生きているということは誰かに知ってもらって覚えていてもらうことだ。
ほんの少しでいい。誰かの人生を変えてあげればいい。
きっとそれだけで十分なんだ。
解説
10年間の旅の末、戦士アイゼン、僧侶ハイター、魔法使いフリーレンとともに魔王を倒した勇者。そして、愛した女性の運命を大きく変えた道標でもある。
魔王の討伐を最終目的にしていたが、冒険を楽しむことやささやかな人助けを目的としていたところもあり、今でも当時を知る老人などから慕われている。
彼の偉業を親から聞かされて育ったであろう世代も含め多くの人々が葬式に参列し涙し、エルフとして悠久の時を生きるフリーレンが『人間を知る旅』に出ることを決意するきっかけとなった。
大陸各地に彼を称える勇者像が建っており、彼女が当時を追想する目印となっている。
劇中の時間経過の表現は「勇者ヒンメルの死から〇〇年後」という表記になっており、物語の第一話で退場したにも拘らず、ストーリーが進むたびに彼の存在感が増していくという仕掛けになっているのも特徴である。
人物
泣きぼくろが特徴の美形ではあるが、それを台無しにするほどの極度のお調子者のナルシスト。
旅立ちの日にアイゼンと共に王様に対してタメ口を聞き、危うく不敬罪で処刑されかける等、いわゆる残念なイケメン。
旅の途中で何かしらの功績を打ち立てた村や町には「僕のイケメンぶりを後世に伝えるため」と自らの銅像を建てることを求めており、5回のリテイクをハイターに「早く終わった」と評されたり18時間もポーズを悩んだ末職人を怒らせたりと並々ならぬこだわりが窺い知れる。
頭は禿げ上がり背も縮み、豊かな白い髭を蓄えた老人となった50年後もナルシストぶりは変わらず、一人称も当時と同じ「僕」。
一方でかなりのお人好しでもあり困った者を放っておけず、その力を他者の為に振るう事を惜しまない、紛れもなく勇者の心を持った誰より優しい青年である。そのため行く先々で雑用のようなお願いであろうと快く引き受けていたことから魔王討伐の旅の足取りはかなりゆっくりしたものになったが、人々からもパーティメンバーからも慕われていた。
かつてその優しさと人としての理性的態度を尊重する姿勢が仇となり、フリーレンの忠告を無視してある村を襲った子供の姿の魔族を見逃した結果、更なる惨事に発展するという苦い経験をしているが、最終的にはフリーレンの言葉を理解して躊躇なく一刀に切り捨てた。それ以来、人間のルールが通用しない残虐な魔族に対しては一切の躊躇を見せなくなった。
このようなことから近寄り難い雰囲気の勇者ではなく、寧ろ一般人のものでも親近感を感じる勇者だった(そう言ったところもひっくるめて本物の勇者と言える)。彼やハイターの語る言葉は普通の日常に生きる者達にも通じる一種の知恵袋のようなものであることから、読者側でもヒンメルの言葉から学んだ方もいるかもしれない。
経歴
孤児院出身(幼少期は母親がいた為、誕生時から過ごしたわけではない)
16歳、魔王討伐の旅に出立
26歳、10年越しで目的を果たし、勇者としての名を世界に知らしめる
76歳、50年ぶりにかつての仲間達と共に、半世紀流星-エーラりゅうせい-と呼ばれる流星群を見に行く、という待ち望んでいた『最後の冒険』を終え、老衰により間もなく死去(誕生日によっては満年齢は異なる可能性はあるが、ここでは捨象する)。
戦闘力
劇中では主に回想シーンで圧倒的な強さを語られる。
幼少期の頃からその片鱗を見せており、ナイフくらいのサイズの刃物で自身より大きな魔物を退治した事もあった。
実は伝説の剣に選ばれなかった人間だが単純な実力で魔王討伐へと持ち込んだという。実際レプリカの伝説の剣を振るったら(ヒンメルは魔法使いでないので、剣圧だけで)森の木々がまとめて斬り裂かれたというシーンもある。
奇跡のグラオザームとの戦いでは魔法で幻を見せられている状況で目を閉じ意識を幻に閉ざされた状況でグラオザーム(と隠れて支援を行うソリテール)を圧倒した。
更に、七崩賢のベーゼの結界に一撃で傷跡をつけたことがある。ベーゼの結界は人類の力では破壊できないとされ、当時のフリーレンですら匙を投げたレベルの代物なのでヒンメルが最も人間離れしている描写とも言えるだろう。
老齢になっても現役だったらしく危険な魔物や魔族が多く生息する大陸北部を横断していた。
その高い戦闘力は魔族からも恐れられていたらしく、断頭台のアウラ等の魔族の残党が活動を再開したのは彼の死後になってからの事であった。
フリーレンとの関係
言動の端々から、密かに片想いしていた――あるいは真に愛していた――らしき描写が見られた。村の子供が彼女のスカートを捲くった際には「クソガキ」「ぶっ殺してやる」とおよそ勇者に相応しくない言動と共に「僕だって見たかった」と下心をぶち撒ける(ここまで激昂したシーンはこれが唯一)、彼女の投げキッスに瞬殺される(この効力に、当のフリーレンは非常に高い悩殺力を持つ技と誤認したまま現在に至る)等々。
殊に、討伐の労いとして彼女に指輪を買い与えた際は、跪いて左手薬指に填めるという求婚の儀式に則った演出をしており、フリーレンが無作為に選んだ指輪にデザインされた鏡蓮華が「久遠の愛情」を花言葉に持つことも知っていた節がある(故郷の好きな花を見せたいと彼女に語ったこともあり、植物にそこそこ関心を持つタイプであったことも以前に示唆されている)。
ある時は前述のようにフリーレンから魔族の恐ろしさを教わり、ある時はフリーレンがアウラの率いる死者の軍勢を容赦なく魔法で破壊したことに関して叱って人間にとって大切な心の機微を教えるなど、互いに大切なことを教え合う関係でもあった。
原作118話でかなわないと諦めた夢を実現する幻を見る魔法をかけられた際にフリーレンとの結婚式の夢を見ていたことから、彼女への想いが確定。しかし、長命である彼女との間に横たわる諸々の事情を慮ってか、その想いを明確に言葉にして伝えることは生涯無かった。
未練はあったようで、銅像を各地に建てさせていた理由の一つには「フリーレンをまた独りにさせないため」というのもある。
実は幼少期、迷子になった時にフリーレンに助けられたことがあるらしい(彼女自身もそのことを本人から打ち明けられた直後に思い出している)。
出会った直後の彼女の魔法使いの実力について、ハイターが彼女の魔力制限を見抜いたのに対し、ヒンメル自身も見抜けはしなかったものの、フリーレンが今まで出会ってきた魔法使いの誰よりも強いと直感していた。
なお、ハイターとは同じ孤児院にいた幼馴染でもある。
余談
- ヒンメルはフリーレンにとっては、漠然としながらも永遠の偶像であるとともに、読者、特にRPG好きなゲーマーにとっては、最も身近に、あるある感を演出しているキャラクターでもある。「複雑なダンジョンほど攻略に燃える」「ダンジョンは全部の宝を探さないと気が済まない」「くだらないイベントほど心に残る」などは完全にRPG好きの心理を衝いている発言と言えるだろう。
- ボイス担当の岡本信彦はとある動画にてアニメ化前にヒンメルを演じていたが、同時にフォル爺を演じていた浪川大輔の演技にくわれていた。後に左記のことがあった約半年後にオーディションがあったことも語った。