概要
オーストラリアの原住民アボリジニが使用した事で有名な投擲用の道具で、「く」の字型やプロペラのような形状をしている事が多い。
日本で広く認知されている「ブーメラン」と呼ばれる物は、大きく分けると相手に打撃を与える「武器」とスポーツ用の「玩具」の2種類がある。
武器としてのブーメランは、「カイリー」「キラースティック」「スローイングスティック」等とも呼ばれるらしい。
また、「ブーメランパンツ」に見られるように「く」の字型のブーメランを思わせる形状の物に「ブーメラン」の名前が冠される事もある。
アボリジニがよく用いたことで有名なブーメランだが、弓矢の登場・普及によって廃れる前は投擲武器として世界各地にあったようで古代の壁画などで描かれている。地理上の関係で孤立がちだったオーストラリアは弓矢が伝わらず(あるいは何らかの理由で早期に失われてしまい)、そのため他のほとんどの地域で廃れたブーメランが独自の発展を遂げ続けた。
ブーメランは一般的に「投げると戻ってくる武器」と言われるが、武器としてのブーメランは投げた後は戻ってこない。
理由は単純に「投げた武器が戻ってきて自分に当たると痛いじゃすまないから」である。相手にぶつけたブーメランをキャッチする映像もあるが、(おそらくは)ぶつかって跳ね返ってきたところを手際良くキャッチしているだけである。
現在使用されている「投げると戻ってくるブーメラン」はスポーツ用の物が殆どであり、殺傷力は低い。ただし、物によってはキャッチに失敗して当たったりすると痛い。
戻ってこないブーメラン
距離の離れた目標を打撃するための投擲武器。「投げ棍棒」とでも言うべきもの。
飛び道具の類であり、狩猟に使用した。こちらはカイリーという名前のものであってブーメランとは別だという説もあるが、大体一緒くたにされている。
その多くが「く」の字型をしていて、「て」の字型のような左右非対称の物も多く見られる。
使い方としては一端を片手で掴んで振りかぶり、ブーメランに回転を付けながら投擲する。
投擲されたブーメランは回転しながら飛翔するが、この回転には回転のエネルギーによって命中時の威力が高まり、ブーメランのどの部分が命中しても十分な殺傷力を得られるという効果がある。
このため、武器としてのブーメランは同じ重さの棒を投げるよりもはるかに高い攻撃力と長い射程を持つ。
戻ってくるブーメラン
手元に戻ってくるブーメラン。
すばしっこい獲物、特に鳥などの周囲に飛ばして任意の場所に追い込むのが目的。鷹の鳴きまねも合わせたらしい。そして手近なところまで追い込んだところで、先述した戻ってこないブーメランを投げつけて仕留めるのである。
アボリジニのブーメランは形状を工夫することによって現代のブーメランのイメージを超える複雑な飛行を可能としていた。
現在の「投げると戻ってくるブーメラン」は観賞用を除けば多くがスポーツ用途の物である。プロペラ状の形をした物や左右対称形の物が多い。
投擲して手元に返ってくるのを楽しんだり投擲して身体を動かしたりして楽しむ目的で使われ、その飛距離を競ったりもされる。
ちなみに、「投げると戻ってくるブーメラン」は空気さえあればほぼ無重力の状態でも投げると戻ってくる。
原理
ブーメランの複雑な軌道は、揚力とジャイロ効果によるもの。
ブーメランは高速で回転しながら前進していく。ブーメランは前方に向かって回転しているため、回転軸の上側の翼は下側の翼よりも対気速度が高速になるため、より大きな揚力を発生させる。これにより、ブーメランはある方向に倒れていくことになる。ここでは左側とする。
するとその左側へ倒れる力によってジャイロ効果が発生し、ブーメランが左に旋回していく。
また、ブーメランの後方側を通過する翼は、常にブーメランによって乱されている大気の中にいるため、後方より前方の翼のほうが揚力が強くなり、これがジャイロ効果とは別に、ブーメランを左旋回させる力となる。
するとこの力によってまたもジャイロ効果が発生し、ブーメランの回転面が進行方向に大して右向きに回転を始める。これによりブーメランの回転面は徐々に水平に戻っていく。
ジャイロ効果についての詳細は、ここでは解説しきれないのでウィキペディアを見てほしいが、とにかく斯様に複雑な物理的作用により、ブーメランの旋回が発生しているということなのだ。
歴史
ブーメランは、古くは紀元前からある武器で、アフリカ、ヨーロッパ、オーストラリアで考案されたと見られている。
武器としてのブーメランは、弓矢の登場により多くの地域で廃れていったが、オーストラリアでは弓矢が導入されなかった(あるいは初期に何らかの原因で廃れた)事もあり、18世紀まで現役の武器だった。
オーストラリアの原住民アボリジニが使用したブーメランは武器以外の用途としても様々な発展を遂げ、その中で投擲者に戻ってくるタイプのブーメランが生まれたとされる。
また、アメリカ先住民族の用いる多目的手斧「トマホーク」はブーメランとしての側面を持っている。
日本では江戸後期の文政12年に徳島藩が牟岐沖に現れた異国船を追い払った際、相手方の船員が「く」の字型の物体を投擲したという記録が残されている。この船はオーストラリアのタスマニア島で反乱を起こした囚人に乗っ取られたキプロス号と判明しており、件の物体がブーメランだった可能性がある。
フィクションにおけるブーメラン
創作物に登場するブーメランは、「投げると戻ってくる」性質を活かした投擲武器である事が多い。
作品によっては、投擲武器としては明らかに巨大な、使用者の身の丈に相当するサイズのブーメランも見られる。また、手裏剣扱いされてか忍者の武器として携帯させられる場合もある。
また、大抵は投擲武器であることが多いブーメランだが、上の二つのイラストのように、一部のキャラはブーメランを投げずに打撃武器として扱うこともある。
打撃武器にしろ斬撃武器にしろ、敵を吹っ飛ばすなり切り付けるなりしてもさほど軌道を変化させることなく手元に戻ってくるものが多い。
敵に甚大なダメージを与えるような代物がその威力を保ったまま手元に戻ってくるため非常に危険で、何らかの原因で取り損ねることにより投擲者がダメージを受けるようなこともしばしば。
ゼルダの伝説シリーズにおけるブーメランは、投げて遠くにあるアイテムも回収できたりもする。
主な使用者(作品名五十音順)
漫画、アニメ
- 珊瑚:『犬夜叉』→飛来骨
- マリン:『海底少年マリン』
- キューティーハニー:『キューティーハニー』
- マタタビ:『サイボーグクロちゃん』
- 卍丸、影慶:『魁!!男塾』
- 翡翠:『半妖の夜叉姫』→飛来骨
- 星天使タケル:『ビックリマン2000』
- 一色あかね:『ビビッドレッド・オペレーション』
- 近江女:『るろうに剣心』
- キャプテン・ブーメラン:『DCコミック』
- 不動王→松田鏡二:『ブラック・エンジェルズ』
- ミッキーマウス:ディズニーの短編映画『ミッキーの大探険(原題:Mickey Down Under)』
ロボットアニメ
- ガンダムシリーズ
- その他
- グレートマジンガー:『グレートマジンガー』
- アルベガス / αロボ / βロボ / γロボ:『光速電神アルベガス』
- ライジンオー:『絶対無敵ライジンオー』
- ボルトクルーザー『超電磁マシーンボルテスV』
- グレンラガン:『天元突破グレンラガン』
- アトラウス:『未来ロボダルタニアス』
- ライディーン『勇者ライディーン』
- グレンダイザー:『UFOロボグレンダイザー』
特撮、実写
- ウルトラシリーズ
- 仮面ライダーシリーズ
- スーパー戦隊シリーズ
- その他の特撮作品
- タケル:『怪獣王子』
- ザボーガー:『電人ザボーガー』
- レオパルドン:『東映版スパイダーマン』
- ブーメラン:『巨獣特捜ジャスピオン』
ゲーム
- ロックマンシリーズ
- バブ:貝獣物語、大貝獣物語シリーズ
- 笠原美由紀:『CIRCLET PRINCESS』
- チャムチャム『サムライスピリッツ』
- リンク:『ゼルダの伝説シリーズ』
- マリク・シザース:『テイルズオブグレイセス』
- ホープ・エストハイム:『FINAL FANTASY ⅩⅢ』
- ターちゃん:『ファミコンジャンプ2』
- ショー・疾風:『風雲拳』
- カッターカービィ、サーキブル/ロードキブル/ザンキブル、ブーマー、ポピーブロスJr./ペロット、Mr.シャイン:星のカービィシリーズ
- ブーメランブロス、ブーメランマリオ:マリオシリーズ
- モコイ:女神転生シリーズ
- プリム『聖剣伝説EoM』
- ※ 初出作品では基本的に武器の装備に区別は無く(初期装備は格闘用グローブ)、自由に装備することができるがEoMの公式サイトではブーメランを装備している
- ワンジナ『Fate/Grand Order』
- 小鳩良子『少女☆歌劇レヴュースタァライト -Re LIVE-』
- ※アニメ版では未登場であり、現時点ではゲームアプリ版(及び舞台版)で登場しているキャラであるため、ゲーム作品に登場したキャラとして、こちらに記載。
小説
別の道具をブーメランとして使用
※盾を変形させずにブーメランにするキャラは多いので割愛
- 佐野清一郎:『うえきの法則』(鉄に変えた手ぬぐい)
- ウルトラマンレオ:『ウルトラマンレオ』(自分自身)
- ゴッドシグマ:『宇宙大帝ゴッドシグマ』(飛行ブースター)
- ゾロリ:『かいけつゾロリ』(自分自身)
- ウルトラマンジャック:『帰ってきたウルトラマン』(ウルトラブレスレット)
- ワシカマギリ:『仮面ライダー』(鎌状の左手)
- ゲッター1系列:『ゲッターロボ』:(斧)
- グリーンマンティス:『人造人間キカイダー』(鎌状の右手)
- ウォーカーギャリア:『戦闘メカザブングル』(ロケットランチャー)
- デンジマン:『電子戦隊デンジマン』(デンジスティック)
- 月野うさぎ:『美少女戦士セーラームーン』(ティアラ)
- 実写版以降の各媒体(原作の新装版含む)ではティアラを投げる必殺技が『ムーンティアラブーメラン』という名称になっている。
- カラカラ、ガラガラ:ポケットモンスターシリーズ→ホネブーメラン
- アックスナイト:『星のカービィ』(斧)
- ギガントエッジ、ブレイズエッジ:『星のカービィ』(剣)
- ウィスピーフラワーズ:『星のカービィ』(花)
- ガラダK7:『マジンガーZ』:(鎌)
- ドナルドダック:ディズニーの短編映画『ドナルドのゴルフデー(原題:Donald's Golf Game)』(おもちゃのゴルフクラブ)
- ※但し、ドナルドがおもちゃのゴルフクラブを投げた瞬間にブーメランに変形し、戻ってきたブーメランがドナルド自身に衝突して自滅している。
- プルート:ディズニーの短編映画『ミッキーの大探検(原題:Mickey Down Under)』(自分自身)
その他の意味
ネットスラング
ブーメランを投げると、戻ってきて(キャッチに失敗した)投擲者に衝突するという事から、例えば以下の現象が「ブーメラン効果」と呼ばれる。
- 自分のした行為によって自分が被害を受ける
- 物事を進めたところ、出発点に至ってしまう
- 相手を説得しようとして、かえって相手の態度を硬化させてしまう
- 他人への糾弾が自分にも当てはまってしまう→ブーメラン発言
※3に関しては「相手の思い込みや偏見を打破する為にデータやエビデンスを見せたら(それらのデータやエビデンスが正しいにもかかわらず)、相手の思い込み・偏見を打破出来ないばかりか、前より思い込みや偏見が強まってしまう」「自分が相手の意見の同調した結果、逆に相手が意見を変えてしまう」のどちらの意味でも使われる。
CA-12
第二次世界大戦期にオーストラリアのコモンウェルス・エアクラフト社が製造していた戦闘機。
第二次世界大戦勃発によって宗主国であるイギリスがドイツとの戦いに忙しくなった上に、日本とアメリカの関係がきな臭くなり始めていた事から、CACワイラウェイ練習機をベースにした新型戦闘機の開発を余儀なくされた。そこから生まれたのが、CA-12ブーメラン戦闘機だった。
「ブーメラン」という名がどうして名付けられたかは諸説あるが、速度性能では零式艦上戦闘機などに太刀打ち出来なかった為、重武装と運動性、そして、ワイラウェイから受け継いだ操縦のし易さを活かして対地攻撃に用いられる事が多かった。そのせいか、意外な事に終戦まで日本軍の戦闘機と直接戦闘を経験した事がない。
ブーメラン戦闘機はその後、CA-13、CA-14、CA-19という各型が作られ、スピットファイアなどの高性能な機体が揃うまでの間、オーストラリア空軍を支えた存在として歴史に残っている。
巨獣特捜ジャスピオン
演:渡洋史
第6話「子供獣と子供たち」にて初登場。
インターポールの捜査官だった兄をマッドギャランに殺された事で復讐を誓う青年で、その名の通り二振りのブーメランを武器とする。出会った当初はジャスピオンと反目していたが、戦いを通じて彼の良き協力者となっていく。マッドギャラン配下のコマンダーには善戦するものの、第12話では己の力不足を痛感して修行の旅に出た。
その後しばらくの間は日本を離れていたようで、南米で武装強盗団を壊滅させた功績が認められた事で国際連邦保安官となり、マッドギャランと結託した犯罪組織を追って再びジャスピオンの前に現れる(第31話)。修行のさなかに編み出したクロス・カッターという技でマッドギャランに挑むも通用せず、マッドギャランの打倒をジャスピオンに託した後はサタンゴースの災禍から人々を守る為に再び日本を離れていった。
主演の黒崎輝氏が撮影当時は多忙だった事もあり、スケジュールによっては変身前の撮影が困難になる事が予想された為、代わりにアクションシーンをこなすキャラクターとして考案された。
企画の段階では、彼とアンリとの悲恋を描いたストーリーも存在したと言われている。
ワイルドアームズ
ブーメラン(ワイルドアームズ)の項目を参照。
関連タグ
プロペラ 玩具 三日月 アイスラッガー ゼロスラッガー サイコカッター
- 挟まっちまった(やられた方の架空戦闘機「X-49ナイトレーベン」の見た目がくの字ブーメランを2枚重ねたようなユニークな見た目をしている)
- 戦闘妖精・雪風(戦術戦闘航空団特殊戦第五飛行戦隊の通称がブーメラン戦隊)
- 西城秀樹(「ブーメランストリート」というヒット曲を残している)