もしくは後に日記を読んでスバルに感銘を受けた者もいた事も示唆されており、最終話では悟が後者の説の可能性を推測として実際に述べている。
- 2021年の映画プリキュアも含めると理不尽に大切な者を喪った、大昔の人物の亡霊がその悲しみから暴走して、プリキュアと対峙した敵もいる。
関連タグ
わんだふるぷりきゅあ! わんだふるぷりきゅあ!の登場キャラクター一覧
昴(プリキュア):表記ゆれ
???:大切な人を失ったことが行動原理になった共通点がある。