『バイオマン!』
「レッド、ワン!」
「グリーン、ツー!」
「ブルー、スリー!」
「イエロー、フォー!」
「ピンク、ファイブ!」
「ワン!」「ツー!」「スリー!」「フォー!」「ファイブ!」
『超電子!バイオマン!』
解説
1984年2月4日から1985年1月26日まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第8作。
実験作としての傾向が強く、今作では今までの毎回ゲストの怪人が出て来て、終盤で巨大化するといったパターンを排しており、巨大戦では毎回登場する様々な巨大ロボットと対決するという巨大ロボットアニメの影響が濃い作風となっている。ゲスト怪人が全て巨大な怪人というのは本作のみ。
- 敵側が巨大化の代わりにロボットを用いる描写は、これ以前の作品では『バトルフィーバーJ』と『大戦隊ゴーグルファイブ』、以後の作品では『特捜戦隊デカレンジャー』と『轟轟戦隊ボウケンジャー』、『特命戦隊ゴーバスターズ』でも見られる。ちなみに激走戦隊カーレンジャーや敵だった百獣戦隊ガオレンジャーや爆竜戦隊アバレンジャーでも同様の場面が存在した。なお、従来同様の等身大怪人の役割は、幹部クラス怪人のジューノイド五獣士(後に三獣士)が担っている。
- 音楽は矢野立美作曲で、当時の音楽界の主流だった都会的な雰囲気のあるデジタルシンセサウンドが大々的に投入されている。
- 作品タイトルに「戦隊」の文字が含まれないスーパー戦隊シリーズの一つである(本作以外には『ジャッカー電撃隊』、『バトルフィーバーJ』、『超新星フラッシュマン』が該当する)。
- 「イエロー役が失踪した戦隊」としても有名。だが、突然のトラブルにもかかわらず、失踪後に撮影されたシーンは違和感を最小限に留めてなんとかまとめており、当時のスタッフの技量の高さが窺える。この不測の事態でレッドとイエローのダブル主人公路線が頓挫したことから、物語の軸がレッドワンとドクターマンに集中し、戦隊随一のレッド一強戦隊となっている。
- また、タイトルコールにて戦隊名をフルネームで言った初の戦隊でもある(◯◯戦隊を抜いたタイトルコールならゴーグルファイブが初)。
- シリーズ初の女性戦士が2人いる『ダブルヒロイン体制』も大きな特徴。
前作の『科学戦隊ダイナマン』まで女性戦士が『紅一点体制』で一貫していたのは、実は当時のスタッフが女の子も視聴しているという現状を全然把握できていなかったためだったと、本作でプロデューサーを務めた鈴木武幸が証言している。
そして当時のスタッフの言い分は、『スーパー戦隊シリーズ』に限らず特撮ヒーロー番組は男の子向けというイメージが強いことから女性戦士は玩具関係で受けが悪く、女の子が見たところで親も戦隊とは無関係の女の子向けの玩具を買い与えるのが現状であるため、興行的に意味がないと判断してだった。実際、過去に男女ペアを主役にした『ウルトラマンA』や『仮面ライダーストロンガー』が興行的に失敗したためにテコ入れをせざるを得なかった事実に加え、3年前の『太陽戦隊サンバルカン』は女性メンバーがいなくても興行的に成功した。それ故に当初は『ダブルヒロイン体制』に反対するスタッフも多かった。
しかしヒロイン二人の性格を違うようにしたことで話が進みやすくなり、イエロー降板もあったが無事成功し、この作品以降、女性戦士が2人になる事が定番化した。
その一方で、数年後に『紅一点体制』に戻したり、しばらく経ってから再び『ダブルヒロイン体制』にしたりと繰り返しているが、これはシリーズにとって本来のターゲット層はあくまでも男の子であり、玩具を売ることが重視されている事と、シリーズの多様化、さらにチーフプロデューサーとなるスタッフの意向によるものである。特にスタッフについては実際、『ダブルヒロイン体制』に懐疑的かつ『紅一点体制』に肯定的な女性スタッフも存在していると、後輩である武部直美が証言している。武部が言うには、その女性スタッフ曰く「紅一点体制かつ少女漫画・乙女ゲームの様な作風にした方が成人女性層に受け入れやすい」との事である。
今作では男女ともに太腿の辺りに白いラインが配されたデザインとなっているが、女性メンバーのスーツの場合、白いラインの上側を鼠径部に合わせてハイレグ気味に処理する事でレオタード風デザインを表現している。その際、白いラインで分断された太腿より下は、いわゆる絶対領域(当然の事ながら、放送当時はこの名称は存在しなかった)のように見える、という副次的効果をもたらしている。
なお、この路線は次作『電撃戦隊チェンジマン』と次々作『超新星フラッシュマン』までの三作品にしか採用されず、さらに次作の『光戦隊マスクマン』からは『電子戦隊デンジマン』以来のスカートタイプに取って代わられる事となった(ちなみに、レオタードタイプの嚆矢は『バトルフィーバーJ』のミスアメリカがそれに該当するが、彼女の場合はレオタード風ではなく、レオタードそのものなので厳密にいえば少し違う)。
その後、レオタード風スーツの復活は、次々作フラッシュマンの終了後から35年の時を経た2021年(令和3年)に放送されたシリーズ45作目、『機界戦隊ゼンカイジャー』のゼンカイマジーヌまで待たねばならなかった(ただし、ゼンカイマジーヌのそれは、レオタード風のスーツに前垂れパーツを追加するアレンジを加えた物であり、一見するとレオタードに見えにくく、さらに同作のスピンオフ作品で登場した番外戦士のツーカイフリントに至っては、例年通りスカートタイプだった)。
あらすじ
500年前にバイオ粒子を浴びた人間の子孫がバイオロボによって選ばれる。
彼らは地球征服を企む新帝国ギアの野望を打ち砕くため、バイオマンとして戦いを始める。
次第に激化するバイオマンとギアの戦い。そこにバイオ星を滅ぼした反バイオ同盟が
製作したロボット、バイオハンター・シルバが現れる!
登場人物
超電子バイオマン
呼称表
が\に | 郷 | 高杉 | 南原 | ミカ | ジュン | ひかる |
---|---|---|---|---|---|---|
郷史朗 | 俺 | 高杉 | 南原 | ミカ | ジュン | ひかる |
高杉真吾 | 郷 | 俺 | 南原 | ミカ | ジュン | ひかる |
南原竜太 | 郷さん | 真吾 | 俺 | ミカ | ジュン | ひかる |
小泉ミカ | 郷さん | 真吾くん | 南原くん | 私 | / | ひかる |
矢吹ジュン | 郷さん | 真吾くん | 南原くん | / | 私 | ひかる |
桂木ひかる | 郷さん | 高杉さん | 南原さん | ミカ | ジュン | 私 |
スペック
パンチ力 | 2000〜2500kg |
---|---|
キック力 | 3500〜4000kg |
走行速度 | 時速120km |
ジャンプ力 | 100m |
バイオマンのリーダーで24歳。日本人初のスペースシャトルのパイロット。
23歳。元カーレーサーで、メカの扱いが得意。少々おっちょこちょい。
18歳。漁師の息子でマリンスポーツが得意。郷以上に直情的な性格。
18歳。しかし、10話にて若い命を散らしてしまう。
矢吹ジュン/イエローフォー(二代目)
ミカの死後、新たにイエローフォーになった女性。アーチェリーの強化指定選手だった。
20歳。おっとりとした女子大生。最初は頼りない感じだったが、次第に一人前の戦士へと成長する。
新帝国ギア
ギアの総統。正体は人間、蔭山秀夫(かげやま・ひでお)
ドクターマンに次ぐ最高幹部。
ビッグスリーの下で作戦を実行に移す行動隊長。後年たびたび見られる悪の戦隊の元祖的存在。
- その他構成員
バイオマンの関係者
第三勢力
「バイオ粒子反応あり!破壊!破壊!破壊!」
武器/合同技
バイオエレクトロンとは固有の技名ではなく、技の総称である。
額の電子頭脳から5色ビームを放つ。
巨大化したバイオアローにバイオ粒子を込めて金色の矢を発射する。
包囲した敵にバク宙しながら空中に蹴り上げる。
5人同時に飛び上がり、回転キックを繰り出す。
5人がスクラムを組んで飛び上がり、スーパーエレクトロンのエネルギーを結集させたエネルギー弾を撃ち出す最強技。バイオスーパーエレクトロンとは別の技である。
敵の周囲を宙返りしながら敵に攻撃を仕掛ける戦法。
ウルトラマン80とユリアンのダブルパワーと似た体制で空中回転攻撃を繰り出す。
イエローとピンクが同時に飛び蹴りを放つ。
銃タイプ、短剣タイプ、長剣タイプの三形態を持つバイオマンの共通装備。
バイオソードでの必殺技
5人のバイオソード長剣タイプを重ねてビームの奔流を放つ。
女性二人で放つタイプはペアーソードと呼ばれる。
バイオソード銃タイプから5色のレーザービームを同時に発射する。
女性二人で放つものはペアービームと呼ばれ、最終回でファラキャットを撃破した。
5人のバイオソード長剣タイプを星型に構え、ビームの渦を発生させる。
バイオソード短剣タイプから五色のレーザービームを放つ。
長剣タイプを地面に突き立てて、エネルギーを走らせるバージョンはペンタビームとなる。
メカニック
赤い車体とパトランプが特徴のスーパーカー。最高時速は350km/h、スーパースピードでは630km/hに跳ね上がる。4番目のボタンを操作するとカウルが展開してミサイルを発射、黄色いボタンでスーパースピードモードに移行する。グリーン、ブルー、ピンクが運転した。
レッド、イエロー専用バイク。最高時速は300km/h、スーパースピードでは540km/hに跳ね上がる。
カウルからはロープを発射できる。モンスターとジュウオウに奪われたバイオターボを追跡するためにグリーンとブルーが運転したこともある。
バイオジェット1号・2号を格納する戦闘巨大空母。
初の意志を持つロボ。バイオジェット1号・2号が合体。
必殺剣「スーパーメーザー」から放たれる技は多彩。
各話リスト
音楽
主題歌
- 超電子バイオマン(OPテーマ)
作詞:康珍化/ 作曲:加瀬邦彦 / 編曲:矢野立美 / 歌:宮内タカユキ
OPテーマ。戦隊史上初めてフルネームでのタイトルコールが行われたが、本作は奇しくも「〇〇戦隊」というネーミングではなかった。
- バイオミック・ソルジャー(EDテーマ)
作詞:康珍化/作曲:加瀬邦彦/編曲:矢野立美/歌:宮内タカユキ
挿入歌
- 俺達バイオマン
作詞:八手三郎/作曲:加瀬邦彦/編曲:田中公平/歌:宮内タカユキ、こおろぎ'73
- セクシャル・レディ
作詞:吉田健美/作曲:加瀬邦彦/編曲:田中公平/歌:石渡マキ
『百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』では、「昭和の女性戦士」(厳密にはファイブイエローまで)のテーマソングとして使用された。
ちなみに石渡マキは、名作OVA『メガゾーン23』のエンディングテーマ「淋しくて眠れない」の歌唱を担当したタケウチユカと同一人物である。参考リンク
- Blue Togetherness
作詞:冬杜花代子 / 作曲・編曲:矢野立美/歌:宮内タカユキ
『百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』では、「力の戦士」のテーマソングとして使用されているが、バイオマンは全員が力の戦士以外の役割にカウントされていたりする。
- 大空翔けて!
作詞:冬杜花代子/作曲・編曲:矢野立美/歌:こおろぎ'73、ジャパン・エコーシンガーズ
- カラフル・バイオマン
作詞:吉田健美/作曲:加瀬邦彦/編曲:矢野立美/歌:宮内タカユキ、こおろぎ'73、ジャパン・エコーシンガーズ
- 夢みるピーボ
作詞:曽田博久/作曲・編曲:田中公平/歌:太田淑子、コロムビアゆりかご会
- バイオロボの歌
作詞:八手三郎/作曲:田中公平/編曲:矢野立美/歌:宮内タカユキ
- 夕焼けのペガサス
作詞:冬杜花代子/作曲:加瀬邦彦/編曲:田中公平/歌:阪本良介
関連作品
1984年7月14日公開。東映まんがまつりの一編として上映された本作の劇場版作品。
2011年6月11日公開。本作から郷史朗/レッドワンが登場。
余談
- 東映プロデューサーの鈴木武幸によると、企画を立てる前にとある子供の視聴者から届いた「ピンクがレッドを助けて欲しい」という内容の手紙がダブルヒロイン案を発案するきっかけの一つとなったとのこと。
- 企画最初期には「男性5人のみの戦隊」という案も出ていたが、作劇上問題があることから、東映プロデューサーの鈴木武幸による、ダブルヒロイン案が導入された。当然前述の通りスタッフからは反対意見も出たが、実施してみると好評だったため、翌年には一転して「5人全員を女性にしてもいいのでは」という意見まであったとか。
- 企画段階では過去にバイオロボと邂逅しバイオ粒子を浴びたおとぎ話の主人公たち(桃太郎、金太郎、一寸法師、かぐや姫)が現代へタイムスリップし、現代人の女性とともに悪と戦うという構想もあったが、「子供が皆おとぎ話を知っていると思ったら大間違いだ」ということで没に。郷の動物との意思疎通能力や、メンバーのキャラクター設定などにその名残が見られる。企画がハイテク路線に転換してからのサイボーグ戦隊にする案も戦隊シリーズの作風に合わないことから没とされた。その後も5人全員が異星人という案や、500年前に理想郷を求めて旅をしていた5人がバイオ粒子を浴び、その子孫が戦うといった感じで設定が二転三転。5人の名前も数回にわたって変更されている。
- ヒーローのスーツの素材が本作品より変更されており、それまで多用されてきた綿とナイロンによるものから、新たに伸縮性・耐熱性に優れた「オペコット」と呼ばれる合成繊維による生地が使用されるようになった。
- 既にメタルヒーローシリーズでは『宇宙刑事ギャバン』から使われていた「東通ecgシステム」が、本作品よりスーパー戦隊シリーズにも本格的に導入され、以降『超力戦隊オーレンジャー』まで使用されることとなった。
- 本作品から、主に敵キャラクターの初登場時に名前のテロップが下に挿入されるようになった。
- 星獣戦隊ギンガマンにも当初、新譜情報で発売CDとしては星獣戦隊バイオレンジャーというタイトルが描かれていた。
関連イラスト
関連動画
関連タグ
科学戦隊ダイナマン→超電子バイオマン→電撃戦隊チェンジマン
電子戦隊デンジマン:こちらも「電子」を冠した戦隊。
未来戦隊タイムレンジャー:最終回で紹介され、2人の女性戦士がいる事でドモンを羨ましがらせ、その勢いでユウリにダメ出しをして殴られて鼻血を垂らした。
海賊戦隊ゴーカイジャー:劇場版第1作「199ヒーロー大決戦」で郷史朗が登場し、第4作「スーパーヒーロー大戦」ではレッドワンが登場した(演者も同じ)。
暴太郎戦隊ドンブラザーズ:企画の初期段階で没になった「おとぎ話モチーフの戦隊」に、実に38年の時を経て再挑戦した令和戦隊。ただし、モチーフを「桃太郎」に絞っている関係で、レッド以外のメンバーの顔触れは本作の没案とは異なる。
超電子鬼:上述のドンブラザーズに登場したバイオマンを歪めたデザインとした戦隊怪人。
王様戦隊キングオージャー:従来の等身大での戦闘は、幹部クラスのレギュラー枠と戦闘員が担い、ゲスト枠の怪人は巨大な怪人という巨大ロボットアニメの影響が濃い作風が共通している。
主なゲスト出演者
真田広之(13話)
神谷政治(29話)⇒『人造人間キカイダー』(光明寺マサル役)、『電人ザボーガー』(新田浩役)、『大鉄人17』(主演・南三郎役)で出演。
黒崎輝(35、36話)