「そうか。では敵討ちといこうかのう」
「〝人を殺す魔法(ゾルトラーク)〟」
概要
CV:安元洋貴
「腐敗の賢老」の異名を持つ魔族。魔族にしては珍しく容姿が人間離れしている。
名前の由来はドイツ語で「苦悶」を意味する"Qual"。
魔王軍有数の魔法使いで、1000年以上生きたフリーレンが自身よりも格上と称した魔法使い。
フリーレンは過去「自分より魔力が低い相手に11回負けた」としているが、その内の1回の相手がこのクヴァールである。
人間を殺すために威力の高さ、魔法耐性の無効化、速度に優れた史上初の貫通魔法「人を殺す魔法(ゾルトラーク)」を編み出し、多くの魔法使いや冒険者を葬り去って来た実力者。
彼が暴れた地方では当時冒険者の四割、魔法使いに至っては七割がこの魔法の手にかかったという。
卓越した戦闘力の持ち主だったヒンメルですらも当時は倒しきれず封印という形での対処に留めざるを得なかった程である。
その後、80年以上経った作中にて遂に封印が緩んで復活の兆しを見せ始め、その事態を見越して訪れてきたフリーレンと再度対峙する事になる。
だが彼の主力であった「人を殺す魔法」は、彼が封印されてからの数十年で人間にも使えるように改良され、それに対抗するための防御魔法も生み出されて「一般攻撃魔法」となってしまった。
皮肉にもあまりに優れた危険性・有用性から、積極的に解析と研究が行われて人類の魔法体系に組み込まれてしまったのである。
その事実を知っても至極冷静で、防御魔法の仕組みを即座に解析して(アニメ版では自身で再現して見せた)「魔力の消耗が激しい」という弱点を導き出し、消耗を誘うべく猛攻撃を加え始める。
しかし魔法の速射を得意とするフェルンとフリーレンの連携に気づかず、速射力を駆使して防御を一手に担うフェルンへの攻撃に夢中になっている隙を突かれ、フリーレンが更に独自に改良発展させた「魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)」の一撃で葬り去られた。
評価
80年という、魔族にとっては短いが人間にとっては十分に長いその時間の中で自身の編み出した魔法を解析されて瞬く間に一般化させられてしまったことに加え、勝機を見出したことから生じた少なからぬ油断を突かれてあっさりと倒されてしまうこととなった。
とはいえ、自ら作り出した魔法で多くの人間を葬り去って来たその実力に加え、短絡的かつ精神的にもろい部分の目立つ本作の魔族の中では、異例な程に高い胆力と学習能力に柔軟性も持ち合わせた真の天才だった事は間違いない。
あっさり倒されたとはいえ、かつて実力者と言われたという設定に恥じないほどのオーラは持ち得ており、この手のキャラにありがちな噛ませ犬的な情けなさも皆無である。
実際、序盤に倒されて以降も物語が続く中、その成長性と柔軟性はいまだに危険視されており、読者からは「あの時点で倒せて本当に良かった」と死後も株が上がり続けている(それに付随して読者からは、敬意と畏怖の念を込めて「クヴァールさん」と呼ばれていたりする)。
アニメ版ではいくつか描写が追加されており、フリーレン達が訪れた時にはすでに封印にほころびが出ていたようである。また戦闘中にフリーレンが飛行魔法を使用している事に感心している(作中では人類が飛行魔法を扱えるようになってから40年も経っていない為)。
フェルンも彼の猛攻を防ぐのに苦労しており、攻撃が続いていれば防御魔法も突破されていた可能性は高い。
というよりも防御魔法を1枚破壊した瞬間にクヴァールは「破壊できる」というイメージを得たのか飽和攻撃ではなく高出力の攻撃に切り替えている。
それによりフェルンは防御魔法の広範囲展開をする羽目になり、あのままでは防御魔法を完全に破られて殺されるか魔力切れになったところを殺されるかのどちらかだった。
その前にフリーレンの攻撃で勝利したが戦闘が終わった際にフェルンが膝をついているので、散々対策をして二人で挑んだにも拘らず紙一重の勝利だったことがうかがえる。
これを見るに自分の魔法を研究し尽くされた現代でも、並の魔法使い程度が相手なら遅れをとることは無かったであろうと思われる。
作中で二級魔法使い(魔法使いは五級で一人前とされる)であるエーレはフェルンのゾルトラークの飽和攻撃を防御魔法で捌ききれずに敗北しているので、仮にエーレがクヴァールと戦っても勝つことができなかっただろう。
また奇しくもフェルンの戦法である「ゾルトラークの大量発射による飽和攻撃」は防御魔法の弱点を理解したクヴァールが即座にその対策として行ったものであり、封印されていた80年の差に一瞬で追いつくクヴァールの天才たる所以がここにも見える。
七崩賢最強と称された黄金郷のマハトとは友人関係だった。
また、封印が解けてフリーレンと再会した際に真っ先に魔王の安否を問いかけており、魔族の中でも社交性・社会性が高い方だったことがうかがえる。
魔族全体から見ても知名度や功績は確かなものだったらしく大魔族のソリテールは「偉大なる腐敗の賢老」と呼んでいる。
余談
上記のように今現在「一般攻撃魔法」扱いされている魔法は彼が編み出した「人を殺す魔法」である。
そのため、逆に言えば彼が封印されていなければ人間達は「人を殺す魔法」を研究する十分な時間を取ることができず、人間は魔族や魔物との戦いで大きな活躍をしている「一般攻撃魔法」や「防御魔法」を使うことができなかったおそれすらある。
そうなれば当然「一般攻撃魔法」の発展改良型である「魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)」すらも無いということになるため、彼の存在は人間に対して良い意味でも悪い意味でも、作中随一と言っても過言ではないレベルで大きな影響を与えたと言えるだろう。
また、1000年前の魔族ですら基本的に人間に近い姿であるにも拘らず、クヴァールは人間離れした姿をしていることから、彼は魔族の中でもかなり高齢である可能性が高いと考察するファンも多い(魔族が人の姿をしているのは人を欺くための進化の結果であるという設定を根拠としている。また、『腐敗の賢老』の異名もこの説の有力性に拍車をかけている)。