概要
口寄せの術に分類されるため「口寄せ・穢土転生」と表示されている。
生贄をつかって死者を現世に蘇生させ、術者の思い通りに操ることができる一種の降霊術であり、その意味では口寄せの術よりも本来の口寄せに近い側面を持つ。
作中ではナルトによって「エドテン」とも略されている。
穢土転生と似た立ち位置にある術として加藤ダンが使用した霊化の術がある。
穢土転生の解説
この術の最大の特徴として、最小効率で最大効果を発揮する非常に高い有用性が挙げられる。
コストが低い反面、汎用性が高く、術者の力量やアイディアによって幅広い戦術を取る事ができるという、非常に高いメリットがある。
死者蘇生系の忍術は作品世界においても他にいくつかあるが、そのどれもが術者の死を引き換えにする非常に重い代償を払うもの。
しかし、穢土転生においてはその様なリスクは存在せず、何よりも血筋や体質が使用する忍術に大きく作用する作品世界の忍術において、「血統に左右されずにコストを払えば誰でも使用できる」という点もこの術の有用性に輪をかけている。
ちなみに、扉間が開発した忍術は血筋に左右されずにコストと手順が分かれば誰でも使用できる傾向があり、この術もまさにその系統に当たる。
第四次忍界大戦においては、うちはマダラ勢力がこの術を使用する事で大戦の序盤を優位に進めており、結果的に戦争終盤で忍連合勢力が使用した事によって戦況を盛り返しており、戦争においては戦局を左右する事ができるほどの強力な忍術となっている。
これらの事から、ファンからは冗談混じりに忍界大戦のメインウェポンとまで呼ばれる事がある。
蘇生の条件
蘇生させるには対象の人間が持つ一定量の個人情報物質(DNA、苦無にこびり付いた血液でも充分量)と、死者の魂を留めるために生け贄とする生きた人間が必要。
生け贄は故人と近い体格の人間が望ましいとされるが、生け贄の肉体が五体不満足等、損傷・欠損していても特に問題は無い。
ただし、『疾風伝』では素体の状態による能力の低下が見られた。
一方、口寄せされる魂が浄土(あの世)にない者は穢土転生することができない。
よって屍鬼封尽で命を落とした者を蘇らせることはできない(使用後、術者の魂も封印されるため屍鬼封尽を解除する必要がある)。
また本編で薬師カブトが語っているように、個人情報物質の捜索とは要は死体探しであり、墓などに入れられている場合は腐乱し対象人物のものなのかの選別が難しく、失敗作をいくつも作ったと語っている。
疾風伝では実際に捜索時の回想と、失敗作とされた大勢の忍を主戦力奪還のために口寄せする様子が見られた。
更に深海に遺体が沈んだ自来也、遺体がどこにも見つからなかったうちはシスイ、遺体が跡形も残らなかった干柿鬼鮫等の個人情報物質が手に入らない人物に関しては穢土転生の余地がなく、ペイン六道の武器や志村ダンゾウの右目にその可能性を示唆した際にはトビによって釘を刺されている(別人が呼び出される可能性がある為)。
蘇生の瞬間、生け贄の体の周りを塵芥が覆い、マスクや服・額当てなどある程度の装備(体内に隠していた忍具も含む)を再現した生前そのものの姿を模るが
一部の時点では穢土転生体には目立った外見的特徴は見受けられなかったが、二部においては白目が黒ずみ、場合によっては体の各所に罅が見られるようになった。
操作
死者の頭に札を埋め込むことにより、術者の命令に従わせることが可能。
埋め込む札の種類により蘇らせた死者への拘束力は上下し、遠隔操作で書き換えることもできる。拘束力が強ければ死者自身の自我を奪うことができ、操ることが容易になる。
術者は蘇生された者の動向をある程度把握・操作することができ、蘇生された者に更なる穢土転生を使わせることもできる。
また穢土転生はたとえ術者が死んでも解けることがなく、死者たちは現世に残ったままになる。
扉間が開発した時点での穢土転生の使用用途は兵として戦わせるのではなく、蘇らせた敵を操る事で敵軍の情報を聞きだし、そのまま互乗起爆札(起爆札が起爆札を口寄せし長時間爆破し続ける特別製の札)を仕込んで敵本陣に送り込み味方の帰還を喜び向かい入れた敵諸共爆破し、かつ術の情報が流れたとしても敵陣に疑心暗鬼の状況を作り出す、というのが主な使い道だった(しかも起爆札に関しては術の一部として組み込んでいた模様)。
本編で一般的な「兵として戦わせる」使い道になったのは大蛇丸による穢土転生の改良が施されたからであるが、これにより戦闘力を上げるためには精度を上げる必要があるが、精度を上げると自我を持たれ拘束を解除される可能性が高まるというジレンマを生み出してしまっている。
そのため扉間の術は精度では落ちるものの、運用方法的にはむしろ後世で更に高まる欠点を最初から補完していた使い方であったと言える。
死者の能力
生前の能力や体質全てを再現するため、血継限界や秘伝忍術を含めた個人技能も使用できるが、死の決定的要因を受ける前の姿で蘇生されるため、肉体の傷などの欠損はある程度消える。
ただし、基本的に全盛期ほどの力は出せないためチャクラ量以外(後述)の各種能力は生前より少々劣るほか、基本的に肉体は先述の状態で復元されるため、老化や衰弱などといった長期的な肉体の劣化については復元されずにそのまま再現されてしまう。
また、仕込み義手などの肉体にとっての異物は死者の一部と見做されずに除外される。
他に特殊な例では、死亡時35歳だったサソリは自身を人傀儡へ置換した時点で肉体的には死亡したと見做されたのか15歳当時の生身の身体になっており、角都は他者の心臓が異物として見做されたのか生前の能力を取り戻すには新しい心臓を取り込む必要があった。
老化や衰弱の例で言うと、長門は六道の術を使用した当時の状態で復活している。
また、長門については、本来輪廻眼は長門のものではないが、年月が経っていたため異物扱いされなかったものと思われ、穢土転生された時にも生前と変わりなく使用していた一方で、木の葉崩しで使用した死体が存在しなかったために、六道の術を使った時には一人で直接修羅道、地獄道、畜生道を扱っていた。
ただし、仕込み義手などの特殊な忍具などの武装はともかく、特殊な調整をすれば任意の時点での蘇生も可能であり、カブトはうちはマダラを復活させた際に全盛期の肉体に柱間細胞を仕込んで蘇生している。
不死身
蘇生された死者の身体を傷つけても出血などはなく、罅が入る程度で術の効力によりすぐに修復してしまう(イタチの天照使用による出血は例外)。
木端微塵に吹き飛ばされるなど通常なら即死に至る致命傷を受けても、塵芥が戻る事で自動的に修復される。
ただし毒物を使用されると、一時的に行動が不能になるなど、全ての攻撃手段が効かないと言うわけではない。
また、生前の肉体との最大の違いが、無尽蔵のチャクラを使用できるという点である。
この点に関しては詳細は不明だが、穢土転生された死者は基本的にチャクラ切れで忍術が使えないという状況に陥る事はほぼないという事になる。
また、この特性ゆえに普通なら味方を巻き込むために使えない大規模なMAP攻撃を躊躇なく行うこともでき、うちはマダラが「天蓋震星」で巨大な隕石を口寄せした際には「これが穢土転生の本来の使い方だ」と述べている。
対抗策
穢土転生を止めるには、術者本人が『子・丑・申・寅・辰・亥』の印で「解」をして術を解除するしか術がない。
(ちなみに作中ではカブトが偽マダラに解術の印を問われた際、『戌、午、寅』という嘘を教えていた)
考えられる対抗策は屍鬼封尽等の魂の封印術や、体を動かせなくする封印術。
もしくは術者が死者の自我を残して操っている場合に限り、未練を解消させるなど死者の精神面にはたらきかけることで魂の縛りを解き、再び成仏させることができる場合もある。
魂が肉体から離れる形で無力化された穢土転生体は塵が体から剥がれ落ち、生贄となった者の遺体が残る。
ただし、忍術(忍宗)の祖である六道仙人だけは、術者でなくとも解術することが出来る。
なお一般人が使える方法ではないが、六道の陰陽遁で攻撃する方法もある。
陰陽遁は全ての忍術を無にする作用があるため「忍術でこの世に留まっている死者」の穢土転生には天敵となり、攻撃で損傷を受けるとその部分のみ穢土転生が解けてしまい再生不能に陥り、クリーンヒットすれば術自体が無効化されて穢土転生が維持できず、この世に留まれなくなる。
欠点
使用者であるカブトは当初「術者に対する反動などのリスクはない、この術のリスクがあるとすれば君に話してしまっている事がリスクさ」と語っていた。
しかし実は「口寄せされた死者が造反する可能性がある」と言う極めて危険なリスクが存在する。
口寄せされた死者が造反した場合、「毒物以外の傷は全て回復する」「チャクラが尽きることがない」「死者であるために死なない」というアドバンテージがそのまま残るため「不死身の忍が無限のスタミナを持って、自らの意思で暴れ回る」という最悪の事態を引き起こす。
特にこのリスクは死者が反逆の意思を持っているうえで以下の三つの状況のどれかの条件を満たしている場合が多く、いずれの場合にしても術者本人の手に負えない事態に陥る為、非常に警戒しなければいけないリスクである。
1.「口寄せされた死者が解除の印を知っていた場合、死者の側から口寄せ契約を解除することができる」
作中、穢土転生のリスクとして最も危険で、かつ最大最悪のリスクとして取り上げられたのが、これである。
これは術者による解除と異なり口寄せ契約のみを切るものであり、器から魂が乖離しかけていても再度定着する。
作中ではマダラが実践し、「不用意に使うべきではない」と評していた(ただし、マダラが何故そのリスクを知っていたかは不明)。
本来口寄せはお互いの合意の上で行うもの(ナルトが習得当時おたまじゃくしなどを呼んでしまっていたのは「この程度のチャクラで呼び出されたくない」と口寄せされる側が拒絶していたため)であるため一方的に契約した以上、一方的に契約を切られても何も不思議なことはないのである。
2.「死者の力が術者の力を上回っている場合、完全に制御下に置く事が出来ない」
これに該当するのは千手柱間、千手扉間、そして可能性は否定出来ないがマダラも該当していると思われる。
また、作中では千手兄弟やマダラほどではなくとも、雨隠れの里の里長であった半蔵が毒によって自分の動きを制限したり、実力のある忍者ほど精神力によって支配に抵抗する姿があった事から、術者と口寄せされた死者との間の実力差に開きがあればあるほど、制御下に置く事が難しいと思われる。
そのため柱間と扉間の兄弟は最初は人格を縛られた状態で口寄せされ、二度目では柱間が大蛇丸(というよりサスケ)の意思を尊重したことや里をマダラの脅威から護るという利害が一致したため、実力に開きこそあったもののそもそも反逆の意思を見せることなく終わっている。
(ただし柱間は六道仙人由来の上質なチャクラを持っているため、厳密には「術者がどんなに強固な制御を行っても、簡単に破ってしまう」と表現するのが適切である)。
3.「穢土転生の強制力を上回る幻術で命令用の札を上書きされると制御不能になる」
作中では、イタチが口寄せ烏の1匹に仕込んだうちはシスイの万華鏡写輪眼の「別天神」により制御を抜けた。
このリスクは、上記二点のリスクとは違い、あくまでも幻術で命令札が上書きされただけなので、術者が札を取り替えなおせば再び無効化出来るが、チャクラによって術者と口寄せされた死者が繋がっている為に、術者の居所が造反した死者にバレてしまうと言うリスクも併発する。
ただし別天神の方も命令であることに変わりはなく、イタチが自分の意思で自由に動けたのは過去に仕込んだ命令が本来サスケに用いる筈だった「木ノ葉を守れ」という内容で、たまたま自分にとって都合のいいものであったためであることも考慮する必要がある。
以上の様に、死者造反のリスクが発覚した事から、大蛇丸やカブトの穢土転生は扉間版の上位互換とは言えず、どちらかと言うと出力と安定性のトレードオフという関係性となる。
扉間<大蛇丸<カブトの順で死者の能力が上がるが、死者を完全に制御できる扉間版とは違い、他2つは造反のリスクが発生している。
また、厳密には蘇生している訳ではないため、生体である事が条件となる人柱力にはなれない。
そのためマダラは十尾の人柱力となるために他者の行使する外道・輪廻天生の術を自らにかけさせることで不死性を捨て血の通った肉体で現世に完全復活することに固執していた。
同様の理由で、八門遁甲の陣や屍鬼封尽、輪廻天生の術など、命を犠牲にする技なども使えない。
また、疾風伝でのアニメオリジナル外伝では、ある特殊な血筋の者の目には「骸骨」のように映る(或いはそういうイメージを抱かせる)という特徴が新たに描写されたことから、限定的とは言えどれだけ外見的特徴を隠して普通の人間のように振舞っても、判る人には見破られてしまうということがわかる。
同時に、核となる生贄部分が細胞分裂限界による崩壊を起こした場合も、器が維持できなくなるため結果的に術が解けてしまうことが判明した。
この時点ではオリジナルストーリーで穢土転生の術のテスト段階であり、未完成であったための可能性もある。
この術に対する評価
上記にある様にデメリットはあれども非常に強力な術ではあるが、作中の登場人物の殆どはこの生命倫理に悖る術に対して存在そのものを否定するレベルで批判している。
二代目土影である無(ムウ)が、この術を指して「二代目火影の卑劣な術だ」と称している様に、「生者を犠牲にして死者を傀儡として蘇らせる」と言う人道的に完全にアウトな術の上、主人公であるナルトは「戦いたくない者同士を無理やり戦わせる術」として非難している。
こう言うものには割とテンションが上がってそうな白ゼツにさえ呆れられている描写もある
挙句には、この術を悪用して木の葉の里を急襲した大蛇丸ですらも、二代目火影と対面した際には「この術は作るべきではなかった」と非難している。
戦争時には、味方が帰ってきたと思ったら、その味方が自分の意思に反して攻撃やスパイや政治的な行動を行ったり、場合によっては突然爆発するという状況なのだから、敵からしたら非常に恐ろしいと言える。
口寄せされた死者側からも好き勝手に操られる事は面白い物ではなく、身体の自由が利かなくなるたびに「卑劣な術」「気に食わない」と使用者共々口汚く罵られる。
一方で、この術に嫌悪感を示しそうな柱間からの評価は「あまり良い術ではない」程度であり、扉間がこの術を開発した際に苦言を呈しながらも、それでも実戦投入を強行したあたり、千手兄弟が健在だった時期から考えると第一次忍界大戦における戦力差の逆転を狙った策だった可能性が高い。
また、穢土転生は、敵への威嚇効果という意味では尾獣玉と似た位置にあり、大局的に見れば無益な殺生を減らす効果もあったはずである。味方の人材の喪失を防ぐだけでなく、味方を鼓舞する効果も多大だったと思われる。(特にあの扉間の事なので戦争において「ルール無用な戦いを続けるならこれからもこの術を使い続ける、ルールを決めるならこの術を禁術指定して封印することになっても従うがそちらにもいくつか禁術指定を強いる。どうする?」と脅しをかけた可能性を考察されている)
さらに、穢土転生には、死後の世界を証明するという意味で全ての生き物の心に希望や救いを与える余地がある。
実際、第四次忍界大戦で何度も描かれたが、穢土転生のおかげで救われた魂がいるのも事実であり、死者との会話で心が救われたり、和解できたり、成仏できる場合が見られた。
とくに、うちはイタチや四代目風影など、穢土転生の効能を認めるキャラクターも複数見られた。
- この意味では、「死者と交流して希望をもたらす」という本来の意味での「口寄せ」に皮肉ながら近くなっている。
口寄せされた死者たち
※・・・大蛇丸の口寄せ
五影の前任者
火影
土影
水影
雷影
風影
暁
人柱力の前任者
血継限界
忍刀七人衆
音の四人衆
その他忍達
また大蛇丸から続く墓泥棒によって得られたのは当然目当ての強い忍びばかりではなくソックリさんや間違えて採取した者たちも含まれておりアニメでは一気に転生させていた
余談
術名の由来は不明だが、仏教用語の「穢土」+映画『魔界転生』だと思われる。
扉間の活用方法は奇しくもデイダラが転生時に使っていた方法だったりする。
関連タグ
千手扉間 大蛇丸 薬師カブト トビ(NARUTO) うちはマダラ
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