概要
『サイボーグクロちゃん』『ウッディケーン』などの作者として知られる横内なおき氏がPixiv内で発表しているSF漫画作品。
銀河全体で人口が爆発した結果、荒廃しきった壮絶な社会が構築された中で、ある宇宙船に乗り込んだ主人公ガズゥの姿を描くサイバーパンクSF。世界観や展開にハードな部分が多い。
2011年3月よりPixivに投稿されている。
2016年1月22日、最新第5話を収録した単行本が講談社から発売。それに伴い第1話以外はPixiv上で公開停止となった。
2015年より刊行が続いている『サイボーグクロちゃん』新装版シリーズの、第3巻との同時発売となる。
物語
宇宙西暦967年。
銀河人口が爆発し、居住可能な惑星のキャパシティを越えた結果、人々は貨物宇宙船に暫定的に詰め込まれて宇宙へと旅立った。だが他惑星の植民地開発や移住手続きは難航し、次第に人々は貨物船の中で一生を終えるようにまでなっていった。
やがて、それぞれの宇宙船は独立したミニ国家としての様相を呈するようになり、新天地開発は放棄され、宇宙船同士がわずかな物資を巡って争う、サバイバル宇宙時代が到来した。
ある宇宙船に、アーマーと包帯で全身を防護した謎の大男・ガブリエルが、警備係として雇われた。
しかし、ただならぬ気迫と怪力を見込まれたこのガブリエルはその実、心優しい臆病な若者であった。
彼は、サバイバル宇宙時代の宇宙船の壮絶な環境に圧倒されながらも、自分の故郷のために生き抜いていく。
主要登場人物
- ガズゥ(ガブリエル)
片目だけが出た甲冑のようなアーマーと包帯で全身を包んだ大男。手は大やけどをしたかのように爛れている。
見る者を驚かせるほどの迫力と、異常な怪力・体力の持ち主。
宇宙船オクアノスに、ロワーとして求職し、その風体を見込まれて採用される。
怪物的な外見に反して、その性格は全く臆病で心優しい青年(?)。宇宙船に乗り込んだのは、困窮する故郷の家族を救うための金を稼ぐため。
そのナイーブさは、密航者を宇宙へ放り出したバンボロの所業を見てドン引きするほどだが、宇宙船で働き生き抜いていくためにハードな判断力を身に着けていく。
正体は、惑星キャンドラに棲む地ネズミ。他の地ネズミと比べて圧倒的に体が大きいのを活かし、知的宇宙人を装っている。
知能はヒトなどと同等にあり、言葉を解する。だが、バンボロなど、地ネズミ以外の生物と明確に会話したシーンが今のところないため、彼の饒舌な一人事が、ヒトなどと変わらない言語で展開されているものなのかは不明。
母親の外の世界では優しさは弱さという教えの元、本来の性格を出さないために敢えて必要以上に喋らず、威圧感を出すために普段は寡黙に徹している。
ガブリエルは偽名で、宇宙船の人間はそう呼んでいる。ガズゥという名前は、母親との会話の中でしか出てきていない。
- バンボロ
宇宙船オクアノス最下フロアの警備主任。ガズゥの上司に当たる。
自身が語る限りではヒト。スーツに常に身を包んでいるため、顔は見えない。
サバイバル宇宙時代の宇宙船で生き抜く術をしっかりと身に着けた、強かな男。
密航者を容赦なく宇宙へ放流したり、テロリストの頭部を焼き切ったりと、自らと宇宙船乗員の命を守るために適切な判断を冷徹に下す。
だが、処分する前にの航者に期待を持たせる言葉をかけたりと、若干非道な行いも目立つ。
下は上層フロアの警察官だったらしいが、重大な過失を犯して最下フロアに落とされてしまった。
- ボーマ
設備整備員らしき、最下フロアの住人。
二頭身で幼児のような体型をしており、地面をすべるように移動する。
バンボロとは馴染み。
- ポーシャ
宇宙船のアッパーフロアに住む少女。約束を守ってくれない両親に不満を抱いていたところを、ネズミを見つけ好奇心から追いかけていたところをパイプを通って最下フロアまで来た所を彼女を密航者と間違えたガズゥに撃たれてしまう。
用語
- アッパー(上流層)
深刻な格差構造が構築されている中で、豊かな物資と安全で快適な住環境に恵まれて暮らす、いわば「勝ち組」的人々。
宇宙船の中の上層部=アッパーフロアに住んでおり、豪華な暮らしをしている。
彼らの住んでいるところにはロワーは足を踏み入れてはならず、入った場合は消し炭にされるらしい。
- アブゾーバシート
打ち上げ・大気圏突破の際の強力な重力や衝撃から身を守るための装置。
離陸の瞬間はこれに乗っていないと散々な目に遭う。アッパーにとっては当然の装備のようだが、ロワーにはかなりの贅沢品。
- オクアノス
宇宙船。現在、作品の主な舞台となっている。
アッパーが暮らす豪華絢爛なアッパーフロア、ガズゥなどロワーがうごめく最下フロアなどが確認されている。
アッパーフロアと最下フロアは殆ど断絶状態にあり、双方の住人が互いに行きかいすることは殆どありえないが、小さい子供であればパイプを辿ってアッパーフロアから最下フロアに行くことは出来るようだ。
- 黒田ヒュームズ
個人用のナビや、密航者などを見つけ出す探知装置を開発・販売している、銀河最大企業。オクアノスの船長の発言からすると、傭兵派遣業なども行っているようだ。
その中枢には、ル・ボックの生き残りがいたとも言われている。
- 対人重素
宙族相手にバンボロ達が用いた兵器。
これを打ち込まれた宙族達が小さく収縮して死亡したことから、名前と併せて考えると、ブラックホールのように重力崩壊を起こさせ収縮させてしまう効果を持つようだ。
- 地ネズミ
丸っこい体にくるっとねじれた尻尾が特徴的なネズミ。
惑星キャンドラに生息しているが、他の星にいるのかは不明。宇宙船に入り込んだものはもちろん排除の対象。
後述するロワーにとってはこれらさえも貴重な食料らしい。
知能は高いらしく、ガズゥとその母親は、ヒトのような言葉で会話していた。
- 宙族
海賊の宇宙版らしい略奪集団。
- マキーナ
強大な科学力を誇っていた惑星。150年前に謎の消滅を起こした。
本来は3分の1程度の大きさの星であったが、ル・ボックによって3倍の大きさまでに増築されたようだ。
- ル・ボック
マキーナの原住民族。強大な科学力を持った技術者集団で、宇宙のあらゆるものを機械仕掛けで再現できたとも言われ、実際に自らの住む星を3倍の大きさに増築したほど。
マキーナの消滅と共に姿を消したが、生き残りが宇宙に散らばっているという噂があるようだ。
その外見はボーマにそっくり。
- ロワー
深刻な格差構造が構築されている中で、劣悪な住環境と貧困に悩まされている、いわば「負け組」的人々。第1話に登場したパンチョのように、開発が停止した植民惑星などで貧しい暮らしを強いられている者が多いようだ。
たまに星に宇宙船が来ると、そこでの仕事と、今よりほんのすこしだけでもマシな暮らしを求めて、乗船権を掴もうとする。
結果として仕事と乗船権を掴んだガズゥが、変わらずロワー扱いであったあたり、上層フロアの居住権などを持たない人間の総称であるかもしれない。
- 惑星キャンドラ
荒廃した惑星。ヒトなどが住んでいるあたり、植民地であったと考えられる。
現在は開発が停止したのか、荒廃しきっており、生活に困窮しているロワーと地ネズミしか今のところ住人が確認できない。
ガズゥの故郷であり、ここにオクアノスが立ち寄った際に、彼は乗り込んだ。
関連イラスト
関連タグ
関連リンク
講談社 - 宇宙のガスゥ
コミクリ!試し読み - 宇宙のガスゥ