概要
女神転生とは、西谷史による小説、およびそれを原作にしたRPGシリーズである。通称「メガテン」。シリーズ愛好家は「メガテニスト」と総称される。
小説の「女神転生」
西谷史の伝奇SF小説「デジタル・デビル・ストーリー」シリーズの第1巻の副題にあたる。
「女神転生」というサブタイトルは、原作およびOVAにおいてヒロインの白鷺弓子が日本神話の女神イザナミの転生体だった事に由来する。キャラクターデザインは北爪宏幸が担当。
ゲームの「女神転生」
1987年発売のゲーム。正式名は『デジタル・デビル物語 女神転生』。
- 日本テレネットから発売された見下ろし型アクションゲーム(原作小説1巻をベースにした作品)
- ナムコ(現バンナム)から発売された3DダンジョンRPG(原作2巻の続編的な位置づけの作品で、ベースはOVA設定。ただし原作3巻が出る前の作品であるため、ストーリー展開や結末が完全に異なる)
の2種類が存在し、ナムコ版は後述される女神転生シリーズの祖となる。
悪魔との会話、悪魔合体、仲魔、マッカ、月齢、抗体ポイント等、システムの基礎はナムコ版で形作られた。原作小説の流れを汲む作品なので、プレイヤーキャラは中島朱実(ナカジマ)と白鷺弓子(ユミコ)で、敵悪魔として原作中に登場したロキ、セト等が登場する。
ゲームシリーズとしての「女神転生」
ナムコから発売された前作から3年後の1990年、続編の「デジタル・デビル物語 女神転生II」が発売され、三身合体、マルチエンディングそしてルシファーといった主要悪魔の基本スタンス等、後続作品に関わるシステム・設定が固められた。
また、金子一馬による悪魔やキャラクターのデザインもこの作品から始まっており、ATLUS産の悪魔が登場するRPGは全てこのタイトルの派生作品である。現在はタイトルから消えているが、ライトユーザーを中心に人気を集めるペルソナシリーズも一作目は女神異聞録と銘打たれており、外伝作品的な扱いであった。
本シリーズを一躍人気作に押し上げた斬新かつ秀逸なゲームシステムは他のゲームにも強大な影響を与えており、
- 戦闘を介して敵と交渉したり道具で捕まえて仲間にする
- 手順を踏んでも必ず仲間になるとは限らない
- モンスターを合成して新たなモンスターを作成する
- さらに合成もしくは作成もしくは成長といったものに系統や属性で変化がある
と言ったシステムの元祖になっている。
また、ジャンルとしては伝奇・ファンタジーの括りでありながら、「現代社会が舞台」「戦闘曲がハードロック」と言ったこれまた異色の要素が注ぎ込まれており、このギャップも人気に拍車をかけている。
設定
世界観
本シリーズは、「悪魔」という異形の存在に関わり、帰るべき日常を失ってしまった人々の生き様を描く作品群である。
ここで言う悪魔とは一神教のそれではなく、超自然的な存在の総称であり、神や天使、妖精も悪魔に分類されている。
冒険の舞台は学校といった身近な場所に始まり、現代の東京、さらには文明滅亡後の世界や魔界にまで及ぶ事もあり、他に類を見ない独特の世界観を持つ。
属性
主要登場人物・悪魔は全て属性が設定されている。
真・女神転生以降は直交座標系の形式で表示され、
- 法と秩序を重んじるロウ(Law)
- 自由と混沌を重んじるカオス(Chaos)
- どちらにも属さないニュートラル(Neutral)
が思想を象徴する横軸として、さらに
- 建設的で前向きなライト(Light)
- 中庸のニュートラル
- 邪悪で破滅的なダーク(Dark)
が性格を象徴する縦軸として設定されている。
ニュートラルは中心、つまり0地点である。属性としては4つだが、同じ属性持ちでも“どれだけその属性に寄っているか”はキャラごとに異なり、設定された属性の傾き具合を10段階で評価するなら、「ロウ8ライト4の悪魔」「カオス5ダーク7の悪魔」といった具合になる。
悪魔は種族ごとに属性が大きく分かれている。いくつか例を挙げると、
- 破壊と創造、殺戮と粛清の表裏を併せ持つ「天魔(破壊神)」はChaos - Light。
- 法と秩序を絶対とし、命を顧みず献身的に働く「天使」はLaw - Light。
- 秩序を強いるが、それが邪悪かつ非道徳的である「邪神」はLaw - Dark。
- 悪意に満ち何者にも従わず、傍若無人に振る舞う「魔王」はChaos - Dark。
- 奔放で無邪気、気まぐれで人に近い存在の「妖精」はNeutral - Neutral。
主人公はニュートラルで始まり、プレイ中の行動によってその都度属性が揺らいでいく。
変化はロウ側かカオス側のみで、ライト・ダークへの属性変化は無い。 自分がどの属性に属しているかで仲魔にできる悪魔が違ったり、シナリオやエンディングが異なっていくのが特徴かつ魅力である(シリーズによっては属性によるシナリオ分岐が無いものもある)。
デビルサマナー(悪魔召喚士)
悪魔を召喚し、使役できる人間。ほとんどの作品の主人公と登場人物の多くは悪魔召喚士である。
悪魔召喚プログラムにより、特別な霊的技能の無い一般人でもコンピュータさえ扱えれば悪魔召喚を行えるようになっている。
なお、ペルソナシリーズでは悪魔はシャドウの一種であり、悪魔とは呼称されず、「ワイルド」のペルソナ使いのみが悪魔と契約し、自分のペルソナとして使役できる。
悪魔召喚プログラム
悪魔召喚の儀式をコンピュータ上でエミュレートし、自動化するプログラム。作品によっては「悪魔召喚アプリ」として登場する事もある。
製作者は作品ごとに異なり、旧約・女神転生シリーズでは中島朱実、真・女神転生シリーズではSTEVENと名乗る車椅子の男、デビルサマナーシリーズではヴィクトル、女神異聞録デビルサバイバーでは主人公の従兄であるナオヤが開発している。
COMP
悪魔召喚プログラムがインストールされたコンピュータ。悪魔自体をプログラム化して収納しているわけではなく、悪魔召喚をする際に必要な召喚呪文をメモリーしているだけに過ぎない。
中島朱実はラップトップ(ノートパソコン)、女神転生Ⅱの主人公はハンドヘルドコンピューター(後に義手に内蔵)、真・女神転生I、II、if…の主人公は腕に装着するアームターミナル、デビルサマナーシリーズの主人公とペルソナ2の内田たまきは銃を模した特殊なコンピュータ(通称GUMP)を使用しており、使用者によって独自の形態をしている。
マッカ(♄)
魔界の通貨。地獄の宰相こと魔王ルキフグスが製造している金貨。漢字表記は「魔貨」で、土星の星図記号「ℏ」で表される。
悪魔の勢力が強い地域で流通しており、こういった場所では人間のお金は使い物にならない。
STRANGE JOURNEYでは、悪魔にとってはただの通貨だが、人間側にとっては高純度エネルギーの結晶という設定が加わっており、人間同士でも「アイテムの製造用」「回復装置の運転用」といった目的でやりとりする事になる。
生体マグネタイト(MAG)
「マガツヒ」とも呼ばれる、悪魔が物質界(人間界)で活動するために必要な生体エネルギー。略してマグネタイトとも呼ばれるが、磁鉄鉱とは別物である。
激しい感情の変動を起こし得る生物が多く持つものとされ、特に人間と悪魔が多く保有する。
悪魔は本来肉体を持たないため、物質界(人間界)では自らの肉体を維持するためにMAGを消費し続ける。MAGが失われると徐々に体が崩壊し、最終的には死んでしまうため、悪魔は人間や同じ悪魔を捕食したり、信仰を集めたりしてMAGを補給する必要がある。
シリーズが進むにつれ「召喚中に消費し続ける消耗品」というシステムが徐々に廃されてきているが、生体マグネタイトという存在自体はそうした作品でも何かしらの意義をもって登場する事が多く、シリーズには欠かせない要素である。
ゲーム「女神転生」誕生秘話
原作者の西谷氏がFacebookで明かした話として、メディアミックスの一環では原作小説とOVAは徳間書店が担当しゲーム化に関しては当初は任天堂にお願いしたのだが、当時の任天堂の役員会で「女神転生には教育上よろしくない記述がある。これはうちではできない」と回答されてしまったらしく(この当時は任天堂発売での表現審査は厳しかった時代である)、そこで他のゲーム会社を探したところ、ATLUSがナムコを通じて名乗りを上げ、ゲーム化に進んだと言う。なお、西谷氏は日本テレネット版にはこの件では一切言及していない為、現在広く知られているRPG作品としての女神転生はメディアミックスの中で生まれたのは間違いないと思われる。
また、ダンジョンRPGのゲームシステムは元々ATLUSで作られていたが、ストーリーもシナリオも無かったため、女神転生の世界観を合わせてみたところ見事にマッチしていた事から名乗りを上げたと言う。
合成や悪魔合体のシステムもATLUS側のアイデアで、当時開発責任者であった上田氏が作品を読んでディスプレイから悪魔が出てくる描写から考え出したものらしい。
また、任天堂は後に『真・女神転生』と『ファイアーエムブレム』をコラボした作品をリリースすると発表し、その後に『幻影異聞録♯FE』をリリースしている。
ちなみに『女神転生』『女神転生Ⅱ』はナムコ(現バンナム)にも著作権があり、『旧約・女神転生』では真・女神転生シリーズ同様にATLUSが販売しているが、タイトル画面にナムコもクレジットされている。また、ナムコットコレクションでも女神転生がFC版そのままにラインナップされている。
これは余談だが、最初ATLUSはジャレコへの持込み企画として『バイオ戦士DAN』と本作の2本を提案した。しかし、当時のジャレコは本作を全く相手にせず、『バイオ戦士DAN』だけが通ってしまった。その後、改めてナムコに本作が持ち込まれた結果、無事に採用され日の目を見る事になったという経緯がある。
メガテンシリーズはその後は西谷氏が原作(原案)者であるとしつつ、独特の世界観を醸し出す長寿シリーズへと成長していく。
池波正太郎氏の時代劇小説『仕掛人・藤枝梅安』を原作とした『必殺仕掛人』から始まる時代劇『必殺シリーズ』と非常に成り立ちが似ている。
関連イラスト
関連タグ
外部リンク
NAMCOT COLLECTION 公式サイト内『デジタル・デビル物語 女神転生』紹介(2020年10月配信予定のDLC第三弾に含まれている)