CV江口拓也
概要
白蓮寺家の次期当主。23歳
物語冒頭では許嫁同士だった白蓮寺菜々緒を可愛がっていたが、彼女が猩猩に攫われ傷を付けられたことを知ると突如態度を一変させて「猿臭い」と罵り、縁談を破棄する。
その後、正妻となった白蓮寺暁美とともに菜々緒に対して暴力を振るうなど虐待をしている。
人物
菜々緒の元許嫁で、彼女が15歳になったら婚姻を結ぶ予定であった。(物語冒頭では19歳。現在23歳)
現在は暁美と婚姻を結んでおり、一人娘である白蓮寺琴美がいる。
見かけは優男風の美青年で、物腰穏やかで名前に相応しい気品のある佇まい。
しかしその本性は、白蓮寺家の因習に染まりきって男尊女卑の思想が強く身勝手な人物であり、差別意識も高い。
猩猩に攫われた菜々緒を救出に行った際、恐怖と助けられた安堵から泣いて抱きついてきた菜々緒の額に妖印(傷)が付けられたと発覚するや、傷モノの穢れがうつると突き飛ばした挙句、自分の鼻をつまみ「猿臭い」、「傷モノなんかと婚約はできないから破談にさせてもらう」と菜々緒に嫌悪感をむき出しにして婚約破棄した。
暁美を正妻にした理由も「顔や性格は好みではなかったが料理が美味かったから(しかもその料理すら暁美が作ったものですらなく、菜々緒に代わりに作らせていたものにすぎなかった)」という散々な理由。
こき下ろしているが暁美は里で評判の美女であり(里では菜々緒より異性から好かれていたほど)、菜々緒に勝てないとはいえ霊力も高く、実家も里の要職についており、菜々緒の代理で立てた婚約者候補としては(暁美の犯した大罪を除けば)上々なのにこの言い分である。
紅椿家と異なり、正妻と側室を用意する必要性が無い家系にもかかわらず、菜々緒との婚約を確定すると同時に婚約者候補から落ちた暁美を側室に迎えたいとい打診したり、菜々緒を紅椿家に嫁がせる親族会議で暁美が目の前にいるのに「菜々緒を側室に迎えたい」と発言する等、優男風の容姿に反した好色が後に破滅をもたらしていく。
また夫として、娘の父親としてもいい加減な所があり、暁美が空しい結婚生活のストレスから女中や菜々緒のイジメや琴美の養育を殆どしていないという家庭生活が危機的状況に陥っても暁美と離縁して菜々緒を後妻として迎えるという方法で対処しようとするなど、自分が夫や父親として家庭生活をうまく回そうという努力も皆無。
ようするに自分本位な思考回路でしか考えられず、五家の次期当主として冷静な判断や行動がとれない上、自分の求愛を女性が(ましてや元婚約者が)断るわけがないというナルシスト。
いわゆる女の敵といえる人間性をしている人物で、暁美とは似た者夫婦と言える。
紅椿夜行とは、同世代の当主と次期当主という立場で交流をしていた。
しかし夜行の来訪時、菜々緒が暁美の情けで屋敷で働かせていたのにもかかわらず娘の琴美を嫉妬で襲ったという暁美の話を鵜吞みにし、夫婦で菜々緒に暴力を振るっていた現場を見られたことで彼から制止された上に軽蔑されてしまう。
菜々緒は妖蟲に襲われていた琴美を庇っていただけで、暁美が麗人に言った言葉は菜々緒が自分に対しての復讐で琴美を襲ったのだと思い込みをしただけである。
また、夜行に弁明をした際に彼から琴美に妖蟲に襲われてできた傷があると指摘され、上述の通り目先のことでしか考えていないと非難された。
夜行が菜々緒を娶ることを申し出ると、白蓮寺一族での会合で「紅椿家の立場が自分たちよりも上がってしまう」という理由で反対をする。
なお麗人本人は、正当な理由を付け「側室」として菜々緒を傍に置かせようと目論んだが、傷モノの菜々緒を側室にして猩々の穢れた血が本家に混じるなど論外と全員から一蹴されるが・・・・
だがそれは表向きで、前述の件にて菜々緒に折檻していた際に偶然、猿面が外れた菜々緒の美しい素顔に見とれ、再び彼女に惚れ込んでしまったおり再度菜々緒への恋慕が再燃していた。
しかも離縁の目的は一族や娘を守るためではなく、菜々緒と再婚したいという自分本位なものだった。
娘の琴美の母親である暁美と離縁し、里で傷モノと激しい差別を受けた菜々緒を後妻に迎え、優しい菜々緒に琴美を養育してもらって自分は菜々緒と肉体関係を持ち、菜々緒の美味しい手料理を食べたいという、傍目に見て絶対にうまくいかない家庭生活を実現させようと暗躍。
麗人が菜々緒の美貌に魅入られているのを、懸念した本家の親族たちにより、菜々緒を遠方に嫁に出してしまうべきと、却って満場一致で菜々緒と夜行の婚姻が決定されてしまった。
会議には暁美も出席しており、側室の提案を発言した麗人に怒りを露わにしている。
元々、自分の婚約者だった菜々緒が夜行の妻になることに嫉妬し、自分が問答無用で菜々緒を破談にした挙句、暁美と一緒に日常的に暴力を振るって虐待していたのを棚に上げて、「夜行が無理やり菜々緒を連れ去った」と思い込むようになる。
ご隠居から傷モノの菜々緒が五家序列一位の紅椿家と結婚できた理由を聞かされたことで、ご隠居の予想に反した極めて菜々緒に配慮された良縁だったにもかかわらず、菜々緒が既婚者となった自分への恋心を隠して泣く泣く嫁いでいったと思い込みさらに暴走していく。
両親の当主夫妻や祖父のご隠居からは菜々緒の美貌に執着していると指摘されるも、頑なに下心ではなく今も自分は菜々緒を愛していると自分に酔った言動で菜々緒に急接近していく。
暴走から破滅へ(ネタバレ注意)
皇都の病院で菜々緒と再会した際には、彼女に嫌悪感を向ける暁美と対照的に暁美の暴言から菜々緒を庇って態度を一変させる。
しかし異様とも思える眼差しで見つめており、さらに菜々緒が夜行に吸血されていることを確かめようといきなり彼女の着物をはだけさせるという乱暴を働き、菜々緒の悲鳴を聞いて駆けつけた夜行から憎悪を向けられる。だが....
「この簪。かつて私が許嫁の菜々緒に贈ったものでしてね。」
「確か・・・そう菜々緒が十四の誕生日の時だ」
「これを大事に持っていたということは、菜々緒はまだ私を想っていてくれるのだな紅椿夜行に嫁いだ今も」
そう恍惚に酔った笑みで菜々緒にその笑顔を向け恋慕を語る。
自分が贈った簪を菜々緒が持っていたことからまだ自分を想っていると思い込み、自身に憎悪を向けている夜行に対して「あなたが言える立場なのか?」と問いかけるとマウントをとり始める。
とはいえ簪の件は麗人の本性を知っている夜行ですら麗人から贈られた簪を大切に持っているので、菜々緒が今も元婚約者の彼を愛しているのではないかと誤解し、暁美からも婚約破棄されたのに正妻の自分すら貰ったことのない簪を大事に持っているのが妬ましく腹立たしいと敵視されるほど、傍目に見ると麗人の妄想ではなく菜々緒にも麗人への好意がまだあるのではと思われるほどだった。
(簪のせいで傷モノになったり実家に絶縁されたり、麗人から婚約破棄されたりと散々な目に遭っているので、普通の感性なら元凶の簪を見たくもないだろうと作中でも描かれている。)
菜々緒が簪を手放そうとしなかった理由が分かりにくいこともあり、以降は簪を理由に麗人は菜々緒が自分を愛していると主張してしまう。
そんな中、暁美が「娘の琴美を乳母に任せっきりで自分で世話をしようとしない」、「女中たちに当たっていた」、「今まで作られていた料理は菜々緒が作ったもので自分の手柄にしていた(実際の暁美の料理は壊滅的)」、夫の実家の金で豪遊三昧など数々の悪行を重ねていたことが判明。
正妻の仕事を何一つせず、唯一産んだ琴美が女児かつ霊力が低いのもあって次期当主の子を産む役割も母親の役割もこなせないと完全に愛想を尽かされる。
ダメ押しが全身を妖蟲にかじられた琴美の傷の治療の件で、里の医療では一生傷痕が残るかもしれないと帝都の最新治療を受けさせに夫婦と初孫を可愛がる母(暁美の姑)で来たものの、全身の傷という赤ん坊の琴美に負担の強い治療を頑張っている中、娘に付き添いすらせず偶然会った菜々緒に暴言を浴びせ続ける暁美に嫌悪感が高まったとみられる。
里に帰ると上記の罪状を告げ、暁美を正妻から降ろすと通告。
(夜行が「離縁されそう」と発言していること、漫画版で暁美自身「離縁されたら実家に絶縁される」「出戻り(離縁されたら)になったらどうしよう」といった発言があること、正妻を側室に降ろすメリットがないことから離縁して暁美を本家から追い出して実家に帰し、琴美の親権も取り上げると考えられる)
邪魔な正妻の暁美を排除できたため、菜々緒を連れ戻して正妻にさせたい思いにますます傾倒していくことになる。
だが、傷モノに強い嫌悪感を持つ白蓮寺家では、菜々緒を後妻にすることは認められなかった。
側室にすることすら(菜々緒が妊娠したら)猩々の血が混じって本家の血が穢れると忌避されていたため、当主やご隠居からは「傷モノの菜々緒を正妻にしたくない」、「紅椿家を敵に回したくない」などと猛反発をされ、咎められる。
当主である父親から、菜々緒に長年付けさせていた猿面には麗人が菜々緒を忌み嫌うよう呪術が施されていたことが明かされ、彼らに失望して一切の忠告を聞き入れず無視する。
一応はこの猿面も呪術目的だけでなく、菜々緒の額の妖印(傷)から漏れ出る猩々の妖気を抑える、美少女の菜々緒が美しく育って里の男(麗人を含む)たちが菜々緒に惚れたりしないよう、作中で菜々緒が異常なほど里の人間たちから毎日暴力を振るわれていた原因が明かされる。
菜々緒が里の男と肉体関係を持って、猩々の血が混じった霊力の高い子が生まれないよう、また尋常でない里の差別に耐え兼ねて菜々緒が自ら命を絶つよう追い込む意図もあった可能性がある。
他家に嫁いだ白蓮寺家の女性たちを使って、他家の情報を掴んでおり、次期当主としては一応暗躍はしていた模様。
暁美が悪天候が迫る中で、紅椿家の方向に歩いていたのを間者の女性から報告され、冷静な表情ながら暁美の凶行を悟った様な雰囲気を纏っていた。
そして、暁美が収監されると陰陽寮を訪れていた菜々緒を、呪符によって惑わせてひと気のない部屋に拉致し、彼女を追いつめて愛情を告白する。
菜々緒に対して今までの所業は猿面にかけられていた呪術のせいだと弁明をするが彼女からは猿面を着ける前から「猿臭い」と罵っていたこと、また自分に惚れ直しているのは化粧で傷を隠し薬を飲んで妖印の匂いを消しているからだと指摘され、当然のごとく、拒絶されてしまう。
菜々緒が自分の唇を噛んで出血してみせると、嫌悪感剥き出しの表情で慌てて離れる(漫画版だと服で顔や口を覆って血液からの感染を防ぐような仕草までしている)という醜態を見せた。
最終的に上述の論破でぐうの音も出なくなると「猿臭いし穢れているのに正妻にしてやるのに、何が不満なんだ」と逆ギレ。
菜々緒の血液を恐れるのに、菜々緒とどうやって肉体関係を持ち、妊娠させたとして菜々緒の血がついて生まれてくる子を抱くつもりだったのだろうか。
傷モノの血に触れたら穢れるという価値観が根強い白蓮寺一族が菜々緒と結婚させられないとあれだけ拒絶した理由すら、麗人は子供がいるのに分からなかったのである…。
菜々緒からは全てを暁美のせいにして自分とよりを戻そうとする姿勢に対し、「一人の娘(暁美)の人生をもらい受けておきながら、大切にしようとすらしなかった貴方に嫌悪感しか感じない」とこれ以上ないほど明確に拒絶されれている。
里で一番良い結婚をしたはずの暁美が常にストレスで苛立ち、正妻で子もいるのに全く幸せそうに見えなかった暁美の様子から、彼女だけが全部悪いとは思えなかったのかもしれない…。
業を煮やした麗人は、菜々緒を押し倒して何をするかと思いきや、菜々緒にとってのトラウマである猿面を彼女に被せ、家系の呪術を使い4年間あった虐待を受けた仕打ちに関する記憶を消すという強硬手段を取り、菜々緒に強制的に面を付けて呪術を使い消そうと強行する。
だが夜行との出会いを通じ、暁美さえもいい負かすほど精神が逞しくなった菜々緒から暗示を唱えるのに夢中になっている所をその隙に持っていた簪で腕を突き刺されるという反撃に遭う。
そして菜々緒の危機を察知した夜行から殴られ、夜行に「何度菜々緒を傷付ければ気が済む」と彼の本気の殺気に怯えるが、「自分の方がいい、菜々緒は簪を持っているのは自分をまだ好きだからだ」と負け惜しみを唱えるが、それを聞いた菜々緒はクズな態度に激怒。
猿臭いと言い放ち、暁美と共に自分を虐げたのにもかかわらず、図々しく卑しいと指摘。
持っていた簪を投げつけられ呆然とする中、菜々緒からは「菜々緒(私の)の人生に若様(貴方は)は要らない」ときっぱりと決別を言い渡され、打ちのめされるがまま夜行と前鬼に連行されて独房に収監された。
その後、清人と隠居の身であった間人までもが、紅椿本邸の外で土下座をする事態へと発展し、白蓮寺家を除いた陰陽五家での会議で女性を使って情報を掴んでいたなどの余罪が出たことで一族もろとも断罪されることになる。
結果、陰陽五家から陰陽後八家の末席(陰陽一族の中では最下位)に降格することになった。
間者として密通していた多くの女性は離縁され、里に出戻っている。
自身は保釈金を支払われたことから釈放されて里に戻ったが、行き過ぎた行動で起こした罪によって新しく陰陽五家に昇格した藤堂家によって厳重に監視される羽目となった。
妻である暁美と同じく紅椿家の当主の花嫁に手を出そうとしたという罪は大きく、白蓮寺家の没落及び解体を招いてしまった。
(漫画版では、屋敷に連れ戻されても罪を認めずに菜々緒を連れ戻そうとしていたが咎めた清人と揉み合いの末に負傷させたり、錯乱状態となって火をつけてボヤ騒ぎを起こしたりと一家共々散々な末路を送っている。)
彼もまた白蓮寺家の因習に染まりきってしまった被害者でもあることを忘れてはならない…。
余談
- ボイスコミックでの中の人がイケボが定評な声優であったため製作者陣は罵る台詞を猛烈に期待していた模様。