「人は誰もが己の知識や認識に頼り、縛られて生きている。それを現実という名で呼んでな。だが知識や認識とは曖昧なモノだ。その現実は幻かもしれない。 人は皆、思い込みの中で生きている。そうは考えられないか?」
うちは一族抹殺事件
うちは一族抹殺事件(他称もあり)はうちはイタチがうちは一族を、弟のうちはサスケを除いて皆殺しにした事件のことである。
事件に至るまで
イタチは暗部に所属しており、その暗部での秘密の任務を理由に一族の集会を欠席することや、一族を「己の器を制約する愚かしきもの」とする言動などから一族から疑惑の目を向けられていた。そしてイタチを監視していたうちはシスイ殺害の容疑をかけられていた。見つかったうちはシスイの両眼が何者かに抜き取られていた事から、イタチが力を得るためにうちはシスイを殺したのではないかとされていた。
事件の夜
イタチは父と母を含むうちは一族の者を全員殺害したが弟であるサスケだけは殺さずに、万華鏡写輪眼開眼の秘密(最も親しい友を殺すこと)を告げ、「そしていつかオレと同じ“眼”を持って、オレの前に来い」と復讐の念を抱かせた。
真相
イタチがうちは一族を抹殺したのは木ノ葉から命ぜられた任務であり、木ノ葉の里の平和、世界の平和のための苦渋の選択の末だった。
イタチの真実は極秘扱いであり、これを知るのは現在木の葉上層部の三代目火影・猿飛ヒルゼン、志村ダンゾウ、相談役の水戸門ホムラとうたたねコハルの四人に加え、トビ、トビによって真実が語られたサスケ、ナルト、カカシ、ヤマトにカブト(カブトについてはどのように知ったのかは不明)のみである。
一族抹殺の任務が命ぜられた背景
千手とうちは一族の確執
80年以上昔の戦乱の世、千手とうちは一族は互いに戦闘一族として名を馳せていた。だが、長い争いの中で疲弊していき、うちは一族と千手は休戦をする。そして領土の平定を望んでいた火の国との協定を結び木ノ葉隠れの里が誕生した。そして、里長である初代火影には千手の長である千手柱間が選ばれた。一方、うちは一族の長であるうちはマダラはそれに対して千手によりうちはが抹殺されるとの危機感を抱いており、里を出て他の場所で暮らすよう一族に呼びかけた。しかし、戦いに疲れたうちは一族の中で付いてくる者はなく、一人里を出て木ノ葉隠れの里に戦いを挑み、終末の谷で千手柱間と戦うも敗れた。
二代目火影である柱間の弟・千手扉間は信頼の証という名目でうちはに木ノ葉警務部隊という特別な役職を与えるが、これはうちは一族を里の政治から遠ざけ、なおかつ一族をひとまとめに監視下に置くためのものだった。
さらに、十六年前に起きた九尾の妖孤襲来によりうちは一族は里の中で隔離されていく。九尾を操ることができるのはうちはの瞳力だけであり、里はこの事件を主権を狙ったうちは一族の者の仕業とし、一族を里の片隅へと追いやり暗部による厳重な監視をつけた。こうした様々な確執が積み重なった結果、うちは一族はクーデターを計画した。
そして、うちはシスイの両眼の無い遺体が発見された時、ついに事件に開幕の狼煙が上がる。
うちはイタチの動向
事件までの行動
イタチは暗部に入り込んだ一族のスパイであったが、木の葉がうちは一族の動向を内偵するためのスパイ(二重スパイ)でもあった。そしてイタチは木ノ葉上層部よりうちは一族抹殺の命を受ける。
イタチはうちはのクーデターが実行されれば木の葉の里が戦火に燃えるのは避けられない事、そうなれば何も知らない幼い弟までもが一族の罪を負う事になるのを深く懸念し、悩み抜いた末に一族抹殺を実行したのだった。
里抜け後の行動
一族を殺した犯罪者として汚名を背負ったまま里を出奔し抜け忍となることも任務のうちであり、これはサスケに自分や木ノ葉の里や一族の闇とは関係なく平穏に暮らして欲しいためだった。イタチはダンゾウを含む里の上層部からサスケを守ってやって欲しいと三代目火影に嘆願し、ダンゾウには「サスケに手を出せば里の情報全てを非同盟国に暴露する」と脅しをかけ里を抜けた。
その後暁に入り込み、世界にとって危険な組織をその内部から見張っていた。
イタチが木ノ葉に姿を現したのはサスケを守ると約束していた三代目火影が死に、しかし依然として「自分は健在だ」とダンゾウを含む里の上層部に改めて釘を刺す意を示すものだった。
二部での兄弟対決の目的は、サスケを追いこみ大蛇丸の呪印から解放すること、サスケに自身を殺させることでうちは一族の敵を討った木ノ葉の英雄にサスケを仕立て上げること、万華鏡写輪眼をサスケに開眼させることなど。病に蝕まれ死期を悟っていたが、サスケの前で死ぬために薬で無理に延命していた。
己の真実を知る可能性のあるトビを、サスケに注ぎこんだ瞳力で口を封じようとした。
事件を取り巻く人々の思惑
うちはイタチについて
イタチは4歳の時に第三次忍界大戦を経験しており、そのトラウマから争いを好まず平和を愛するようになった。うちは一族ほどの忍が内戦を起こせば火の国も木ノ葉隠れの里も大きく揺らぎ、第四次忍界大戦の引き金にもなりかねない事態になる。そのためイタチは木ノ葉の里の平和のため、忍の世の為に任務を受けることを選択した。
イタチがサスケを殺さなかったことについて
トビの「弟だけは殺せなかった」や、ダンゾウの「やはりお前だけは特別だったようだ」などの発言からイタチがサスケを殺さなかったのはイタチ自身の提案であると考えられていたが、うちは一族と里の衝突が避けられない時期に、今なら何も知らない弟だけは助けられる道があるとダンゾウから提案されていたことが判明した。
うちはシスイについて
シスイについてイタチは万華鏡写輪眼を得るため自らが殺害したと語っていたが、実際はシスイも里の安寧を願う忍であり、自身の万華鏡写輪眼である別天神による洗脳でうちは一族のクーデターを止めるために動こうとしたタイミングで、彼を信用していないダンゾウと衝突し片目を奪われてしまい、もう一方の眼を「里を守るために使え」とイタチに託し命を絶った。
(彼とダンゾウとの戦いはイタチ真伝、イタチ真伝アニメ版、ゲームソフト『ナルティメットストームレボリューション』に収録されているスペシャルアニメで描かれているがどれも内容が違う。)
志村ダンゾウについて
シスイのことを信用していなかったため、別天神を宿す写輪眼を奪った。
暗部に所属していたイタチは一族の動向をダンゾウに報告していた。しかし彼自身、最後まで一族と木の葉のどちらのスパイだったのかは分からなかった様だ。
ダンゾウはイタチに「うちは一族につき、家族と共に弟も含めて全滅するか」「里側につき一族全滅に協力する代わりに弟だけは生かすか」の二択を迫り、イタチは後者を選択した。
この決断を含めてダンゾウは非常に高くイタチを評価しており、イタチがそうまでした生かしたサスケが里に仇なす復讐者と化した時には「お前の唯一の失敗」と嫌悪感を顕にしている。
ちなみにサスケの憎しみを煽り立てた多数の写輪眼を宿した腕だが、「色々とあってな…話すと長い」とだけ本編では語られたが、外伝『七代目火影と緋色の花つ月』で全身にクローン写輪眼を埋め込んだうちはシンの右腕が大蛇丸から提供されたものだと判明した
後に明らかになったこと
事件の夜の真実
穢土転生で蘇ったイタチは、幻術を通じてサスケに過去の出来事を伝えた。
父・フガクと母・ミコトはどの程度までかは分からないが、イタチが里側についたことを知っていた(あるいは予見していた)ようで、イタチに「考え方は違ってもお前を誇りに思う…お前は本当に優しい子だ」「サスケの事は頼んだぞ」と言い残し、イタチの手にかかって死んだ。
サスケの写輪眼について
その後サスケ以外の一族が皆殺しにされ、サスケはイタチの瞳力により気絶させられたかと思われていたが、その際に写輪眼を開眼して抵抗していたことが判明した。
未熟な実力と巴文様が一つの不完全な写輪眼ではイタチを止めることは叶わなかったものの、イタチの額当てを弾き飛ばしている。
初期のイタチのイメージであった、額当てをバンダナ風にやや横向きに巻いている姿は、外れた額当てを付け直したときのもの。
またこの時、サスケはイタチの涙を見ている。初期に呟いていた「あの時…泣いてた…」という台詞の真相がそれである。この涙が、サスケが全ての真相へ近づく鍵となる。
アニメ『イタチ真伝』で判明したさらなる真実
アニメ『イタチ真伝』で父・フガクは長として一族の怒りを鎮めようと苦心していたことが判明した。しかし、一族と里との間にある確執と因縁の溝は根深く、もはや衝突を避ける道は残されておらずやがて双方に血が流れる事になってしまうと判断したため、わだかまりの決壊を出来る限り穏便なものに誘導できるクーデターという形で実現することを決意した。フガクが考えたクーデターの内容は、誰も血を流すこと無く、無傷で木の葉の上層部を捕縛し、革命を成功させる事。いわゆる、無血革命であった。フガクも忍界大戦中に万華鏡写輪眼を開眼しており、自分とイタチの2人でならそれが成し得ると考えた。
実際フガクは「兇眼フガク」という異名で他里から恐れられるほどであり、その実力はマダラにも迫るとすら評されるほどだったという。そのフガクとイタチが組んでクーデターを起こしたなら、当時の火影であるヒルゼンの性格も含めて考えると無血革命自体は(ダンゾウ等の不穏分子は残りはすれど)成功していた公算が高い。
しかし、イタチが考える未来は違っていた。情勢の不安定な当時にクーデターなど起こしたなら、その成否を問わず混乱が発生し、それは他里からの侵略を許す隙になりかねない。それゆえイタチはうちは一族を一度リセットし、全ての未来をサスケに託す意志を示した。その意志を尊重したフガクは「俺の子と殺し合いはしたくない」「サスケの事は頼んだぞ」と言い残し、ミコトと共に息を引き取った。
また、同時刻イタチの恋人であったうちはイズミがオビト扮するマダラと戦闘を行なっていたが、勝ち目はなく、最後は心中でイタチに助けを求めながら殺害されている。
小説版では事を始める前にイタチ自身がイズミと接触しており、彼女に月読をかけ「イタチに告白され、その後結婚、子宝にも恵まれ、最期には孫たちに囲まれながら老衰で息を引き取る」という幸せな生涯を一瞬で追体験し、夢の中の死と同時に月読の精神ダメージにより死去する
イタチの死後
一族の未来はサスケに託されイタチの死より15年後、「一族」と呼ぶにはささやかなものではあるが、サスケは自らの家族を作り上げたのであった(これからのうちは一族は一子相伝で繁栄することになった模様)。