概要
魔王直属の幹部「七崩賢」の一人。《服従させる魔法(アゼリューゼ)》の使い手。
500年以上生きた大魔族で、その年月の全てを費やした鍛錬によって強大な魔力を得た魔族の有力者。
かつて勇者ヒンメル一行に敗れた後は身を隠していたが、ヒンメルの死後に活動を再開する。
魔法
- 《服従させる魔法(アゼリューゼ)》
「服従の天秤」という天秤に自身と対象の魂を乗せて互いの魔力を測り、魔力が大きい方が相手を半永久的に操れるようにする魔法。
魔力の「重さ」は最大値ではなく現在値が参照されるため、対象の魔力を消耗させてから使うことで確実性を高められる。
詳しくは個別記事を参照。
劇中での動向
約80年前に北側諸国・グラナト領に侵攻した際、勇者ヒンメル一行を迎え撃つも操っていた配下の大半を失い撤退。この闘いでヒンメルによって斬りつけられ肩を負傷するが、同時に魔力を大きく減退させてしまう。その治癒(と魔力の回復)にはなんと約50年を要し、偶然か必然かヒンメルの死と同時期まで完全に力が戻らなかった形になる。
勇者ヒンメルの死後、かつての屈辱を払拭するべくグラナト領に再び侵攻。
街を覆う防護結界を内部から解除させて一気に攻め落とすべく、3人の配下「首切り役人」を和睦の使者と称して送り込むが、街を訪れていたフリーレン達によって彼らを全滅させられてしまう。
自らもフリーレンと対峙し、不死の軍勢をぶつけて魔力の消耗を図るなど万全を期したつもりが、フリーレンの極めて高度な魔力量偽装を見抜けず、絶対的な魔力差に気づけぬまま「服従させる魔法」を使用したことで逆に自身が支配されてしまう。
最期は敗北を受け入れられないままフリーレンに自害を命じられ、悔し涙を流しつつ首に自らの剣の刃を当て、これまで手に掛けてきた相手と同じように自らも「断頭台」の露と消えた。
…ありえない… この私が…
直属の配下『首切り役人』
CV:諏訪部順一
画像中央の男性。
CV:石見舞菜香
画像右の少女。
CV:大鈴功起
画像左の男性。
読者からの評価
クヴァール以来の名前付きの敵役、それも作中では初めて登場した魔王軍の幹部であることから、強敵としての活躍が期待されていたものの、ヒンメルを恐れて彼の死後まで身を隠していたという経緯、その仲間であるフリーレンに自信満々に戦いを挑むもあっさり返り討ちに遭い、泣きながら自害させられるという惨めな最期を遂げたことから、実力面での評価は低くみられがち。
加えて原作では話が進むにつれ、同じ七崩賢でも強キャラとしての格を遺憾なく発揮しているマハトや、死してなお株を上げ続けるクヴァールと比較し、アウラは南の勇者との戦いで一人逃亡した疑惑をかけられるなど、公式からも若干小物扱いされているフシが窺える。
反面、その惨めさ加減からネタキャラとしては結構な人気がある。
自分より格下と思いイキリ散らすが、実はその相手は力を抑え込んでいた格上であり力の差に恐怖するという某汚い花火を連想させる分かりやす過ぎる引き立て役であった事や、アウラの見た目や性格から典型的なメスガキのわからせ的な需要があったのも大きい。
アニメ版ではその惨めさを美しさに昇華せんとばかりにやたらと気合の入った作画で最期が描かれた。
アウラから見た地面に首の落ちる視点が追加されたり細かく歪む表情と髪を切り落としてから少しづつ剣が首に食い込む描写は一見の価値があり、「…美しい これ以上の芸術作品は存在し得ないでしょう」と思わず洩らしてしまう視聴者もちらほら見られた。
なお、本作の中目プロデューサーによると、該当シーンは絵コンテ・演出の刈谷氏が傘で首を切る芝居をし、それを原画担当のもああん氏が撮影して参考に描かれたとのこと。またアニメ放映後、公式より該当シーンの作監修正原画も公開されている。アニメスタッフの思い入れと熱意がこれでもかと感じられるシーンであり、プロデューサーのその他の制作裏話等も併せて(ある意味では)アウラファン必見かもしれない。
その人気ぶりは破格のもので、公式の人気投票では2022年9月~10月に連載100回とアニメ化決定を記念して実施された第一回人気投票では10位、アニメの放送がひとまず終了した2024年3月に実施された第二回人気投票ではまさかの2位を獲得している。誰が言ったか、断頭台ならぬ「表彰台のアウラ」である。
なお、第二回人気投票は多重投票が自由なWebクリック投票だが、併せて発表された一人一票での集計結果でも7位を獲得する強さを見せた。
また、その人気ぶりからか、キャラクターグッズも新旧のフリーレンのパーティーメンバーと併せて製品化されるほどである(一例)
公式のスピンオフ作品であり前日譚を描く5編を収録した小説短編集『小説 葬送のフリーレン~前奏~』でもフリーレン、フェルン、シュタルク、ラヴィーネ&カンネと並んで最後の一人にアウラが登場。まさかの外伝主役である。
アウラ編となる『放浪する天秤』では、勇者ヒンメル一行との闘いに始まり、その後の逃亡生活と再起に至るまでの姿が描かれた。魔族側からその思考や価値観、人類との異質さがうかがい知れるのは勿論の事、魔王軍幹部から見た「勇者」の姿も見どころとなっている。
- 実力に対するフォロー
まず、作劇的観点からのアウラの敗北は、フェルンとシュタルクの成長ぶり、そしてフリーレンが秘めていた力量を露わにするという展開を描くための都合によるところが大きいだろう。
前述通り、その惨めな負け方がネット大喜利の格好の題材となって(ある種の歪んだ)人気を獲得したアウラだが、ではそもそも「彼女が身の程知らずの小物だったのか?」と言われるとそんなことは全くない。
魔王軍七大幹部の一角たる彼女の名誉のためにフォローするなら、500年以上を生きた魔族だけあって彼女の力は人智を超えたものであることに疑いはなく、一見臆病と取られてしまう行動も、裏を返せば障害を極力排除してから事にあたろうとする周到さの表れと言えよう(そもそもそういった臆病と取られる行動は作中でもアウラの専売特許というわけではない)。
ヒンメルの死まで潜伏していたという行動も、視方を変えればヒンメルの剣技をもってしてもアウラを仕留めきれずに逃亡を許し、その決着を後世に託すしかなかったということであり、その経緯はクヴァールと何ら変わるものではない。相手の寿命が尽きるまで数十年以上逃げ続けるというのは、人間よりも遥かに長い寿命を持つ魔族からすれば特徴をフル活用した実に合理的なやり方なので尚更である。ここからも、魔族としては異質なアウラの慎重さが垣間見られると言えるだろう。
本来であれば彼女の能力は非常に性質が悪く、交戦すれば確実に兵力を削られる上に、人間側の兵士はアウラの戦力として利用されてしまう。指揮官クラスを支配下におけば軍隊としての指揮能力は喪失し、歴戦の勇士を支配下に置けばその場で暴れまわらせて敵陣を混乱させる事すら可能であると思われる。更に仮に不死の軍団を解呪出来たとしても、戻ってくるのは首無し死体だけで戦力を取り戻せるわけでも無い。
また、アウラ自身も単独での行動を選びがちな魔族には珍しく、部下を3名従えて連携を取らせているほか、不死の軍団を使えば多方面の作戦を展開できる可能性もあり、人間たちからすれば殊更厄介である。アウラと対峙したフリーレンは「魔力比べに持ち込まず、不死の軍勢による消耗戦を徹底されていたら危なかった」と述べており、一歩間違えればフリーレンですら敗れていた可能性もあったかも知れない。かつてヒンメルのおかげで一時的に撃退できたとはいえ、魔王の死後も28年間にわたって北側諸国を苦しめ続け、フリーレンが偶然居合わせなければアウラの計略でさらに酷い事態になっていた公算が高かったことを見ても、アウラを無知な三下扱いするのは実態からかけ離れた理解と言える。
以上の点を鑑みれば、七崩賢の名を冠するだけの実力は十分に備えており、フリーレン自身も彼女のことを大魔族と呼んで認めていることからも他の七崩賢と比べても劣るわけでは無い。
実際、得意とする魔法とフリーレンという相手との相性が悪すぎただけで、魔力偽装込みでも服従させる魔法を逆手にとれるほどの強力な魔法使いは作中でほとんどいない。魔獣や魔族との戦いで何度も活躍しているフェルンでさえ、《服従させる魔法》を使用されれば敗北していただろう。
「魔力のより大きい者が上に立つ」という魔族の矜持から《服従させる魔法》を決め手に選んだがために、『天敵』の前に惨めに敗れ去るという印象的な末路を辿ったが故に侮られがちではあるが、彼女が恐るべき魔族であったことには違いない。クヴァールと同じように、早い段階で倒せられれば幸運なはずの敵なのである。
また、作中でフリーレンは「自身の魔力が本来のそれよりも低く見えるように"常に"偽装している」ということは度々語られるのだが、彼女の言によればそもそも制限された魔力の揺らぎを観測する事自体が極めて高度な能力である。アウラは魔力を制限していたというフリーレンに「制限特有の不安定さも僅かなぶれもなかったはず」と述べており、フリーレンを驚かせている。隠密時など必要な時しか魔力を制限しない一般的な魔族たちはおろか、作中でも僅かな人物しか気づく事が出来ない巧妙な偽装を、それが普通になる程に長年続けてきたフリーレンの研鑽は魔族でなくても常識外れであり、やはり相性が悪かったとしか言いようがないのである。後の一級魔法使い試験編でも語られるように、魔法使い同士の相性はジャンケンのようなものであり、フリーレンに対する敗北をもってアウラの強さが揺らぐものではない。ゼンゼのコピーがユーベルに瞬殺されたからといって、どちらがより優れた魔法使いであるかの証左にはならないのと同じである。
つまりアウラが弱いのではない。魔力制限に欺かれた事を差し引いても、勇士達の遺体を傷つけずに戦うという縛りがあった上で勝利したフリーレンが規格外すぎたのだ。
外部出演
『モンスターストライク』
激・獣神祭×葬送のフリーレンコラボ期間限定の降臨モンスターとして登場。
難易度は超究極…ではなくまさかの究極(恐らく超・獣神祭×地獄楽コラボの際に降臨した同ポジションの牡丹があまりにも簡単であったため、難易度表記を下げたものと思われる)。
ただし、スペックは超究極級で、しっかり超アビを貰っている。
ストライクショット「服従させる魔法〈アゼリューゼ〉」は変わった仕様になっており、敵と味方のHPを参照して低い方に防御ダウンを与えるというもの。つまり、自分のHPが敵のHPより低かったら自分に防御ダウンを与えるという少し可哀想な原作再現仕様になっている。
このSS仕様や難易度が究極であることから若干ネタ的な扱いを受けている(元々と言えばそうだが……)。
余談だが、機動戦士ガンダムSEED FREEDOMコラボのアウラ&グルヴェイグ&レクイエム降臨時はXの仕様で「究極アウラ」の部分がトレンドになっており、図らずとも予知していたような結果となった。
関連イラスト
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余談
この余談には別作品のネタバレを含みます。
アニメにおいてアウラが自害した回と同じ週に放映されたアニメ『「進撃の巨人」 The Final Season完結編』においてエレン・イェーガーとジーク・イェーガーが首を斬られて死亡しており、特に前者はそれぞれの中の人が夫婦ということも相まって、「今週は夫婦揃って首を斬られた」と話題になった。
その少し前には、アニメ『呪術廻戦』にて枷場美々子が斬首されているため、このようなイラストもある。
ちなみに、同じ週の日曜日に放送されていたどうする家康では、関ヶ原の戦いの回で石田三成と小西行長が斬首されたというタイムリーな話もあり、アウラと重なったと話題になった。