概要
コミックボンボンにて連載されていた、横内なおきによる漫画作品。略称は「サイクロ」。
悪の科学者によって勝手にサイボーグ*に改造された雑種の黒猫クロが繰り広げる破壊的な活躍を描くギャグ漫画。
初期はドタバタギャグ活劇だったのだが、作品が進むに連れて、シニカルなギャグとハードな展開が同居する独特の雰囲気へと変化していった。
特に中盤の「異世界サバイバル編」以降はハードなストーリーが増え、やがて児童向けとは思えない暴力描写や人間ドラマが描かれるようにもなり、ある意味でボンボンらしい作品となっていた。
児童誌版ベルセルクと名高いデビルチルドレンと並び、黄金期後半のボンボンを象徴する作品。
ちなみに作者の横内なおきは、現在pixivで活動しているほか、X(旧Twitter)などでも積極的に発信している。
単行本は全11巻。連載終了後には、読者コーナーへファンイラストを投稿していた同人作家の内田じゅんたによる番外4コマ漫画『番外バトル』が新たに連載された(全2巻)。
2012年には人気エピソードと書き下ろし短編を収録した新装版(「ガトリングセレクション」と「ガトリングセレクション リローデッド」の2巻)が発売され、2015年末からはいよいよ全編を収録した新装版が刊行。2016年12月16日には満を持して電子書籍化されている。
また2021年からは、原作者のnoteにて完全新作エピソード『夢見るハイパー』が展開中である。
1999年にはTVアニメ化され、テレビ東京系で放映された。
人気はあったのだが、いろいろあって製作中断の憂き目を見ている。詳しくは後述。
何故か2022年になってアプリゲーム『メダロットS』とコラボレーションを果たし、クロちゃん型メダロット『ブラックキッド』とミーくん型メダロット『ミーアーミー』が登場。彼等の性格やゲーム内のストーリーも原典に略準じている。
主な登場人物
主なエピソード
作品序盤
連載に先駆けて増刊号で掲載された読切(コミックス1巻分)と、それから始まる作品初期の物語は、児童向けのドタバタギャグであった。が、既にそこかしこに「まだ月刊ペースに慣れてないなこの作者」「ダイハードのパクリ」などの身も蓋もないギャグがちりばめられている。
天才少年コタロー
コタローの暴走を描く、彼の初登場エピソード。
現実社会をつまらないゲームと断じて、空母をジャックして日本壊滅を企むコタローを、クロ達が阻止しようと奮闘する。
異世界サバイバル編
爆発事故によって出来た空間の裂け目から投げ出された、異世界でのサバイバルを描く。初の長編ストーリー。
見渡す限り砂の海しかない世界で不毛な戦いを繰り広げる人々の中に、バラバラに放り込まれたクロ達を群像劇的に描く。
クロとバイスの死闘を初めとして、爽快感のない渇いた暴力・戦闘描写が多い。砂漠世界の真実などスケールの大きなSF的要素も持つ。
ミーと剛の過去
天才的な腕を持ちながら世界征服を決意するまでになった剛とミーの過去の話。
高い能力を持ちながら貧乏ゆえにホームレスにまで堕した若き剛は、幼い野良猫であったミーと出会う。しかし、ミーの両親を殺したのは、剛のかつての学友が遺伝子改造によって生んだ怪物であった。いかにして剛は腕を失い、ミーはサイボーグと化したのかが描かれる。
キッド編
ボディの故障によって倒れたクロが、暗い意識の中で回想する自らの過去を描く。
孤児であったクロは、ゴッチ率いる野良猫集団に拾われると、やがて戦いの才能を開花させ「キッド」の異名をとる。若きマタタビや、グレーなどの先輩と共に、キッドは凶悪なカラス軍団や都会の野良猫集団との戦いに身を投じていく。
孤児が暴力団に拾われて殺しの才能を開花させ、抗争を戦いながら生き延びていくという、もはやヤクザモノ青春映画の域へと到達した壮絶なエピソードで、毎回血みどろの抗争が描かれていた。
最後には、何故そんな壮絶な世界にいたクロがジーサン・バーサンに拾われたのかも描かれる。
マタタビの過去
キッド編の続編で、壮絶な戦いの末にクロと離れ離れになったマタタビが、再びクロに会うまでの話。
親友でありながら自らに深い傷を負わせた仇敵でもあるクロに対して、自分はどうすればいいのか、という当て所もない問題にぶつかる様子が描かれる。最後に彼が辿りついた境地は、もはや児童では理解できないほど崇高で複雑であった。
ゴロー編
エスパー少女・チエコと、彼女が出会った孤独な少年ゴローを巡る事実上の最終エピソード。
親による虐待によって追い詰められた末に、記憶と体を失って原始的なロボットになってしまったゴローを、何とかもう一度人間に戻そうとするチエコとクロ達の努力が描かれていく。
エピソード後半では、憎しみの対象である父親と再会して暴走するゴローを止めるための彼らの死闘が展開される。
夢見るハイパー
2021年より原作者のnoteにて掲載されている新エピソード。
ひょんなことからデビルが復活し、オーサムを乗っ取ってしまった。オーサムの戦闘力の前に、さすがのクロも歯が立たない。剛は最終手段として、ボディを大幅に強化し、そして暴走を抑えるためのリミッターを解除するという強化改修を彼に施す。
こうして生まれた新形態クロちゃん「ハイパーK」は、その圧倒的な力でデビルオーサムを撃破するが、案の定そのまま暴走。ついには米軍にまで喧嘩を売り始める……。
アニメ
朝の時間帯に放送する幼児向け番組という基本コンセプトから、ハードな部分は柔らかい表現に変えられており、原作のハードな部分に魅力を感じていた読者からは評価が低い面もある。
原作では核武装した自衛隊が登場するが、アニメでは民間自衛隊(正式名称は有限会社自衛隊)と、メガトンミサイルに変更されている。こっちはこっちで、日本に事実上のPMCが存在し、民間人(自称、趣味で日本を守る義勇軍)が戦車、戦闘機、護衛艦、そして核に匹敵する兵器(或いは名称変えただけの核兵器)を保有するという、別の意味でヤバイ設定なのだが…。
実はキッド編もそのハードな作風からアニメ化は本来なら不可能だったが、一部を改変することでなんとかOKを貰ったという逸話がある(特に猫狩り→ネコキャッチなど)。ただ、スタッフの多くは原作に魅力を感じていたため、出来る限り原作の表現はそのままにしようと奔走していたらしい。
そのため、強烈な描写が比較的そのままになっている話も少なくはなく、剛とミーの過去など、「土曜の朝から放送されて大丈夫だったのか」という声が上がるような回もある。
それどころか、話によっては柔らかい表現に変更された箇所が多い分、それに対するクロの反撃が原作より激化している場面すらある。
放送年は99年から01年頭に至ったが、その間53話(2000年9月30日)までセルアニメとして製作されており、54話からデジタルアニメへと移行した。97年以降、全体的にデジタル環境に移行していた業界の中にあって、数少ないセルアニメ作品となっていた。
悲劇の打ち切り劇
当初は半年・全24話の予定だったものが、非常に高い人気のために1クールずつ延長され、最終的には7クール・第78話まで予定された。
が、制作会社のパブリック&ベーシックが倒産、それに伴いスタジオボギーも倒産してしまい、ストーリー的に突拍子もないところで急に放送終了を迎えるという憂き目を見ている。全話数が半端なのはそのためである。ちなみにセレクションに置き換えられた分の枠が全て新規に放送されていたとしたら、最低でも第80話までは予定されていたということになる。
ちなみにラストエピソードとなった第66話は本来「待て、次回!」まで入っていたのだが、打ち切りの関係で無理矢理カットされたとのこと。
ビデオ発売元だったパブリック&ベーシックの倒産により、第53話と第55話以降はソフト化されていない。もちろんDVDなど発売しているはずもなく、現在は一部のレンタルショップなどでしか見られない。とはいえ数年後、後述のように再放送や動画配信は一部行われている。
なお、最終クールはほとんどがアニメオリジナル回であり、原作付きのエピソードはチエコ登場回とロミジュリのベイビー誕生回の二つしかない。
アニメオリジナルキャラであるヤーヤーヤー星人は、原作で当時登場していたゴローの設定がハード過ぎることからアニメ化は早々に断念され、苦肉の策として登場したアニメオリジナルの準レギュラーだった。
後の2010年にテレビ愛知で第1話から第49話まで再放送されたことで権利の一部はテレビ愛知が持っていることが明らかになった。
2014年12月からは系列キー局・テレビ東京の関連会社であるAT-Xでも放送された。
2016年には電子書籍化を記念しYouTubeで2017年1月9日まで全話無料配信されたのを皮切りに、アニメ放題・U-NEXT・Amazonビデオ・dアニメストアなどの動画配信サイトにて全話配信が開始されている。
ただしAmazonビデオは配信停止され、以降なし崩しに配信停止された時期が存在する。その後も安定した配信継続が見込めるか怪しい状況なため、映像ソフト化が望まれている。
しかし先の通り権利関係が複雑なためか、ソフト化は絶望的とされているのが現状である。
当時のアニメ関係者は本作の続編の製作が可能なら最後までやりたいと語っており、監督は「もし当時最終回までやれたとしたらアニメ版らしい終わり方になっていたのではないか」とコメントしている。
トリビア
- 制作会社倒産の理由は関係者が口を閉ざしているため不明だが、Wikipediaでは資金繰りが滞ったためと書かれている。倒産の知らせは監督の高本宣弘らスタッフにも倒産後に知らされたという有様だったらしく、結局詳しくはどんな理由かわかっていない。
- マタタビの声は担当する大本眞基子の声の中で最も低いキャラだという。しかもこれは音響監督だった松浦典良に「君にはもっと低い声のポテンシャルがあるはず」と指導されて出来上がったものらしく、かなり苦労したとのこと。本人曰くポイントは「低く」「任侠っぽく」「巻き舌」の三点。
- ドクター剛役の古澤徹は、アニメ終了時以降もサイボーグクロちゃんの続編の制作を訴えていたキャストの1人。というのも、本人はドクター剛役に指名された当時は精神的に参っており、レギュラーなどが出来ない状態だった。そんな時音響監督の松浦典良から「それでもいい」と強く参加を要望されてオファーを受け、悩み悩みNGを出しながら演じていたとのこと。
- 松浦典良はTV版ガンダムの音響監督を担当し、あの池田秀一をアニメ声優として発掘した名音響監督である。そのためか多くのパロディが廃される中、「アムロ、いきまーす」が何故か通っており、銀河鉄道999のメーテルコスプレなども許されている。また、本アニメの関係者は口々に松浦の功績を口にしており、中心的な人物だったようである。番組終了の数年後となる2005年、直腸癌で逝去した。なお、アニメ版星のカービィで声優が共通していると言われるのは松浦が担当しているためとされる。
- アフレコのスタジオはカラオケボックスくらいの広さだったらしく、これは今ではあまり考えられないレベルでかなり狭い環境である。ただ古澤徹はそれがむしろ「とても居心地が良い」と語っている。
- 高本宣弘監督のお気に入りキャラクターはロミオだったらしい。
- 幻となった第67話以降には、アニメオリジナルの新キャラの発明少年のキンタローと、彼が作ったとされるカグヤという少女キャラが登場する予定だった。児童誌にはビジュアルやストーリーが載っていて、当時の写真をファンから見せられた原作者も「もったいない」とつぶやいていた。
- 2016年1月23日のイベントではアニメ関係者が集結し、最後はクロちゃん役の坂本千夏もサプライズで駆けつけた(仕事終わりでギリギリだったらしい)。イベントの最後には坂本千夏、古澤徹、大本眞基子で役を分担して原作最終回を朗読するという胸熱なコーナーも。
- 同著者である「ウッディケーン」の新装版にて、「ウッディケーンVS.サイボーグクロちゃん」という特別描きおろし漫画が収録された。
- 本作再放送後の約半年後に放送されたCBC・TBS系列の『星のカービィ』には本作のスタッフの一部が制作に参加しており、先の通り音響監督が同じこともあって本作に出演したほとんどの声優も出演している。
- 本作のBGMを担当したのは『少年アシベ』や『クレヨンしんちゃん』でおなじみの荒川敏行である。また、声優のこおろぎさとみは全て出演しており、本作で共演した坂本千夏とは『少年アシベ』でも共演し、キャスト発表当時も代表作として記載されていた。
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